徳島発3ピース・ガールズバンド、血眼(ちまなこ)の1stミニアルバム『whiteout』に迫る

血眼 | 2015.04.08

 ヒリヒリとした危うくも強靭なエモーション、初期衝動的な瑞々しさと遮二無二な疾走感を目一杯にたたえたこのバンドの音楽に激しく心を揺さぶられた。バンドの名は血眼(ちまなこ)。徳島発の3ピース・ガールズロックバンドだ。“ギター女子最後の切り札”との呼び声も高く、今年の最注目バンド筆頭となること間違いなしの彼女たち。4月8日には初の全国流通盤となる1stミニアルバム『whiteout』 をリリース、その勢いはますます加速してゆくだろう。今作に込められた熱の源泉、音楽に向き合う3人の姿勢を探るべく、現在、地元徳島を中心に活動する彼女たちにメールにてテキストインタビューを行なった。たっぷりと綴られたその回答に血眼の魅力の一端を読み取っていただけたら幸いだ。

EMTG:1stミニアルバム『whiteout』のリリースを控えた今の心境はいかがですか。
全員:前作の『雨、五月』は自分たちで制作したものですが、今回はたくさんの方達の力を借りてできた1枚です。これからを進んでいく私たちにとってはとても大きな一歩になるだろうと、どきどきワクワクしているのが正直な気持ちです。聴く人それぞれが、それぞれの物語を浮かべながら聴いてくださると嬉しいです。
EMTG:収録されている全9曲はそれぞれいつ頃に作られたものなのか、また、この9曲の選曲基準についても教えてください。
全員:この中でいちばん最初にできたのは「涙のブラウニー」で、新しいのは「光の部屋」と「ハイドランジア」です。でも「涙のブラウニー」は学生の頃に作っていたものなので、血眼として初めて生まれた曲は「青二才」です。「八月十日」は前作のときにはすでにあったのですが、今回、初収録しました。「she ″S″」と「しし座流星群」は『雨、五月』が発売されてからすぐにできた曲で、他の曲より少し趣向を凝らした展開となっています。昨夏に作ったのが「ルビースパークス」。去年の夏に作り、初の三拍子として、とても新鮮味のある曲になりました。「溶ける」は昨年の1月に作った曲でいちばん今の私たちを表現できる曲だと思います。
EMTG:血眼の曲作りはどのように行なわれているのでしょう?
全員:スタジオでたまたま鳴らしていた音がそのまま楽曲として生まれることもありますが、せつこが弾き語りしたものをiPhoneで録って私たちに送ってくれて、そこからセッションしていくことの方が最近は多いように思います。少しずつ展開を考えながら楽曲ができあがっていくのが楽しいです。
EMTG:サウンド作りで心がけていることは。
せつこ:雨のように優しく包み込む。且つ、感情的で、守れる強さを持った音を鳴らしたいと、いつも思っています。
ばんどう:自分の気持ちいい音かつ血眼のサウンドを意識しています。せつこの声を邪魔しない所を心がけて弾きながら、なおかつベースで魅せられるところは魅せたいです。
きゃまだ:ドラムは弦楽器や歌と違って点で音を表わさなければならないので、ひとつひとつの太鼓の音に気持ちを乗せることを心がけています。例えば「ルビースパークス」であれば曲の中で優しかったり激しかったりがあるので、音量だけでなく芯のある優しさや激しさを表現できればなと。点で表わせることの利点を生かして足音や風や雨の音、鼓動や血の巡りや心の変化など、どんなことでもドラムで表現できるようになるのが今の目標です。
EMTG:血眼のレコーディング風景についても教えてください。今回はどんなふうに進みましたか。
全員:前作も今回も、スタジオで3人一緒に録りました。いつも通り…でも少し緊張しつつ。顔を伺いながら演奏していると、たまに絶妙な顔をしているときがあるので、そういうのが面白かったです。
EMTG:こんなにも心を掻きむしる音楽を生み出す、みなさんの原動力となっているものはなんでしょう。
せつこ:映画を観て曲を作ることが多いのですが、それも含めて、私が観たもの、感じたこと、全てです。毎日が楽しいなんてことはないし、沈んでいるときに、潜り込める場所のようなバンドでありたいと思います。
ばんどう:私には無い感性を持ったせつこの作る曲が好きです。少しでもその曲の世界観、空気感を出せるようにいつも心がけてます。原動力は、三人で音を鳴らすのがとてつもなく気持ちがいいので、それですね。その音を鳴らす曲が、せつこの作った曲でというのがなおさら力を引き立てます。
きゃまだ:女だからこそというより、私たちだからこそできる音楽を目指して、聴く人の心になにかが響く音を鳴らしたいと思っています。世の中悲しいことだけではありませんし、もっと視野を広げて世界を見てみたくなるような、元気が出るというよりはハッと景色が色付くような、そんな音楽が作りたくて、音楽と出会ったばかりのあの頃の自分にも語りかけています。私もたくさんの出会いがあったからいまがあるんだと。昔の自分が原動力かもしれません。
EMTG:リード曲「涙のブラウニー」には特に血眼の魅力がギュッと凝縮されて詰め込まれていると感じます。サウンドの疾走感、溢れるエモーション、逃げ場のない狂おしさや、純粋だからこその残酷さ。サビのリフレインが頭から離れません。
