TRI4TH “歌える”をコンセプトにしたニュー・アルバム『jack-in-the-box』インタビュー

TRI4TH | 2019.07.11

 “踊れるジャズ”を掲げ、ライブハウスのフロアを沸かせている5人組ジャズ・インスト・バンド、TRI4THがこの夏、ロック・フェスティバルに殴りこむ!? そんな意気込みとともに彼らが完成させた最新アルバムが『jack-in-the-box』。パンク、ロック、クラシック、ポップスというメンバーそれぞれに持っているジャズにとどまらない幅広いバックグラウンドが反映された多彩な全12曲からは、ジャズの常識を打ち破るさまざまな挑戦とともに変化を恐れない、いや、自ら変化を求めるバンドの姿勢が感じられるはず。昨年、結成12年目にしてメジャー・デビューしたTRI4THは、ここからさらなる飛躍を遂げることだろう。

EMTG:『jack-in-the-box』、とてもかっこよかったです。1曲1曲のかっこよさはもちろん、曲が多彩であるところや、聴き終わった時に最後の「Sing Along Tonight」と1曲目の「Wake up」が繋がっていることがわかることをはじめ、いろいろな仕掛けでも驚かせる、びっくり箱というタイトルがふさわしい作品でした。ランシドの「Time Bomb」のカバーも聴きどころの1つではないかと思うのですが、なぜ収録しようということになったんでしょうか?
伊藤隆郎(ドラムス):僕たち、“踊れるジャズ・バンド”というキャッチフレーズを掲げて活動しているんですけど、ライブではけっこうスカのテイストを入れた曲をレパートリーとして披露しているんです。その中でもよく演奏する「Full Drive」の“ワン!ツー!”と叫ぶところは、スペシャルズの「Little Bitch」という曲のオマージュとして、マッシュアップしているんですけど、それも含め、自分たちの中でスカはトライすべきことであり、自分たちの持ち味でもあると思っているんです。今回、フル・アルバムを全曲、新曲で作るにあたって、スカの曲もやりたいと考えたとき、大好きなランシドの曲を何かカバーしたいと思って、ランシドで一番有名な曲をカバーしてやろうと挑戦してみました。
EMTG:仕上がりにはどんな手応えがありますか?
伊藤:「Time Bomb」をやるなら、やっぱりサビは歌わなきゃと思いながら、だからってずっと歌っているわけにはいかないので(笑)。原曲でティム(・アームストロング)が歌っているAメロは、ホーン・セクションにアレンジしてもらって、ランシドのメロディーの良い部分も残しつつ、ちょっと壊しつつというバランスがうまく取れて、自分たちらしいものになったと思います。自分たちのオリジナルと言ってもいいくらいのところには着地できたんじゃないかなぁ(笑)。
EMTG:SUMMER SONIC 2019の出演は、そのランシドと同じ日ですね。
伊藤:そうなんですよ。CDはもちろん聴いてもらいたいですけど、俺たちのステージに乱入してくれねえかな。ハハハハ。そんなことが起こったら大事件ですけどね(笑)。
藤田淳之介(サックス):お、(「Time Bomb」)やってんじゃんって(笑)。
伊藤:ギター・アンプ用意しておきましょうか(笑)。
織田祐亮(トランペット):(カバーするとき)原曲にあるパーツをカットしなきゃいけなかったところもあるんですよ。でも、隆郎さん、ランシドがとにかく大好きだから、愛着のあるパーツをカットしても、どう原曲の魅力を損なわないようにするか。あとは迫力もね。ランシドはロック・バンドですけど、僕らはジャズ・バンドですから、ギターなしでも聴き劣りしないようにっていうのは、すごくがんばってアレンジしましたね。
EMTG:スペシャルズの名前も挙がりましたが、元々、スカやスカパンクがお好きだったんですか?
伊藤:ジャズ・バンド以前に最初にバンドを始めたきっかけがパンク・ロックやハードコアな音楽だったんです。スカもランシドが元々好きで、ランシドがやっているこの軽快な音楽は何だろうって遡っていったんですよ。その後、ジャズ・バンドを始めたわけですけど、その中でも自然と、自分が好きだったもののエッセンスはルーツとして、今でも求めているところはありますね。新しいことにチャレンジはしているんですけど、そこにルーツを掛け合わせることで、すごくハイブリッドな作り方になってきているんです。今回のカバーもランシドを知らない世代が新しいものとして聴いてくれたらうれしいですね。
