MISIA、急逝したドラマー青山純に捧げる『僕はペガサス 君はポラリス』

MISIA | 2014.02.10

 昨年から続くツアー「星空のライヴVII」もいよいよ終盤、服部隆之が指揮を取るオーケストラとの共演を全国で繰り広げている。そんな中、MISIAがリリースするのは、話題のテレビドラマ『S -最後の警官-』の主題歌「僕はペガサス 君はポラリス」だ。イントロのピアノは少し愁いを帯びた和のニュアンスを含んでいるが、歌が始まると明るいグルーヴが身体を揺らす。レコーディングはツアーバンドのメンバーを中心に行なわれ、MISIAならではのミディアム・バラードと言えるだろう。
 実は昨年の暮れ、デビュー以来、彼女を支えてきたドラマー青山純が急逝した。青山がMISIAに遺したアイディアやグルーヴのことも語ってもらったのだが、話はJ-POP全体に及ぶインスピレーションに富んだインタビューになった。『僕はペガサス 君はポラリス』のCDのジャケットには、「青山純に捧げる」と書いてある。

MISIA:「僕はペガサス 君はポラリス」は、『S -最後の警官-』のお話をいただいてから、書き下ろしました。台本と原作を読ませてもらって、私は男らしい強さをテーマにした世界観だと思ったので、もしかしたらバラードじゃないほうがいいかもと考えました。
EMTG:でも「MISIAといえばバラード!」っていうイメージがあるよね。
MISIA:そうですね。でも、少しテンポの速い曲でも、アレンジが壮大なら、バラードにも聴こえるんです。「僕はペガサス 君はポラリス」をそういうテンポで歌ってみたら、 すごくよくて、ドラマ側のスタッフも喜んでくれました。絶妙な熱さのあるミディアムって、今までMISIAがやったことのないタイプ。MISIAをずっと聴いてきた人にハッとしてもらえるし、私自身も新しいタイプの曲って歌詞を書きたくなるんです。すぐに歌詞を書き始めて、「できることなら今回のツアーで一緒にやっているバンドメンバーとレコーディングができたらいいね」ってお願いしました。
EMTG:前作シングルの「幸せをフォーエバー」は、完全J-POPだったけど、今回の「僕はペガサス 君はポラリス」は、MISIAの洋楽的なグルーブとJ-POPが上手く折り合っているように感じた。もっと言えば、80年代のJ-POPのテイストがすごくあるね。
MISIA:んー、そうですか? 私にとっては、日本の歌謡曲をさかのぼればさかのぼるほど、洋楽に聴こえるんです。
EMTG:そうか、戦後の歌謡曲って、美空ひばりにしても雪村いづみにしても、もろにジャズの影響を受けている。笠置シヅ子の「東京ブギウギ」は、MISIAの弦アレンジをやってる服部隆之さんのお祖父さんの服部良一さんの作曲だからね(笑)。
MISIA: 完全に洋楽ですよね。だって、あの「ウルトラマン」のテーマでさえ、ベース始まりの曲なので、「おおおおー!」みたいな(笑)。だから、今の完成した状態をJ-POPと捉えるのか、今のJ-POPを作ってる人たちが聴いてきた洋楽に近い構成のものをJ-POPと言うのかで、またちょっとニュアンスが違いますよね。
EMTG:確かに。
MISIA:誰かから「もうちょっとJ-POPっぽく」って言われたときに、どこの時代のJ-POPかなあって最近思うんです。だから、80年代より前のJ-POPって、もしかしたら日本人が感じる洋楽なのかもしれないし(笑)。そういう時代に入ってるのかもしれないですよね。J-POP は90年代で確立されて、2000年からいろんなジャンルがうわーっと出てきて、それまでの音楽をある意味ベーシックにしつつも成長していくっていう。今はそんな音楽のベースができた状態に感じますね。
EMTG:その中でMISIAは、 いいバランスで洋楽とJ-POPを取り入れていると思うな。そのせいか、ライブの歌がすごくナチュラルになってるって感じる。
MISIA:私、去年はライブを60本やって、今は77本を目指してライブをやっているんですが、これまでいろんな人から 「もうちょっと肩の力を抜いて歌ったほうがいいよ」って言われてきました。何年か前に、エリカ・バドゥにも言われたんです。「あなたは歌い上げるのがすごく上手だけど、そうじゃない世界もあるわよ。それを知ったら、もっと楽しくなると思う」って。亡くなった青山さんにも「音楽は足し算じゃなくてまず引き算をしなきゃだめだ」って言われてました。「いろいろ盛るのがいいんじゃなくて、とりあえず全部削ぎ落として、いちばんシンプルでカッコいい状態を作ってから、少しずつ足し算していくようにしないとわからなくなる」って、悩んでたときによく言われてて。そしたら、今回のツアーをやってる中で、やっぱり何十本もやってると声が疲れてくるじゃないですか。で、不思議なんですけど、疲れて力を抜いて歌ってるときに、お客さんがすっごく泣いてくださるんです (苦笑)。
EMTG:へえー! 不思議だね(笑)。
MISIA:「あれ?」と思って。たとえばおしゃべりも、全部を力を込めて喋るわけじゃないじゃないですか。抑揚っていうものがあって。その抑揚は、ほとんどの場合、力を抜いた柔らかい声で構成されていると思うんです。なので、 私の歌はまだまだ力が入りすぎてて――それでも言われてけっこう抜いてたんですけど――自分の思ってる5倍ぐらいは(苦笑)優しく歌ったほうがいいんじゃないかって思います。実はシンプルにしていくって、けっこう怖いことだったんですね、私にとって。手を抜いてるって言われるんじゃないかって。
EMTG:ああ、そういう心配があったんだ。
MISIA:でも、引き算して研ぎ澄まされたものを提供したほうが、もしかしたらものすごくお客さんに伝わるんじゃないかなと。
