現実と格闘しながら前進を続けるKANA-BOONの最新作「Wake up」インタビュー

KANA-BOON | 2016.10.04

 2016年2月に3rdフルアルバ『Origin』をリリース。初の海外公演(香港・台湾)を含む全国ツアー『KANA-BOONの格付けされるバンドマンツアー 2016』では過去最大規模の約5万人を動員するなど、ロックバンドとしてのスケールをさらに拡大しているKANA-BOONから、ニューシングル「Wake up」が届けられた。ダイナミックなロックサウンドを志向した『Origin』の流れを汲む「Wake up」は骨太のサウンドと華やかな音像、そして、“現状を打破して、前に進みたい”という意志を込めた歌詞がひとつになったナンバー。現実と格闘しながら、常に前進を続けるKANA-BOONの現在地をぜひ体感してほしいと思う。

EMTG:まずはアルバム『Origin』のツアーのことから。これまでで最大規模のツアーになったわけですが、手応えはどうでした?
飯田祐馬(Ba):難しかったですね、かなり。ガムシャラにやってたんですけど、自分のダメなところが明白に見えてきて、悩みながらやってるところもあって。ライブを楽しむのは大前提だけど、思うような演奏が出来ないと楽しめないじゃないですか。徐々に良くなってきたけど「もっとやれた。もっと早く気付けたはず」っていう悔しい思いもありますね。
小泉貴裕(Dr):確かに難しいところはありましたね。今回のツアーはパワーにこだわっていたんですけど、ドラムの鳴り方だったり、バランスに関してはかなり試行錯誤していて。会場によっても聴こえ方が違いますからね。海外のライブも楽しかったけど、楽しみ過ぎたせいか、スティックを2回連続で落としたりして(笑)。
古賀隼斗(G):僕はすごく楽しかったですね。『Origin』のギターのフレーズはかなり難しかったし、足元(エフェクターなどの機材)を変えたところもあったから、最初はちょっと不安だったんです。でも、そこは楽しくクリアできたかな、と。
EMTG:海外ツアーに密着したトレーラー映像がアップされてましたが、谷口さん涙目になってましたね。
谷口鮪(V&G):そうですね(笑)。振り返ってみると、楽しい部分もあったし、悔しいところもあったっていうか。ただ、成長にはつながったと思うんですよ。「こういう悔しい気持ちにならないように、もっとがんばろう」と思えたというか…。ツアーの後でそういう気持ちになったのは初めてだし、ようやく地に足が着いてきたのかなと。海外もまた行きたいですね。ライブをやりたいのはもちろんですけど、自分の目でいろんな景色を見れるのもおもしろいので。
EMTG:そして10月5日(水)にはニューシングル「Wake up」がリリースされます。表題曲の「Wake up」はアルバム『Origin』のサウンド感を引き継ぎながら、さらにスケールアップした楽曲だなと。
谷口:「Wake up」を作ったのは『Origin』のレコーディングの時期に近かったんですよ。アルバムのときに目標に掲げていた力強いビート、ボトムが効いたサウンドは継続してるし、映画(「グッドモーニングショー」)の主題歌ということもあったから、さらに華やかさを出したいと思って。
古賀:サウンド全体のボトムがしっかりしてるから、ギターや歌も負けないようにやらないと華やかさが出ないんですよね。そこは意識しながらレコーディングしてました。
小泉:求められるサウンドは曲によって毎回違うんですよね。「Wake up」の場合は(胴が)深めのスネアを使っていて、きちんと振り上げて叩かないといい音が出なくて。細かいフレーズも多いからかなり苦戦しましたけど、広がりがすごくある、いい曲になったと思います。
飯田:僕は『Origin』くらいからレコーディングが楽しくなってきていて。自分から提示したフレーズが他の楽器と混ざる感じも気持ちよかったし、今回もかなり満足してますね。
EMTG:歌詞は映画『グッドモーニングショー』のことも意識しているんですか?
谷口:はい。映画のストーリー、シーンを思い浮かべながら書いたので。タイアップの曲を作るときの気持はいつも同じで、単に楽曲を提供するだけではなくて、その作品の一部でありたいし、映画を作ってる人たちと同じ感覚になれたらいいなと思っているんですよね。映画のことを歌いつつ、自分たちのことも歌うというか。「Wake up」はそのバランスがすごく良かったし、ライブでもまったく嘘偽りなく、真っ直ぐにやれるんですよ。
EMTG:映画の世界観が谷口さん自身のモードともリンクしていた?
谷口:そうかもしれないですね。この歌詞を書いているときは、ちょっとモヤモヤしている部分――アルバムの制作だったり、バンドの活動だったり――もあったので。そこから脱しようとする気持ち、新しい何かを求めている姿、ステージに立つ人間としてもっと発信していきたいという感じもちゃんと出せたというか。その瞬間をしっかり切り取れた感じがありますね。
EMTG:強い思いが込められた曲なんですね。なのにジャケットの写真は、谷口さんがまぶたに目を書いてるっていう、おもしろい感じなってますが(笑)。
谷口:どうかしてますよね(笑)。これはもうインパクトのみです。
飯田:CDショップに置かれたときが楽しみやな(笑)。
古賀:CD重ねないで、できるだけ広く“面出し”してほしいです!
谷口:(笑)僕はイヤがってたんですよ、最初。いいシングルに仕上がったのに、ジャケットのせいで曲の印象が変わるんじゃないかって。でも、メンバーやスタッフは「これがいい」っていうから……仕上がってみるといい感じだったから、良かったです(笑)。
EMTG:KANA-BOONらしいジャケットだと思います(笑)。カップリング曲の「LOSER」「Weekend」はいつくらいに制作した楽曲なんですか?
谷口:今年の5月くらいに制作をしていて、そのときに作った曲ですね。
