千葉県スリーピースロックバンドThis is LAST、初の全国流通盤『aizou』

This is LAST | 2019.11.20

 YouTubeにアップロードした「愛憎」のMVの再生数が着々と伸び続け、大きな注目を集めているThis is LASTが、初の全国流通盤『aizou』をリリースする。この3ピースロックバンドの音楽の魅力として、まず何よりも挙げられるのは、赤裸々な描写だ。美しい感情ばかりで成り立っているわけではない人間の様々な営みを、ストレートで生々しい表現を交えながら楽曲に刻んでいる。これまでの活動の中で確立してきた作風を深化させつつ、新境地も切り拓いている本作は、幅広い人々に彼らの魅力を伝えるに違いない。

EMTG:どういう経緯で結成されたバンドなのでしょうか?
菊池陽報(Vo.G):僕が高校2年生の時にギターを始めて、弟(りうせい)とバンドを始めたんです。このメンバーになってからは、「音楽をやって生活をしていきたい」という気持ちも固まったんですけど、何をやっても手応えがないままでした。そして、付き合ってた女の子に盛大に浮気されまして……というか、僕は付き合った人、全員に浮気されてきたんですけど(笑)。
EMTG:なるほど(笑)。
陽報:それで、「もうなんでもいいや!」ってなった気持ちを音楽にぶつけたら、もともとやってたジャンルとは違うタイプの曲ができたんです。それを「すごくいい。こっちをやった方がいいよ」ってメンバーに言ってもらえて、今のThis is LASTが誕生しました。
EMTG:もともとやっていた違うジャンルって、どんな音楽だったんでしょう?
陽報:めっちゃ激しいのをやってました。
EMTG:みなさんの地元の柏は、ハードコアが盛んですよね?
陽報:はい。「柏のライブハウスは、ハードコアしかないんだ」っていう錯覚を起こすくらいハードコアのバンドがたくさん出てるんです。それで、「俺もハードコアをやりたいな」ってなったんですよね。
EMTG:バンドの方向性が変わるくらい、彼女の浮気がショックだったということですね?
陽報:はい。当時は、「なんでこんな想いをしなくちゃいけないんだ?」っていう感じでしたから。起きてから寝るまで、ずっと不安や落ち着かなさが続いて、感覚がおかしくなったのが今も曲に反映されているんだと思います。
EMTG:りうせいさんは、そういうお兄さんの状況を、どのように見つめていたんですか?
りうせい(Ba):僕は1年くらい音楽をやめてるんですけど、心に穴があいてる感覚があったんです。その期間にいろんなことがあったという話を僕は聞いていて、「そういうのを歌詞にしてみたらいいんじゃない?」って言ったんですよね。それで「歌詞書いたから」って聴かせてもらったら、「なんだこれは? すごいな!」って思ったんです。アキ(陽報)の書いた曲が、僕が抱えてる穴を埋めてくれた感じもして、「また一緒に音楽をやりたい」ってなりました。
EMTG:音楽をやめていた時期は、何をしていたんですか?
りうせい:看護学校に通ってました。頑張ってたんですけど、曲を聴かせてもらったと同時に、「学校やめます!」っていうくらいの感じでしたね。
陽報:ハードコアをやり続けてた自分としては、葛藤もありましたけどね。今のような曲は、もともとは軟弱なものとして捉えてたので。でも、今の方向になってから価値観が全く変わったというか、曲への思い入れ、愛情が初めて生まれた感じです。ハードコアをやってた頃は、「かっこいい! こういうのをやりたい!」っていうだけでやってたんですけど。
りうせい:やっぱり、歌詞が大きいんだと思います。歌詞が生きてるというか。アキが書いた歌詞に命が宿ってる感じが、初めてしたので。「アキが、そこにある」っていうような感覚でした。
EMTG:鹿又さんは、バンドが大きく変化していく様を、どのように感じていたんですか?
鹿又輝直(Dr):僕と陽報は一緒に過ごすことが多くて、いろんな相談も受けてたんです。だから変わっていく過程は、ずっと肌で感じてましたね。僕たちは「いつか売れる」っていう、根拠のない謎の自信はずっとあったんですけど(笑)。
陽報:なんの反応も得られてなかったのに(笑)。
EMTG:(笑)。でも、今のスタイルになって、たくさんの反応を得られるようになったわけですね。YouTubeにアップした「愛憎」のMVの反応が、ものすごいじゃないですか。
This is LAST「愛憎」MV