EMTG:TRI4THの「Guns of Saxophone」という曲のタイトルは、ひょっとしたらザ・クラッシュの「The Guns of Brixton」から来ているんですか?
伊藤:そうなんですよ。使わせてもらいました(笑)。ちょっとニヤリとしてくれる人がいたらいいなぐらいの感じで。でも、気づいてもらえたの初めてですよ。
EMTG:ランシドの「Time Bomb」をカバーしたのは、もちろん曲がいいからということもあるとは思うのですが、何かしらのメッセージやステートメントが込められているところもあるんでしょうか?
伊藤:ありますね。ジャズをやりながら、根底には何かに対して抗っているという気持ちがずっと自分の中にはあるし、ジャズ・バンドである僕らがパンク・ロックのバンドの曲をカバーしたり、タイトルに使ったりするという姿勢そのものがけっこう攻めていると思っているし。その行為自体を、パンクと思ってもらってもいいぐらいなんです。もちろん、好き嫌いはあるとは思いますけど、そのチャレンジを汲んでもらえたらうれしいですね。
EMTG:「Time Bomb」のカバーもその一環だと思うのですが、今回は、“踊れる、叫べるジャズ”に加え、“歌える”というワードがコンセプトの1つとしてあったそうですね?
伊藤:“踊れるジャズ・バンド”というキャッチフレーズを掲げ、ノレる、アガれるということをテーマに活動してきて、前作の『ANTHOLOGY』ではさらにステップアップして、踊りながらコール&レスポンスで叫んでもらう楽しみ方を提案させてもらったんです。今回はキャッチーなメロディーを、みんなで会場一体になって歌うことができたらライブ・バンドとしてもっとおもしろいよねってところが目指すテーマとしてありました。今年は、ジャズ・バンドである僕たちが夏に開催されるロック・フェスティバルに出演するという念願がいくつも叶うんですけど、そこでシンガロングできる曲を作ろうと全員が意識しながらトライしたんです。
EMTG:キャッチーなメロディーを、みんなでシンガロングしたいと考えたのは、ジャズ・ファン以外のお客さんも増えてきたからというところもあるのでは?
伊藤:そうですね。ジャズ・バンドと謳ってますから、結成当初はやっぱりジャズ・クラブで演奏することが多かったんですけど、13年やってきて、ここ数年はロック・バンドが普段やるようなスタンディングのライブハウスで演奏することがメインになってきたこともあって、盛り上がれるライブをするというところはかなり認知されてきたと思います。確かにロック好きのリスナーが増えてきて、ファン層のウェイトが少しずつ変わってきたという実感はあります。
EMTG:それなら、さらに新しいことにも挑戦してみよう、と。
伊藤:昨年、自分たちのキャリアの中で、初めてメジャー・レーベルからリリースさせてもらった『ANTHOLOGY』というアルバムは、名刺代わりのベスト・アルバムという位置づけで、ライブの定番曲を含め、自分たちの代表曲を再レコーディングしたんです。今回はゼロからカバー以外は全曲、新曲で作るというところで、挑戦と今現在のTRI4THのかっこいいところを凝縮したものにしたいと考え、歌うことも含め、変わる覚悟を持ちながら制作に臨みました。結果、サウンドも実際、変わっているんですけど、何のために変わっていくのかと言ったら、自分たちがこのバンドを続けたいからなんです。そういう意味では、楽しさの中にもいろいろ意気込みが散りばめられているんです。そういうところもぜひ聴いてもらいたいですね。
EMTG:“歌える”というコンセプトを具現化するため、ボーカルを加えること以外にトライしたこともあったんでしょうか?
伊藤:今回、曲のバリエーションに富んだアルバムになっていると思うんですけど、ボーカルが入っていない曲もホーン・セクションが奏でるメロディーはキャッチーで、みんなが口ずさめるようにというところは、曲を作ったメンバーそれぞれにイメージしながらトライしていると思います。
EMTG:バリエーションに富んだ曲作りを意識したんですか?
藤田:被らない曲を作ることは意識しました。もちろん、似たような曲もできるんですけど、その中で勝ち残った曲がアルバムに入っているんですよ。ジャズ・バンドの場合、プレイで幅を作るってことが多いと思うんですけど、僕らはロックやポップスと変わらずに、いいメロディーの曲をどんどん作りながら、より良い曲を選んで、その中でプレイも磨いていくというスタイルなんです。中には、“ジャズってどの曲も同じに聴こえる”という人もいるかもしれないですけど、そういうふうにはならないように作るようにしています。
