never young beach メジャーデビューを飾る3rd ALBUM『A GOOD TIME』が紡ぐ物語は、しっかりと未来を見据えていた

never young beach | 2017.07.18

  7月19日にnever young beachが3rd ALBUM『A GOOD TIME』をSPEEDSTAR RECORDSよりリリースする。メジャーデビューというタイミングを前にして心構えを新たにした彼らの強い意思は、このマスター・ピースに十二分に込められている。何気ない日常のかけがえのなさ、そして、まだ見ぬ奇跡のような風景への憧れ。ソングライター・安部勇磨(Vo&Gt)がこのアルバムで紡ぐ物語は、しっかりと未来を見据えている。2017年の夏はnever young beachがずっと流れていた-そんな風にぼくらは思い出すだろう、いつかきっと。

EMTG:昨年6月にセカンド・アルバム『fam fam』をリリースした後ぐらいから、never young beachの認知度が一気に広がった気がして。写真家・奥山由之さんが監督したMV『お別れの歌』は楽曲も勿論素晴らしかったんですが女優・小松菜奈さんが出演したことも相まって、大きな評判を呼びましたよね。それ以外にもニュースな出来事が色々。バンドとしては、追い風が吹いて絶好調というような状態だったんですか?
安部:僕としては凄くフラットな気持ちで制作していました。バンドをいつやめてもいいし、逆にいつまでもやってたいし……みたいな。ちょっと俯瞰的に見てしまうというか。今も30になったらバンドやってないかもとか思うこともあります。いつやめてもおかしくないから、今、楽しまないといけないなって思ってました。
EMTG:注目が集まってきているのは自覚しつつも、冷静に今を楽しもうというマインドセットでいたってことですね。その感覚って新作の『A GOOD TIME』にも反映されてます?
安部:そうですね。でも、その刹那的な気持ちを感情に任せて歌とか声に込めると、過剰にエモーショナルで簡単な表現になっちゃうので。ただ共感や同調を呼ぶ音楽じゃなくて、なるべく言葉には距離というか、フラットな気持ちで「わかりにくいんだけど、誰にでもわかる」っていう微妙なラインで形にするにはどうしようかなっていうのは、今回のアルバムでは特に考えてました。
EMTG:4月に行われたワンマンツアー『April O’Neal』の追加公演を観に行ったんですけど、MCでギタリストの阿南(智史)さんの脱退危機があったことを告白していて。メジャー・デビューも決まって順風満帆に見えたけど、意外とバンドとしては切羽詰まってたのかなぁ、と。
安部:あぁ、そんなMCしてましたね(笑)。「辞める」って最初に言われた時は、意外と俺らもすんなり受け入れたんですよ。理由がしっかりしてたんで。「PAELLAS(ギタリスト・阿南智史が参加しているバンド。2017年9月にミニアルバム『D.R.E.A.M.』をスペースシャワーミュージックよりリリース予定)もあるし、自分の音楽活動に専念したい。それは今しかできないから」って言われて。
鈴木健人(Dr):最初はもちろん「エッ?」ってなったんですけど、理由が理由だし「まぁ、仕方ないかな」って。でもある時、フェスに出た帰りの車の中で俺と勇磨と阿南で自分たちのアルバムを聴き直してたんですよ。で、「あー、やっぱり阿南の存在ってデカかったな」って再確認して。
安部:単純に「もったいな」って思ったんですよね。こういう歌とリズムが合わさってるバンドってありそうでなかったよなって、自分たちのことを再発見したんです。それをきっかけに色々話し合って。僕も阿南のことはバンドに必要だと思うし尊重するから、お互いに歩み寄ろうって。今は全然問題なく仲良くやってます(笑)。
EMTG:今のバンドの雰囲気はアルバムのジャケットの楽しそうな様子からも伝わってきます。阿南さん、素敵な笑顔ですもんね(笑)。ジャケットもそうですけど、今回のアルバムは歌詞もサウンドも開放感に満ちた風通しのいい作品になっていますよね。“開(ひら)けている”というか。
安部:“開けた”っていうのは超意識しました。今までやってきたことをもう一度やるのは簡単だと思うんです。こういう歌詞の書き方をして、こういう曲を作ればこういう情景が浮かんで……っていうのは大体わかるから。でも、それをやっていても後退しかないし、昔の曲に勝てないんですよね。もちろん開くことに対しては葛藤もあったんですけどね。
EMTG:具体的には、どんな葛藤でした?
安部:自分の内側とか近場のことを歌うのが僕らの世界観でもあったし、カッコよさでもあったと思うし、僕もそれが楽だったり気持ちよくて。開けていくのってどうなんだろうって。でも、やっぱりそれは初期にしかできないことだったし、僕らはその時にしか出来ないことをちゃんと出来たんだなって自信が昔の作品を聴き直した時に生まれて。過去の自分たちに勝つためには3枚目は3枚目でしか出来ない僕らの今の歌詞の書き方とか曲の作り方をしなきゃいけないと思えたんですよね。だから、歌詞は今までだったら使えなかったような言葉を使うようにしたし、曲も昔よりは計算して……というかアルバムを通して、どういう風に聴いてもらいたいかとかを意識して作りました。
