go!go!vanillas 最新作『THE WORLD』

go!go!vanillas | 2019.05.07

インタビュー中で牧達弥(Vo/G)も言っているとおり、バニラズ最高傑作だ。彼らがずっと標榜してきた、音楽ジャンルやスタイルではなくスピリットとしてのロックンロールが、力強い言葉と音の探求によって具現化したアルバム。新作『THE WORLD』はそういう作品である。このアルバムに込めた強い意志について、療養中の長谷川プリティ敬祐(B)以外の3人に語ってもらった。あとはこのアルバムの曲たちを4人揃って鳴らす瞬間が待ち遠しい!

EMTG:素晴らしいアルバムだと思います。手応えのほどはどうですか?
ジェットセイヤ(Dr):難しいですね……手応え、ありすぎて(笑)。1年かけて作ったんですけど、そのときそのときの気持ちも入ってますし、それぞれの曲を作り終わった後の感覚も違ったけど、でもどこかで共通した何かがあって。それはやっぱり心の中の言葉なのかなと。もちろん牧の言葉なんですけど、今生きてる人が共感できる言葉が詰まってると思います。
柳沢 進太郎(G):「パラノーマルワンダーワールド」ができたときにすごく感動したんですね。圧倒的な何か、バンドの魔力みたいなものがすごく詰まっていて。すごいアルバムになるぞっていうのを、あの曲ができたときに思ってました。僕、歌詞が送られてきたときに泣いちゃって、思わず(牧に)電話したんです。そしたら牧さんは「どした?」って(笑)。そんなこと初めてでしたけど、歌詞を見て涙が出てきて。
EMTG:うん、本当に「パラノーマルワンダーワールド」はすごい曲だし、このアルバムを象徴する1曲だと思います。では牧くんは今回のアルバム、作ってみてどうですか。
牧達弥:最高傑作です。今頭のなかにある音像がちゃんと形にできたし、いつもはアルバムを作ったあとに「こうしときゃよかった」っていうのがあるんですけど、今回はそれがない。作りきって結構経ちますけど、今でも今の自分のモードに対して遅れを取っていないというか。ずっと最新って感じがするんです。そうやってちゃんと自分のなかでやりきった感じがすごくするっていうのは初めてですね。曲調とか音楽性もそうだけど、とくに歌詞においては120点のものができたと思ってます。ただ綴っているだけじゃなくて、バランスや展開も考えながら言葉を紡いで……ちゃんと料理したっていう感じ。おいしい料理になったなって感じです。味付けのバランスとかもすごく考えましたしね。
EMTG:アルバムの完成図みたいなものは最初からイメージできていたんですか?
牧:見えたのは「No.999」を作って以降ですね。去年の5月頃に作って、アルバム制作でいうと4曲目くらいなんですけど、あの曲の歌詞を書いてるときに「これだな」っていうのがあったんですよね。前にも話したんですけど、個がすごく強くなっている世の中で、人と一緒にいてもスマホを触ってるみたいな世界になっているじゃないですか。それはしかたないことだし、これから革命的なことになるのかもしれないから別に否定するつもりはないんですけど、今回はそれをひとつのテーマとしておいてアルバムを作るのがいちばんいいなって思ったんです。
EMTG:そういう世界観を、バニラズはずっと曲にしてきたじゃないですか。それが今回、具体的な形でアルバムになったのはどうして?
牧:今までの俺たちって、音楽の理想郷みたいなところにいて、現実と触れ合おうとしなかったんだろうなって思うんですよ。ある意味そこを見ないようにしてたし。逃げではないですけど、夢のなかに生きて、あえて現実には触れたくないって思ってた。でもそうなってくるとすべてが幻でしかないなって思うようになって。その夢も現実になるようにするためには、今起きてることにちゃんと目を向けなきゃなって。
EMTG:なるほど。
牧:それって今の音楽に起きていることでもあるんですよね。ロックよりヒップホップのほうが強いのもそこにリアリティがあるからだし、音楽自体、ジャンルにもよりますけど、音がどんどんミニマムになる中で、言葉の強さ、人に響かせる言葉の存在がより大きくなってる。それは、どんどんデジタルになっていくなかで、人間味を無意識に求めてるっていうことなんじゃないかなって。だったらやっぱり歌詞と言葉と自分の声っていうものがちゃんと耳に焼き付くような楽曲を作りたいなっていうのが強かったですね、今回は。
進太郎:アレンジメントにおいても、隙間だったりとか、言葉が乗るってことをすごく意識してたんですよ。今までだったら、セイヤさんが「こういうフィルいきたい」っていうところに俺やプリティさんの「こういうフレーズ入れたい」みたいなのが重なってぐちゃっとなってたんですけど、今回はそういうのがないですね。それもDTMをやり続けてきたことで、誰がどんなプレイをしているかっていうのが把握できたからなんですよ。音がないところでディスカッションしながら差し引きを精査するようになっていったというのが大きい。
セイヤ:録ってるときは勝手な解釈をしてましたけどね。意味とか訊いたりしないんですよ。
進太郎:取材で初めて発覚することいっぱいありますからね。「そういうことだったんだ!」っていう。
牧:それでいいんですよ。プリティは僕を探ってきますけどね。「こうなんじゃねえかな? 違うか!」って(笑)。
EMTG:たとえば思っきりソウルな「サイシンサイコウ」の歌詞でわざわざ「ロックンロールハ?ント?」って言葉を使っていることとかも、すごく意識的だなと思います。
