向井太一の核心と確信、進化と真価が発揮されたメジャーデビューアルバム『BLUE』

向井太一 | 2017.11.22

 昨年11月に発表したEP『24』が各方面で絶賛され大きく注目されたオルタナティブR&B界の新星、向井太一。以降、SoundCloudやサブスクなどで次々に楽曲を発表し、グラミー賞ノミネートのstarRoや、Monster Rion、Pa’s Lam System、あっこゴリラといった気鋭のアーティストへの客演などでも名前を広めてきた彼が、メジャーデビューアルバム『BLUE』を完成させた。BACHLOCIGやmabanua、grooveman Spotといった日本のヒップホップ/R&B界を支える辣腕から、MONJOE/MIRU(共にyahyel)、高橋海(Lucky Tapes)といった俊英までもが共同プロデューサーとして参加した本作は、向井太一の核心と確信、進化と真価が発揮された一枚。今作を彼はどんなふうに作りあげたのか、その思いを探った。

EMTG:今回はクリエイター陣に新しい顔が増えましたね。
向井:僕がもともと好きだった方々と一緒にやれていて。「この人とやりたい」って言った人と自然に繋がり、実現した感じです。世界が広がりました。
EMTG:新しい顔ぶれの中でも一番大きかった出会いは?
向井:リードシングルの「FLY」を一緒に作ったLucky Tapesの(高橋)海くんとか。同い年だし、もともと海くんのソロプロジェクトがすごく好きで、「FLY」はLucky Tapesとソロプロジェクトの中間のことがやりたかったんです。それがまさにドンピシャでできたのが嬉しかったです。
EMTG:これまでの向井くんの作風を考えると、正直、海さんの起用は意外でしたし、実際、「FLY」は従来の楽曲に比べて随分ポップな曲ですよね。
向井:今回のアルバムはライブを意識したんです。今年に入ってからライブのパフォーマンスがメチャクチャ変わったんですよ。もっとゴリゴリになったし、ライブでどういう曲が必要かとか、お客さんと一体感を作るためにはどうすればいいかとか、“人に届ける”ということを改めて意識するようになった。そういうことを意識して作ったのが「FLY」なんです。
EMTG:今回はどんなアルバムにしようと考えていましたか?
向井:前回と同様で、ネガティブからポジティブに変わる力の強さというのは、アーティストとしてもひとりの人間としても大事にしたいと思っているので、そういう自分のコアな部分は継続しようと思っていたし、今回はそれをもっと色濃く出していこうと思っていました。サウンド面は「24」はわりと尖ったサウンドやトレンドを大事にしたんですけど、今回はそれプラス、僕がもともと聞いてた音楽や好きなアーティストをもう少し幅広く掘り下げて作った感じですね。
EMTG:前作は全体的に浮遊感があって、抽象的というか幻想的というか、アンビエントな雰囲気がありました。それに比べて今回は輪郭や色味がはっきりしているし、同じ打ち込みでもざっくりいえば前回は無機質、今回は生身な感じが出ていると思うんです。
向井:確かに。今回はボーカルが体温を感じるような歌い廻しにしていて。もともとそういう歌い方だったんですけど、今回はよりそういう風にしてますね。
EMTG:曲調もブギー/ファンク的なアプローチが増えて快活な印象があります。そういう変化はどこから来ているんですか?
向井:「24」の頃はフューチャーベースとかが出尽くしちゃった時期だったから早くそういうことをやりたかったし、ボーカルもサウンドに馴染むことを意識してたんです。
EMTG:歌声をトラック的に使うというか。
向井:そうです。でも、僕としては“歌えるアーティスト”でありたいというのと、そういうアーティストばかりを最近また聞くようになったというところも大きいですね。海外のヒップホップやR&Bでも生音の配分が多くなってきているし、その上で新鮮味のあるサウンドを作っていくっていうのも自分の中で挑戦だと思っていたんです。
EMTG:最近聴くようになって刺激を受けた海外アーティストは?
向井:KehalaniとSZAと、あとは先日ロサンゼルスに行ったときからメチャクチャはまってるMarc E. Bassyというアーティストです。3組に共通しているのは、ポップスに昇華するのがすごく上手いこと。ヒップホップのトレンドのフロウをわかりやすく入れつつ、フックがしっかりしていて、ちゃんとポップスになってる。尚且つ、すごくエモさもある。前作の頃はFKA twigsとかが好きだったんですけど、彼女とは違う熱やエモさがあって、彼らには影響を受けてますね。
EMTG:KehalaniやSZAは現代のソウルミュージックですよね。強烈なオリジナリティーがあってアーバンでありながら、ビンテージ感もある。
向井:そうです。SZAの最新アルバムはトレンドも採り入れつつ、ラフなフロウもあって、ちゃんと自分のルーツ音楽をやっていて、ポップスとして聴ける。すごくわかりやすいアルバムだなと思うんです。今回のアルバムを作ってみて思ったのは、僕はやっぱりブラックミュージックが好きなんだなと。あと同世代のアーティストやバンドで、歌唱がブラックミュージックっていう感じの人が男性だと特にいないと思っていて。どっちかというとルーツがロックだったり別のところにある人が多いと思うので、そこも自分の強みにしたいなと再確認しました。
EMTG:リード曲「空 feat. SALU」のテーマは?
向井:変わりゆく中でも変わらないものによって自分自身を保ったり、自分自身を見つめ直すことができるっていうのがテーマです。悩んでる人に向けて、ちょっとした安らぎの曲になればいいなと思っていて、歌詞はSALUさんが悩んでる人、僕はその人を包み込むように応援してたり、「大丈夫だよ」って言ってる立場の曲になりました。
EMTG:曲調はヒップホップ+ゴスペルという感じで、聞いたときはチャンス・ザ・ラッパーが頭をかすめました。
向井:フューチャーR&BとかオルタナティブR&Bとかさんざん言われてきた僕が、こういう曲調をやるのが面白いと思ったんです。今ってチャンス・ザ・ラッパーとかアンダーソン・パークとか、“いなたさ”と“イケてる”のバランスが良いアーティストって結構多いですよね。「空」もすごくハッピーで、ブラックミュージックに馴染みのない人にもわかりやすいけど、ブラックミュージックのフォロワーにも響くようなビートやグルーヴになったと思ってます。
EMTG:「FREER」(Bonus track)は『Galaxy Note 8』のCMソングですが、まずこの曲名はどう読むんですか?
向井:フリヤーです。FREEの比較級で、より自由にとか、もっと自由に、みたいな。CMは今までできなかったことができるとか、もっと面白いことができるっていうことがテーマになっていたんで、新しいことへの挑戦や自由になることの楽しさをテーマにしたんです。
EMTG:爽快なファンクで、これもまた従来の向井くんのイメージから逸脱した曲調ですね。
向井:これはCMのイメージで作られたトラックをもらってから作ったので、今までの僕とは曲調も歌唱も全然違っていて、めちゃくちゃレコーディングに時間がかかったんです。でもバンド時代はファンクっぽい歌い方をやっていたので、それに近い感じ。体に馴染んでからはすごく歌いやすくなりました。
EMTG:「FREER」はボーナストラックなので、本編ラストは「ONE」という曲になります。これはどんな思いを歌った曲ですか?
向井:アルバム全体のテーマに掲げている「ネガティブからポジティブへ」にも通じるんですけど、痛みとか弱さを知ってる人ほど這い上がる力や前に進む力の強さを感じると思っていて。「ONE」は、悩んだり悲しんだり藻掻いたりしながら、自分が今生きてることを再確認をしてる人の先に進む力を表現したかったんです。いろんな思いに襲われたとしても結局は自分の気持ち次第だし、それが先に進むための糧になるから大丈夫だよって。それを自分自身にも言ってあげられるような曲にしたかったんです。
EMTG:そんなアルバムに『BLUE』と名付けた理由を最後に教えてください。
向井:今って新しいアーティストやジャンルが次々に現れてすぐに消化されていく時代だと思うんですけど、そういう瞬間的な盛り上がりが赤い炎だとするなら、僕は一見おとなしく見えるけど芯のしっかり通った、赤い炎よりも熱の高い青い炎になりたいなと。それとネガティブからポジティブに変わるときのパワーを『BLUE』というタイトルに込めたんです。静かにじっとしてるけど這い上がろうとする気持ちは誰よりも熱いっていう。
EMTG:ひと口に青色と言ってもいろいろですが、今回のアルバムはどんな色味の青ですか?
向井:深みのある青ですね。派手な青とか開放的な青というよりは、深海のような、なにか大きなエネルギーを溜め込でいるようなイメージの青。あと、昔からブルーが好きっていうのもあったんです。
EMTG:でも、青色系の洋服を着ているイメージはないけど?(笑)
向井:ですよね(笑)。身の回りの日用品とかも青色は持ってないんですけど、ポケモン(「ポケットモンスター」)で好きなモンスターを選ぶなら「みずタイプ」みたいな(笑)。あと最近、自分に似合う色がわかる色彩テストをやったらブルーだったんです。だから青にシンパシーを感じるんですよね。

