キュウソネコカミの今後を期待させる会心作『モルモットラボ』

キュウソネコカミ | 2021.01.18

 「バンド結成10周年」と「干支がねずみ年」というアニバーサリーイヤーだった2020年を全力で駆け抜けるつもりだったのに、思わぬ事態に直面してしまったキュウソネコカミ。しかし、彼らは様々な予定が白紙となった日々を意義深いものにしながら過ごしていた。完成させたミニアルバム『モルモットラボ』は、メンバーそれぞれの個性を色濃く反映しながら、多彩な新境地を示している作品だ。「よくぞ歌ってくれた!」というテーマも力強く鳴り響かせている今作について、メンバーに語ってもらった。

――2020年は、ライブをたくさんやる予定でしたよね。
ヤマサキ セイヤ(Vo/Gt):そうでしたね。それが全部白紙になってしまいました。
――前作『ハリネズミズム』をリリースした時点で、すぐに次の作品を出すことも決まっていたんでしょうか?
ヨコタ シンノスケ(Key/Vo):実はそうだったんです。
セイヤ:1月に『ハリネズミズム』、6月に『モルモットラボ』という予定でした。その2枚で1つの作品になるみたいなイメージだったんですよね。
――ライブができないというのは、とんでもない事態ですよね?
シンノスケ:変な感じでした。
セイヤ:「休みは欲しかったけど、こんな休みじゃねえんだよ」って思ってました。
オカザワ カズマ(Gt):どこにも行けない休みでしたからね。
ソゴウ タイスケ(Dr):休んでるけど、精神的には休まってないというか……。
カワクボ タクロウ(Ba):なんか全体的に記憶が薄いんですよね。
セイヤ:ライブができなくて、本能を発揮する時間が少なくなったから、動物的にも駄目だったんじゃないですかね。ライブ体験って、やっぱ代えがないんです。だからぽっかり、「なんもねえ……」みたいな。
――そういう中、作品リリースに向けて動けていたのは、良かったですよね?
シンノスケ:そうですね。動きが何もないのは嫌だったんです。『三大怪獣グルメ』の公開と、「おいしい怪獣」の配信があったのも良かったですね。
――キュウソが動いているのが伝わってきたのは、我々にとってもほっとするものがありましたよ。まあ、セイヤさんの坊主頭は驚きましたが。
セイヤ:僕は先を見ずに行動することがあるんですよ。やってからめっちゃ後悔しました。もともと持ってた服も全然似合わなくなって(笑)。
シンノスケ:髪が伸び始めた頃が、丁度配信ライブをやろうとした時期だったので、「この頭でどうする?」って(笑)。
――(笑)。そんな日々を経て完成した今作は、メンバーそれぞれがプロデュースした曲が収録されている点に、まず注目させられます。これはテーマだったんですか?
シンノスケ:今回のコンセプトは「挑戦」と「実験」なんですけど、それぞれが曲を持ってきたのは別の理由というか。ちゃんと曲を作る上でのストーリーがありましたね。
――「囚」は、カズマさんのプロデュースですね。
カズマ:はい。こういうラウド系はもともと憧れがあったんですけど、キュウソではないなと思っていたんです。でも、ラウド系の対バンとか、そういうバンドのライブを観る機会が重なって、自分の中でそういうモードが盛り上がったんですよね。それでデモを作って、みんなに聴いてもらったら、「やろうよ」ということに。アレンジはみんながそれぞれやってくれて、セイヤさんがいい歌と歌詞を作ってくれました。
――思考停止に陥って、前例を踏襲することへの違和感が描かれていますね。
セイヤ:そうですね。思考停止している人がいっぱいいる感じがしていて。ツイッターとかで目立ってる人ってクールでマナーがあるように見えるんですけど、それってほんと一握り。それ以外の有象無象がめちゃくちゃにしてるっていうのが、普通に生活しててもわかるんですよ。僕らもライブハウスのこの先を守りたいし、できるだけ普段から感染を広げないように努力してるんですけど、そういうことを考えないで行動する人もいて、「この人たちって、何見て生きているんだろう?」って思ったりするんですよね。そういうことも歌詞に反映しています。
――<規模がでかくなればなるほど、長時間の調整、根回し、多数決、急かされて追われて迷走、紆余曲折を経ての原点回帰>とか、本当にこういうことってありますよね。
セイヤ:そうなんですよね。
シンノスケ:そんなニュースばかりでしたからね。
――キュウソは、いろんなことの堂々巡りになって物事が進まなくなることはなさそうなバンドですね。
セイヤ:僕らは「誰かがやれよ」じゃなくて、面白いことを思いついたやつの意見を採用する準備ができてるバンドなんです。だから例えば“オカザワプロデュース”って決めなくても、「それ、やりましょう」っていうことになるんですよ。そういうバンドでいたいです。
――カズマさん、今回、ギターの華やかなプレイをたくさん聴かせてくれていますね。「囚」もそうですし、「おいしい怪獣」や「御目覚」とか、
カズマ:やったあー!
セイヤ:長年にわたってホテルでひとりでピロピロやってきたのが、どんどん実を結んできている気がする。夜中とかに「またやってる」って思ってたので(笑)。
――(笑)。僕、キュウソは華のあるプレイヤー揃いだと前から思っていますよ。
シンノスケ:「そう思う人がもっと出てきてもいいですよ」って、前から思ってます(笑)。
タクロウ:みなさん、言うのが恥ずかしいんでしょうか?
――どうでしょう?(笑)。しかも、実は結構アグレッシブなサウンドなんですよね。そこにシンノスケさんのメロディアスなシンセが入ることによって、「キュウソだな」っていうものになっているという印象です。
シンノスケ:シンセは独特だと自分でも思います。一聴してキュウソだとすぐにわかるっていうのは、ずっとテーマだったので。
カズマ:「この曲、キュウソっぽいなって思って調べたらキュウソだった」みたいなのは、ツイッターとかで見たりしますね。
――今回の「3minutes」も「キュウソだ!」って、すごく感じる曲です。
シンノスケ:あれはザ・キュウソな音ですね。
――「3minutes」は、今歌わずにはいられない気持ちの歌ですよね?
セイヤ:はい。でも、息が長い曲にもしたくて。だから「コロナ」とかいう言葉は出さないようにして、勝手に言い表されてしまった「3密」っていう言葉を、「楽しい」っていう方向にして作りました。
――<密集!密閉!!密接!!!>って、今、一番やっちゃいけないことになっちゃいましたね。
セイヤ:そうですね。やりまくってたんですけど。「モッシュ」や「ダイブ」っていう言葉やと思ってたんですけど、漢字にしたら「密集」「密閉」「密接」だったんですね(笑)。

