東京カランコロン、今感じているワクワクに向き合った『わすれものグルービィ』

東京カランコロン | 2018.10.22

 バンドが続くということは、それ自体が奇跡みたいなものだけど、理由のない奇跡なんてない。東京カランコロンの3rdミニアルバム『わすれものグルービィ』は、彼らが音を鳴らし続ける訳がぎゅっと詰め込まれている。ポピュラーミュジックの眩い化学反応とともに、聴き手へ明確に向けられた表現のベクトルが、これまでよりもずっと深く、強い輝きを放ちながら、胸を撃ち抜いてくるのだ。いちろー(Vo/Gt)とせんせい(Vo/Key)の赤裸々な言葉から、そのかけがえのない想いを感じ取ってもらえれば幸いだ。

EMTG:今度Mrs. GREEN APPLEのイベントに呼ばれたじゃないですか。それってめちゃくちゃ素敵なことだと思んですよ。
いちろー:出会いは彼らが渋谷LUSHでライブしてる頃でしたからね。今や幕張メッセでやるようなバンドになっちゃいましたけど(笑)。
EMTG:この2バンドって、どちらもキャッチーな音を楽しみつつ、音楽として常に前進させていこうっていう姿勢があり、ポピュラーミュージックの本分を全うしてると思うんです。しかもバンドでそれをやる貴重な存在で。
いちろー:たしかにミセスは音源ごとに実験していて、そのとき学んだことをすぐアウトプットできるタイプだとは思いますね。うちらは今、どちらかと言えば引き算をしてるけど、ミセスは足し算してるのにポピュラリティが下がらない。情報量が相当多いけど、一般の人がパッと聴いても受け取れる明るさを維持してる。そこはすごいなと思います。
EMTG:今カランコロンの真ん中にあるのは何なんでしょうか。
いちろー:今回の作品に関しては、前回のアルバム『東京カランコロン01』と比べるともうちょっとフリーハンドな気持ちです。「おもしろいからやってみようよ」「これいいよね」と単純に思う感覚に従って作っていったんですよ。
EMTG:単純な感覚とはつまり?
いちろー:ん~、わすれものグルービィ? 音に対するワクワク感かな。パッて聴いたときに東京カランコロンだなってわかるということ。それはどんなに引き算をしたって、歌に入る前だとしてもわかる。前回は「バンドとして何をやれるか」がテーマだったけど、今回はもっと引き算した末の実験性がラフに出てきてる感じがしてて。
EMTG:「ユートピア」のイントロとかまさにですよね。「いろはのい」的なコードなんだけど、音の積み方がおもしろくて、聴いたことない感じになってる。
いちろー:あのイントロができたときに、「これがあればカランコロンってわかる!」っていう確信が生まれたんですよ。ドラムもギターもベースも鍵盤も全部がシンプルだけど変な感じに聴こえるっていう。
EMTG:そしてサビのコードにはポピュラーミュージックの胸を締め付けるような切なさが詰まってるなあと。
いちろー:そこは一番自分らしいと思うポイントですね。ストレートなコードで行っちゃうと熱苦しくなりそうなところで、Dmのコードで力を抜くことができたときに、「この曲すごいいいかも!」って思えたから。
EMTG:で、ワクワク感に戻りたいんですけど、具体的に言うと?
せんせい:わたしが笑うことで目の前におる人も笑う、みたいなワクワク。今までは「これおもしろいんです!」みたいな感じやったけど、今はつられて笑うみたいな。曲も歌詞もやけど、こっちが笑顔で楽しんでるってことがみんなのワクワクを引き出す要素になる、みたく変わってる気がする。
いちろー:たしかに押し付ける感じはないね。あくまで鳴らしてて気持ちいいなって思うものを自分たちが楽しんでる、それを一緒に共有しようよっていう気持ちが強いです。
EMTG:せんせいはいつも、「東京カランコロンでのわたしは元気いっぱいモード」みたく言ってましたけど、最近はそうでもない感じがありますよね。
せんせい:そう、今までは驚かせること、観てるお客さんをいい意味で裏切って、それに対しておもしろいって思ってもらうのがバンドのやり方だったけど、移籍して『東京カランコロン01』を出して、ひとつ自分たちの意志を提示した。で、そのあとのシングル『ギブミー』から、聴いてくれる人に対しての気持ちが、バンドとして変わった気がしてて。わたしは、個人的にはずっと、観てくれてる人を救いたいと思って曲を書いてる。それが『ギブミー』以降、すごくやりやすくなった感じがするんです。