EMTG:ま、早い話が、疲れて力がもう入らない状態になったと(笑)。
MISIA:初めて強制的に力を抜いて歌えるようになったときに、お客さんが 泣いてるのを見て「あれ? なるほどなあ」って(笑)。そうしたら逆に、抜いて歌うところと力を入れるところのメリハリが出ますからね。
EMTG:“星空のシスターズ”のコーラスの力も大きいかも!?
MISIA:そうですね、素晴らしいコーラスが入ったことによって、ライブで引き算がすごくしやすくなりました。
EMTG:それとやっぱり青山純さんの存在かな? 初めて青山さんと会ったときのことは、憶えてる?
MISIA:初めて青山さんのドラムで歌ったとき、「あ、初めてロックじゃないビートの人と歌える!」って思いました。そういうドラムの方をずっと探していたんですけど、なかなか出会えなくて諦めかけていたので、嬉しかったです。青山さんの音って、“引き算”って言っていただけあって、余分なものがなくて、他の楽器の音が全部立ってくるんですよね。どの音ともケンカしない。だからみんなが自由にアドリブできる。それが音楽なのかなあって、今、すごく思います。
EMTG:そして歌詞のキーワードは “ペガサス” と“ポラリス”で、どちらも星の名前だね。
MISIA:このところ、歌詞を“擬人法”で書いてみたいと思っていて。『S -最後の警官-』で向井理さん演じる“一號”と、綾野剛さんが演じる“蘇我”は、まったく思想が違うんですけど、“犯人から人々を守りたい”っていう共通点がある。二人の信頼関係を擬人法で語ることによって、男と男かもしれないし、男と女かもしれないっていう、性別を超えられるっていうところもあったので、すごくいいんじゃないかなあって思ったんですよね。
EMTG:星の擬人法かあ(笑)。どっちがペガサスで、どっちがポラリス? イメージで言えば、蘇我の方がクールだから、目印の天体になるポラリス(北極星)かな。
MISIA:いえ、お互いにとってお互いがペガサスやポラリスになっていく二人なんじゃないかなと思っていました。
EMTG:そうかあ。それはいい擬人法になったね。そして、いよいよレコーディングに入る。
MISIA:「そろそろレコーディングしなきゃ」って言ってるときに、青山さんが突然お亡くなりになったんです。その数日後ぐらいに楽器レコーディングがあって、私はすごく悲しくて、「どんな気持ちでレコーディングに臨めばいいのかな」って思っていました。不思議なんですけど、同じように悲しんでいる人たちとスタジオで会って、青山さんの思い出話をいろいろしているうちに、すごく慰められました。みんなで「青山さんはポラリスになっちゃったね」っていう話をして。じゃあ生きていく私たちは、音楽っていう翼を持ったペガサスにならなきゃいけないって。今回はみんなが青山さんっていうポラリスを胸に抱いてる状態で、楽器のレコーディングをしたんです。
EMTG:カップリングの「Jewelry」は、青山さんが叩いているの?
MISIA: はい。青山さんの最後のレコーディング曲です。「Jewelry」は素晴らしい出来だったので、「この曲、みんなに早く聴いてほしいよね」っていう話をしていたんです。偶然なんですけど、歌詞自体に青山さんとのことに通じるような言葉があって、私、亡くなられたときにも 「青山さんと一緒に歌えたことが宝物だ!」ってずっと言ってたんです。考えてみたら、青山さんと最後にレコーディングした曲がジュエリーだ、宝物だったっていう。なのでこの「僕 はペガサス 君はポラリス」は、忘れられないシングルになりました。ぜひ、聴いてください。
EMTG:ありがとうございました。

【取材・文:平山雄一】

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リリース情報

6P4A1966_183

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発売日: 2015年04月27日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

1

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リリース情報

僕はペガサス 君はポラリス(初回盤)

僕はペガサス 君はポラリス(初回盤)

2014年02月05日

アリオラジャパン

1.僕はペガサス 君はポラリス
2.Jewelry
3.君の太陽になろう
4.恋は終わらないずっと(Candle Night Live)

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1年にもおよぶデビュー15周年ツアーの記念すべき77本目、最終公演が決定!オーチャードホールで、15周年のフィナーレを飾ります。

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リズモバ♪オフィシャル
http://rhythmoba.com/r/ticket0402/

【公演日時・会場】
2014年4月2日(水)
OPEN 18:00 / START 19:00
Bunkamuraオーチャードホール

【受付期間】
エントリー受付期間
2月22日(土)13:00~2月24日(月)23:59

当落確認・当選チケット引換期間
2月26日(水)15:00~3月1日(土)23:00

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