今まで想像したことがなかったパスピエを示す、最新ミニアルバム『OTONARIさん』

パスピエ | 2017.10.17

 最新ミニアルバム『OTONARIさん』は、今まで想像したことがなかった形のパスピエを次々示してくれる。ドラマーの脱退に伴い、今年の5月に4人編成となったこのバンドが、サポートドラマーとのレコーディング、打ち込みサウンドの導入など、新しい手法と積極的に向き合っている1枚だ。そして、これまでも一貫して醸し出されてきた「パスピエ節」とも言うべき作風が漂っているのも興味深い。メンバーたちは、どのようなことを考えながら制作を進めたのだろうか? 大胡田なつき(Vo)、成田ハネダ(Key)、三澤勝洸(Gt)、露崎義邦(Ba)に語ってもらった。

EMTG:5月から4人編成となったわけですが、どういうことを考えながら今回のミニアルバムの制作に向かって行きました?
成田:6月に先行配信した「あかつき」のタイミングでの新曲のリリースも決まっていましたし、「この4人でどういう風に曲を作り上げていくのか?」というのを長期的なスパンで探るのではなく、とにかく曲を作って考えたいと思っていました。
三澤:ドラムが脱退するっていう話になってすぐに4人で何度もミーティングをして、「どうやったら先に進めるか? サポートのドラムをどうする?」というのを綿密に話し合いました。メンバーはこの4人なので、例えば「打ち込みの曲に挑戦しよう」という話もそこで出ましたね。最初は不安な気持ちもありましたけど、この4人でのアレンジ、作曲の仕方の骨組みがだんだんできていきました。
露崎:ドラムがサポートのプレイヤーだったり、打ち込みのビートを採り入れたことによって、僕自身も変化がありました。自分が4人の中で一番下(低音域)にいることになるわけですし、より一層責任感のようなものも感じつつやるようになりましたね。
大胡田:パスピエは今までも「新しいことをしよう」というのを考えながらやってきたんですけど、この4人になったことによって必然的に新しいものになっていきました。
EMTG:新しさが生まれつつ、変わらないパスピエの核みたいなものも出た作品になっていると感じたんですけど、どう思います?
成田:はい。その辺は意識したことでもあります。僕らとしても過去にやってきたことを切り捨てるわけではないので。今までやってきたことを踏まえながら、さらに進んでいきたいと思っていました。
EMTG:1曲目は「音の鳴る方へ」ですが、これは演奏の初っ端から新しいパスピエを打ち出していますね。鍵盤のアプローチも、かなり新しいですし。
成田:鍵盤は楽譜で言うとほぼ白玉(全音符)なんです。
EMTG:細かなフレーズを弾くのではなく、空気感や色合いを添えるものに徹したということですね。
成田:はい。ドラムが脱退したことによって、緻密に作っていく方向へ行くのも1つの形ですけど、だからこそエッジの利いた芯の太い曲を一発目に持ってきたいというのもあったんです。
EMTG:この4人として最初に世に出た曲は「あかつき」ですが、今回の7曲の中で一番今までのパスピエを踏まえている印象がしました。これも新体制になってから作ったんですか?
成田:そうです。この曲はタイアップ(『インターハイ 2017 読売新聞』CMテーマソング)の内容的にも応援ソング的なものだったので、それもイメージしつつ作っていました。
大胡田:「あかつき」は聴いてくれる人に向かって歌っていると同時に、自分に対しても歌っているような感じですね。
EMTG:先ほど少し触れた“変わらない核”が、まさに出ている曲でもあると思います。童謡に通ずる“郷愁”みたいな部分って、パスピエが持っている重要なカラーだと僕は常々感じているんですけど。
成田:多分、メロディによって、そういうものになっているんだと思います。
三澤:メロディとコードから来る部分が大きいんじゃないでしょうか。ギターとしてもそういうメロディと歌を立たせるために考えながら弾いています。
EMTG:詰め込みつつ破綻していなくて、シンプルにも聴こえるというアプローチですよね。しっかりした音楽理論も土台にあるパスピエだからこそ、童謡のような風味を醸し出せている面もあるんじゃないでしょうか。
成田:自分たちで「そうです!」とは、なかなか言えないですが(笑)。まあとにかく、いろんな人が「この曲、なんかいいな」と思う曲は、どこかしらにシンプルさがあるんだと思います。そういう要素をメロディラインとかリフとかに残す意識はしつつも、シンプルには完結させないのがパスピエらしさなのかなと。組み合わせの妙は、常に意識していますね。
露崎:おっしゃってくださった郷愁感みたいな部分は、メロディと歌詞の当てはまり方による部分も大きいのかもしれないです。大サビの最後の辺りの歌い回しとか、シンプルでありつつ、そういう雰囲気を出していると思うので。
EMTG:郷愁感は、大胡田さんの声質による部分もあるのかも。ホッとする声ですよ。
成田:ホッとしますか?(笑)。まあ、変わった声ですよね。それが曲になった時に良い形で伝わるように、楽器の1つ1つを考えて作っています。
EMTG:「音の鳴る方へ」や「正しいままではいられない」は特にそうですけど、今作は大胡田さんの歌声に凛々しさがあるのも興味深いポイントです。
