黒沢健一、セルフ・カバー・ベスト『LIFETIME BEST“BEST VALUE”』リリース

黒沢健一 | 2015.01.20

 L⇔R の中核メンバーとして活躍した後、ソロに転じてからも個性的なソングライター&ボーカリストとして高い評価を得てきた黒沢健一が、MAROON5などのプロデューサーとして知られるEric Rosse(以下、エリック)を迎えて、セルフ・カバー・ベスト『LIFETIME BEST“BEST VALUE”』を発表。かつての名曲が、現在のアメリカン・ヒット・チャートに呼応したサウンドで聴ける楽しみばかり でなく、90年代初頭のJ-ROCKが アップデートされてどうように今のリスナーの耳に響くのかが興味深い。それにしても、黒澤のキャリアをまったく知らない人でも、温かくす んなり心に入ってくるアルバムになっている。

EMTG:アルバム制作の発端は?
黒沢:ひとつ前のアルバム『Banding Together in Dreams』を作っている途中で、スタッフに「次はアメリカでレコーディングするのもいいよね」って言われて、すぐ「したいです」って答えた。できるんだったらぜひやりたいと、ずっと思ってましたから。
EMTG:具体的なイメージはあったんですか?
黒沢:今回は“セルフ・カバー”だから、セルフ・プロデュー スはできない。だって、最初の時点で「これがベスト」っていう形を作って気に入っているから、それ以上のものを自分で考えることはできないんですよ。たぶん自分でやったら、また同じものを作ってしまう(笑)。
EMTG:それはそうだね(笑)。
黒沢:まずエリックをプロデューサーに決めて、彼にミュージ シャンのセレクトを任せました。僕の方は、人気曲やシングル曲を彼に送って、選んでもらいました。L⇔R 時代の「(I WANNA)BE WITH YOU」も選ばれたりして、嬉しかった。それを2000年代を代表するハリウッドのプロデューサーが、どんな音に仕上げてくれるのか、楽しみでしたね。
EMTG:前作を作っている途中から始まった勢いが、そのままいいエネルギーに変わっていったんだね。実際、エリックとはどんなやりとりをしたんですか?
黒沢:最初の打ち合わせで、「シェリル・クロウのドラムがいいよね」とか、「テイラー・スウィフトのキーボードはどう?」とか、話に出て。「本当にやれるのかな?」と思ってたら、本当だった(笑)。でも、「オレのドラムが欲しけりゃ、オレの家に来い」って言われたりして、結果、ハードディスクを持って3カ所回りましたよ。ほとんどのミュージシャンは自分のスタジオを持っていて、そこで録るのがいちばんいいんです。
EMTG:面白いレコーディングだなあ。このやり方を、若いミュージシャンにも勧めたいですか?
黒沢:向こうでレコーディングするのは勧めますけど、セルフ・カバーは勧めないですね。今回は、僕が昔、書いた曲をリアレンジするから面白かった。若いアーティストは、まず自分のオリジナルを、 自分でアレンジしてレコーディングすべきでしょう。
EMTG:確かに! 最初の打ち合わせ以降、エリックとはどんな話をしたの?
黒沢:その後はなるべく自分がプロデュースから離れた方がいいので、顔を合わせずに、基本的にファイルのやりとりで進めました。
EMTG:今の時代だからできるやり方だね。
黒沢:そうですね。これまでも、RCAスタジオなど、アメリカやイギリスの“伝説”の場所を訪ねたりして、それなりにエキサイティングだったんだけど、今回はもっと“アップデート”された作品にしたかったんですよ。昔、自分が書いた曲を、今、どういう音で聴 かせるかが大事だった。
EMTG:セルフ・カバーの意図ははっきりしていた。
黒沢:はい。アメリカのヒット・チャートでは80年代を思わせるシンセサイザーの音が全盛なんですが、エリックもその音がマイブームになっていて、それを踏まえて「君の歌に合わせてサウンドを作るから」って言ってくれました。
EMTG:なんか“大人な会話”だなあ(笑)。
黒沢:僕の人生にとって重要な曲が、エリックと重なっている。ただ、今回はそういうものに対するオマージュではないと、彼に伝えました。僕は昔、“アメリカ音楽で育った日本人が懐古する”みたい な音楽の作り方もしていたんですが、今回はそうした屈折はなかったです。
EMTG:ややこしいこと抜きに、楽しいアルバムになってる。
黒沢:エリックも「とても楽しかったし、エキサイティングで 素敵な時間だった」って言ってくれました。
EMTG:他人にプロデュースされたことは、どうだったんですか?
黒沢:今まで当然と思ってやってきた仕事を、他人に任せるっ て、自分でも信じられなかった(笑)。しかも、けっこうキャリアを積んだこのタイミングでね。
EMTG:そういえば、そうだね。
黒沢:でも、たくさん発見がありました。昔、書いた曲が新鮮 に聴こえる。自分の中では新曲のように響きましたね。今後、このアルバムから、自分が影響を受けそうな気がする。
EMTG:それはいいことだね。で、いちばんの発見は?
黒沢:これまでは、サウンドに合うように歌ってきたんです が、今回、エリックはその言葉どおり、歌にサウンドを合わせてくれた。22年間で初めての経験だった。その意味では、“歌手として作ったアルバム”と言えるでしょうね。
EMTG:それは大変革だね。
黒沢:はい。なので、ツアーも今までとは違うものにしたいと思ってます。ずっとツアー・メンバーでアルバムを作ってきたんですけど、今回は全部アメリカのミュージシャンで作った。ツアーはこのアル バムの曲を中心にしたセットリストでやるので、バンドを新しくします。自分の歴史上、こんなに大きな変革はない。ファンの人は、絶対に観 に来た方がいいですよ!
EMTG:楽しみだね。
黒沢:はい。自分にとって、新鮮なツアーにしたいと思ってます。

【取材・文:平山雄一】

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ビデオコメント

リリース情報

LIFETIME BEST“BEST VALUE”

LIFETIME BEST“BEST VALUE”

2015年01月21日

24th Floor Records

1.HELLO IT’S ME
2.ALL I WANT IS YOU
3.PALE ALE
4.SOUL KITCHEN
5.(I WANNA) BE WITH YOU
6.MAYBE
7.KNOCKIN’ ON YOUR DOOR
8.DAYS
9.DON’T BRING ME DOWN ( 遠くまで)
10.TOO LONELY TO SEE
11.WONDERING
12.SHOOTING THROUGH THE BLUE ( ブルーを撃ち抜いて)

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お知らせ

■ライブ情報

LIVE TIME BEST TOUR 2015 "BEST VALUE"
2015/03/06(金)福岡DRUM Be-1
2015/03/07(土)広島Live Juke
2015/03/14(土)名古屋Electric Lady Land
2015/03/15(日)梅田CLUB QUATTRO
2015/03/27(金)赤坂BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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