“愛だの恋だのラブソングだけを歌い続けるバンド”moon drop、D.T.O.30.移籍第一弾『拝啓 悲劇のヒロイン』リリース!

ゆびィンタビュー | 2021.01.08

 2021年1月6日に、三重県伊勢市発の4ピースバンド・moon dropが、3rdミニアルバム『拝啓 悲劇のヒロイン』をリリースした。<愛だ恋だなんだ歌って/それなりに生きてこう>(「誰でもいいのだ」)というフレーズがバンドの信条をどんぴしゃで表しているが、今作もこれまでと変わらず、恋愛関係の中で生まれては交錯する感情について歌う楽曲が収録されている……のかと思いきや、1曲だけ異なる景色を歌った曲が含まれていた。そこから見えるバンドにおける変化や、今作を通じて感じたバンドの主軸についてなど、メンバー全員に話を訊いた。

PROFILE

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moon drop


 三重県伊勢市発、愛だの恋だのラブソングだけを歌い続けるロック・バンド。
 メンバーは浜口飛雄也(Vo/Gt)、清水琢聖(Gt)、坂 知哉 (Ba/Cho)、原一樹(Dr) の4名。
 2014年3月結成。2017年にTRUST RECORDS×BUNS RECORDSへの所属を発表し、2018年5月にデビューミニアルバム『花束のかわりに』をリリース。
 2019年2月に現体制へ移行。2020年11月 TRUST RECORDS × Getting Better Records共同レーベル「D.T.O.30.」へ移籍、2021年1月に3rd Mini Album「拝啓 悲劇のヒロイン」をリリース。

  • 今作は、2020年4月にリリースした1stシングル「告白前夜e.p.」以来、アルバム作品としては約1年半振りということですが、制作はどうでした?
  • 浜口飛雄也(Vo/Gt)

    追い込まれてましたね……。毎回、レコーディングの日が決まってから作り出すというか、期間を決められないとスイッチが入らないんですよ。今作は「シンデレラ」以外の6曲が新曲なんですけど、リード曲の「僕といた方がいいんじゃない」はギリギリまで本当にできていなくて、レコーディング中に作りました。琢聖(清水)が録っている時に他の3人でスタジオに入ってどうにか出来上がったんですけど、結果的にめちゃくちゃ良い曲ができました
  • 人間、追いつめられると真価を発揮するんですね。
  • 坂知哉(Ba/Cho)

    本当は余裕持って作りたいんですけどね(笑)
  • 浜口

    でも、毎回良い曲ができているので安心してます
  • 作曲に関しては、浜口さんと坂さんが共同で作っているんですか?
  • 浜口

    そうですね。僕が基になる部分を弾き語りで持ってきて、知哉が構成を考えてくれています。知哉が加入してからはずっとこのやり方でやっているんですけど、一人で作っていた時よりも幅が広がるのでやりやすいなと思います
  • 人が作った音楽の構成を考えるのは楽しいです。テンポを上げてみたり、シャッフルにしてみたり、色々と考えながら作るのが面白いです
  • なるほど。『拝啓 悲劇のヒロイン』というタイトルについてですが、楽曲を聴いてみると、引きずっているのは男性側のように思いました。
  • 浜口

    これは願望と言うか、そうあって欲しいなという想いの表れですね
  • 「僕といた方がいいんじゃない」の中には、好きな子に「ブサイク」と言ってしまったなんて描写もありますけど、そういう捻くれたところを歌いたいという想いがあるんですか?
  • 浜口

    普段言わないからこそ、歌詞の中で発散している感じはありますね。自分の言いたいことをストレートに言うことは勿論あるんですけど、自分はどちらかというと、言えないことを歌詞にしていきたいと思っています。歌にしてみると言いやすいというか、他の人もきっと、言えることより言えないことの方が多いと思うんです。ラブソングが沢山の人に聴かれている理由ってそういうところにあると思っていて、だからこそ真に受けて聴いてくれているんだと思います


  • 原一樹(Dr)

    自分がmoon dropに入りたいと思ったのもそういう歌詞に惹かれたっていうところもありますけど、それだけではなくて、歌声が凄く良いんですよね
  • 清水琢聖(Gt)

    うんうん。僕も、“飛雄也=ラブソングを書く人”とはあんまり思っていなくて。今回も1曲だけラブソングじゃない楽曲が入っているんですけど、それがまさにそうで。恋愛を歌っていなくてもちゃんと飛雄也の楽曲であるということが誇らしいというか、素晴らしいなと思います
  • 今のお話に出た「ラブソングじゃない楽曲」って、「麦埼灯台」のことですよね?恋愛以外を歌った楽曲って、これが初めてですか?
  • 浜口