牧:そうですね。
EMTG:音楽的にはロックンロールではないんだけど――。
牧:そうですね。
EMTG:そこで「ロックンロールバンド」って言葉をあえて言うみたいな。そこにメッセージがある。だから、バニラズの――なんか言えよ(笑)。
進太郎:「そうですね」って、タモリさんタイムになっちゃった(笑)。
牧:いや、ほんとそうなんですよ。概念というか、「Is this it?」ってことで。ずっと言ってますけど「果たしてロックンロールマナーに沿ったものがロックンロールなの?」っていう。この曲は、リズムはこういう遅いテンポでやってるけど、コード進行はじつは3コードを使ったりしてる。でもそこは聴いてもなかなかわかんないじゃないですか。そのわかんないってことが僕にとってはいちばんイケてるところなんです。
EMTG:これを8ビートのいわゆるロックンロールサウンドでやってたらそういうメッセージは出ないんだよね。
牧:でももともとはそういう方向性だったんですよ。ロカビリーみたいな曲調でやってたんです。でもおもしろくないと思って。今これやる意味ある?っていう。これはNAOKIさん(LOVE PSYCHEDELICO)と一緒に作った曲なんですけど、リズムも一気にハーフに落として余白を作り、そうなるとそこに乗せていくメロディも変わるし。でもこの曲って本来はロックンロールが入ってるんだよなっていうおもしろさがあったんですよね。
セイヤ:切り貼りしとるしね、ドラムも。
牧:そうそう、サンプリングみたいな感じでセイヤのドラムのパーツを打ち込みで貼っていくっていう。だから「気づかないけど、じつはおまえロックンロールを食ってんだぞ」みたいなことですよね。これは「バニラズのロックンロールここにあり」っていう旗を突き立てるような曲になったんじゃないかなって思います。
EMTG:ヒップホップやファンクに惹かれるのも、牧くんのなかでそこにロックンロールを感じるからなわけですよね。そういう意味ではこのアルバムはいわゆる音楽ジャンル的な意味ではロックンロールから遠いかもしれないけど、じつはバニラズ史上いちばんロックンロールなアルバムなのかもしれない。
牧:攻めまくってますからね。
セイヤ:俺ら自身がロックンロールなんで。「ジャンルは勝手に決めて」って感じです。
EMTG:でも本当にそういうことだよね。いまの話みたいなことって、バニラズはずっと態度として表明していたと思うんですが、今回はそれがメッセージとして強く出てる。相当強い意志があるんだなって思う。
牧:うん……しびれを切らした。伝わんねえから。
全員:はははは。
牧:自分たちが作ってきた夢の国みたいなものを、やっぱりもっと手繰り寄せて現実のほうに……僕、マーヴェル・コミックが好きなんですけど、マーヴェルなんですよね、まさに。現実と非現実が入り混じってる。今後の世界の動きは絶対そうなっていくと思うんです。僕らは今まで、仮想現実みたいなもの、非現実的に楽しく、夢みたいに幸せに、魔法のようにロックンロールを使うことに長けてたバンドだったんですけど、でもそれに加えて現実の部分を自分たちの音楽でしっかり表現したい。今はロックバンドの存在理由がどんどん薄くなってしまって、別のところにロックのかっこよさを感じるようになってるけど、バンドとかロックって間違いなくかっこいいものだから。もう一度「いいじゃん、ロックかっけえじゃん」って言うためには過去の恩恵を受けているだけじゃダメだなっていう強い思いがあります。
EMTG:夢で終わらせないというか、ロックンロールの楽しさやかっこよさをもう一度リアルなものとして取り戻す、ってことかな。
牧:「Hey My Bro.」に「敵にハイタッチをしよう」っていう歌詞があるんですけど、それについて「夢物語じゃん」って誰かに言われたんですよね。それはそうなんですけど、たとえば韓国と北朝鮮が急に和平を結んで、もうミサイル作りませんよってなったじゃないですか。そりゃ裏でいろいろあったとは思うんですけど、絶対無理じゃんって思ってたものが急に変わることもあるんです。夢って思ってたら夢なんだよって思ってるから、俺は言い続けてることが大切な気がしてて。ジョン・レノンの「WAR IS OVER」もそうですよね。終わってない、わかってる。でも終わったっていうから言霊になってそれが実現するんだっていう。それはすごく大事にしたい。
EMTG:今急に世界平和の話になったでしょ?
進太郎:確かに(笑)。
EMTG:でもそういうことなんですよね。個人的な思いが世界につながるというか、世界規模に広がるっていうのがロックンロールのマジックだなと思います。
牧:そうなんですよね。
EMTG:『THE WORLD』っていうのは、個人それぞれの世界があるけど、それをつなげて最高の世界を作れるんだってことだと思うんです。で、「それができるのがロックンロールなんだ」っていう、その信念はブレてないんですよ、結局。
牧:そう、そうっすね。超えていきたいと思います。
セイヤ:きっかけづくりというかね。
EMTG:本当に本質的にロックンロールの力を具現化しているアルバムになったんじゃないかなと思います。これ、響くといいなあ。
牧:まあ、頭の固い人には無理かもしんないけど。
進太郎:でもそういうヤツも「パラノーマルワンダーワールド」を聴いて、最初の2行で膝から崩れると思いますけどね。最初の2行がすべてというか、そこで食らいますよね。その2行がすごい、すごいんですよ。