関谷友貴(ベース):ボツになった曲は、収録されたものの5倍あるんですよ。
EMTG:歌うこと以外に新たなことに挑戦した曲はありますか?
藤田:オルガンですね。
EMTG:あ、そうですね!
竹内大輔(ピアノ):これまでレコーディングでは、必ず生ピアノを使っていたんですけど、今回、「Shot the Ghost」という曲で初めてハモンド・オルガンを使いました。キーボードでは弾いたことはあったんですけど、本物のハモンド・オルガンは初めてで。四苦八苦しながらレコーディングしたんですけど、“こうすれば、こういう音になるんだ”という発見もあっておもしろかったし、勢いのある曲だったので、いつもだったらピアノで連打するようなところを、和音を伸ばして、音色を歪ませるというアプローチも試せて、世界が広がった感じはありました。
EMTG:どんなきっかけで、ハモンド・オルガンを使おうと思ったんですか?
竹内:隆郎さんが作った曲だったんですけど、曲ができたとき、“オルガンで行こうか”って。これまでアルバムを作るってなったとき、当たり前のようにピアノを弾いてきたんですけど、音色が変わることで、さらに新しい自分たちを見せられるんじゃないかということは前作ぐらいからアイディアとして出てはいたんです。
伊藤:オルガンを使って、がーんと歪ませて、いろいろな音色を使ったほうがおもしろいかもねってずっと言ってたんですよ。それがハマる曲が今回、ようやくできたんですよ。
EMTG:なるほど。歌以外にもいろいろ新しいことをやってみようという空気があったわけですね。
藤田:そうですね。メロディーに関しても、ジャズっぽいラインを使ったほうがさまになりやすいんですけど、口ずさめるようなメロディーにすると、コードも簡単になっちゃうから、ジャズのアドリブをしようとすると、逆にめちゃめちゃ難しいんです。ドドソソドドソソミレミレド、みたいな(笑)。それをかっこよく聴かせるには、音自体に説得力を持たせないといけないというところでは、音色に関してもチャレンジングなことは、どんどんやろうという流れはありましたね。
関谷:録音もね。録りの段階から、(佐野元春、東京スカパラダイスオーケストラ、星野源他を手掛けている)渡辺省二郎さんという素晴らしいエンジニアに参加していただいて、省二郎さんのアイディアもたくさんいただきながら、曲ごとに録り方を変えたり、スタジオを変えたり、録り音を変えたりして。
織田:中には、最初、自分たちが考えていたものとは全然違うサウンドを提示していただいてできあがったものもあるんです。そういうチャレンジは今回、たくさんありましたね。
関谷:それが音色の広がりにも繋がって、バリエーションに富んだ楽曲ができたと思うんですよ。前作もミックスだけ省二郎さんに頼んだ曲が何曲かあって、その中で「Full Drive」はヘッドホンで聴くと、普通、真ん中にいるドラムが左にいたり、ピアノが右にいたり、昔のビートルズみたいな感じになっているんです。それがメンバー全員、お気に入りで、今回、省二郎さんに全曲参加してもらったんですけど、「Landscape」という曲はリズム・セクションの定位をずらして、すごく聴き応えあるものになっているので、ぜひヘッドホンで聴いてもらいたいですね。
EMTG:「Landscape」は動くベースラインがすごくかっこいいですね。ベースはエレキは使っていないんですよね?
関谷:TRI4THは基本的にウッドベースを全編で使うというコンセプトでやっているんですけど、今回、新たな試みとして、「BANDWAGON」という曲だけエレクトリック・アップライト・ベースを導入しました。この曲のドラムは狭いスタジオでばしっとコンプレッサーを掛けてタイトな音でレコーディングしたんですけど、“せっかくだからベースも変えてみよう”というアイディアを、省二郎さんからもらったので、ちょっととがったエレキとウッドの中間ぐらいのサウンドを狙いました。言ったらマイナー・アップデートですけど(笑)、それはそれで新しいTRI4THの音になっていると思います。「Hasty Rag」のめちゃめちゃ高いレンジで鳴っている淳之介のサックスもすごいですよ。普通、ソプラノ・サックスを使うと思うんですけど、そのままテナー・サックスでやってますからね。
藤田:中高生は吹けないと思います(笑)。なぜ(ソプラノに)変えなかったんだろ?(笑)
織田:すごくがんばってる感じを出したかったんでしょ?(笑)
藤田:そこだよね。
伊藤:それは大事だよ。
