結成10周年を迎えたパスピエ 5th Full Album『more humor』完成!

パスピエ | 2019.05.22

 今年の2月に結成10周年を迎えたパスピエが5thフルアルバム『more humor』を完成させた。一昨年から編成が変化したことに伴うメンバー各々の発想の広がりが、鮮やかな開花の仕方をしている作品だ。打ち込みサウンドとバンド演奏の融合、幻想的なコーラスワーク、耳を惹きつけてやまないメロディ、生々しい感情が滲んでいる言葉……多彩な要素が、新境地をダイナミックに切り拓いている。「10周年」という節目を経て、ますます独自の色合いを深めているパスピエは、どのようなことを考えながら今作を完成させたのか? メンバーたちに語ってもらった。

EMTG:明らかに新境地に踏み込んでいる作品ですね。
成田ハネダ(Key):はい。「新しい面白いことをやりたい」というのはいつものことだったんですけど、今の編成になったパスピエの核となるものを作品として出したいというのはあったんです。
EMTG:この編成のパスピエの核とは、どのようなものとして考えています?
成田:ドラムがいなくなったので、ビートに対する考え方がこの2年間で大分変わったんです。そこは大きいでしょうね。
三澤勝洸(G):打ち込みを使い始めたのは4人になってから作った『OTONARIさん』からなんですけど、今回のアルバムで、ひとつの到達点に行けた感覚はあります。例えば「ONE」は打ち込みとバンドサウンドの両方が存在している曲ですし、新境地だと思います。
EMTG:毎回言っていることかもしれないですけど、パスピエって面白いことをやり続けているバンドですよね。
成田:「パスピエの一面」というのはたくさんあるんですよね。「面白いバンドがいるな」って思ってもらえるきっかけはたくさん作りたいです。
EMTG:「パスピエの一面」は、たくさんあるから、代表曲を決めるのが難しいとも言えるんじゃないですか?
大胡田なつき(Vo):そうなんですよ。代表曲ってライブだと「MATATABISTEP」?
成田:あるいは「チャイナタウン」とか「つくり囃子」や「トキノワ」?
露崎義邦(B):全部、タイプがかなり違う(笑)。
成田:現状に納得しきれてないから、いろんな曲を作りながら進もうと思うんでしょうね。変わり続けることも自分たちの一部みたいな感覚です。
三澤:10年やってきたというのもあるので、変わってきてはいるんです。それぞれの音楽の趣味も変わるし。でも、そういう中でも変わらないのが、「この4人がやってる」っていうところなんですよね。
EMTG:「この4人がやってる」というまま脱皮を重ねているということですね。蝉の幼虫も脱皮すると姿や形は変わるけど、本質は変わらないじゃないですか。あの感じ?
大胡田:なるほど(笑)。今回のジャケットのアートワークもそういうイメージなんですよ。女の子の身体、頭、服とか、外側のものが素体に戻っていって、再び肉体的なものを得ていく……という繰り返しと成長を描いてるので。
EMTG:そういう繰り返しをしてきたパスピエが今作で辿り着いた新しい姿のひとつは、先ほども話に出たビートに関することですよね。
露崎:はい。僕も柔軟に考えられるようになってきたんです。ドラムのことを前よりも考えるようになりましたし、打ち込みを自分でやってみたり、ドラムの練習をしてみたりもしながら理解力を上げてます。
EMTG:コーラスのハーモニーが、かなり変化した印象もあります。ものすごく大雑把な言い方ですけど、北欧とかアイスランドやアイルランドっぽいというか。
大胡田:今回、ためらわずにコーラスを重ねましたからね。
成田:やっぱりパスピエは無国籍感を大事にしているところがあって、いろんな要素を散りばめているんですけど、今回はコーラスワークも聴きどころのひとつかもしれないですね。ライブじゃ絶対に表現できないことをやるのも音源の面白いところですし。
大胡田:レコーディングの時期にあまりライブをやっていなかったので、すごく自分を見つめ直す時間があったのも、私にとって大きかった気がしています。デモを聴きながら曲の意味をすごく考えたりもしましたし、「このフレーズにどういうフレーズをのせて、どういう声で歌うといいかな?」みたいなのをじっくり工夫する時間もありました。
EMTG:サウンド面に関しては、パスピエのキーワードとしてよく挙がっていた「ニューウェーブ」や「和テイスト」が、今回、比較的控えめであるというのも言えるところでは?
成田:そうですね。カテゴリーというところで「ニューウェーブ」や「和」って見られることは多かったし、それは自分のルーツでもあるので間違ってはいないんです。でも、それによって狭まることもあるなと思って。だから、「パスピエという変わったバンドがいるな」っていうアンテナがいろんな人の中で立つようなことをしないといけないと考えるようになりました。今回、「母体としては打ち込みとかを取り入れつつも、上モノは自分たちが今までに培ってきたものをのせる」というミックスをたくさんやった理由は、それも大きいです。
EMTG:例えば「ONE」は、ヒップホップ的なトラックですよね。ラッパーがラップをしたくなるタイプの音なのに、大胡田さんが歌うことによってパスピエになっているのが新鮮です。
三澤:「ONE」は、実験の繰り返しだったんですよね。ひたすらたくさん試して、最終的にアコギがハマってこのアレンジになったんです。フレーズを弾くというよりも、ギターで空気感を作るという役割をしています。
EMTG:こういうことをやりつつも、例えば「resonance」みたいに、時々、隠しきれないロック少年感が出たりするのもパスピエの面白さです。