――(笑)。この曲から始まる今作は、グッとくるメロディもすごく発揮されていると思います。タクロウさんプロデュースの「薄皮」は、作詞もしたんですね。
タクロウ:はい。これは自分のことを歌った曲です。2018、2019年にしんどいことがあって、それが積み重なってメンバーに迷惑をかけてしまってたんです。その原因をメンバーに相談せずに自分の中だけに留めてしまったというか。今になって思うと、それはとても失礼なことだったなと。
――そういう経験が反映されているんですね?
タクロウ:はい。僕の異変、違和感に対してセイヤが「やばいぞ」ってなって、話したことがあったんです。そこから「曲でも作れば? お前は音楽ができるんだから」っていう感じになったんですよね。「今の俺の気持ちはこうやねん」ってメンバーに曲で伝えるのは、初めてのことだったんですけど。
――「自ら破れない薄皮」というようなものがイメージされる曲です。
タクロウ:「手伝って」とか「助けて」っていうのを言えない人っていると思うんです。それってすごいしんどいことで、僕もそれに陥っていたんですよね。風船の中に入ったかのような締め付けられ方があったので、「薄皮」っていうものになりました。
タイスケ:タクロウが作ってきた曲だったので、もっとテクニックに寄った曲なのかと思ってたんですけど、歌ものだったんです。キュウソでタクロウがここまで曲を作るということが今までなかったので、みんなで細かく確認し合いながらアレンジする感じでしたね。
――グッとくるメロディに関しては、ラブソングの「シュレディンガー」と「ぬいペニ」も、すごく胸に沁みる仕上がりですね。
セイヤ:こういうひんやりしたロックの曲って、初期の頃から何回か書いているんですけど、今回はその集大成というか。すごくいいものになったと思います。ピアノの感じとかもシンノスケが大解禁してくれて。今までは「キュウソはシンセだ」みたいなのがあったけど、この曲は全編ピアノです。
シンノスケ:大マジな歌詞を書いてきたから、いつも通りだと振り切れてなくて伝わらないなと思って、ピアノにしたんです。
カズマ:今までも「自由恋愛の果てに」や「メンヘラちゃん」とか恋愛をテーマにしている曲はあったけど、ここまでソリッドでひんやりした感じでやったことはなかったから、新しい境地ですね。
シンノスケ:今までの恋愛ソングって「恋愛について歌ってる」「こういうやついるよね」っていう感じでしたけど、「シュレディンガー」はもうちょっとパーソナルなんですよ。
セイヤ:僕らは「いけてない男子の集まり」みたいなところからスタートしているから、こういう曲ってなかったんですけど。これを聴いてみんながどういう反応をするのか楽しみにしています。
――「ぬいペニ」も、タイトルにも表れているモチーフは独特ですけど、すごくピュアなラブソングですね。
セイヤ:「好きになっちゃいけないんだ」って、途中で気づけた男の人の歌です。「ぬいペニ」って言葉を知ってたから気づけたんでしょうね。「これがぬいペニなんだ。まだ生えてないけど……ぬいペニになるかもしれない」って。
――サウンドはフォーク風味ですね。
シンノスケ:最初はもうちょっと情熱的なアレンジだったんですけど、それだと相当悲しい感じになっちゃって。でも、フォークだと「もの悲しい」っていうくらいのちょっと淡々とした感じで、そっちのアレンジの方が合うと思ったんです。
カズマ:この曲、ブルースハープを入れたのも実験というか。
シンノスケ:トータス松本さんの直伝なんで。いや……「直伝」って言うとトータス松本さんに申し訳ない(笑)。トータス松本さんからブルースハープを頂いたので、「曲で吹いてみたい」っていうのがあったんです。
――吹いたのは誰ですか?
セイヤ:僕です。でも、この曲で吹いてるのは、頂いたブルースハープじゃないんですよね。キーが違ったので。
シンノスケ:だったら曲のキーを変えろよ!(笑)。
――(笑)。あと、「おいしい怪獣」が素晴らしい出来栄えですね。文字通り怪獣がおいしい映画『三大怪獣グルメ』の主題歌に、実にふさわしいです。
セイヤ:そんな内容考えたこともなかったので、「ありがとうございます」という感じでした。だって、怪獣を食べる曲なんて聴いたことがないですから(笑)。これを作る時、昭和後期や平成初期の戦隊ものやヒーローもののオープニングソングとかに、ちょっとだけハマってたんです。だから<怪獣>のところに子供の声を入れたりしています。
シンノスケ:プロの子供合唱団とかエンジニアさんのお子さんの声も入っているんですけど。「みんなで歌おう!」みたいな感じですね。
セイヤ:この曲、めっちゃ気に入ってます。やりたい雰囲気が出せたから。
――『イチモニ!』のPRソングの「御目覚」もすごくいいですし、タイアップの曲を書くのが相変わらず上手いですね。
セイヤ:内容を寄せずに書く方が、逆に下手かもしれない。ちょっとだけ内容にかすらせるみたいな曲を書ける人の方がすごいですよ。
――<ポカリはお酒と一緒に飲んで大丈夫>って歌いたかった?
セイヤ:はい。びっくりしたんですよ。僕もポカリとお酒を一緒に飲むのは駄目だと思っていたから。でも、大塚製薬さんのサイトを見たら「お酒を飲んだ時こそポカリスエット」っていうことが書いてあったんですよね。世間の認識と逆の真実を知ったから曲にしたかったんです。
――世直しソングですね。
シンノスケ:そうですよ。啓蒙ソングでもあります。