    そうですね。今までラブソングばかり書いてきたというのも、それしか書けないという訳ではなく、書きたいと思えなかっただけなんです。それは単純に、自分の心が一番動くのが恋愛だったからなんですけど、このコロナ禍と呼ばれる状況になって人に会えなくなった時に、地元の友達の事をふと考えたんです。そこで、「今、友達のことを書きたい!」と思えたというのが、この曲が生まれたきっかけです
  • 僕はこの曲を最初に貰った時は、ラブソングじゃないと気付かなかったです
  • 浜口

    歌詞の意味を説明したりしないからね
  • 確かにどちらとも捉えられますよね。他の7曲に関してはがっつり恋愛ソングですけど、どの曲も、幸せの最中の話ではなく、大事な人を失った後の情景がメインになっています。そういった喪失感や憂いの感情の方を歌いたいと思うんですか?
  • 浜口

    そうですね。嬉しいっていう感情って、悲しい出来事があった時よりも感情的にならないというか、流れていってしまう気がするんですよ。だから単純に、自分が悲しいことの方が記憶に残っているんだと思います。そこで辛さが生まれたとしても、その時でしか感じられない気持ちを残しておきたいなと思いながら作っています
  • 今作の楽曲たちも、制作中に何か記憶に残る出来事があったから作ることができたんですか?
  • 浜口

    いや、今起きたことをリアルタイムに描いているというのではなく、自分の身に起きた色んな場面を断片的に溜め込んでおいて、それらを引っ張り出して繋ぎ合わせている感じです。だから、言葉に時差がある曲もあったりします。毎回そういう作り方になってますね、足し算の連続というか。時差があるからこその解釈の変化もあって、面白いなと思います
  • 歌詞とメロディの組み合わせも、繋ぎ合わせるような作り方でした?
  • 浜口

    いや、そこは全然考えていなくて、パッと浮かんだメロディを基に、何も考えずに作ってます。言葉とメロディが同時に出てくることが多いので
  • なるほど。1曲目の「Seventeen film」は、リスナーの想像力に委ねるような余白を持つ歌詞で、爽やかで疾走感のある楽曲ですよね。
  • 浜口

    そうですね、これは10代の頃の青い気持ちを思い返しつつ書いた歌詞です。実は、当時付き合っていた彼女に新しい彼氏が出来たということを知ったことで、当時の若かりし頃を思い出した、っていうきっかけがあります(笑)
  • サビのメロディが凄い綺麗だったので、余計なことをしないというか、構成自体もシンプルにしたいという意識をしました
  • ドラムは確かにシンプルなんですけど、ゴーストノートも入れつつ、シンプル過ぎないように心がけました
  • 清水

    ギターのフレーズに関して言えば、大前提として、飛雄也の歌声の邪魔をしないっていう考えがあるんですよね。だから、シンプルにする為に引き算をするというか、自ずと前に出過ぎないフレーズになっているんだと思います
  • 「歌を一番に聴かせる」という意識が、言わずもがな全員に共有されているからこそ、最も自然なアレンジになったんですね。「シーブリーズと君の匂い」は、夏を彷彿とさせる躍動感が清々しいなと思いました。
  • この曲は、Aメロが3回、Bメロが2回出てくるので、違いを楽しめるようにアレンジに変化を持たせました。演奏も、ベースとドラムは決めているけど、ギターは上で遊んでいたりして、聴いていて飽きないような工夫をしました
  • 「シンデレラ」は、前作『告白前夜 e.p.』からの再録ですが、この曲を選出した理由は?
  • 浜口

    『告白前夜 e.p.』をリリースしたのがコロナ禍真っただ中の時期で、折角良い曲を出したのにライブもできず、不完全燃焼だったんです。その上で、全体のバランスを考えたら、あの5曲の中だと「シンデレラ」が一番しっくりきたので、この曲にしました


  • 「ヒーロー」は、恋人との幸せな日常の風景を歌っているかと思いきや、「たぶんまだ君には忘れられない人がいる」という歌詞で、やっぱり憂いは外せないのか!と思いました。
  • 浜口

    ははは!そうですね、まあ、生活の中にも妥協は必要だよねっていう曲です(笑)。だから、アルバムの中で一番生活感が出ている楽曲だと思います
  • 一方、リード曲の「僕といた方がいいんじゃない」では、かなり強気な一面が伺えます。
  • 浜口

