Nulbarich、第二銀河を意味するミニアルバム『2ND GALAXY』 

Nulbarich | 2019.11.05

 12月1日のさいたまスーパーアリーナ公演に合わせた、キャッチーなタイアップ曲を中心に作られたタイムリーなミニ・アルバム。そう思って何気なく聴き始めたら、これがとんでもない作品だった。ルーツにあるヒップホップ的感性をベースに、新しい要素をたっぷりと盛り込んだNulbarich流ミクスチャーの最先端には、これまでにない興奮と感動があった。Nulbarichはどこまで進化し続けるのか? JQの胸の内を聞こう。

EMTG:Nulbarichの音楽に、また新しい何かが投げ込まれた感じがします。
JQ:僕たちは自分の居場所をあえて決めずに、街作りをしているというよりは「クエスト(探求)する」感じに近いというか。自分たちのレベルが上がれば隣の街に行って、自分たちにフィットしているものを探すというか、その時に一番フレッシュで一番いいと思ったものを素直に出すことをずっとやってきてるんで、変わって当然という気はしています。でも元々の音楽の基盤は変わらないというか、むしろ変えられないものだから、その時にフレッシュだと感じた音楽のエッセンスに関しては思いっきり入れないと、中途半端になっちゃうと思うんで。そういう意味で、僕たちに限らずですけど、いろんなものに挑戦しやすい時代になってきてるなという気はします。ジャンルというものがなくなってきてるというか、もう縛りはないのかなと。
EMTG:まさに。そうですね。
JQ:だから先読みしてるというよりは、普通に暮らしてて聴く音楽として、インプットするつもりもなく入ってくるという感じに近いです。ヒップホップ業界が僕のベーシックにはあるんですけど、今のホップヒップの「トラップ」の文化はけっこう無敵状態で、あのビート感があればどんなジャンルでも入れられる。リル・ナズ・Xみたいにトラップにカントリーを入れたり、ポスト・マローンみたいにロックを融合させたり、ヒップホップは柔軟にいろんなものを取り込める文化なんで、Nulbarichの柔軟さはヒップホップから学んでる気はします。
EMTG:そもそも前作『Blank Envelope』を出した後に、描いていた方向性はあったんですか。
JQ:去年武道館に初めて立った時に、もっと行ける気がしたというか。終わった時に「ああよかった」じゃなくて、ステージ上で次の景色が見えてたからその日は楽しくて、もっと規模を上げたり、もっといろんなマインドをゲットするにはどうしたらいいか?とか、すごく良質なインプットが武道館では得られたんで。そこでバーッと作ったのが『Blank Envelope』なんですけど、そのぐらいのタイミングでさいたまスーパーアリーナが発表になって、武道館よりも大きいキャパシティの中で自分たちが何を奏でるのか?を念頭に置いて、それを基準に作られたミニ・アルバムではあるかなと思います。今まで音色がかなり多かったり、迫力があったんですけど、今回はわりとシンプルに「広く遠くまで届けられる音を」と、勝手に自分の頭がコンポーズしてたのかなという気はしますね。
EMTG:それはコンセプトというよりは、心が命ずるままにというか。
JQ:そうですね。コンセプトを決めてアルバムを作っちゃうと、僕たちっぽくないというか、1曲ずつ作っていって、それをDJがうまく繋げてセットリストを考える感覚に近いので。1曲1曲は僕の完全な思い込みで書いていて、それは相手が喜ぶためではなく、ファンに対する思いとか、家族に対しての思い、僕の一方的な思いが入ってるんで。こういうインタビューとかで「今回の作品はどのような思いで」「どのようなコンセプトで」と聞かれるんですけど、単純に「今の僕です」という以外にないんですよ。今回もタイアップが付いている楽曲がけっこうあるんですけど、それも「こういうふうに作ってください」というのはあんまりなくて、「私たちはこういうふうにやりたいんですけどいかがでしょう」と言われて、「じゃあ僕は僕の独断と偏見で、この作品に対しての思いを作らせていただきます」というものが多いんで。だから答え合わせが必要ないんですよね。
EMTG:タイアップといえば、映画『HELLO WORLD』に提供した「Lost Game」は衝撃的でしたよ。Nulbarichとしてすごく新しい、壮大なロック・バラード。

