武田と哲也、結成10周年のDebut mini Album『LOVE TRACKS』

武田と哲也 | 2016.10.03

 お洒落で大人なアーバンサウンド。Skoop On SomebodyのTAKEとゴスペラーズのリーダー村上てつやによる、ジャパニーズ・セクシー・ソウル・デュオ、武田と哲也がDebut mini Albumを発表した。
ソウル、ファンク、R&Bといった甘茶なブラックミュージック好きには、とりわけたまらない仕上がりで、ジャケット写真にも思わずニヤリとしてしまう。日本におけるセクシーソウルミュージックの伝道師としてもキャリア豊富なお二人に早速話を伺ってみた。

EMTG:『LOVE TRACKS』、ずっとループして聴きたい素敵な音ですね。SOUL POWERを率いるソウル・トライアングルのボス・鈴木雅之さんから「何かユニットやれよ」と指令を受けて、結成10周年を迎えたわけですが、当時、“結成した”という意識はあったんでしょうか?
村上てつや(以下:哲也):将来的にCDデビューするといったレベルで“結成”と思っていたかというと、そりゃないです(笑)。いつか何かという淡い思いはあっても、本当にそれをカタチにすることの大変さは重々わかってるし。ま、パーマネントっちゃパーマネントだけど、武田と哲也(以下:武哲)として会ってるのは年に4、5日。結成10周年なんて言ってもらってるけど、ただ生きてただけだという話で(笑)。
TAKE(以下:武田):まったくその通り。
哲也:業界でお互い生き残っていられたのも、本体あってのことだし。
武田:そうだね。黒ぽん(黒沢 薫)なんかが、「楽しみにしてるから。思いっきりやっちゃってね」と言ってくれるのがうれしいですよね。武哲の立ち位置ってそういうことなんだなとも思ったし。
EMTG:そもそもは、SOUL POWERの賑やかしといったニュアンスが強かったんでしょうか?
哲也:マーチンさんから命名されたのはSOUL POWER1回目の打ち上げの席。そのときは、新しいイベントが成功裏に終わったお祝いムードもあったけど、じゃあ、次どうするんだという不安もどこかに漂ってた。そこに対するマーチンさんなりの打開策というか、武哲みたいにユニットを組ませるようなカタチにすれば、グループでやってるのとは別のアプローチが思いっきりできるんじゃないの? という提案だったと思うんです。なのに、翌年マーチンさんと黒沢が組んだエナメル・ブラザーズのシングル「She’s My Girl」(07年)に、武哲としての「母に捧げるバラード」を入れたとき、マーチンさんなんて言ったと思います? 「俺、オマエらがこんな真面目にやるとは思わなかったわ」ですよ(笑)。
武田:僕たちとしては、どっちかというと、やらざるを得なかった感じなんですけどね(笑)。
哲也:でも、ああいう他にはないカタチでジェームス・ブラウンをトリビュートできたこと、つまり、JBナンバーを歌うんじゃなく、日本語のソウルとしてそれができたことは、あの時点で確実に小っちゃな自信にはなったんです。「ただ歌ってれば、お客さんが喜ぶっていうのは大間違い」という鈴木雅之イズムを、遊びながら実感する機会でした。それが、最終的に今回につながったわけだから、ありがたいことです。
EMTG:この10年間の活動というと?
哲也:『SOUL POWER presents"シルクの似合う夜"』というライブを、3年に2回くらいのペースで。あとは各種イベントにちょこっと参加したり。
武田:ゴスペラーズの20周年があったあたりでは、さすがにこっちの活動はできないしね。
哲也:その少ないライブのなかでも、今回収録した「LADY CANDLE」と「HEAVEN」は、今よりはボヤンとしたカタチですがオリジナルナンバーとしてあったんです。それに対するお客さんの反応もなんとなく感じてたから、今回のテイストに舵を切れたというところはありました。
EMTG:ジャパニーズ・セクシー・ソウル・デュオ! パワフル系じゃないほうが、お互い心地よかったんでしょうか?
武田:音楽やってないときも、哲也といるとゆったりとした時間が流れるんです。そのムードが自然に音になればいいなとはなんとなく思ってましたね。もちろんコスプレはしますが、無理した音にはしたくなかった。出来てみて、やっぱこうだよねとあらためて思いましたね。
