“ポップ”を土台に、自由自在に空間を操るバンド、sumika。新作インタビュー

sumika | 2015.06.08

 sumikaがミニアルバム『Vital Apartment』を完成させた。肩の力を抜いて聴けるラヴソングから、ライヴが楽しみになるラテンノリのパーティチューンまで、幅広い楽曲が収録されているが、そのどれも日常が描かれていて、すっと入り込みやすい。“ポップ”からブレないのがただひとつのルール、とでもいうように、とても自由なのだ。ライヴも、サポートメンバーを入れたり、コラヴォレーションしたり、二度同じものはない、というような仕掛けになっている。このたび、サポートメンバーから正式に小川貴之が加入。ますます面白いバンドになっていきそうだ。

EMTG:結成は2013年と最近ですが、前身バンドがあったんですよね。sumikaとして、何かコンセプトを持ってスタートしたんでしょうか?
片岡健太(Vo,G):前のバンドが活動休止して、最初のメンバーが、僕とギターとドラムの3人だったんです。良くも悪くも不完全、3人だけではライヴが出来ないっていう状態からはじまって。数字で言っちゃうと70%、残りの30%何で埋めるか……ベースを入れればわかりやすいんですけど、映像作家を入れるとか、写真家を入れるとか、いろんな芸術家とコラヴォレーションするって楽しいっていうことに気付いて、sumikaはそれを武器にしていこうと決めて、活動を開始しました。
EMTG:そんな中で、小川さんが正式メンバーになった理由って?
片岡:ライヴによってメンバーが変わるんですよ。ベースも6人が入れ替わり立ち替わりで、ゲストメンバーっていう形で毎回紹介していて。その中でもsumikaというチームに入れてやりたいと思えるメンバーが見つかったっていう。だから、これからもコラヴォレーションをしたい気持ちは変わりません。ホーン隊を入れたりヴァイオリンを入れたり、大きなライヴではそういう編成でもやっています。
EMTG:マイナスをプラスに変えるという?
片岡:そうですね。メンバーが足りているバンドは、いつも100%でできると思うんです。だけど僕たちはそもそもが70%で、試行錯誤した上で、たまに50%が出たり、80%が出たり、120%も150%も出る、そういう化学反応を楽しんでいるので。
EMTG:そもそも、メンバーが足りないという現実と、いろんな楽器や芸術家を入れて、自由に音楽をやりたいっていう思いと、どっちが先だったんでしょう?
片岡:仮にベースがいても、オーケストラをバックにやりたいとか、ライヴペイントと一緒にやりたいとか、元々そういう気持ちはあったんですけど、まさか3人ではじめるとは思いませんでしたね。
EMTG:柔軟性がありますよね。
片岡:いやあ、ギリギリでしたよ。それでもやりたい!って考えたら、どんどんいい方向に進んで。足を止めなかったのが良かったと思います。
EMTG:小川さんは、サポートという立場の時に、どういう視点でsumikaを見ていましたか?
小川貴之(Key,cho):面白い企画をするんですよ。周りにはないことを実現出来てしまうようなアイディアが豊富で。“sumika familia”っていう企画がありまして、それはワンマンライヴではなくて、いろんなバンドも出るし、絵を描いたりモノを作るアーティストも同じ場所に出るっていう。それが僕は好きで。クオリティが高い大人が本気でやる文化祭みたいなんですよね。そこにいるお客さんって、みんなニコニコしているんです。音楽プラスαで化学反応を起こして、みんなが笑顔になって、元気で仕事も頑張れるって言って帰っていくんで、そこが素晴らしいと思いました。
EMTG:より、深くコミットしていきたいと思いました?
小川:思いましたねえ。常にメンバーがいない不完全な状態なので、支えたかったんですよね。
EMTG:音楽に関しては?
小川:王道を攻め込む勇気があるというか。王道の音楽って、他の音楽と混ざると、評価の争いの中で落ちちゃったりするんですけど、sumikaは胸を張って、王道の場所でも表現出来ますよって突き出しているように見えて、それが魅力的で。みんなと似ているようだけど、sumikaはいいねって言われる音楽だと思います。そこに自分のピアノを加えたいっていう。
EMTG:王道って、やり甲斐はあるけどオリジナリティを出すのが大変ですよね。しかもピアノは、王道中の王道の楽器だし、勝負じゃないですか?
小川:勝負ですね。片岡さんが作る言葉が好きなので、そこに合わせた情景を僕のピアノで見せられたら、僕らしいピアノにもなるし、sumikaらしいピアノにもなるかなって。
EMTG:コラヴォレーションなど斬新な試みをしながら、音楽は王道を目指すっていうスタイルが、興味深いですね。
片岡:基本的に、いいものはいいっていう。僕、小学生の時にヒットチャートをラジオで聴いて、いいなって思ったらCDを借りに行くっていうのを毎週やってきたので、そこで得たものが大きくて。J-POPって、いろんなジャンルが組み合わされているじゃないですか。ラテンぽいけどJ-POP、EDMっぽいけどJ-POPとか。だから、良いメロディ、良い歌詞で勝負できていれば、アレンジは何でも良いんじゃないかなって。
EMTG:バンド名にこじつけるわけじゃないけど、住処に王道の音楽っていう土台があってこそ、いろんな人がやって来て、コラヴォレーションできるんですね。
片岡:絶対そうだと思います。
EMTG:バンド名の由来って何なんですか?
片岡:単純に僕、建築物が好きだっていうのがあるんですけど、前のバンドの話にも遡ると、「sumika」っていうイベントをやっていて、いいものはいいと言える空間作りっていうテーマだったんです。ライヴハウスは変わっても、モンゴルの民族のゲルみたいに、僕たちが行った場所が住処になるようにしようと。自分たちが世界中で一番好きなものが集まっている場所って、家じゃないですか。そういう落ち着ける空間に出来るように名付けました。門は常に開きっ放しで、くつろげるような空間を作りたいなって、たくさんの人が集まってくれたらいいなって。
EMTG:そういう考えも関わっていそうですけど、歌詞も日常を描いていますよね。
片岡:空想で歌詞を書くことがなくて。頭の中だけで済んじゃうことって、他の人とは共有出来なかったりすると思うんです。目に見える、半径2メートル以内の世界で起きていることを書いているから、ここに行った、ここを見てるって言い切っている、具体的な歌詞になりますね。10人聴いて、10人が違う想像をして、自分の中で答えを見付けて下さいっていう歌詞はあまり好きじゃなくて。こういう考えを持っているんですよって明確に提示しないと、1%も伝わらないんじゃないかなって思うんです。
EMTG:アレンジが自由なだけあって、楽曲のヴァラエティは豊富ですけれど、メンバーみんなでアイディアを共有しているんですか?
小川:常に共有はしていますね。こういうことを考えています、って。
片岡:全員がフォワードなんで、こういうことをやりたいってバーって出して分母を多くした上で、聴きやすいバランスに引き算していくんで、最初は全員がやれることをやるんです。でも、全員がやりたいことをやったらプログレ見たいになるじゃないですか。演奏力をひけらかすような。それをやれる実力は持っていたいですけど、いろんな意見を出したうえでこうなっている、っていうのがカッコいいんですよね。
EMTG:まとめるのに時間が掛かりませんか?
小川:案外すんなりいきますよ。曲が一番大事なので、自分のフレーズのアイディアもすんなりひっこめるんですよね。
EMTG:ほんと、メンバーみんなで楽しんで作っている様子が伝わってきます。
小川:はい。より良いものを作りたい欲があって。何度も何度も、これはどうかな?ってやっている時間が、僕は凄く好きなんです。今回の制作期間も、みんな寝ないでやっちゃうくらい楽しくて。
片岡:僕、いかに良いものが出来ても、つまんなそうにやってると、ライヴも見る気がなくなっちゃうんですよ。カッコ付けなきゃいけないとか、クールでいなきゃいけないとか、キャラクター設定もあると思うんですけど、僕らは自然体でいたいから。
EMTG:でも、楽しみ楽しませる努力は惜しまないですよね?
片岡:はい。常に遠足の前日みたいな感じです(笑)。で、遠足はライヴ。そういう感じです。