EMTG:確かに『fam fam』って、今聴き返すと安部さんのパーソナルな心情が歌われているコンセプト・アルバムのような趣があって、意外とヘビーでシリアス。対して『YASHINOKI HOUSE』は、もっと素直に音楽を鳴らす喜びに溢れたラッドな作品という印象。ローファイでサイケデリックなサーフロックというイメージがnever young beachの初期の作品からは感じられます。ポップだしカラッとしてるんだけど、どこか不気味でうす暗い部分もある。
安部:それこそ、3人でアルバムを聴き返した時に「『fam fam』って聴き疲れるね、でも『YASHINOKI HOUSE』はそうでもないね」みたいな話もしたんですよ。良くも悪くも僕らが全然わけわかんないままにやってた感じがモロに出てて、それが僕らの気持ち悪さとかポップさに繋がってたんだと思う。今の僕らにはこれまでやってきた時間があるから、その経験値を元に今の新しい気持ちとか僕らの今の流行りとかノリを作品にしてみたらどうなるんだろうって気持ちで作りたいって思ってました。
EMTG:過去2作と比べてサウンドがリッチになったという部分も、今作の大きな変化だと思います。ドラムは鳴りからして違いますよね。
鈴木:今までは東京のスタジオで録ってたんですけど、今回は最初の一週間は高崎にあるTAGO STUDIO TAKASAKIってスタジオで録音したんです。広いし、天井が高くて部屋鳴りが計算された作りになっているスタジオで、今までのレコーディングでは録れなかった音が録れましたね。あとは、ライヴとかも沢山やってきたし、チューニングも進化してるから、結果的に前の2作とはキャラクターが変わった音になった実感がありますね。
EMTG:録り音もそうですけど、安部さんのヴォーカルの表現力が明らかに上がってますよね。冨田ラボのアルバム『SUPERFINE』(2016)にゲスト・ヴォーカルとして参加した時も「こんな風に歌えるんだ」と驚いたんですが、『A GOOD TIME』では更にそこから進化していて、ソングライターとしての表現力を歌のうまさが更に後押ししてますよね。
安部:いやー、それを指摘してくれたのは、この取材が初めてです。正直、自分でも歌よくなったと思うんですよ(笑)。冨田さんとやってから自分のヴォーカルとしての力の無さに凄く落ち込んで、上手くなりたいなって単純に思ったんですよね。このままだと若いニイちゃんがただ趣味で音楽やってただけで、年取った時に何にもならないなって。やっぱり長く続けるためには上手くなるしかないと思って、ヴォイス・トレーニングに通うようになったんです。声の出し方が変わって、抜けとか張りが違うと思うんですよね。
鈴木:阿南が「今回のアルバムでいちばん成長したのは勇磨だな」って言ってたよ(笑)。
安部:なんだよそれ、直接言えよ、あいつ(笑)。
鈴木:でも、勇磨以外のメンバーもアレンジとか演奏とか、勇磨が予想していなかったことを提示できるようなレベルにならなきゃなとは思っていて。楽しくやるのもそうだけど、上手くなって色々表現できるようになりたいなって。
EMTG:インディーズだとビブラートを効かせない朴訥とした歌い方やよれたサウンドの方が好まれる傾向にあるし、プロっぽさって意外と嫌われますよね。
安部:それは本当に思いますね。だから、広がらないんだなって。この間、細野(晴臣)さんに初めてお会いして、直接お話しさせてもらったんですけど。細野さんがはっぴいえんどとかアルバム『HOSONO HOUSE』で成し遂げたことって、当時の常識ではあり得なかったことで。その恩恵を僕らが頂いているっていうのが実感としてわかって、感謝が生まれて。生意気ですけど、すごく反省したんですよ。細野さんがやろうとしたことを雰囲気レベルでしか真似できてなかったから、音楽が広がっていかないんだなって。だから、自分の好きな音楽を十分に伝えるためにも、上手くならなきゃって思ったんです。
鈴木:レベル・アップするってことに関しては、みんな今回は意識してましたね。勇磨が冨田さんのアルバムのライヴに出た時に観に行ったんですけど、僕の場合は、その時バックでやってたドラマー[平陸(たいらりく)くん]がめちゃくちゃ上手くて。今まで勝手にテクニックがある人はグルーヴがないとか、全体の音を気にせずにただテクニックだけを追い求めてるみたいな先入観があったんですけど、彼は音もいいわ、曲にもあってるわ、華もあるわで(笑)。勇磨も伸び伸びと歌ってて、やっぱり、上手いにこしたことはないな、と。そこから自分なりに色々試行錯誤して猛練習しました。
EMTG:歌詞の内容も明確に前を向いて開けた内容が多いですよね。1曲目の「夏のドキドキ」からして<うまくはちょっと 言えないけれど/なんでも出来る そんな気がする>と無敵感に溢れてますし、アルバムの最後の曲「海辺の町へ」では<トンネルを抜けたなら 見たことない景色が/どこまでも広がって 風に吹かれてたのさ>と、これまでnever young beachが歌っていた何気ない日常の幸せから一歩進んで、まだ見ぬ未来への憧れが歌われていて。成長が伺えます。