大胡田:「あかつき」を作ったくらいから「低い声も出したい」と思うようになっていて、そういうニュアンスも混ぜつつ歌うようになっているんです。
EMTG:低い声に対する憧れがあるんですか?
大胡田:すごくあります。それは喋る声に関してもなんですけど。大人の低い声は、同じことを言ったとしても説得力がありますから。これからバンドをやっていく上でも、そういう歌声の幅はあった方がいいと思って頑張っています。
EMTG:あと、今回、一番顕著に新しさが出た曲に関しては「(dis)communication」と「ポオトレイト」ということになるでしょうね。「(dis)communication」は、歌にオートチューンがかかっていますが、大胡田さんはもともとオートチューンがかかったような声じゃないですか。
大胡田:はい(笑)。
EMTG:つまり、オートチューンがかかりにくい声ということですよね?
成田:かかりにくいですねえ(笑)。ビブラートだったり揺らぎのある声はオートチューンをかけると直線的になるので「かかった感」がわかりやすいんですけど、大胡田はもともと直線的な声なので、細かい作業が必要なんです。
EMTG:こういう歌声も含めて、「(dis)communication」は新鮮です。
三澤:「ギターはどこに入っているんだろう?」って思う曲にもなっているでしょうね。でも、ちゃんとAメロからEBOW(磁力で弦を振動させる道具。弓で弾いているような独特なニュアンスの音を出せる)を使っているんです。
EMTG:「ポオトレイト」も、今までのパスピエのサウンドを知っている人は特に驚くんじゃないでしょうか。
成田:そうだと思います。いろんな曲を改めて聴き直したりもしながら、「ドラムが打ち込みで他の楽器が生」というアプローチの成立のさせ方を考えました。
EMTG:今作はサウンドの変化がいろいろあるわけですが、歌詞の書き方も何か変化したのでは?
大胡田:そうですね。今まではバンドのリハーサル中に曲を聴きながら歌詞を書いていたんですけど、今回はそういうことができなかったですから。いつも頭を使っていましたけど、より頭を使ったというか、文字の選び方にも時間をかけました。
EMTG:“部屋で1人で過ごして、ひたすら想像しながら書いた”という雰囲気も、今回、感じました。例えば「EVE」は、“風邪をひいて熱を出して寝込んでいる”というようなイメージをどことなく感じたんですけど。
大胡田:なるほど。「EVE」は、ただただ私の頭痛の曲です(笑)。こういう歌詞も書きつつ、真面目なのも書いているのが今回の1枚ですね。7曲というコンパクトな形で、いろいろなことができたのかなと感じています。
EMTG:鍵盤楽器、と一言で言いますけど、ピアノとシンセサイザーって大きくテイストが違うじゃないですか。その両方が活かされているのがパスピエの魅力だということも、今回のミニアルバムを聴いて改めて思いました。
成田:ロックという点で言うと、僕はピアノが鍵盤楽器の中で一番ロックだと思っています。音のアタックを出していきたい時は特にピアノを選びますね。まあ、それはバランスを考慮した組み立て方によるんですけど。ギターとかベースがガンガンに前に出ているサウンドの時にピアノを使って同じように打点を出していくと飽和してしまうので、そういう時はシンセを選んでポストロックとかニューウェイヴに寄せています。今回で言うと「音の鳴る方へ」は、そのイメージです。
EMTG:とことん素朴な感想にはなりますが、パスピエってメンバー全員がすごいですね。曲に対して的確なフレーズを弾いて表現できる人たちが集っているバンドだなあと。
成田:それはぜひ文字で書いておいてください(笑)。
EMTG:なかなか自分たちから「僕たちすごいんです」とは言えないでしょうけど(笑)。
成田:でもまあ、“曲”っていうものが1つのフォーマットだとしたら、5人の時は5等分で、今は4人で4等分。それぞれの自由度が広がったと、今回作ってみて感じました。
EMTG:今作のリリース後は、11月にツアーがありますけど、最新作の『OTONARIさん』とメジャー1stミニアルバム『ONOMIMONO』にフォーカスを当てたセットリストになるらしいですね。
成田:はい。この新体制で、まずは東名阪を回ります。各地、趣きのある会場なので、楽しみですね。
三澤:メジャー1stミニアルバム『ONOMIMONO』と『OTONARIさん』の曲をやることによって「初心に戻る」じゃないですけど、改めてしっかりと良いライブができたらなと思っています。
露崎:メジャーデビューの時の曲と最新の曲をやるので、この約5年間による変化と繋がりみたいなものも感じてもらえるライブになったら嬉しいです。
大胡田:5年前に書いて歌った曲を今歌うと、いろいろな発見がありそうです。歌う側の自分自身にとっての言葉の意味も変わっているでしょうから。
成田:メジャーデビュー当時は「音源とライブは別物」という考えだったんですけど、2、3年経ってから「ライブでお客さんがもっと楽しくのれる曲って何だろう?」っていうのを考えだしたんですよね。でも、もはや5年経つと「パスピエのサウンドだよ」っていうのを提示すれば、お客さんにわかってもらえるという感覚になっているんです。『OTONARIさん』と『ONOMIMONO』の両方が、すごく自由なミニアルバムだと思うので、それを今のパスピエとして表現したいです。