――そして、今回のリメイク、2020ver.は「シャチクズ」なんですね。
シンノスケ:2020ver.に関しては、本当は「シャチクズ」を先にやりたかったんです。昔録った時は自分たちの力も足りてなくて、「もっといい曲になるのに」っていうのがずっとあったんですよね。こういうダンサブル感、グルーヴ感は、今の方が絶対にできるはずだというのがあったので。
――ボーナストラックもカントリーなサウンドで新鮮だったんですけど、シンノスケさんとタイスケさんの共同プロデュースなんですね。
シンノスケ:はい。僕が曲を書いて、ソゴウが歌詞を書きました。
タイスケ:歌詞を書くのは難しかったですね。
セイヤ:ちゃんとしたものを書いてきてくれて、ほんますごいなと思いました。奇をてらうでもなく「わかった。やりますけど」っていう感じでしたから。
タイスケ:そんなことないって(笑)。
セイヤ:作詞だけじゃなくて、こいつ(タイスケ)はこの10年間の活動の中で、何かにめっちゃ困った時にちゃんと打つんですよ。
シンノスケ:代打、ソゴウ(笑)。
セイヤ:今回、作詞に困ったわけじゃないですけど。なかなか大変なことをやってもらったのに、めちゃくちゃフルスイングで打ってくれました。
タイスケ:いやあ、曲が良かったんですよ。
シンノスケ:この曲、全員がいつもと違う楽器を弾いてるから、演奏が拙いんですけど。
――マンドリンはどなたが?
カズマ:僕です。自粛期間に始めました。
シンノスケ:自粛期間中にそれぞれが練習した楽器の発表会みたいなレコーディングでした(笑)。
――(笑)。今作を出した後の活動に関しては何か考えていることはあります?
セイヤ:2021年もできる範囲でライブをやりたいです。あと、曲作りもしたいですね。
シンノスケ:丁寧に作ったり、みんなで意見を出し合いながら、スタッフとかともいろんなことを共有し合いながらやったら、爆発力が生まれると思うんですよね。今回、なんでもありで作らせてもらえたので、次もいいものを作りたいです。
――じっくり話し合ったり、いろんなことを考えることができた2020年は、活動の仕方を見つめ直す機会にもなったんですかね?
シンノスケ:そうだと思います。
セイヤ:ライブがなくなったおかげというのも変ですけど、メンバーともいっぱい話ができたんですよ。
――キュウソのチームワークも高まった中、昔みたいにもみくちゃになって盛り上がれるライブができる日が戻ってきたら、かめはめ波が本当に出るかも?
セイヤ:出るかもしれないですよ(笑)。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

モルモットラボ

モルモットラボ

2021年01月13日

ビクターエンタテインメント

01. 3minutes
02. おいしい怪獣
03. 御目覚
04. 囚
05. 薄皮
06. シュレディンガー
07. ぬいペニ
08. シャチクズ (2020 ver.)
09. ポカリ伝説

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