レビュー

NIHA-C | 2017.11.15

 MCバトルにスポットを当てたテレビ番組の人気も追い風となり、この1、2年の間にヒップホップシーンに注目が集まるようになっているのは、みなさんもよくご存知の通りだ。MCバトルは面白いし、ヒップホップカルチャーの一面であるのは確かだし、このフィールドでスキルを磨くのは、ラッパーにとって非常に有意義なことだとは思う。しかし、一定の基準で勝敗を決める「バトル」は競技であり、本来ワクワクしたり心動かされたりするものであるはずの「音楽」の本質ではないだろうし、そこだけに注目するというのは何だかすっきりしない――というようなモヤモヤを感じている人に聴いてほしいのが、NIHA-Cの2ndアルバム『アリバイ』だ。

 高いスキルに裏打ちされた彼のラップは、言葉にしたい想いを、とても素直に形にしている印象がする。例えば今作の1曲目「It’s Going Down」は、ヒップホップシーンへの違和感を鋭い表現で次々射抜き、自身のスタンスをハッキリと示す。そして、強烈なこのオープニングを経て描かれていくのは、大切な人への気持ち、抱いている理想、力強い意志、時々襲ってくるネガティブな感情、容易には拭い去ることができない喪失感……などなど、おそらく誰にとっても他人事とは思えないリアルな事柄の連続だ。また、とてもグッとくるメッセージを投げかけてくる瞬間も度々ある。自分の人生の主導権を誰にも渡さずに生きることを呼びかける「リーダー」、他人の価値基準に左右されない姿が刻まれている「Touch The Sky」などは、多くのリスナーの心を熱く鼓舞すると思う。

 電波少女の代表曲の数々に参加しているNIHA-Cの曲に対して、今度はハシシが参加しているという楽しさがある上、なかなかパンチの利いた事柄をラップし合っている「モナリザ feat. ハシシ from 電波少女」、Jinmenusagiとの深い友情がうかがわれる「トモダチ feat. Jinmenusagi」などにも注目させられる。「こんなことをラップしてもいいんだ!?」「こういうことを言ってほしかった!」「この感じわかる!」「この物語、美しいなあ」というような多彩な感情を呼び起こしてくれる『アリバイ』は、正統派のポップアルバムと言ってもいいだろう。ヒップホップが好きな層以外にもぜひ聴いてもらいたい作品だ。

【文:田中 大】

tag一覧 J-POP アルバム 男性ボーカル NIHA-C

リリース情報

アリバイ

アリバイ

発売日: 2017年11月15日

価格: ¥ 2,500(本体)+税

レーベル: redrec / sputniklab inc.

収録曲

1.It’s Going Down
2.リーダー
3.モナリザ feat. ハシシ from 電波少女 
4.夜光虫
5.Touch The Sky
6.Goodbye 
7.Take My Hand
8.ABCDEFG
9.Boyfirend Don’t Like Me
10.トモダチ feat. Jinmenusagi
11.目を閉じれば
12 :Nothing 

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