古賀:うん。その2曲が最新曲です。
EMTG:新しい要素もふんだんに入ってますよね。まず「LOSER」はラップが取り入れられていて。
谷口:楽しくやらせてもらいました。ほんとはガッツリ1曲分やってみたいんですけど、まずは少しやってみようかなと。最近、(ラップが)ちょっとしたブームじゃないですか。だから自分も乗ってみようかなって。
古賀:流行りに乗ってんのか?!
EMTG:(笑)。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日)の人気をきっかけに、ラップに興味を持つ人も増えてますからね。ヒップホップにはもともと興味があったんですか?
谷口:いや、ぜんぜん。高校生のときにエミネムを聴いてたくらいで、日本のヒップホップのことはぜんぜん知らなかったので。KANA-BOONには早口で言葉を詰め込むような曲もありますけど、それも日本のロックバンドの手法の影響なんですよ。ただ、最近の日本のヒップホップにはすごく興味があるし、歌詞を書く人間として「負けたくない」という気持ちも強くて。初めてですね。ロックバンド以外のジャンルの音楽に対して「カッコいい」って思ったのは。音楽だけじゃなくて、人と人とのつながり方もすごくいいなって思うし。
EMTG:なるほど。「LOSER」からも現状を打破したいという気持ちが伝わってきました。
谷口:自分自身を奮い立たせているところはありますね。「Wake up」と「LOSER」は決意表明でもあると思うし、この2曲が書けたおかげでスッキリした状態になれたので。楽器もカッコいいですからね。
EMTG:確かにフレーズの絡み方がいままでとは違いますよね。
飯田:カップリングの2曲に関しては、アレンジがしっかり出来上がる前にレコーディングしたんですよ。「LOSER」の2(番の)A(メロ)のところで思い付いたフレーズを入れてみたら、「じゃあ、ここはブレイクにしよう」って構成も変わったり。自分が考えたフレーズで他の楽器のアレンジや構成が変わるのは初めてだったから、すごく楽しかったですね。「これが曲作りだな」って(笑)。もしダメだったら「それは良くないかな」って言ってもらえるし、思い付いたことはどんどん試してみようっていう感じなんですよね、いまは。
小泉:飯田がいきなり違うことやり出したから、ちょっと大変でしたけどね(笑)。
飯田:あ、ごめん(笑)。
小泉:(笑)でも、そのフレーズをきっかけに違う展開になったし、曲自体もさらにカッコ良くなって。
古賀:楽しかったですね。僕も挑戦的なことをいくつかやっているし、新調したギターも使ってみて。
EMTG:お、何を買ったんですか?
古賀:レスポールスタンダードですね。1956年の。
谷口:儲かってるんですよ、古賀(笑)。
古賀:いやいや、身を削って買ったんや! とにかく音がめちゃくちゃ良かったんですよ。
EMTG:素晴らしい。アップテンポでポップな「Weekend」はライブでも盛り上がりそうですね。
谷口:ライブ映えすると思うし、KANA-BOONっぽい曲ですよね。歌詞にも特にメッセージ性がないから、何も考えないで音楽を奏でることに集中できるんじゃないかなって。
EMTG:11月から12月にかけて東名阪で『KANA-BOON冬のワンマンライブ ~セットリストはぼく・わたしにまかせな祭~』(11月24日(木)東京Zepp Tokyo、12月1日(木)愛知Zepp Nagoya、12月8日(木)大阪なんばHatch)が開催されます。ファンのリクエストをもとにしたライブは初ですよね?
古賀:はい。アルバムを出した後のツアーはアルバムの曲が中心だし、そこにシングル曲を加えたら、他の曲がぜんぜんやれないんですよ。昔の曲とか、シングルのカップリングもライブでやりたいっていう気持ちはずっとあったんですよね、個人的にも。
谷口:まだライブでやったことがない曲もありますからね。
EMTG:ファンのみなさんには、ぜひレアな曲をリクエストしてもらって。
古賀:「僕がCDを出したら」(2013年にリリースされた初の全国流通盤)の曲とかもやりたいんですよね。そこはたぶん、お客さんと意志の疎通が取れてるんじゃないかと思ってるんですけど。
飯田:古賀的には、でしょ?
小泉:(笑)でも、初期の曲はやってみたいですね。
谷口:うん。音楽性は変わっていくし、それはすごく楽しいことなんだけど、ファンの立場に立つと「もともと持っていたものから離脱するのは寂しい」という気持ちもわかるので。そこに戻るわけではないけど、しばらく忘れてた初期の曲の良さを感じてみたいんですよね。その体験は、これから作っていく曲にとってもすごく重要だと思うので。

【取材・文:森朋之】

tag一覧 シングル 男性ボーカル KANA-BOON

リリース情報

Wake up[初回生産限定盤](CD+DVD)

Wake up[初回生産限定盤](CD+DVD)

2016年08月10日

Ki/oon Music

01. Wake up 
02. LOSER
03. Weekend

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

JFL presents LIVE FOR THE NEXT 2016 supported by ELECOM」
2016/11/12(土) Zepp Sapporo

KANA-BOON冬のワンマンライブ 〜セットリストはぼく・わたしにまかせな祭〜
2016/11/24(木) 東京 Zepp Tokyo
2016/12/01(木) 愛知 Zepp Nagoya
2016/12/08(木) 大阪 なんばHatch

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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