全員:ありがとうございます。この曲は高校のときにせつこときゃまだとで作った曲なのですが、当時ならではの初期衝動や青春が込められた1曲だと思います。いまはそれを血眼として取り込み、また違った景色が見られるとおもしろいなと思います。
EMTG:また、「涙のブラウニー」のビデオクリップはラストが衝撃的でした。
ばんどう:映像は見る人の見方により物語が変わります。その見た時の、その人の捉え方で毎回変わるようになってます。
きゃまだ:高校のときに作った曲なので最初はその印象が強く出てしまって、どういった物語にするかでとても悩んで議論したのですが、最終的にガラッと変わったこの物語が生まれて本当に感激しました。でもハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは見る人たちのご想像にお任せしたいです。
EMTG:収録された全9曲の中でみなさんそれぞれに特に思い入れのある曲、あるいは推し曲を教えてください。
せつこ:どれも思い入れはありますが、全体の流れで、最後の「溶ける」は重要な役割を果たしていると思います。捉え方は様々ですが、その物語の終わりが“これまで”なのか“これから”なのか。そのときの受け止め方で受け止めてほしいです。
ばんどう:「ルビースパークス」です。初めてのベース始まりの曲になっております。カッコイイっす。テンポチェンジもよくありますし、力強さと優しさが混じってる曲になってます。なんせ、カッコイイのでぜひ聴いてください。
きゃまだ:私は「しし座流星群」が好きです。“あの時泣いていた君のためだけに唄うよ”という始まりとともにたくさんの景色が登場して、聴いていてとても心地いいです。この曲だけ唯一、私が普段所持しているスネアを使っていて、それは父から譲り受けたものなのですが、それがこんなにいい音を奏でてくれて本当に嬉しかったです。最近あるような強いスネアではなく、木の独特のまぁるくて儚い音がこの曲にぴったりで感動しました。
EMTG:リスナーの方には『whiteout』という作品をどんなふうに受け止めてほしいですか。
せつこ:この一枚は一本の映画だと思って聴いてほしいです。様々な感情や場面、登場人物や始まりと終わり、それがどんなものなのか聴いた人にしか分からないけれど、それが、聴いた人の人生の一部になればいいなと思います。
ばんどう:せつこの世界観。歌詞、空気感、ライブでしか見れないもの。ライブでは、その場の、空気、温度、湿度、匂いなど生のものを感じて貰いたいですが、逆にCDでしか気が付かないものもあると思います。『whiteout』では細かなニュアンス、歌詞を感じ取りやすくなってます。それぞれのシチュエーションでまた違った映画が流れてくると思います。
きゃまだ:「ハイドランジア」から「溶ける」という流れはライブのときでもよくやっているのですが、9曲の流れになることにより、いっそうエンドロールの情景が浮かべられるなと聴いていて感じました。それがリスナーのみなさん一人一人にあるといいなと思います。
EMTG:ところで雨はお好きなのでしょうか。歌詞に“雨”という単語がよく使われていますし、オフィシャルHPのプロフィールにも“「雨の日に聴きたくなるバンド」「言葉を降らせるバンド」を目指している”とありました。
せつこ:雨は大好きです。一般的にすごくマイナスなイメージが強いですが、私はどちらかと言えば晴れの方が苦手なので、そういった場面で聴いてほしいというのをすごく願ってます。雨の音のように、心地よく、また、感情的に音楽を作りたいといつも思ってます。「雨の日に聴きたくなるバンド」がキャッチコピーですが、それは決して悲しいだけの意味ではないというのを伝えたいです。私たちの音を聴いて景色が広がる感覚を、体全体で感じて欲しいです。
EMTG:みなさんが雨の日に聴きたくなるバンドや曲ってどんなものですか。
せつこ:スーパーカーの「LAST SCENE」です。
ばんどう:金沢のバンドでNINGEN OKというバンドがいるのですが、無機質、緊張感、優しさ、を感じさせてくれるのでよく聞きます。
きゃまだ:私は、いかにも雨を題材とした音楽を聴いてしまいます。アニメも好きなのでサウンドトラックを聴くことも多いです。でもそれは悲しい音楽ではなくて、ほんのちょっと切ないけど元気になれる不思議な感覚が好きで聴いています。
EMTG:『whiteout』というアルバムタイトルに込めた意味を教えてください。
全員:ホワイトアウト現象というのは雪や雲などの影響で視界が白一色となり、方向や高度や太陽の位置が判別出来なくなる状態のことで、一見、最悪な状態ですが、見方を変えれば、先が見えないならどこまでも行けるという意味です。先を見て急ぐのではなく、立ち止まって見てみると、この世界は神秘的なものであふれていることに気付きます。そういうものに気付きながら生きていきたいという想いも込めています。
EMTG:今後、どのようなバンドになっていきたいですか。野望をドーンと掲げていただいても!
全員:女3人で、というシンプル性と夢はもっと上へ繋がると思っています。 聴く人によって浮かべる物語がそれぞれある、本当に映画を見ているようなバンドになっていければいいなと思います。あとは目指せSMAPと対バン!ですかね(笑)。