三澤:やっぱり、そういうものも好きですからね。
成田:メンバー各々のものを混ぜているというのも、パスピエの特徴なんでしょうね。
EMTG:適切な表現なのかはわからないですけど、狼、羊、タヌキ、鳥とかが仲良く乗り込んだ箱舟のような感じというか。
大胡田:さっきは蝉って言ってたのに(笑)。
EMTG:(笑)今回の歌詞に関しては、大胡田さんの内面と地続きな感じがするものが多いですよね? 今までのパスピエは、おとぎ話的なものが濃厚でしたけど。
大胡田:はい。
EMTG:例えば「R138」って、国道138号線ですから、大胡田さんの地元の風景のこと?
大胡田:そうなんです。みんなわかると思ってたのに、「なんでみんな知らないんだよ」ってなってるんです(笑)。自分ではメジャーな道路なつもりだったんですけど。
EMTG:こういうものが描写されるようになった理由は、どのように考えています?
大胡田:なんでしょうね? ……「作る意味」とか「歌う意味」みたいなのを考えちゃう時期だったんです。そのことによって自分のことをすごく歌詞に書いたり。あと、自分のことを歌わないといけないような気もしてきたんですよね。「いろんなものが溢れ返ってる中で、人の心に響くものって何だろう?」って考えたら、「自分の身を削ったものや、命のあるものなのかな?」と。
EMTG:「ユモレスク」と「煙」の歌詞に繋がりを感じられたのも面白かったんですよ。「ふたりの間にあるもの」を描いているという点で関連性を感じたんです。
大胡田:この2曲は何気に同じ世界のことですね。
EMTG:そういうのを発見するのも、今作の楽しさです。
大胡田:いろいろ見つけていただけると嬉しいです。
EMTG:このように様々な新鮮さがある中、今までのパスピエの流れを一番感じさせる曲が、去年の日比谷野外大音楽堂公演(10月6日に行われた“印象H”)でもやった「BTB」ではないでしょうか?
成田:はい。これはアルバムの中でも最初の方にできた曲ですからね。たしかに今までのパスピエの感じが色濃く出ていると思います。すごく開放的なものになっているというのは、この曲を野音でやった時にも感じました。
EMTG:新しい作風に関しては、先ほども話をした「ONE」はもちろん、「グラフィティー」「だ」「waltz」とかもそうですね。メロディや音の響きも含めてミステリアスというか、心地よい違和感があるのが面白いです。
成田:今回、あからさまに明るい印象の曲はないのかも。
EMTG:「waltz」は、テルミンを使っています?
成田:はい。半分ノリだったんですけど(笑)。楽曲が持ってる幻想的な部分をより肉付けする上で、シンセではできないようなことにもトライしてみたかったんです。
三澤:今回、コンセプトとまでは言わないですけど、「面白いことをやろう」というのはみんなの中であったんですよね。
EMTG:こういう探求心って、ある意味ユーモアという言い方もできそうですね。だから、このアルバムのタイトルが『more humor』というのも、すごくパスピエに似合っていると感じられたんですよ。
大胡田:このアルバムのトラック的な面とか、今までバンドとしてやってきたこととか、いろんなものが合わさった形が、パスピエのユーモアだなと思って『more humor』にしました。このタイトルは、私がもともと持ってた言葉で、いつかいいタイミングで出したいと思ってたんです。
EMTG:ユーモアの語源のフモールは「体液」という意味で、人間の気質は4つの体液のバランスで決まると考えられていた――っていうのが、4人編成のパスピエと重なるのも、このタイトルがハマった理由だったそうですね。
大胡田:そうなんです。「モアユーモア」って口に出すと回文っぽいのも、パスピエのタイトルらしいですし。
成田:パスピエは自分たちを俯瞰して「どうやったら面白くなるだろう?」って考えてきたバンドですし。そもそも僕も芸人さんのコントとかも含めて、ユーモアのあるものからの影響も受けてきましたからね。
EMTG:10年の活動の中でいろんな吸収をしてきたパスピエは、この先、どんなバンドになっていくんですかね?
成田:自分自身がリスナーとしてどんどん楽しめるバンドになっていきたいというのは、思ってるところです。
EMTG:ラストの曲の「始まりはいつも」は、未知の世界に踏み込んでいく姿勢を、とてもストレートに歌っていますよね。10周年にふさわしいと思いました。
大胡田:これがラストの曲というのは決まってたので、「10年やってきたけど、これからまたやっていくためにも言うべきことを言っておこう」と思ったんです。こういう言葉を使うのがあんまり怖くなくなって、「責任を自分で持てる」と思うようになりましたから。
EMTG:あと、今作もアートワークが素晴らしいです。GUCCIMAZEさんとのコラボレーションなんですよね?
大胡田:はい。ダークなんだけどドリーミーな部分をGUCCIMAZEさんが楽曲から感じ取ってくださって、このフォントとグラフィックをいただいたんです。
EMTG:先日、YouTubeで公開された「グラフィティー」のMVは大胡田さんの絵のアニメーションですが、エディットを手掛けたのは露崎さん?
露崎:そうなんです。素材を貰って、ハメていきました。
大胡田:超雑に説明しても、なんとなく伝わってやってもらえたんです。
露崎:本人はキャンペーンとかでいろいろ忙しかったので、メールでの連絡だったんですけど、メール文を読み解くのに5分くらいかかりました(笑)。
EMTG:そういう意思疎通ができるのも、10年やってきたバンドだからこそ?
大胡田:そうかもしれないです(笑)。

