シンガーソングライターKaco、ミニアルバム『ノルカソルカ』完成

Kaco | 2020.01.28

 昨年7月に初のシングルとしてリリースした「ミーナの水槽」を含む、Kacoの4枚目となるミニアルバム『ノルカソルカ』。より自由になった言葉とメロディー、深みが増した歌の表現力など、アーティストとしての大きな成長を浮き彫りにした作品だ。幕須介人がアレンジを手掛け、小倉博和(Gt)、伊藤大地(Dr)、伊賀航(Ba)、sugarbeans(Key)、武嶋聡(Ts,Fl,Cla)、川上鉄平(Tp)、東篠あづさ(Tb)といった第一線で活躍中のスタジオミュージシャンを迎えた全6曲。<今を、そして未来を面白がって生きていこう>――そんな思いが生き生きと描かれた本作について聞いた。

EMTG:ミニアルバム『ノルカソルカ』が完成。この1年の変化や成長が、ダイレクトに反映されているなという印象でした。
Kaco:ありがとうございます。ここ1年で書いた曲がほとんどなんですが、確かにそういう部分が出ているなと思います。私は歌手になるという夢を持って音楽を始めたんですが、まず無心でがむしゃらに突き進み、その後広い世界を見ると同時に現実も知ったんですね(笑)。壁が立ちはだかったり、向かい風が吹いたり、波に飲まれそうになったりもしたけど(笑)、それでも!っていうところが今回はすごく出ている気がします。
EMTG:そういう自分の気持ちを実感しながらの曲作りだったんですか?
Kaco:書いているときは無意識で、1曲1曲に対して向き合いながら書いていたと思います。でもこの6曲が揃ったときに、それぞれの曲の中に住んでいる登場人物というか曲の中で生きている人間は、同じ軸を持ったたった1人だなっていう感覚だったんです。共通点があるというか、ひとつの筋があるなって。
EMTG:というと?
Kaco:今回収録されている「ベイブ」という曲ですが、<面白がって生きる>ということ。悩みとかマイナスなことも含めて、全部面白がろうとしているんですよね。悩んでいるふうに見えていても、実は面白がりに行ってるやん!みたいな人間性が出てる(笑)。
EMTG:あぁ、たしかに!一度現実と向き合ったからこその軽やかさなのかもしれないですね。
Kaco:前作の「たてがみ」が去年の1月リリースだったんですが、その約1年前に、活動していくにあたっての環境がガラッと変わってしまって、1からどころか0からのスタートになったんですね。だけどそこから立ち上がって「たてがみ」を作って、去年はこれまで行けなかった地方にもたくさん行くことができたんです。それまでは弾き語りでやっていたんですが、その頃からピアノと私っていうスタイルでライブをするようになって、やっと自分がやりたい表現というか、歌いたい、見せたい姿みたいなところにも近づくことができたんですよ。自分が歌1本に専念することで、語尾のちょっとした息遣いにまで集中できたり、今まで気づけていなかったニュアンスを発見できたりして、これがベストだと思うレコーディングの時のようなテイクにより近いものが歌えるようにもなったんです。
EMTG:なるほど。
Kaco:そうするとライブ自体の感覚も変わったというか、お客さんを含めての大きな空気感みたいなものをすごく感じられるようになったので、じゃあもっと楽しませたいとかドキドキさせたいと思うようになり、そういう曲を書きたいなっていうふうに繋がっていったんですよね。
EMTG:この作品の幕開けとなる「ロマンティカ」はまさに、その要素を凝縮したような1曲ですね。
Kaco:実はこの曲、デモ音源の段階では1曲目にする予定ではなかったんです。むしろ順番的には最後かなって思ってたくらい。だけどアレンジが出来上がって、イントロを聴いた瞬間に「これ1曲目やん!!」って(笑)。タイトルも最初は違ってたんですよ。歌詞にも出てくるけど、この曲の主人公は愛の戦士(ソルジャー)的な人間。潔さがあって、周りがなんと言おうと想いを貫くようなロマンチストだなっていうところから、「ロマンティカ」っていう言葉が出てきたんです。”ロマンティカ”は、ロマンチスタが自分の中に宿している感情みたいなものかなと思っているんですけど。
EMTG:ちなみに最初のタイトルは何だったんですか?
Kaco:仮タイトルは、「逆さまの月」でした。
EMTG:歌い出しの部分に出てくる言葉ですね。
Kaco:はい。<立ちはだかる壁 6階建てのガラス戸に映る 逆さまの月>とあるんですが、これ実話なんですよ(笑)。私が住んでいる部屋はすごく眺めが良かったんですが、目の前にマンションが建ち始めて。引っ越しを考えるくらいガッカリしていたんですが、建物を覆うシートが外れた日の夜、そのマンションのガラス戸に、反射した月が写っていたんです。方角的に今まで見えなかった月が、自分の部屋から初めて見えた。悪いことばかりじゃない、いいこともあるじゃん!と(笑)。それで、諦めずそこに在り続けることで見えてくる景色ってあるんだなと思ったんです。自分の音楽もそうだし、恋愛だってそう。端から見れば「もうやめといたら?」と思われるようなことであっても、当事者の自分にしか見えない景色があるからみんな続けているんですよね。ちょっとかもしれないけど光が見えているから、みんな夢を諦めなかったり、好きな人を諦めなかったりする。そんなふうに考えながらできた曲なんです。今となっては、6階建てのマンションありがとう!って感じですよね(笑)。
EMTG:まさかそんな実話から生まれていたとは(笑)。
Kaco:ちなみに、最後に収録されている「おばけのはなし」は同時期に作っていた曲なんですが、これも実話なんですよ。
EMTG:「おばけのはなし」が実話!
Kaco:(笑)。少し前なんですが、明け方、金縛りのような状態になったことが2~3回あったんです。最初は疲れているからだろうと思っていたんですが、3回目の時は明らかに何か気配がしたんですよ。だけど嫌な感じではなく、知っている人がそこにいるような。
EMTG:<枕元 春みたいな温度>と歌われていますね。
Kaco:はい。夢かなとも思ったんですが、前髪をそっと撫でられたその感覚がすごくリアルで。私はちょっと無用心なところがあるので、一瞬生身の人間が入ってきたのかもって思うくらいだったんです(笑)。でもその後、私が小さい時から可愛がってもらっていたおじさんがその時期に亡くなっていたことを聞いて。あぁ、きっと会いに来てくれたんだなって思って書いたのがこの「おばけのはなし」なんです。
EMTG:貴重な誕生秘話ですね。
Kaco:書きたいと思うのは今自分がどういう気持ちでいるかなんだけど、それを伝えるためのエッセンスとして、日常で起こった出来事がリアリティーとして入っているというか。だからそれぞれのリアルなエピソードが、「ロマンティカ」では夢を追っている、諦めないというところに繋がっているし、「おばけのはなし」はあなたの分まで負けないでみるからねっていうふうに繋がっていきました。「ベイブ」もそう。久しぶりにあった祖母が私の名前を忘れていて「嘘でしょ!」って思ったんですが、本人はケロッとしている。家族は悲しがっているけど、祖母は祖母で今”初めての自分”を生きているんだって思ったんです。
EMTG:それ、すごく素敵な視点ですね。
Kaco:そう考えていくと、みんなそうなんですよ。私も初めて“26歳の自分”を生きているし、私の母親だって、初めて“26歳の娘を持った自分”を生きている。もうこんな歳だからとか、逆にまだまだだからとか、そんなの全然いらないことだなって思ったんです。
EMTG:歌詞にもあるように、<誰もがいつまでもビギナー>なんですよね。
Kaco:きっかけだけ見るとネガティブでシリアスになりそうだけど、そういう自分の気持ちを書けたからこそ「ベイブ」は跳ね返って元気な曲になりました。曲調もちょっとネジが外れたくらいの感じにしたかったから、こういうミュージカル調のアレンジにしたかったんです。
EMTG:インパクトがあって、とてもユニークな仕上がりのMVもぜひご覧いただきたいですね。