織田:僕も「Wake up」で新しい楽器を吹いているんですよ。
伊藤:「Wake up」は全部、1人でやっているんだよね?
織田:1人で数十人分の楽器を重ねているんです。トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバを持っていって、省二郎さんにマンツーマンで録ってもらうっていう。大先輩ですからね、すごく緊張しました。最後の「Sing Along Tonight」をモチーフにアレンジして、「Wake up」を作ったんですけど、最初は「Sing Along Tonight」がアイリッシュ音楽をモチーフにしているから、思いきってバグパイプで始めてみたらどうだろうって。でも、やっぱり自分たちらしくて、新しい、おもしろい始まり方にしたほうがいいと考えて、現在のブラスバンド風のアレンジにしたんです。今、ライブの登場のSEとしても使っているんですよ。
EMTG:伊藤さんはドラマーとしては、どんなチャレンジがありましたか?
伊藤:うーん、正直、ドラムよりも歌のウェイトのほうが大きかったです(笑)。 
織田:「Sunny Side」っていうオーセンティックなスカを、今回、初めてやっているんですけど、その曲のドラム、僕、大好きですよ。
伊藤:ああ、あのテンポのスカをやるのは初めてだったので、言われてみれば、確かにドラムの音色は新しい感じになっていますね。
EMTG:「Night Dream」のベースラインはラテンっぽいですね。
関谷:そうですね。あれは竹内っちゃんの作曲で、ラインは決まってたんですよね。
竹内:いや、決めてないよ。
関谷:あれ、俺が決めたんだっけ。いろいろ作ったから忘れちゃったよ(笑)。
織田:ジャズって即興で作ることが多いんですけど、今回、リフやベースラインを、敢えてきちんと決めて、ポップスライクに作ったっていうのは作り方として大きなチャレンジでしたね。それをやったことで、曲の尺も今までよりも少しきゅっとして、全12曲を39分にまとめることができたんです。以前のTRI4THは1曲5分ちょっとあったんですけど、それもあって、今回はキャッチーと言うか、ジャズに慣れていない人にも届きやすいものになっていると思います。
EMTG:今回のアルバムをきっかけに、さらにファン層が広がりそうですね。
伊藤:そうですね。特に今年は、すでにGREENROOM FESTIVAL ’19、百万石音楽祭2019~ミリオンロックフェスティバル~に出演させてもらいましたけど、これからJOIN ALIVE 2019があったり、SUMMER SONIC 2019があったりと、そういうロック・フェスで、“TRI4THって知らないけど”ってふらっと僕らのライブに足を運んでくれた人が聴いてくれる可能性が高いのかな。そこで、“なんだろう、このかっこいいホーン・バンドは!”って思ってもらったことをきっかけに新しいアルバムを聴いてもらえたら、僕たちのことを、絶対に好きになってもらえると期待しています。出会ってもらえたらうれしいですね。

【取材・文:山口智男】

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リリース情報

jack-in-the-box

jack-in-the-box

2019年07月10日

SME

1. Wake up
2. ぶちかませ
3. Time Bomb
4. Shot the Ghost
5. Go Your Way
6. Sunny Side
7. Landscape
8. BANDWAGON
9. Stinger
10. Hasty Rag
11. Night Dream
12. Sing Along Tonight

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

SING ALONG TOUR
10/13(日)仙台 MACANA
10/18(金)大阪 MUSIC CLUB JANUS
10/19(土)福岡 BEAT STATION
11/02(土)札幌 BESSIE HALL
11/16(土)広島 セカンドクラッチ
11/17(日)名古屋 ボトムライン
11/27(水)マイナビBLITZ赤坂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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