レビュー

sumika | 2019.06.12

 大地や水平線からゆっくりと陽が昇り、徐々に生命力やバイタリティを帯び、最後にはとてつもない高みへと我々を引き上げてくれる……。先日、sumikaの新曲「イコール」が横浜アリーナで現れた際に、私の胸にはそのようなビジョンが去来していた。と同時に込み上げた、<ようやくこのような楽曲がsumikaのライブに備わった感>。そう、この「イコール」は、カテゴリ的には近似に括れそうな楽曲がありながらも、ことライブにて発揮される生命力やダイナミズムからは、従来の彼らの楽曲からは窺えなかった雄々しさと気高ささえも感じた。合わせて、もう一曲のタイトル曲「Traveling」共々、これで彼らのライブが包囲盤石にまた一歩近づけた印象を私に与えてくれた。

 まずは「イコール」。あだち充原作の読売テレビ・日本テレビ系TVアニメ「MIX」のオープニングテーマとして今春から鳴り始まり、待望の作品化となった楽曲だ。この初夏にピッタリの梅雨空を抜けた先に待っている晴れ間や、新しい自分と出会わせてくれそうな同曲。音より光より早く君にこの気持ちを届けたい!!と歌われる、そのはやる気持ちが、疾走感のあるサウンドと共にこの身体から先に飛び出し、あなたの下へと真っすぐに向かっていく。サビで現れる開放感や爽快感もたまらない同曲。絡む優雅なストリングスがブレイブ感をかき立てる。と、ここまで書くと、これまでの「フィクション」や「ファンファーレ」といった路線の楽曲が思い浮かびがちだ。彼らの歌はいつも身近で親しみやすかった。が故の近距離感があり過ぎるのも事実。もちろん、この曲もそのような要素は持ち合わせている。しかし、ここまでのライジングサン感や生命力、アーシーさやランディング感を擁した楽曲は過去の彼らのレパートリーでもあまり例を見ない。いわゆるダイナミズムやアーシーさの中、じわじわと体温や光を取り戻していき、最後にはしっかりと光に包まれていくあの感じ。それがようやく楽曲として現れた。個人的にはそんな気持ちでいっぱいだ。

 対する「Traveling」は、これまでの彼らにはなかった背徳感たっぷりのナンバー。前作で言うと、「Monday」や「Strawberry Fields」と空気感の近いアダルティな路線ながら、それらがアーバンでミッドナイトな雰囲気だったものに対して、この「Traveling」は、シチュエーションは昼、そして自室的な光景、情景観よりも自身の省みが歌われているのも特徴的だ。
 スウェイなループ感のあるヒップホップ性へのシンパシーを感じ、打ち込みやトランスフォームのエディット等、作品性が高いところも興味深い同曲。ファズの効いたギターも印象的だ。しかし、この曲の彼らにとっての斬新さは歌詞のように私には映る。ここまで主人公の哀しさや秘めることでの背徳感。先に幸せが待っていないことは重々承知していながらの「沼」感たるや……。内省さ溢れる歌詞は、“えっ!? ここまで歌っちゃうんだ…?”と私に何度もこの曲をリピートさせた。特にラストバースで待ち受ける♪築いて気付いて傷居て 幸せって なんだろうね♪のフレーズは、安易に気持ちを重ねようものなら、その胸中が押しつぶされることだろう。しかし反面、このような楽曲を出すことで、彼らはこれまで歌い切れなかったことまで到達でき、いよいよ清濁併せ持った歌をも兼ね備えて歌える存在へと至った感がある。と同時に、それを求めている層の心をもグリップ。これまで以上にファン層の幅やすそ野を広げていくことになるだろう。

 これら2曲を経てより楽曲の盤石性へと至らせた今作。次のライブやツアーでは、来客ゾーンは更に上にも下にも広がることだろう。その中では、「イコール」が生命力溢れる雄々しくも気高い歌をその広い会場の隅々にまで響かせ、対して「Traveling」がインナーでミニマルに、歌われるその胸の内をあえて軽やかに吐き出していくに違いない。
 大規模な全国ツアーも間もなく大盛況ののち幕を閉じる、このタイミングながら、私の興味は既に彼らの次のフェイズでのこの2曲の会場での響き方へと移っている。

【文:池田スカオ和宏】

リリース情報

イコール / Traveling

イコール / Traveling

発売日: 2019年06月12日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: SMR

収録曲

01.イコール
02.Traveling
03.イコール (Instrumental)
04.Traveling (Instrumental)

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