来年３月11日に日本武道館ワンマンライブが決定した打首獄門同好会。ロード・トゥ・武道館に向けて、１年計画が発表された。その一つが夏秋冬春の四季連続リリースだ。今回はその第一弾シングルとして、その名もズバリな『夏盤』が早くも届けられることになった。今年は新木場スタジオコースト公演を見事ソールドアウト、またフェスに出演すれば熱狂的に迎えられるなど、人気上昇中の打首を追いかけるべく、大澤敦史（Vo・Gt）に話を聞いた。バンド史上最大のタブーに斬り込み、本人曰く「こんなロックなCDを出すとは思わなかった」という今作について語ってもらった。

EMTG：今年３月に行われた新木場スタジオコースト公演は仕掛けもてんこ盛りで、ライブ自体も本当に素晴しかったです！　振り返っていかがですか？

大澤敦史（Vo・Gt）:ウチは従来から東京のワンマンは背伸びした会場でステップアップして、ワンマンでしかやれないネタを常に仕込んでましたからね。今年は会場の規模が大きくなったので、またいろいろやれることも増えて。今回VJを新しくしたり、仕掛けたものが総じてハズれなかったなと。それは来年の日本武道館にも活かせると思います。演出、演奏はいままでのワンマンの中でも一番伝えられたかなと。

EMTG：ええ。そして、今作は夏秋冬春の四季連続リリースの第一弾シングルになりますね。

大澤：今回の「糖質制限ダイエットやってみた」、「キレイエアー」は日本武道館企画が立ち上げる前に、俺が去年11月からダイエットを始めたり、「キレイエアー」も今年２月にツイッター上できっかけが生まれてできた曲なので、自然な流れでこの２曲になりました。

EMTG：なるほど。

大澤：ファンの間では次は何の食べ物なのか？と予想されるわけですよ。前作で虫歯になり、それから太ったので、ある意味自然な流れなんですよね。で、ダイエットにも成功したので、次は心置きなく食べ物の曲を書くかもしれない（笑）

EMTG：ただ、「糖質制限ダイエットをやってみた」はこれまで食べ物の曲が多かった打首からすると、かなりタブーに斬り込んだテーマですよね？

大澤：苦しいですね。さんざん麺類やご飯が好き！という曲を書いてきたのに、それを食べられないことに挑戦してるわけですから。今回のCDはおかしいんですよ。ダイエットの話をしているのに、ライブ音源でラーメンと米の曲（「私を二郎に連れてって」、「日本の米は世界一」）が入っているという（笑）　俺、こんなロックなCDを出すとは思わなかったですよ！

EMTG：（笑）では、「糖質制限ダイエットやってみた」は葛藤を抱えつつ、取り組んだと？

大澤：そりゃありましたよ。痩せなきゃいけない、でもこれを食べたい・・・ウソ偽りない葛藤の気持ちが込められてます。マジで二郎に連れてって欲しいですもん。だから、より歌う気持ちはエモくなってますね。糖質制限ダイエットしてるときに、たまに自分に許可を与えて食べた米は超上手いっすよ！　

EMTG：そもそもダイエットしようと思ったのは？

大澤：いやぁ、太ったからです（笑）。作曲は夜中が多いんですけど、パソコンに向かって頭を捻っていると、どうしても食べ物に手が伸びるんですよ。とりあえずお菓子を食べて作曲しようと。で、去年11月に人生最高体重をキープしちゃって。最近、体脂肪を測れる体重計があるんですけど、それに乗ったら、見事に「肥満」という表示が出て・・・。新木場スタジオコーストに立つ人間は、スマートじゃなきゃいけないと。それから糖質制限ダイエットに興味を持って、新木場までにマイナス６キロだなと。そしたらトントン拍子に痩せたので、これを歌にしようと。