Lost Game (HELLO WORLD Music Video edition)
JQ:『HELLO WORLD』に関しては、OKAMOTO’Sが映画のサントラを作るプロデューサーの立ち位置にあって、仲いいミュージシャンをかき集めて曲を作るというやり方だったんですけど、いろいろ決まっていく中で、最後に一番壮絶なシーンでかかる曲だけ決まってなかったみたいなんです。それで僕たちにお話があって、とんでもないハードルだなと思ったんですけど(苦笑)。初めて映像を見せてもらった時は、音声のほかには絵コンテや骨組みのアニメーションだけのラフな状態だったんですが、逆に想像力が湧いたんですよ。すごく壮大なシーンで、「自分がもし主人公だったらどんな思いで嘆くんだろう?」と思って書いた曲です。主人公が抱く「世界なんて大っ嫌いだ」という感情は、僕自身は日常では感じないけれど、彼の立場になって自分が言葉を発信するならば「こういう言葉しか出てこないだろうな」と思うシーンだったんで、逆に自分たちでは描けなかった部分を見出してくれた映画だと思います。
EMTG:これは、ファンはいい意味でビックリしたんじゃないですか。
JQ:出来上がった時に、僕もちょっと不安でしたね。僕たちがやることが僕たちらしくないなんてありえないんで、「違う」とは思わなかったけど、別の一面を見ちゃったという部分が自分の中であって。いつも自分たちの想定範囲外の曲が出来た時に、一番迷うのは「ライブどうしよう?」なんですよ。でもアルバムの中に落とし込めたということは、ライブにも落とし込める道はあると思うんで、なんとかまとまったと思います。
EMTG:映画といえば、「Kiss Me」はアニメ映画『キャロル&チューズデイ』に提供した楽曲のリアレンジ・セルフ・カバー。
JQ:元々アニメの主人公が歌っていたものをNulbarichらしくリアレンジして、自分たちの曲としてアレンジし直しました。この映画はすごく面白い設定で、舞台は未来で50年後の火星、チャートにランク・インしてる音楽はAIが作曲してるんですよ。そこに10代の若い2人が、「私たちは自分で曲を作りたい」と言って立ち向かっていく。だから歌詞を書く時に、ケータイとか学校とか、高校生らしいリアルなワードを入れたいなと思ってたんですけど、その未来に何が当たり前かわかんないし、ケータイがないかもしれない。だからリアルというよりはメルヘンな方向に行って、こういう歌詞ができた時に、「これは自分たちにも落とし込めるかも」と思ったのと、単純にすごくいい曲になったので、いつかセルフ・カバーしたいなと思ってた曲です。
EMTG:タイアップはもう1曲、「シチズンxC」のCMに使われた「Look Up」。