陽報:はい。すごくありがたいことです。でも今の形になってからも、反応をいただけるまでには、ある程度時間がかかりました。反応をいただけるようになったのは、最初に作った曲をちゃんと形にして、CDにして、MVも作った辺りからです。
EMTG:最初に作った曲って?
陽報:今回のCDの曲じゃないんですけど、「殺文句」です。あそこから大きく変わりましたね。その直後、ほぼ同時期に作ったのが「愛憎」です。
This is LAST -『殺文句』MUSIC VIDEO
EMTG:「愛憎」のMVの視聴数は、どんな感じで伸びていきました?
陽報:ちょっとずつ広がっていってくれてる感じでした。多分、初めて聴いた人が広めてくれて、それが連鎖していったんだと思います。
輝直:爆発的に伸びる感じではなかったよね?
陽報:うん。じわじわという感じでした。自分としても一気にハネるような形は、あまり価値を感じてなくて。どちらかと言えば、ひとつの曲がしっかりと定着してほしいという気持ちがありますので。曲とじっくり向き合ってくれた人が周りに教えてくれるというのが、自分たちの土台というか。そういう土台を大切にしながら活動してます。
EMTG:今回の作品は、初の全国流通盤ですが、どのような1枚にしたいと思っていました?
陽報:この作品を作る前から自分たちは曲を作って、ライブハウスでやってきたので、そういう今までの過程も全部昇華させたいと思ってました。そして、今までのThis is LASTを聴いていてくれた人たちへの気持ちとしては、「今までのThis is LASTを、いい意味で壊したい」っていうのもあります。そこから新しく広がるものも作りたかったので。例えば、「This is LASTといえば失恋ソング」みたいなことも壊したかったですし、自分の実体験や、自分の視点とはまた別のものも表現したかったんです。
EMTG:「バランス」は、ご自身の視点とはまた別の曲ですよね?
陽報:はい。まず歌詞を書いて、一人称を女性の「私」にしたら、女の子の気持ちの曲になるかもしれないと思ってやってみたら、そうなったのが「バランス」です。だから、ある種の遊び心も加えて、This is LASTの要素を増やしていくような感じもありましたね。でも、今までの芯もブレてないと思います。
EMTG:前半の「愛憎」「アイムアイ」「見つめて」は、今までのThis is LASTのイメージと重なる3曲で、後半の「バランス」「帰り道、放課後と残業」「サンドバック」で、新しい作風が発揮されているという印象です。
陽報:そういうものになってると思います。
EMTG:特に前半の3曲は、ものすごい赤裸々な描写もしていますよね。
陽報:人に言えないようなことは敢えて歌詞に入れるようにしています。そこを省いたら綺麗になっちゃうので。実際のその時の自分の気持ちや状況は、絶対に綺麗なものではなかったはずですからね。
EMTG:例えば「愛憎」は、まさにそうですね。もうすべてが終わっているのがわかっていても終わらせることができなくて、彼女への愛が憎しみに変わっていくばかりの自分が嫌になっている様が生々しく伝わってきます。
陽報:相手が浮気してるのがわかっていても、それを言ったら終わってしまうかもしれないし、言わなければ一緒にいられるけどつらい……っていう状況だと、感覚がいろいろ狂ってくるんですよね。
輝直:ドロドロしていて美しくないから、リアルなものになってるんだと思います。こういうことを感じてる人はたくさんいるでしょうし、そういうのがしっかり出てるところが、僕も好きです。
陽報:書いた後は病みますけど(笑)。いろいろ思い出しますから、その時の感覚にまたなっていくんですよ。でも、それくらいの感じで作る方がいいんでしょうね。
EMTG:風景や物語も、すごく描写しますよね?
陽報:はい。人に何かを伝えるには、5W1Hというか、ちゃんとそういう描写がないといけないと思ってるんです。いつの季節で、その時にどう感じたのかとか、何時何分なのかとか、どういうタイミングで、どこでなのかとか。だから、例えば「見つめて」にも《横浜》っていう具体的な場所が出てくるんですよね。具体的に書かないで、聴き手がいろいろな捉え方ができるというのも大事ですけど、This is LASTの歌詞は自分の実際の経験が土台になってるんです。
輝直:悲しい歌詞なのに、楽しかった思い出とかの描写も出てきて、最終的にそれが崩れ落ちたり、対照的なものがあることで深みが生まれてるというのも、僕は感じてます。