哲也:お互い語らずとも、そういう方向に流れていきました。
EMTG:すべてにおいて制約なく曲作りができたんじゃないかなと想像できる音でした。
哲也:どれかをシングルにしようなんてことは一切考えてなかったです。ひっくり返して言うと、どの曲も同じ運びでいいと思ってました。イントロでヒューヒュー言って、間奏でまたヒューヒュー言って、大サビの1行目はとりあえずハモろうね、みたいな(笑)。
武田:金太郎飴だよね、やり口が(笑)。
哲也:そういうふうに聴いてほしいというメッセージ。いや、メッセージというほど崇高じゃないな(笑)。もちろん、今からでもタイアップ大歓迎ですけど、作ってるときは一瞬たりとも考えなかった。そんな可能性がチラついてたら、イントロ、間奏でヒューヒューなんて言ってられないですよ。ある意味ムダですから(笑)。
武田:サビの歌録ってるより、そのムダに時間かかったりしてましたからね(笑)。
EMTG:そんなレコーディングは、ある意味貴重だし、本当に楽しそう。
哲也:単純な話、ボーカリストとしてお互い尊敬しているので、たとえば、俺の書いたメロディをTAKEはどう歌うんだろう? ってすごく興味があるわけです。あ、思った通りだった、全然違うパターンできたか、と思う瞬間瞬間をいちいち楽しみながら駆け抜けられました。音符に起こせば他愛ないメロディでも、このタイミングでいくとグッとムードが出るよねというようなところを、僕らはずっと究めようとしてきた。そこにおけるお互いのよさやクセもわかったうえで、無理のない範囲で寄せているところもあるんです。サックリやっているようでいて、実はこだわったトラックが詰まってるんです。
武田:哲也のスゴいところは、どんだけ難解なメロディでも、絶対にちゃんと噛み砕いて、聴き手が受け取りやすいようにきれいに包装して差し出すところ。それは、積み上げてきたスキルでもあるし、ま、彼の優しさですよね。ライブでの姿からもわかってたんですけど、今回レコーディングで間近にそこが感じられたのが面白かった。本当に職人なんですよ。
哲也:俺、めちゃくちゃなAメロみたいなの大好きだから、ウソ英語で歌ってるデモなんて、スタッフが聴いたら、「これ、どうすんの?」って心配になるようなのばかりなんですよ。そこから、日本語ハメたら最終的にこうなります、というところにもっていく。その実験と検証を、これまでさんざん積み重ねてきましたからね。「ひとり」(ゴスペラーズ:01年)にしたって、あんなめちゃくちゃなAメロはないと思うんです。あれが売れたから、今、言ってることにも説得力があるけど、そもそもああいう曲が売れるってどういうことだか今だにわかんない、俺(笑)。
EMTG:その話、めちゃくちゃ面白いですね。
哲也:今回はボーカリストの遊びとワザの部分がふんだんに詰め込めたと思うんですけど、スタッフ的にいうと“困った曲”は多かったと思います。ただ、TAKEの書いてきた「EASY LOVE」と「4U」が、曲の成り立ち的にはカッチリとしてたので、そこはすごく助かりました。
EMTG:ある意味、ポップスワイズですもんね。
武田:カッチリとしたものを崩すのが好きな僕と、崩れているものをちゃんとカタチにするのが好きなテッちゃん。アプローチの違いがよくわかりました。
EMTG:シンセのヒューヒューといい、ワウ・ギター、キラキラのエレピ、ディレイ・ストリングスといい、これぞなサウンドも心地いいですね。アレンジのGakushiさん、本間将人さん、K-Mutoさんも、楽しまれたでしょうね。
哲也:みなまで言うな、でわかる人たちですからね。想像通り、想像を超えるものを作ってきてくれました。それによって気持ちよく歌えたというのは事実ですね。
EMTG:ラブソングに特化した歌詞についてはいかがでしたか?
武田:「4U」を書いたときに思ったのは、哲也がちょっといい人ぶってたら、女の子は絶対可愛いって思うだろうなということ。普段、急に真面目なことを言い出したりする哲也キャラを使って、私のこと本気なのかな? と思わせる歌詞にできたらいいなと思ったんです。そういう意味では、ステージ以外でお互いに培ってきたものが出てます。たとえば、打ち上げで酔っ払うと、哲也はDJブースから出てこない。そういうシーンも、「EASY LOVE」に入ってたりします。