【取材・文:本間夕子】

tag一覧 シングル 女性ボーカル 血眼

リリース情報

パノラマパナマタウン『Hello Chaos!!!!』

パノラマパナマタウン『Hello Chaos!!!!』

発売日: 2017年06月07日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: MASH A&R

収録曲

1. PPT
2. リバティーリバティー
3. エンターテイネント
4. パン屋の帰り
5. odyssey

リリース情報

whiteout

whiteout

2015年04月08日

redrec / sputniklab inc.

1.光の部屋
2.ルビースパークス
3.涙のブラウニー
4.She“S”
5.八月十日
6.しし座流星群
7.青二才
8.ハイドランジア
9.溶ける

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お知らせ

■ライブ情報

血眼 1st Mini Album「whiteout」リリースTOUR
2015/05/10(日) 高松DIME
2015/05/11(月) 大阪Pangea
2015/05/15(金) 福岡Queblick
2015/05/16(土) 岡山Pepper land
2015/05/22(金) 神戸ART HOUSE
2015/06/06 (土) 京都MOJO
2015/06/14(日) 新宿レッドクロス
2015/06/15(月) 下北沢SHELTER
2015/06/16(火) 仙台enn3rd
2015/06/18(木) 札幌スピリチュアルラウンジ
2015/06/28(日) 徳島GRINDHOUSE

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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