EMTG:さて「ミーナの水槽」という楽曲では、前作に続いて高橋久美子さん(ex チャットモンチー)と共作をされています。作詞という意味では、これも大きな経験になったのではないかなと思うのですが。
Kaco:そうですね。音楽を始めて最初の頃に書いた「いつかの話」なんかがそうですが、これまでは結構、自分の身に起きたことを中心に話を進めていくっていう感じだったんです。自分1人で最初から最後まで作っていたから、ただただノートに続きを書いていけば良かった。でも楽曲提供をしたり、久美子さんと作業をするようになって、この曲でこういうことを伝えたいからこう書くとか、こういうことが言いたいんだとか、自分の強い気持ちを最初から相手に明らかにして作っていくっていう経験をすることができたんです。
EMTG:一度客観的に見ることで、視野も広がりそうですよね。
Kaco:その結果、自分1人で曲を作るときもそういう意識を持てるようになりました。こういうことが言いたい、まずはそこから。一緒に作る相手がいたら話し合いながらやっていきますけど、今は1人であっても“自分会議”をしてます。
EMTG:自分で自分にプレゼンするんですね。
Kaco:そう(笑)。自分で自分にツッコミ入れたりしながら書いてますけど(笑)、こういう歌詞の書き方ができるようになったのは久美子さんのおかげだなと思いますね。
EMTG:いよいよ2月末から始まるツアータイトルでもありますが、今回のミニアルバムのタイトル『ノルカソルカ』。前向きで、潔いムードが伝わってくる言葉ですね。
Kaco:失敗も成功も関係なく、天に任せていこうと。これは出来てから気づいたんですが、今回の6曲って全部上を見ているんですよ。面白がってっていうのはもちろんだけど、見上げてるっていうのも天に任せてっていうのと合ってると思ったんです。「いちかばちか」みたいな意味にも取れるけど、それよりももっと意志があって見上げているからこそ天に任せようと思えるというか。そういう根っこの部分も込めたタイトルになっています。これまでも、そして2019年もうまくいかないことはあったし、失ったものだってあるけど、振り返ってみるとそんなに悪くなかったなって気がしたんですよ。マイナスなことがあったときに、それを気にしてしぼんでいっちゃうのが一番よくない。本当は何てことないんですよ、どんなことも。気にせず行った者勝ちなんだなというのがここ数年で実感したことだったりもするので(笑)、そういう意味での「ノルカソルカ」でもあるかなって思っています。

【取材・文:山田邦子】

tag一覧 J-POP ミニアルバム インタビュー 女性ボーカル kaco

リリース情報

ノルカソルカ

ノルカソルカ

2020年01月29日

spm disc

01.ロマンティカ
02.いつかの話
03.東京ベガ
04.ベイブ
05.ミーナの水槽
06.おばけのうた

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Kaco LIVE TOUR 2020「ノルカソルカ」
02/29(土) 大阪 雲州堂
03/01(日) 名古屋 sunset BLUE
03/15(日) 東京 Veats Shibuya

---------------

下北沢レコードpresents 3man Live
02/10(月) 下北沢440
w) 林青空 / and more

SANUKI ROCK COLOSSEUM 2020
-MONSTER baSH × I♡RADIO 786-

03/22(日) festhalle / オリーブホール / DIME / MONSTER / SUMUS cafe’ 瓦町駅地下広場 / FM香川786ステージ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る