【取材・文:田中 大】






【パスピエ Music Video 「ONE」YouTube】


【パスピエ Music Video 「グラフィティー」YouTube】

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リリース情報

more humor

more humor

2019年05月22日

ワーナーミュージック・ジャパン

01.グラフィティー
02.ONE
03.resonance
04.煙
05.R138
06.だ
07.waltz
08.ユモレスク
09.BTB
10.始まりはいつも

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■マイ検索ワード

大胡田なつき(Vo)
グラフィティー 入門
「グラフィティー」っていう曲を書いて、MVを作ってたら、「グラフィティーの文字って、どうやって描いてるんだろう? ルールとかってあるのかな?」って気になってきたんです。だから入門的なところから調べました。高圧洗浄機で壁とかの苔とかをとる感じでやってる人が出てきて、興味が湧きました。

成田ハネダ(Key)
Pound it!
英語のスラングで「ハイタッチ」という意味です。最近、海外のYouTubeで活動してるDude Perfectというグループがいて、観るとスカっとするんです。その人たちが最後の締めのセリフで“Pound it!”って言うので、「どういう意味だろう?」と思って調べました。

三澤勝洸(Gt)
クリーチャートレーニング
スポーツとかで採り入れられてるトレーニングのひとつなんですけど、クラゲとかライオンとか、野生の生き物の動きを真似することによって身体能力を高めるんです。身体の連動を高めると、楽器の演奏も伸びるんじゃないかなと。今、クラゲをやってます(笑)。

露崎義邦(Ba)
Adobe Premiere 編集
動画編集ソフトのAdobe Premiereで「グラフィティー」のMVを作ってたので、色調変更とかのやり方をいろいろ調べたんです。そうやって作ったMVなので、よかったら観てください。


■ライブ情報

パスピエ TOUR 2019 “ more You more "
6/12(水) 東京 渋谷WWW X
6/16(日) 広島 HIROSHIMA SECOND CRUTCH
6/20(木) 仙台 darwin
6/22(土) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
6/28(金) 神戸 VARIT.
6/30(日) 福岡 DRUM LOGOS
7/06(土) 札幌 PENNY LANE 24
7/12(金) 名古屋 DIAMOND HALL
7/13(土) 大阪 BIGCAT
7/15(月祝) 東京 Zepp Tokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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