哲也:「LADY CANDLE」で、おまえだけを離さない、なんて、めちゃくちゃオラオラしてるのに、それに続く「4U」でいきなりいい人になっちゃう。そこが、このアルバムのミソかもしれないですね(笑)。
武田:手の内がバレちゃってるわけだよね。
EMTG:ジゴロのようなスゴくセクシーな人だと思ってたら。
哲也:実はありきたりな感じっていうのがね。
EMTG:そこは、笑っていいですよね?
哲也:まさに、笑っていいところです(笑)。
EMTG:「EASY LOVE」のフェイク合戦は、どうやって録ったんですか?
哲也:プリプロでTAKEがバーッといったのを受け取って、ちょっとだけ編集してスペースを作ったところに、僕がフェイクでからんでいきました。
武田:見事なパズルを見せてくれました。
哲也:TAKEはいろんなフレーズを出してくるし、合わさったときの声の倍音感もいつもと違うから、ホント、楽しいんですよ。音楽って常に反応だから、こうくれば、が変われば、こういくもまた変わってくる。金太郎飴とはいえ、瞬間瞬間では、けっこういろんなツマミが動いてましたね。
EMTG:「NITE CRUISE」は、対照的にテンポもグッと落ちてロマンチック。シュビドゥ、というコーラスも素敵なんですが、星の明かりがあなたを照らす、というところでシュビドゥのお尻がドゥドゥドゥドゥ~、と下がっていくじゃないですか。
哲也:あれはね、星座を表現してるんです。
EMTG:そうなんですか! 素敵すぎて笑っちゃいました。
哲也:絶対わかんないよなと思いつつ(笑)。
武田:何なんですか? その星座は。
哲也:それは、あなたの好きな星座を思い描いてください、です(笑)。
武田:おお! それ、いいね。
哲也:3コーラス目に及んであれをやるっていうのは、J-POP的に言うとムダ以外の何物でもないんですけど。
武田:やりたかったんだね(笑)。メジャーで20数年いろんなバランス感覚を養ってきたこの期に及んで、中2的なことをやるという、それがいいところかも。
哲也:そうか。これ、中2病なんだ!
EMTG:往年の名盤をオマージュしたジャケットもインパクトあります。
哲也: DJをやってたソウル仲間が、『ALWAYS 三丁目の夕日』のサントラのジャケットを手がけたりしてるんですね。今回は彼にお願いするのがいちばんいいだろうと。
武田:実はあのポーズ、ものすごく不自然な姿勢で、体が痛くなりました(笑)。
EMTG:バックが青というところに、もともとサーフィン仲間という匂いも出てますね。
武田:テッちゃん、絶対ヤバそうな人だよね。クルーザーとか持ってそう(笑)。
哲也:ダブルのスーツだからね(笑)。インナーの写真も含めて、トータルでのソウル感を楽しみながら作れました。
EMTG:10月5、6日には、東京と名古屋でライブも。
哲也:発売日当日なのが申し訳ないんですが、ぜひ曲の雰囲気を前もって知って、来ていただければと思います。
武田:イントロから歓声をもらえると、いい気分で盛り上がれるので、ぜひよろしくお願いします!

【取材・文:藤井美保】

tag一覧 武田と哲也 男性ボーカル

リリース情報

LOVE TRACKS[通常盤]

LOVE TRACKS[通常盤]

2016年10月05日

Ki/oon Music

M1. EASY LOVE
M2. NITE CRUISE
M3. LADY CANDLE
M4. 4U
M5. LOVE SOUND
M6. HEAVEN

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

SOUL POWER presents
“シルクの似合う夜 part5”

[東京公演]
2016/10/05(水) 東京・ディファ有明

[名古屋公演]
2016/10/06(木) Zepp Nagoya

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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