安部:そうですね。ライヴも人のコミュニケーションもそうですけど、ずっと同じことをやっていたらつまんらなくなっちゃうてしまう。この人とはこうやって喋れば楽しいし、こんな曲を書けばお客さんは盛り上がるな……みたいなルーティンワークはしたくないんですよね。友達と朝まで寝ないで遊んで、そのあと、またどこかにみんなで出かけて行って、見たことものないような景色に出会う。そんな予期してなかった奇跡みたいな瞬間が欲しいんです。窓を開けて風を入れてあげないと、家は自然とホコリをかぶってしまうように、心にも常に風を吹かせたい、良いサイクルを常に循環させていきたいなって思ってます。
EMTG:なるほど。そんな安部さんの今のモードがストレートに反映されたのが6月21日にアルバムに先駆けて発売されたアナログ7インチシングルの「SURELY」という大名曲に詰まっているのかな、と。
安部:冒頭に<溶け出したバターは僕らを連れて行く>って歌詞があるんですけど、バターが溶けてるキッチンの匂いって幸せそのものだと思うんです。あと、薄明光線っていう雲の裏側から光が入ってきて、ちょっと雲が透けてて光が地上に落ちてるみたいな……あぁいう風景にも幸せを感じるんですよ。そういう幸せでポジティヴなイメージで曲を書きたいと思ったんですよね。タイトルの「SURELY」は日本語に訳すと“きっと”とかそういった意味で。“きっと”って僕的にはすごく前向きな言葉なんですよ。“きっとなんとかなるよ”って気持ちから歌詞というかイメージが湧いてきて書きました。でも、結構悩んで何回も書き直しましたね。
EMTG:端正な歌詞からはその苦労が伺えます。サウンドもこれまでになくカッコいい。ツインギターの力強いリフが胸をギュッと締め付ける、一陣の風のようなロックンロールで。never young beachの新しい季節の訪れと、10年代の日本語ロックのアンセムが誕生したと個人的には思いました。
鈴木:ありがとうございます(笑)。確かに僕らにとっても今までなかったような曲調で、ギターも歪んでますし、リズムも跳ねてない直線的でタイトな感じで。“逃げられなくなったな”と、思いましたね(笑)。今まではルーズな跳ねを楽曲に取り入れてきましたけど、逆にそれが逃げ道になっていたのかもしれないなって。新しい挑戦でしたけど結果的に良い曲にできてよかったです。
EMTG:今のタイミングだからこそ、あえて伺っておきたいのですが、これからの夢って何かありますか?
安部:そうだなぁ?、家が欲しいかな(笑)。でも、真面目な話をすると音楽に関してはないですね。自分のできることをちゃんとやって、そうすれば自ずとまたいい人に出会えるし。みんなの人生がそれぞれにあるから、いつまで続けられるのかはわからないけれど、交わっていられるうちは楽しくやりたいなって思いますね。
鈴木:この前、細野(晴臣)さんにお会いしたときに、今年70歳になられるって伺って。「音楽に飽きるタイミングとかなかったんですか?」って聞いたら「そりゃ一回ぐらいあるけれど、でも、その時に聴いたことない音楽はまだあるんだって思ったら飽きが消えていた。気づいたら、もう70歳なったよ」って仰っていて。その話を聞いて「音楽をとにかく続けたいなぁ」と僕は思いました。

【取材・文:小田部仁】

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リリース情報

A GOOD TIME

A GOOD TIME

2017年07月19日

ビクターエンタテインメント

01. 夏のドキドキ
02. なんかさ
03. 気持ちいい風が吹いたんです
04. SUNDAYS BEST
05. 白い光
06. 散歩日和に布団がぱたぱたと(Band ver.)
07. CITY LIGHTS
08. SURELY
09. 海辺の町へ

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■ライブ情報

3rd album『A GOOD TIME』TOUR
09/03(日) 岡山YEBISU YA PRO
09/14日(木) 名古屋ボトムライン
09/15日(金)浜松FORCE
09/18日(月・祝)札幌 cube garden
09/22日(金) 高松DIME
09/23日(土)福岡 BEAT STATION
10/01日(日) 味園ユニバース
10/14日(土)金沢 AZ
10/15日(日) 新潟 studio NEXS
10/17日(火) 仙台CLUB JUNK BOX
10/20日(金)赤坂BLITZ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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