Look Up (Lyric Video)
JQ:この曲は元々ラフ・スケッチがあって、歌詞の世界観も元々ありました。CMの話をいただいた時に、シチズンのコンセプトがめちゃめちゃポジティブなメッセージだったんで、この曲をブラッシュ・アップして使ってもらうのがいいと思って、そこから組み上げていきました。そもそも三拍子の曲を作りたくて作った曲で、最初はちょっと地味かな?と思ったんですよ。CMソングは派手なものを求められるので。でもゴスペル系のコーラス・ワークは派手にできたし、先方もすごく喜んでくれたので嬉しかったですね。
EMTG:個人的に一番ドはまりしたのが、6曲目「Rock Me Now」なんですよね。スペイシーなエレクトロ感と、重厚なロック・ビートと、効果的なトラップのパートと、美しすぎるメロディ。最高です。
JQ: 「Rock Me Now」は、去年のパリコレを見ていた時に、ルックの世界観が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とかあのへんの、80年代や90年代の世界観がけっこう多くて。僕がその時代の好きな音楽というと、90年代のジャジー・ヒップホップとかになるんですけど、そこにはないトゲ感みたいなものがルックに出ていて、「これってレペゼンどこなんだろう?」と思ってスタッフやメンバーと話してた時に、「ここの影響は絶対グランジやオルタナでしょ」と。そこでグランジやオルタナをもう一回聴き直してみたのと、元々この曲の前身になる曲があって、アパレルブランドのポップアップイベントで音楽担当のキュレーターとして参加した時に作った曲だったんですよ。それで、今パリコレで来てるような90年代の感じの要素を音でどうやって表そう?と思った時に、そのへんの音をもう一回リメイクして、この「Rock Me Now」ができました。自分たちに今までなかった曲調だし、そういう経緯をたどって出来た曲なんで、影響を受けたものたちにはすごく感謝してます。
EMTG:このミニ・アルバムは本当に流れが良くて。エレキ・ギターが泣きまくるイントロでワクワクさせて、美メロ・ハウスの「Twilight」でグッと盛り上げて、メロディアスな「Look Up」で畳みかけて、「Kiss Me」でメルヘンチックに、「Get Ready」でファンキーに攻めて、壮麗な「Rock Me Now」を経て「Lost Game」で感動的に終わってゆく。ミニ・アルバムならではの、スピード感ある起承転結が素晴らしい。
JQ:ありがとうございます。イメージとしては、長めのイベント・ライブぐらいの感じですね。
EMTG:そしてアルバム・タイトルが『2ND GALAXY』。これは?
JQ:これは比喩として使っているんですけど、僕も含めてメンズという生き物がみんな通るものとして、「深夜の宇宙話」というものがあるじゃないですか(笑)。「1ST GALAXY」というのは今僕たちが見ている宇宙で、無限の宇宙に対して人類はいろんな可能性を感じて、宇宙に希望を託して何千年も調べてきて、それでも未だに宇宙の果てを知らないという、それが今みんなが共有している「1ST GALAXY」。それに対して、ある人間の脳みその中にある想像の世界を『2ND GALAXY』として比喩してる。想像は宇宙と同じで、どこまでも無限に広がるから、「僕自身の中にも宇宙がある」という前提でこのタイトルにして、ジャケットもそれをイメージしてます。大人になるにつれて、知識が入ってくると、自分の頭の中にある宇宙を自分の中で有限にしてしまおうとするじゃないですか。ちっちゃい子供が宇宙に憧れて想像を膨らませる様子をこのジャケットで表現しているんですけど、僕の中でキーなのは、その夢がちょっと叶い始めてるということ。彼の頭の中の世界が、現実に本が浮いたり靴が浮いたりして、想像したことが現実にも起こり始めている。それが今の僕たちに近いというか、「いつか武道館に立ちたい」と思っていたのも、想像できたからこそ叶ったわけで、「自分たちの夢が動き出してるのかな?」と思ったんで。このアルバム・タイトルとジャケットには、無限を無限のままにしておく美しさが込められてます。それが今の自分たちが一番感じていて、忘れたくないことなので。
EMTG:コンセプトはないと言いながら、結果的にすごいコンセプチュアルに着地したんじゃないですか。
JQ:そうですね(笑)。今をギュッとやると自然にまとまるというか、今まで感じてきたこと、海外で制作したこと、大きいところでライブをすること、そうやって日々新しいものを追い求めてる時のほうが自分の人生はワクワクするんで、それが自然に出たんだと思います。新しい一手を打つときはビビリももちろんあるんですけど、リスクがないと新しいものは手に入らないし、想定内のものは新しくないじゃないですか。そのスリルをポジティブで覆いかぶせるというか、ネガティブな部分を見えなくしたほうがいいなという、そういう気持ちで「俺たちって無限だよね」って、「俺たちの脳みその中を見せてやるよ」みたいなアルバムです。
EMTG:かっこいい。
JQ:今必然に起きてることは、いろんな積み重ねだとわかってるんですけど、そこに奇跡がないと僕たちはここまで来れてないんで。想定外の何かの流れが絶対あると思っている、そう信じざるを得ない人生なんですよね。特にデビューしてからの3年間は。そういう思いも入ってると思います。
EMTG:12月1日のさいたまスーパーアリーナ。楽しみにしてます。
JQ:僕たちが今出せる全てを出して、ここからまた次のステップへ行きたいです。やらないと次が見えないので、しっかり準備して、先のことは12月1日にステージに立った後に考えようと思います。

【取材・文:宮本英夫】

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リリース情報

2ND GALAXY

2ND GALAXY

2019年11月06日

ビクターエンタテインメント

01.Intro
02.Twilight
03.Look Up
04.Kiss Me
05.Get Ready
06.Rock Me Now
07.Lost Game
08.Outro

お知らせ

■マイ検索ワード

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■ライブ情報

Nulbarich ONE MAN LIVE -A STORY-
at SAITAMA SUPER ARENA

12/01(日) さいたまスーパーアリーナ

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EXPERIENCE Vol.1
11/22(金) 幕張メッセ イベントホール

COUNTDOWN JAPAN 19/20
12/29(日) 幕張メッセ 国際展示場1~11ホール、イベントホール

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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