りうせい:僕は、よく歌詞について相談されるんですけど、アキは、すごくわかりやすいところがあるんですよ。自分の中ですんなりとハマってる歌詞と、適当に書いた歌詞が、読むとすぐにわかるので。そういうのを僕は客観的に見て、「ここは自分でもハマってないと思ってるよね?」って言うようにしてます。
陽報:僕に足りていないことはりうせいが言ってくるし、りうせいに足りていないことは僕が言うし、っていう感じなんですよね。やっぱり兄弟ですし、お互いに考えてることは、わかるので。でも、どっちも譲らなくなったら、最後の砦になるのが彼(輝直)なんです。
輝直:スタジオでふたりが意見をぶつけ合ってる時は、ドラムの椅子に座って黙って見守ってます(笑)。
陽報:「どっちがいい?」って訊いて、てる(輝直)が、「こっち」って言ったら、僕たちは素直に納得します(笑)。今のこの3人は、そういういい関係にもなれてますね。「自分たちにないものを伸ばそうとするのではなくて、自分たちが持ってるものをいかに武器にできるか?」を考えるようにしてます。
EMTG:そういう中で新しい作風も生まれてきているんですね?
陽報:はい。自分が今まで書いてきた歌詞の応用というか。例えば、「帰り道、放課後と残業」は、恋愛の曲ではないですし。僕は高校を卒業して大学に入ったんですけど、「ロックスターになる」って退学届けに書いてやめたんです(笑)。
りうせい:それ、僕のところに写メが送られてきました(笑)。
陽報:でも、生活のこともあるし、親を不安にもさせたくなかったので、バンドをやりながら社会人をしたり、フリーターをしたり、職を転々とした時期があったんです。「帰り道、放課後と残業」は、その時の自分の心の移り変わりというか。まあ働いてたのも、浮気されてた彼女に貢ぐためだったんですけど(笑)。そういう点では他の曲と繋がってはいるんですけど、派生したところに、自分が描けることはまだいろいろあるって思いました。
EMTG:バンドとしての表現の広がりを感じている中、今後、どのような活動をしていきたいと思っていますか?
りうせい:あなたたち(陽報と輝直)は、具体的な夢があるよね? 新木場にcoldrainをふたりで観に行って、「やべえ。絶対にここに立つ!」ってLINEに書いてたから。
輝直:まあ、そこに立つための小目標を、まずは達成しないと。まずはツアーの各地をソールドアウトさせたいし。
陽報:そうだね。バンドとしては、地元の柏に大きくなって戻りたいという気持ちもあるんです。お世話になった人がたくさんいるので、恩返しもしたいですね。そしてなんと言っても、今、This is LASTといてくれる人と一緒に、壁をひとつひとつ越えていきたいと思っています。

【取材・文:田中 大】



This is LAST Mini ALBUM『aizou』トレーラー映像

tag一覧 This is LAST アルバム インタビュー 男性ボーカル

リリース情報

aizou

aizou

2019年11月20日

KURAMAE RECORDS

01. 愛憎 (MV曲)
02. アイムアイ
03. 見つめて
04. バランス
05. 帰り道、放課後と残業
06. サンドバック(CD ONLY)

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

This is LAST『aizou』Release Tour 2019-2020 “a,a”
11/22(金) 札幌COLONY
11/23(土) 札幌タワーレコードインストアライブ
11/27(水) 神戸MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
11/29(金) 広島SECOND CRUTCH
11/30(土) 下北沢ReG
12/01(日) 渋谷タワーレコードインストアライブ
12/08(日) 渋谷:JACK2019
12/12(火) 横浜BAYSIS
12/15(日) 千葉LOOK
12/16(月) 仙台MACANA
01/16(木) 名古屋APOLLO BASE
01/17(金) 大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
01/25(土) 渋谷TSUTAYA O-Crest

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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