レビュー

Who-ya Extended | 2021.02.19

 2019年にTVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』のオープニング曲「Q-vism」を表題にしたシングルでデビューし、2020年には1stフルアルバム『wyxt.』をリリースしたWho-ya Extended。ボーカリストのWho-yaを中心とするクリエイターズユニットであること以外はほぼ謎に包まれていたが、2021年に入ってから少しずつその実態が垣間見られるようになってきた。

 1月にはオンラインライブ「Sony Music AnimeSongs ONLINE 日本武道館」に出演し、Who-ya Extendedとしての初ライブを敢行。キービジュアル以外のWho-yaの顔や姿が世に出るのもこの日が初となった。大舞台でも落ち着いたパフォーマンス、音源では味わえないライブステージならではの生々しい歌唱は、楽曲の世界観を視聴者により強く印象づけたことだろう。

 同月からはTVアニメ『呪術廻戦』第2クールのオープニングテーマを担当。同曲を表題にするのが、約10ヵ月ぶりの新作となる4曲入りEP「VIVID VICE」だ。作品のファンだというWho-yaの「『呪術廻戦』が持つ複雑に絡み合う明と暗のボルテージを、感謝と共に一つの楽曲に閉じ込めました」という公式コメントのとおり、作品の登場人物全員を包み込むような、ダークかつスピード感のあるロックナンバーに仕上がっている。

 この曲の最も大きな特徴は“鮮やか”と“邪悪”という言葉が結合したタイトル「VIVID VICE」が象徴しているように、相反するものを抱えている状態であるということ。ドラムは前のめりに走っていくようなイメージを与えながらも、ベースは叙情的な旋律をシリアスに演奏し、ギターはセクションごとに音色を巧みに使い分けて楽曲に宿る心象風景を繊細に切り取る。個々の表現するものが異なるなか、ぎりぎり均衡が保たれている様は、不安、怒り、希望、悲しみ、喜びが混乱しながらも前へ前へと転がり続けていくという、若者ならではの生き様そのものだ。

 それをより情緒深く届けるのが、Who-yaのやわらかい発音と憂いを帯びた歌声。<千切れそうな綱の上 ただ揺らさぬように潜めるか/一か八か 駆け抜けるか>や<金輪際 後悔はしない 現実を変えてみせる/真実がたとえ残酷でも>という歌詞は、文字だけで見れば強いメッセージだが、ラウドロック然としたバンドサウンドで彼が歌うそれは、嵐が吹き荒れる暗闇のなかでただ光を願うような神秘性を宿している。サウンドの作る波に乗じるのではなく静かに抗うような、そんな佇まいの歌唱が危うくもあり頼もしい。これも相反の成せる業だ。

 表題曲と呼応するようなタイトルを冠した「VIVID BANG」は、シリアスな「VIVID VICE」とは一転、軽快なリズムとそこに絡み合う多数の押韻とバンドサウンドが<頂上へ駆け上がれ>というポジティブなマインドを華やかに彩る。「VIVID VICE」が内包する物語のうちのひとつと考えると、また2曲に新たな味わいが生まれるのも趣深い。

 「The master mind」は『wyxt.』の延長線上とも言えるバンドサウンドとデジタルサウンドの融合と、静と動のコントラストがサイバーパンク的な世界を構築。「Enough Is Enough」はカッティングが耳に残るギターと言葉ひしめくボーカルの、拮抗するような展開がスリリングだ。「VIVID VICE」の肉体的なバンドサウンドやダークファンタジー感と親和性を持たせつつも、それぞれで異なるギミックを取り入れた楽曲が揃った。どの曲も共通しているのは、結末が描かれていないこと。どの曲も人生が動き出すプロローグを切り取っているのだ。それはWho-ya Extendedというユニットも同様だろう。「VIVID VICE」はここからWho-ya Extendedの新しい物語が始まるという、高らかなファンファーレなのだ。

【文:沖さやこ】




Who-ya Extended EP 「VIVID VICE」 Trailer

リリース情報

VIVID VICE

VIVID VICE

発売日: 2021年02月17日

価格: ¥ 1,250(本体)+税

レーベル: SME

収録曲

01.VIVID VICE
02.The master mind
03.VIVID BANG
04.Enough Is Enough
05.VIVID VICE (Instrumental)

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