FIVE NEW OLD、コンプレックスが武器に変わった『BY YOUR SIDE EP』インタビュー

FIVE NEW OLD | 2017.06.20

 3rd EP『WIDE AWAKE EP』から早5カ月。神戸出身の4人組バンド、FIVE NEW OLDからメジャーデビューを飾る新作『BY YOUR SIDE EP』が届いた。ラウド、エモ、ポップパンク系のシーンで経験を重ねてきた彼らだが、今作に収録される4曲ではアーバンかつソウルフルなブラックミュージックをこれまで以上にフィーチャー。GReeeeNや私立恵比寿中学、関ジャニ∞などの楽曲を手がけた春日俊亮(A.F.R.O)を迎えて初の共同アレンジに挑戦したり、谷本大河(SANABAGUN.)がサックスで参加したりと、より豊かな音楽性へ歩を進めている。目下成長中の彼らに、メジャーシーンへ飛び出す心境やこれからのビジョンについて聞いた。

EMTG:新作『BY YOUR SIDE EP』を自分たちで評してもらうとどんな作品ですか?
HIROSHI(Vo・Gt):全体的にすごく正直なEPになったかなと。歌詞もタイトルも、ロゴとかアー写のデザイン面も、やりたいと思ったことを純粋に打ち出した作品ですね。
EMTG:これまでの盤と比べて違う点があるとしたらどんなところでしょうか。
YOSHIAKI(B):サウンドの中に、自分らのやりたいことをそのまま昇華して入れられるようになりましたね。前々作『Ghost In My Place EP』と前作『WIDE AWAKE EP』は自分たちでも未知な可能性を強く感じながら新しい挑戦をした2枚だったんですけど、今回は右や左に広げるよりも、今ある力でより進化したところを見せています。経験を積んで視野が広くなったからできたことだと思います。『BY YOUR SIDE EP』には聴く人に寄り添うって意味もありますが、僕らにとっても“そばにある”音楽っていうか、背伸びせずに新しいことにチャレンジできた4曲なのかな。
EMTG:サウンド的には、アシッドジャズ、R&B、ソウル、AORなどブラックミュージックの要素が強いですね。リード曲「By Your Side」ではゴスペルをフィーチャーしています。
HIROSHI:この曲は、今後僕たちがより多くの人の前に立てるようになったとき、みんなで1つになれるようなアンセムが欲しいなっていう思いから作り始めました。で、僕たちのスタイルでできるアンセムってなんだろうと考えてみたら、メンバー個々からいろんなアイデアが出てきて、まとめ上げるのがすごく大変だったんですよ。そこで俊くん(春日俊亮)にアレンジャーとしてアイデアをまとめる手伝いをしていただいて。その結果出来上がった「By Your Side」を聴いて、僕は「7年分の集大成になったな」って思ったんです。
EMTG:どういうことですか? FIVE NEW OLDの出自でもあるポップパンク色はあまり出てないようにも思えるのですが。
HIROSHI:確かにゴスペルやソウルがベースにあって、それをポップに聴かせる曲なんですけど、この4曲の中で「By Your Side」は一番ロックな曲だと思うんです。例えば、2サビ明けに表打ちでダンッ!ダンッ!ってドラムが入ってるところ。そこはN*E*R*Dの曲とかをモチーフに当初アレンジしていたんですけど、仕上げてみるとOasisのようなサウンドスケールの大きい、ブリティッシュロック的な鳴り方をしていて。パンク色は薄くなってるかもしれないけど、結果的に僕たちの原点にあるロックっていうものを、今の自分たちのスタイルで鳴らすことができてるなと思うんです。
HAYATO(Dr):「The Dream」は、僕らのルーツミュージックからしたら真逆な位置にある曲で。足して足してナンボやったところ、これは抜いて抜いて……という引き算の音楽なので。そういう意味では一番尖ってて、挑戦的なアプローチかと思います。
HIROSHI:このEPの裏ボス的な存在かもね。タイトルに「EP」と付いてる通り、シングルではないから、「By Your Side」の1曲だけ聴いても僕らのことはわからないと思います。1枚の作品として流れで聴いてもらって初めて意味を成すんじゃないかな。
EMTG:今作はTOY’S FACTORYからリリースされますが、メジャーデビューするにあたって意識の変化はありますか?
HIROSHI:正直、あんまり関係ないなと思っていて。自分たちを支えてくれる人が増えるだとか、プラス面はもちろんあるんですけど、一番大事なのはこの4人で何がしたいのかを常に明確にしておくこと。それに対して熱意を持って応援してくれるスタッフさんであれば、その人がインディーズであろうがメジャーであろうが駆け出しの人であろうが関係ないです。