    この曲は、メロディが出来た時から、絶対にリード曲になるっていう確信がありました
  • 清水

    この曲もそうですし、今作に通じて言えることなんですけど、ギターが結構挑戦的なんですよね。飛雄也のメロディの裏で同じラインを辿るように弾いてみたりして。だから、歌の邪魔をしないという大事な部分は変えずに、新しいことも出来た作品ですね
  • 「麦埼灯台」に関しては、私自身moon dropの「オレンジ」がとても好きなんですけど、それと似たような雰囲気を感じます。90年代を彷彿とさせる哀愁の具合はまさにそうですけど。


  • 浜口

    90年代っぽいっていうのはよく言われますね。多分、癖なんだと思います。意識はしてないんですけどね
  • 皆さんの音楽的なルーツにいるアーティストって、誰ですか?
  • 浜口

    僕はback numberですね。あとは、秦基博さんも聴いていました
  • 清水

    僕はELLEGARDENをずっと聴いてました
  • 僕は、マキシマムザホルモンですね
  • 中学生の頃はASIAN KUNG-FU GENERATIONを聴いてましたし、高校生になったらメロコアをよく聴いていましたね
  • 皆さん、見事にバラバラですね。そこから今のmoon dropへ繋がっていると思うと、バンドは面白いな。浜口さんは、やっぱり私小説的なラブソングがルーツにあるんですね。
  • 浜口

    そうですね。作曲に於いて、誰かに伝えたいこととか、背中を押したいっていう気持ちはないんですよね。それよりも、自分が残しておきたいことを大事にしながら書いていますし、自己満足ではあるかもしれないですけど、僕としてはその為にバンドをやっているので。そうして出来上がった楽曲を聴いてくれる人がいて、その人に寄り添ってもらえたらそれで十分だし、感じ方は聴く人に完全に委ねています
  • 正直でいられますしね。最後の「誰でもいいのだ」は、アルバムタイトルになった<拝啓 悲劇のヒロインの君に>というフレーズが含まれていますし、ここでも<寝起きの不細工な顔>というようなワードも出てきます。
  • 浜口

    そうですね。でも、これもパンチラインとして入れたという訳ではなく、本当に不細工に見えたから正直に書いたっていうだけなんですよ。自分としては、作詞や作曲に関しては頭で考えなくていいものだと思っていますし。それは、知哉が構成を考えてくれて、メンバーが良いものにしてくれるという安心感もあるからかもしれないですけど
  • ストレスがなくて良いですね。
  • 浜口

    そうですね。ありのままで曲を作ることができていると思います。今までもこれからもラブソングを歌っていると思いますし、そういう意味も込めて「誰でもいいのだ」の<愛だ恋だなんだ歌って/それなりに生きてこう>という歌詞を書いたんです。だから良い意味で変わらず、それでも変化は見せていきつつやっていきたいですね
  • 清水

    うんうん。ライブハウスで育ってきた精神的な部分は変えずに、楽曲面での進化は見せていけたらいいなと思います
  • 今作で、あえてベースを弾かないっていう手法を初めてやってみたんですけど、それが結構好きな感じだったんです。これからもそういう風に自分が「やってみたい」と思えたことに関しては、積極的にやっていきたいなと思います
  • 吸収できるものも挑戦できることも沢山あると思うので、今までやってこなかったことを次回作までに見つけつつ、やっていけたらいいなと思います

【取材・文:峯岸利恵】

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リリース情報

拝啓 悲劇のヒロイン

拝啓 悲劇のヒロイン

2021年01月06日

D.T.O.30.

01.Seventeen film
02.シーブリーズと君の匂い
03.シンデレラ
04.ヒーロー
05.僕といた方がいいんじゃない
06.麦埼灯台
07.誰でもいいのだ

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

moon drop 3rd Mini Album
"拝啓 悲劇のヒロイン" Release Tour

01/30(土)渋谷TSUTAYA O-CREST
02/10(水)京都MUSE
02/11(木・祝)高松DIME
02/16(火)名古屋R.A.D
02/20(土)仙台RIPPLE
02/21(日)the five morioka
02/23(火・祝)八戸FOR ME
02/26(金)F.A.D YOKOHAMA
03/03(水)水戸LIGHT HOUSE
03/05(金)千葉LOOK
03/07(日)静岡UMBER
03/12(金)岡山CRAZYMAMA 2nd Room
03/14(日)福岡Queblick
03/19(金)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
03/21(日)金沢GOLD CREEK
03/27(土)神戸太陽と虎
03/28(日)伊勢BARRET

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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