【取材・文:高橋美穂】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル sumika

リリース情報

Vital Apartment.

Vital Apartment.

2015年06月10日

[NOiD] / murffin discs

1.Amber
2.チェスターコパーポット
3.マイリッチサマーブルース
4.rem.
5.茜色の群青
6.グライダースライダー

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お知らせ

■マイ検索ワード

●小川貴之(Key,cho)
水彩筆ペン

音楽の作業の合間に、最近絵を描くようになって。筆ペンって、よく黒はあるけれど、色が付いているものもあるって聞いて、さっきamazonで買っちゃいました(笑)。

●片岡健太(Vo,G)
白井健三

体操選手の。ドキュメンタリーで、体操部の話で、白井君以外のメンバーも取材されていたんですけど、高校一年くらいから世界に出ている白井くんのようなスターもいるけれど、普通の体操部で、それでどんなことをやってる人か気になって。あの年齢で彼の名前が付いた技があるなんて凄いですよね。


■ライブ情報

「Vital Apartment.」Release Tour!!
2015/07/10日(金)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE ~ONEMAN~
2015/07/20日(月・祝)名古屋 APOLLO BASE ~ONEMAN~
2015/07/24日(金)渋谷CLUB QUATTRO ~ONEMAN~

2015/08/ 07(金)宇都宮 HEVEN’S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2
2015/08/20(木)水戸 LIGHT HOUSE
2015/08/21(金)仙台 MACANA
2015/08/28(金)神戸 太陽と虎
2015/09/11(金)広島 NAMIKI JUNCTION
2015/09/12(土)福岡 Queblick
2015/09/18(金)新潟 Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE
and more…

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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