【取材・文:小川智宏】





「THE WORLD」アルバム全曲ダイジェスト

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リリース情報

THE WORLD

THE WORLD

2019年05月15日

ビクターエンタテインメント

01.パラノーマルワンダーワールド
02.チェンジユアワールド
03.SUMMER BREEZE
04.No.999
05.サイシンサイコウ
06.雑食
07.スタンドバイミー
08.ワットウィーラブ
09.GO HOME?
10.Do You Wanna
11.NO NO NO
12.Hey My Bro.

お知らせ

■ライブ情報

THE WORLD TOUR 2019
5/30(木) 大分 DRUM Be-0
6/1(土) 熊本 B.9 V1
6/2(日) 長崎 DRUM Be-7
6/6(木) 浜松 窓枠
6/8(土) 三重 M’AXA
6/9(日) 岐阜 CLUB-G
6/20(木) 周南 RISING HALL
6/22(土) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
6/23(日) 米子 laughs
6/27(木) 長野 CLUB JUNK BOX
6/29(土) 福井 響のホール
6/30(日) 金沢 EIGHT HALL
7/18(木) 郡山 Hip Shot Japan
7/20(土) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
7/21(日) 秋田 Club SWINDLE
10/11(金) 名古屋 Zepp Nagoya
10/12(土) 大阪 Zepp Osaka Bayside
10/14(月・祝) 福岡 Zepp Fukuoka
10/19(土) BLUE LIVE 広島
10/20(日) 高松 festhalle
10/26(土) 札幌 Zepp Sapporo
11/09(土) 新潟 LOTS
11/10(日) 仙台 PIT
11/15(金) 東京 Zepp Tokyo
11/16(土) 東京 Zepp Tokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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