レビュー

キイチビール&ザ・ホーリーティッツ | 2018.02.07

 時にリアルよりも、想い返したり、想い描いた情景や光景の方が美しく感じられることがある。時間が経つうちに記憶の中で、様々な想い出が懐かしさと共に美化され、成熟され、良い想い出、美しい想い出へと昇華されるからだ。そして、それは独特の青春観を伴って、想い返す者に、取り戻せない、かけがえのない時間として、多少の尊さも伴って眼前に広がらせる。そんな時は決まって、あの日、あの時、あの場所に再び佇んでいる自身を思い浮かべ、目を細めながら、その場所へと想いを馳せている自分が居たりする…。
私にとってキイチビール&ザ・ホーリーティッツは、そんな音楽だ。

 キイチビール&ザ・ホーリーティッツは、良質なポップスセンスあふれるロックバンド。キイチビール(Vo&G.)、KD(Vo&Cho.)、橋本=タフネス=樹(B.)、りょう(Key.)、タカヒロ(Dr.)からなる、男女混声ボーカルを擁した5人組だ。彼らの特性は、どこか思い出しながら歌っているかのような、柔らかく優しげな男性ボーカルに、女性のウィスパー混じりのキュートなヴォーカル&コーラス。しかしバックのバンドサウンドはしっかりがっしりとした音楽性だったりする。そしてそれらは、独特のタイム感も含め、聴く者を、あの日、あの時の、あの場所へと、脳内テレポーテーションさせてくれる。

 2016年6月に初の自主制作EP『俺もハイライト』をリリース。2017年10月には1stミニアルバム『世の中のことわからない』を発表し、その音楽性のユニークさと、キャッチ―でメロディアス、それでいてどこか望郷感や郷愁感漂う音楽性が話題を呼んだ彼ら。過去には、『RO JACK for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』で優勝し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2017』に出演。同時期に、「出れんの!?サマソニ!?2017」にてGARDEN STAGE賞を受賞し、『SUMMER SONIC 2017』への出演の実績も持つ。

 そんな彼らが2月7日に1stフルアルバム『トランシーバ・デート』を発表する。ライブでの代表曲や人気曲を含んだ全10曲入りの今作は、彼ら独特の淡さやソフトフォーカス感は残しつつも、音も整理され、音響処理も含め、各音も生命力が増し、より洗練されたものとなった。

 ほのかな上昇感と解放感も印象的。若干の振り返りや曖昧な後悔具合を交え歌われた、それでも♪たまらない夜にしよう♪と聴く者を誘う「たまらない夜」を皮切りに、6/8のロッカバラードに乗せて、韻の踏まれた情景描写的な歌も微笑ましい、ほのかな幸せ感漂う「パウエル」。男女混成ボーカルも印象的。幾ら考えても、悩んでも、解決したり、明るい糸口が見つからないのであれば、それはそれでいいんじゃないって気分にさせてくれる「世の中のことわからない」。KDがメインボーカルを取る、キラキラとしたギター&シンセポップ的な「プラスチックラブ」。よりネイキッドに近い楽器類が故の、彼らの歌の本質が伝わってくる。聴く者を夏の情景へと引き戻す「ビールを用意しててね」。電子音楽&バチェラーパッドでキッチュな宇宙旅行へと誘う、変質されたボーカルも特徴的な、彼らの歌の中では珍しくシュールな歌内容の「ロケット裸族」。“この気持ちよ。どんな小さな電波でもいいから、あの場所まで届け!!”と言わんばかりの気持ちが伝わってくる、タイトル曲の「トランシーバ・デート」。疾走感とドライブ感たっぷりのサウンドと、途中交わる2ビートが交差し、ライブでも盛り上がる「夏の夜」。自分に言い聞かせるように作ったという、今や東京で生活している自分を振り返り、省みているかのような郷愁性が、ダイナミックなサウンドと共に、どこか栄光へ向かっているようなラストに訪れる神々しさも特徴的な「東京タワー」。そして、ラストはライブ感溢れるガレージロックナンバー「ちっちゃなハート」が、ライブバンドらしい彼らの最新性をきっちりと締めている。

 淡いソフトフォースのかかった光景の中、いい具合に熟成された想い出を、いい感じの想い出へと変えてくれる不思議な成分を持っている、彼らの歌たち。あなたも彼らの歌が描く情景の中、自分を佇ませてみてはいかがだろう? きっとつられて、自身のあの日、あの時、あの場所が眼前に広がり、それを遠い目をして想いを馳せている、そんな自身に出逢えるはずだから。

【取材・文:池田スカオ和宏】





■ライブ情報
THANK YOU SOLDOUT!!!
▽1st album『トランシーバ・デート』リリースパーティー
日時:2018年2月8日(木)
会場:渋谷WWW
出演:キイチビール&ザ・ホーリーティッツ/ホフディラン/MONO NO AWARE /台風クラブ
adv.3,000yen/door.3,500yen
open 18:00/start 18:30

▽1st album『トランシーバ・デート』リリースツアー
3月8日(木)心斎橋Pangea
w/Koochewsen、ナードマグネット、Gateballers
3月9日(金)名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
w/Koochewsen、SUNNY CAR WASH、Gateballers
3月20日(火)仙台enn 3rd
w/Koochewsen、SUNNY CAR WASH、YAOYOROS

OPEN 18:30 / START 19:00
ADV. 2,500円 / DOOR 3,000円(+1DRINK)

▽ライブスケジュール
3月1日(木)タワーレコード梅田NU茶屋町店(インストアライブ)
3月3日(土)見放題東京
3月4日(日)京都磔磔 w/トリプルファイヤー、バレーボウイズ、mei ehara
3月11日(日) 福岡ONTAQ
3月12日(月) タワーレコード新宿店(インストアライブ)
3月25日(日) 名古屋IMAIKE GO NOW

初のワンマンライブ開催
2018.3.24(土) 渋谷スターラウンジ
OPEN:18:00 / START:18:30
ADV 2,500円 /DOOR 3,000円

tag一覧 J-POP アルバム キイチビール&ザ・ホーリーティッツ

リリース情報

トランシーバ・デート

トランシーバ・デート

発売日: 2018年02月07日

価格: ¥ 2,000(本体)+税

レーベル: PTA

収録曲

1.たまらない夜
2.パウエル
3.世の中のことわからない
4.プラスチックラブ
5.ビールを用意しててね
6.ロケット裸族
7.トランシーバ・デート
8.夏の夜
9.東京タワー
10.ちっちゃなハート
全10曲

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