EMTG:やりやすくなったというと?
せんせい:自分だけじゃなくバンドとしてそれをしようってモードに変わったような気がする。だから最近のライブは、自分たちをアピールするっていう発信の仕方もあるけど、それ以上に、聴いてる人たちみんなを絶対あったかい気持ちにさせたい。救いたいみたいな気持ちがさらに強くなってて。それはバンドのモードが変わったとか、ソロ活動をたくさんするようになったとか、年齢を重ねたとか、まあいろんなことがあるんやろうけど。
EMTG:日本松ひとみ名義のソロとカランコロンでの活動に境目がなくなってきてるところもあります?
せんせい:うん。2年前ぐらいに、ソロとカランコロンのせんせいは別やと思ってたけど、「あ、でも一緒やわ」って気づいて。ソロはたったひとりのステージやから、自分のペースで歌える、喋れる、笑える。カランコロンは5人のなかのひとりやから、4人のペースを乱してはいけないみたいな気持ちがたぶんあって。でも「こっちでも私は私でおっていっか」みたいになって、しかもそれでやりやすくなったのが今年かな。日本松ひとみが強くなればせんせいも強くなる。せんせいが素に近くなると日本松ひとみの自由度ももっと増す。
EMTG:ソロもカランコロンも繋がっているんですね。
せんせい:たぶん今までのカランコロンは、実はまわりを受け入れてなかった気がしていて。「どうぞなかに入って!」って言える余裕がやっとできたんじゃないかな。
EMTG:僕が解釈するに、バンドがもっかいゼロからやってこうってときに、ほんとの意味で目の前のお客さんに目が向いたんじゃないですか。受け入れる前に、まずは目を向けることが重要だったのかなって。
いちろー:僕はいろんな責任を背負いながらやってる感じだったんですよ。特にメジャーにいるときは、数字で結果を出さなきゃいけないから。目標数値もハンパじゃないから、「結果出さなきゃ」ばっかりで、目の前にいてくれる人を素直に見るのが難しくて。でもやっぱステージに立って、そこにお客さんがいるわけだから、一緒に楽しくなりましょうよって気持ちに、フラットになれたんですよね。
EMTG:共有できるのは音のワクワクだけじゃなく、言葉もそうですよね。特にボーカリスト/作詞家として、目の前の人にどんな言葉で何を伝えるのか。その部分に対する葛藤を最近のいちろーさんは抱いてきたと思います。
いちろー:そこは考えてましたね。もともと、歌詞のなかにお客さんへのメッセージとか入れたくないタイプで。歌詞はひとつのドラマになればいいなと思ってたし、それがある種音楽的な実験性にとってプラスなんだと思ってたけど、目の前にいる人を見て歌うようになると、関係ないことを歌っててもピンとこない感じがしてきて。自分対お客さんの関係性を無視した歌詞に違和感が出てきた。もっとみんなで気持ちを共有したいなあと思うと、歌詞にもそういう気持ちが自然に入るようになってきた。そうすると、その延長にMCがあるわけだから、その内容をもう一回考え直してみよう、それがこの1~2年でしたね。
EMTG:そのなかで今年、会心のMCができたと。
いちろー:そうそう、4月と5月の東名阪ツアーの最終日に、ようやく自分の言いたいことが言えて。むしろ言いたいことを発見できた。バンドとしてのテーマはいつも話し合うんですよ。今回だって、『わすれものグルービィ』ってタイトルが決まる前、「どういうテーマの作品なんだろうねこれは」っていう話をして。そのなかで、「そもそも今、バンドがお客さんに何を伝えたいのかっていうことが決まらないとダメじゃん」と。だから春のツアーで言えたことがほんとに大きかった。自分たちが楽しいって感じながら音を鳴らすことで、お客さんも一緒にワクワクしてほしい。自分たちが音を楽しく鳴らすまでの道のりって、いろいろあったわけですよ。そういう経緯っていうのは、当然誰にでもあるわけで。うちらもいろいろあったけども、ステージ上で、そして音源のなかでワクワクしてるよと。だからそれを聴いて、同じような気持ちになってくれたらいいなって。それが辿り着いた答えです。当たり前のようなことだけど、案外そういう景色を作ってるバンドって少ない気がするんですよね。
EMTG:バンドならではのことですよね。バンドって自分以外の誰かと一緒にやるものだから。誰かとやることでワクワクが生まれるからこそ、その延長でもっと大きな誰か、つまりお客さんとの相乗効果を作っていける。