【取材・文:猪又 孝】

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リリース情報

BLUE

BLUE

2017年11月29日

TOY’S FACTORY

01. 楽園 (Co-Produced by Julian-Quan Viet Le / LeJkeys)
02. FLY (Co-Produced by Kai Takahashi)
03. Can’t Wait Anymore (Co-Produced by MONJOE / MIRU / 荘子it)
04. Lost & Found (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
05. Great Yard (Co-Produced by starRo)
06. BLUE (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
07. 空 feat. SALU (Co-Produced by mabanua)
08. 眠らない街 (Co-Produced by mabanua)
09. Conditional (Co-Produced by grooveman Spot)
10. Teenage (Co-Produced by BACHLOGIC)
11. ONE (Co-Produced by CELSIOR COUPE)
Bonus Track1. 君にキスして (Co-Produced by Kan Sano)
Bonus Track2. FREER (Co-Produced by Masahiro Tobinai)

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■ライブ情報

“BLUE”TOUR 2018
2018/1/13(土) 心斎橋VARON
2018/1/19(金) Shibuya WWW
チケットはこちら
先行期間:11月27日 23:59まで
一般発売:11月29日 10:00から
http://eplus.jp/taichi2018/



CORONA SUNSETS SESSION
12/15(金) GARB LEAVES

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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