EMTG：（笑）冒頭の「臨兵糖質制限皆陣烈大越闘」はお経っぽい歌い回しが新鮮でした。これは「臨兵闘者皆陣烈在前」の九字をモジってますよね？

大澤：そうですね・・・なぜこれをイジろうと思ったんだろう。「烈在前」は「烈大越闘」にしたら、“レッツ・ダイエット”になりました！

EMTG：きちんと掛かってるんですね（笑）。

大澤：そうなんですよ。イントロが寂しかったので、何か言いたいなと。歌詞の中で最後に出てきたフレーズがこれですね。多分、みんなライブでは覚えて来てくれるのかな（笑）　レコーディングでは叫んでみたり、いろいろ試したけど、最終的に妖しい雰囲気でいいのかなと。修行僧みたいな心情だったから、それが曲にも表れたんでしょうね。糖質制限って突き詰めると深いジャンルなので、歌詞に書いてないところまで詳しく調べました。専門的な見地も入れてもらって・・・「歯痛くて」でラップしてくれたDr.COYASSは、糖質制限ダイエットで30キロ痩せたんですよ。彼はケトジェニックアドバイザーという資格も取ってるんですよ。だから、アドバイスを求めて、「ケトン体」という言葉を歌詞に入れました。

EMTG：その言葉もすごく気になりました。

大澤：ここで説明すると、長くなるんですけど、つまりケトン体というのは体の中にある不要な脂肪の燃えカスみたいなもので。頭に糖が入らなくなると、ケトン体が糖の代わりをしてくれるんですよ。結果的に脂肪が糖の代わりとなり、脂肪を燃やしてくれるという。その辺の仕組みが面白くて。それを「ケトン体がWake Up」という歌詞に集約しました（笑）。

EMTG：勉強になります。そして、「キレイエアー」は新木場スタジオコーストで披露してくれて、そのときも大爆笑しました。曲調で空気清浄機の効能を表現するという。

大澤：経緯を説明すると、スタジオの空気がとにかく悪くて。それで空気清浄機を導入した写真をツイートしたら、フォロワーさんがシャープ公式アカウントに「このアーティストが使ってますよ！」とタレ込んでくれて。それにシャープさんが反応してくれたので、じゃあ、空気清浄機を歌にしよう！と。なにより「プラズマクラスター」という言葉を言いたい！と思って。

EMTG：（笑）このどストレートな曲名も最高です。

大澤：歌詞を作っていく中で、妙に響きが良かったから。パッと出てきたんですよね、“キレイエアー”って。何やねん、キレイエアーと思いますけど（笑）　で、汚れとキレイさを声を分担させて、表現しようと。

EMTG：その発想が斬新です！

大澤：ただ、ウチの女子がいざというときに声がカスカスになるんですよ（笑）　「キレイに歌えないと、説得力がないから！」って、レコーディングも日を改めたりして、ヘンなこだわりも詰め込まれてます。俺はいつもよりダミ声で歌っているし、女子２人にはいつも以上にキレイに歌ってもらいました。歌詞の流れと曲調は連動しているので、アレンジはすんなり行きましたね。ただ、曲調はシンプルにならざるを得ないので、これでいいのかな？と思いましたけど、ほかに手を入れる余地がなかったから。すごく素直にできた曲です。

EMTG：あと、今作は「私を二郎に連れてって」、「日本の米は世界一」のライブ・バージョンが２曲収録されてますよね。

大澤：それは新木場スタジオコーストの音源なんですよ。で、CDにURLが書いてあって、同じ音源の映像版をネット上で観ることができると。あの日を覚えている人も多いだろうし、我々の中では１、２位を争う人気曲ですからね。最近知った人も、この２曲をライブ映像で観れるのはいいんじゃないかと。

EMTG：わかりました。今年は来年の日本武道館公演に向けて、多忙な１年になりそうですね？

大澤：武道館に向けて、47都道府県を回りますからね。次はいつレコーディングするんだろうと思って。候補曲は頭に浮かんでいるんですけど、それをいつブチ込んでやろうかなと。退屈させないように、またいろんな仕掛けを考えてます。

【取材・文：荒金 良介】