いちろー:うちらはストイックにエンターテインメントを観せるバンドとも、自分の苦しみをひたすら吐き出すバンドとも違うから、それは意外と自分たちにしかできないことなのかもなって思います。ひとりじゃ生まれない生音だったり、その瞬間のグルーヴだったり。それってプリミティブな感覚で、時代遅れだなっていう自覚もあるんだけど、でもそこに感じるワクワクでしか自分は感動しないし、それしか信じられないんですよね。ほんとに生で音が鳴ってる、音で化学反応が起きてる、そういうことに対する感動を、ずっと追い求めてるんだと思います。
EMTG:で、特に「ユートピア」や「ロケッティア」という曲は、これまでの葛藤が昇華されてるなあと思うんです。いちろーさんとしてのメッセージが初めて込められた歌。そこが今回一番素晴らしいなと思うところで。
いちろー:「ロケッティア」は『東京カランコロン01』のあとわりとすぐできたから、ある種その延長で書いたんですね。ただ「ユートピア」は「ギブミー」のあとに書いたものだから、さっき言ったバンドとして、個人として伝えたいことが見えた段階だった。なかでも、サビの《やめちゃうのもいい やめなくたっていい/巻き戻せないから、日々は愛おしい》っていう言葉が一番最初に出てきて。バンドとしては《やめちゃうのもいい》なんて言ったらダメなはずだけど、もうやめちゃってもいいなって思ったんですよね。やんなきゃ、やめられないってなればなるほど苦しいなと思った。だから別にやめてもいいんだけど、それでも今自分がやってるのは、ほんとに好きだからなんだなって。
EMTG:うんうん。
いちろー:売れないと言ったってCDを買ってくれる人がいて、こうやってインタビューしてくれる人がいる。その状況って、過去のすべてがないとありえないことじゃないですか。今起こっていることは全部が自分の道のりの積み重ねで、それって宝物みたいなものだよなあって、やめてもいいんだと思ったときに初めて感じたんです。僕はすぐ後悔するタイプで、あのときあれしちゃったからダメなんだとか思っちゃうんだけど、もし同じように考えてる人がいるなら、いやそうじゃなくて過去の全部が今につながる宝物なんだよってことを、どうしても言いたかった。
EMTG:それは今のいちろーさんだから言えることだし、今のカランコロンだから響くことだと思いますね。最後に単独ツアーのお話を。8箇所も回るって久々ですよね。
いちろー:全国ツアーとしては久しぶりですね。去年のアルバムツアーって、まさに自分たちが変わっていく最中で、喋る内容も曲の持っていき方もライブごとに変わってたんですね。でも春のツアーではっきり見えたものがある。だからそれをほんとにお客さんと共有できるのかなってことを試したいです。どうつながれるのかが楽しみ。今の自分たちのはっきりとしたスタンスを観に来てほしいなって思います!
せんせい:わたしは、「昔よく聴きました」っていう人にこそ観せたい。今が一番いいのは当たり前で、作ってる側はみんなそう思ってるけど、それだけじゃなくて「あ、昔観てたカランコロンがおる」って感じてもらえるんじゃないかな。進化してるんやけど、懐かしさも感じるライブをできてるような気がするから、しばらく会ってない人にこそ観てもらいたいなって思います。

【取材・文:秋摩竜太郎】

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 男性ボーカル 女性ボーカル 東京カランコロン

リリース情報

わすれものグルービィ

わすれものグルービィ

2018年10月03日

TALTO

1.ユートピア
2.ないないない
3.Do you?
4.MUUDY
5.スカート
6.ロケッティア
ボーナストラック わすれものグルービィ

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

「わすれものグルービィ」リリース記念ワンマ んツアー2018
10/28(日)千葉LOOK
10/30(火)仙台enn3
11/01(木)札幌 COLONY
11/04(日)名古屋 3STAR
11/15(木)大阪 Shangri-La
11/29(木)広島Backbeat
11/30(金)福岡Queblick
12/05(水)東京TSUTAYA O-WEST(ツアーファイナル)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る