YOSHIAKI:ただ、ひとつのスタートラインに立ったという気持ちは4人の中でありますね。前以上にバンドとしてちゃんとせなあかんなとは思ってます。メジャーってことは、よりたくさんの人に見てもらえるし、自分たちのやりたいことに対していろんな人が動いてくれるっていうことなので、ちゃんと足場を固めて、応援してくれるファンやスタッフの皆さんに損をさせないようにしたいですね。
EMTG:バンドとしてちゃんとしないといけない、というのは?
YOSHIAKI:ホンマ当たり前のことです。期日を守るとか、遅刻したらアカンとか(笑)。いろんな人に見られてるという意識が昔に比べて芽生えてきたってことですね。
EMTG:これによって大衆性を意識した曲が増えるということもないでしょうか。
HIROSHI:音楽的に変わるってことはたぶんないですね。エンタテインメントとして大衆的な消費物っていう側面はあるけど、それと同じくらい表現者は啓蒙する責任もあると思っていて。「これカッコいいでしょ?」って提示することと、求められていること、そのバランスをちゃんと取りたいんです。具体的に言うと、“ポップなメロディ”はバンドのコンセプトのひとつなんですけど、メロディが良いっていうのは聴く人に楽しんでもらうために絶対必要な要素。そのメロディを乗せるトラックでどれだけ遊べるか、そしてそれをカッコいいと思わせられるかが、これからやっていく上で重要なポイントだと思ってます。
EMTG:メジャーシーンへ来て、その先の未来にFIVE NEW OLDとして目指していることは?
WATARU(Gt):僕らにしか鳴らせへん音っていう唯一無二の存在感が生まれたらいいなとはすごく思います。
HIROSHI:そうやね。唯一無二になるためには覚悟が要るなと思ってて。僕たちは最初、HAYATOとYOSHIAKIが築いてたメロコアのコミュニティから活動がスタートしたんですけど、今はもう少し都会的なサウンドを鳴らそうとしてます。でも基盤となってるシーンとのつながりやスピリットは持ち続けてる。だから、僕たちはどっちともやれるのが強みでもあるんですけど、その反面「これしかない」っていう人たちと相対したときに負けるんちゃうかっていう、ある種のコンプレックスを抱えていて。
YOSHIAKI:うん。
HIROSHI:で、昨日たまたま読んだデヴィッド・ボウイのインタビューに「僕といえばこれ、というスタイルがない。ないからこそデヴィッド・ボウイでいられた」みたいな話があって、共感してしまいました。どちらにも行き切らない自分たちを受け入れる、それが唯一無二になるっていうことなのかなと。だから、どっちつかずなこの状況を僕たちがぶらしちゃいけないなって。
EMTG:コンプレックスが武器に変わるみたいな。
HIROSHI:そうですね。そういう瞬間が、今まさに見え始めてます。僕たちの居場所を作るために、メジャーというフィールドで思いっきり遊ぶことになると思います。
HAYATO:常に進化し続けていくバンドだと思うんです。1曲1曲、自分らのやりたい音楽をやっていって「ジャンルレス」っていう一言だけで片付けられないバンドになりたいです。
YOSHIAKI:4人のやりたいと思う音楽を、周りも受け入れてやらせてくれる。そういう純粋なことをどれだけ歳を取っても続けられることが僕の中の理想ですね。

【取材・文:鳴田麻未】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル FIVE NEW OLD

リリース情報

BY YOUR SIDE EP

BY YOUR SIDE EP

2017年06月21日

TWILIGHT RECORDS

1. Not Too Late
2. The Dream
3. By Your Side
4. Too Good To Be True

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お知らせ

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■ライブ情報

"BY YOUR SIDE EP" 発売記念インストアライブ
06/24(土) タワーレコード渋谷店
06/25(日) タワーレコード梅田NU茶屋町店

BY YOUR SIDE TOUR
07/21(金) 名古屋 ell.FITSALL
07/30(日) 新代田 FEVER
08/06(日) 仙台 enn2nd
08/18(金) 金沢 VANVAN V4
08/25(金) 福岡 Queblick

BY YOUR SIDE TOUR ONEMAN SHOW
08/27(日) 梅田Shangri-La

ネコフェス2017 くだけねこロックフェスティバル
06/25(日) 神戸地区ライブハウス10会場

夢チカLIVE VOL.121
07/01(土) 札幌 KRAPS HALL

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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