【取材・文:田中 大】

tag一覧 J-POP ミニアルバム インタビュー 女性ボーカル パスピエ

リリース情報

OTONARIさん

OTONARIさん

2017年10月18日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. 音の鳴る方へ
2. あかつき
3. EVE
4. (dis)communication
5. 空 
6. ポオトレイト
7. 正しいままではいられない

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大胡田なつき
フェレット 飼い方
とにかくフェレットが飼いたくて仕方ないので、飼い方、メリットとデメリット、病気になった時の病院とかについて調べてます。ずっと魚を飼ってるんですけど、哺乳類が飼いたいんですよ。呼んだら来てほしいですし、「寝るよ~」とか話しかけたいんです(笑)。

成田ハネダ
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僕はTBSの『JUNK』というラジオの深夜放送をいつも聴いているんですけど、昨晩がおぎやはぎさんの『メガネびいき』だったんです。いつもナレーションで出演している升田アナが最終回だったので検索しました。

三澤勝洸
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ミニスーパーファミコンの予約ができてなくて、抽選も落ちてしまって。だから今、予約できるサイトを必死になって探しています。ファミコンのやつは買ったので、スーパーファミコンも手に入れたいです。思春期にやったゲームがほぼ入っているので、あれが家にあったら最高です。

露崎義邦
手品 初心者
唐突に「手品をやりたいな」と思っています。中学時代くらいからやりたかったんですけど、なぜかここに来て、急に本腰を入れたくなっています(笑)。ライブの打ち上げとかで、スタッフを喜ばせられたらいいかなと。


■ライブ情報

パスピエ TOUR 2017
“OTONARIさんのONOMIMONO”

11月10日(金) 東京キネマ倶楽部
11月11日(土) 東京キネマ倶楽部
11月15日(水) 愛知ボトムライン
11月17日(金) 大阪 味園ユニバース

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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