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マカロニえんぴつ×Saucy Dog、互いにグッドミュージックを届けた奇跡みたいな夜

マカロニえんぴつ | 2020.03.06

 「マカロニえんぴつもSaucy Dogも、曲はいつ聴いたって同じだけど、毎回ちょっとずつ違って響く、そんなグッドミュージックをやっているバンドなんだ!!」。これはマカロニえんぴつのボーカル・はっとりが自身のライブ時、会場に、そしてこの日の対バンのSaucy Dogに贈った言葉だ。
 まさしく曲自体は変化するわけではないのに、そのシチュエーションや感情、思い入れや心の機微によって、都度違った感受のある歌……。心的に受けつけられない時もあれば、自分を待っていてくれたり、自分の為に歌われているように響いたりする2バンドの音楽。そう、この日もやはり双方ともに、各曲違った響き方や光り方、照らし方や刺さり方をしていたのが印象的であった。

 マカロニえんぴつがSaucy Dogと東名阪を回ったツアー「マカロックツアーvol.9 ~Saucy Dogと東名阪ドッグラン!篇~」の東京編が、2月19日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。音楽性も編成も出身地も違うが、2バンドは同世代。かつて3マンでの共演はあったものの、この2バンドでの2マンは初。にも関わらず、やはり心では惹かれ合っているのだろう。互いを尊重し合い、和気あいあいさを滲ませながらも、自分たちの音楽性をきっちりと届け、この共演ならではなところも各所でシッカリと味わうことが出来た。

 先行はSaucy Dog。SEが流れる中、せと ゆいか(Dr/Cho)、秋澤和貴(Ba)が順にステージに現れ、間を置き石原慎也(Vo/Gt)も登場。おなじみの逆トライアングルが組み上がる。ドラム前での円陣後、ギターの爪弾きと共に「煙」の1コーラス目を石原が歌い出す。センチメントな歌い出しながらも、そこに生命力溢れるバンドサウンドが加わり希望を掴みに向かうかのように、ライブは走り出した。
この日はまさにイベントタイトル同様、リードが外れた犬が嬉しそうに走り回っているかのような勢いのある曲が目立った。「雀ノ欠伸」に入るとカントリーライクな雰囲気が場内いっぱいに広がり、さら に加速させるべく「バンドワゴンに乗って」が“真っ暗な道を一緒に進もう!!”と会場を引き連れて駆けていく。

 「この会場のキャパシティは1,000人弱。しかし、この日は7,000人の応募があった」と、せと。かなりの高倍率の中、この場に居られる尊さを各人が実感する。「私たちも最高に楽しんでやるから。一緒に最後の最後まで楽しんで欲しい」と続ける。
 ここからはそれを体現するかのような曲たちが連射された。「メトロノウム」では、同歌に込められた“だけど行くんだよ”という想いが、自分の信じたものへ向かっていくさらなる決意を皆に固めさせ、「マザーロード」では、ナチュラルトーンの石原のギターとドライブ感あふれる秋澤のベースがゆっくりとシーンにモーションを与えていった。また、「みんなの手を引っ張ってあげられる曲。鬱な気持ちなんてぶっ飛ばしてやる!!」(石原)と入った「ゴーストバスター」では、秋澤もアグレッシブなプレイで場内を惹きつけた。

 中盤は、かつての自身の不甲斐なさを乗り越えられたが故に、ここに辿り着けたことを浮かばせる曲たちが続いた。「何もしないで過ごしていた日々がありました。そんな弱くてダメだった自分に別れを告げるべく作った歌」(石原)と紹介し、今の自分との答え合わせのような「グッバイ」が、会場をさらにステージへと引き寄せる。また全てを会場に預けたような「ナイトクロージング」では、ベースソロ~ギターソロも炸裂。「見てるか?はっとり~。あなたに歌います」と、マカロニえんぴつへ同世代ならではのライバル心も垣間見せた。また対照的に「真昼の月」では、集まった多くの者に優しい親や 愛しい人を想い浮かべさせ、“その人たちの為にも明日へと力強く向かわなくちゃ”と、決意をさらに堅くさせた。

 ここで石原がマカロニえんぴつの「鳴らせ」のひと節をたどたどしくしく演奏。そしてマカロニえんぴつに向け、「初めて出会ってからそんなに経っていないのに、ここまで仲良くなれたのは、もはや奇跡。その出会いの結果、今日はこんなに多くの人とも出会えた。それがすごくうれしい。これを機に深くまで知ってもらいたい」と「コンタクトケース」を。また、語られた「いつかは昔話になるだろうけど、決して嘘にはならない」(石原)という言葉を体現してくれた最後の「スタンド・バイ・ミー」では、ダイナミズムたっぷりでアーシーながらとてつもないエモーショナルさの昇華を魅せてくれた。「こ んな素晴らしい奇跡があることを信じさせてくれた夜でした。ありがとう!!」との感謝の意を残し、彼らは袖へと消えた。

 続いてはマカロニえんぴつ。おなじみのSEと共に、田辺由明(Gt/Cho)、高野賢也(Ba/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)、サポートドラムの高浦充孝が登場し、はっとり(Vo/Gt)も登場。まずははっとりが、Saucy Dogの「いつか」のサビをギターと歌でワンコーラスサービス。そのままファンキーでグルーヴィな「トリコになれ」に入る。同曲の<ずっと歌えるように/これからそうゆう時代になるように/ずっと愛してなんて我儘も許されるよ>のフレーズで、会場がステージへと抱き寄せられていく。続いて軽快な鍵盤とファンキーなギターカッティングの「レモンパイ」が、触りたいけど触ると終わってしまう危うさを歌いつつも、グイグイと満場に積極的に触れてくる。対して、「girl my friend」もこの日はさらに疾走感を増加。ライブを走り出させ、おなじみと言える、はっとり/田辺のツインユニゾンギターもバシッとキメてくれた。「今日は久しぶりの曲も含め、たくさんの曲をやる」(はっとり)と、手始めに4月1日発売のニューアルバムから先行配信中の「恋人ごっこ」を。ストリングスの音色も交え、後半6/8拍子のロッカバラード部もいいアクセントづけであった。また続く「哀しみロック」では16ビート&2ビートと共に再びライブが走り出していくのを感じた。

 中盤のMCでは、長谷川とはっとり、そして会場とでサウシーのファンの呼称を決める会議が。長谷川が「サウシーサー」を、はっとりは「飼い主」を提案。結局、その場では「サウシーサー」に決まりかけたが、結果はファンへと委ねられた。
 ライブに戻ると、ジャジーでアダルティな流れから一変、目まぐるしく走り回るが如くアッパーな「ワンドリンク別」へ。同曲では恒例のコールが会場全体をひとつにし、その瞬間、はっとりより「全員優勝」の誉れが与えられた。対してシチュエーションは夜へ。アダルティな「クールな女」に入ると、不思議な艶めかしさとセクシーさが身体にまとわりついてくるのを感じた。続いて、久々に「恋の中」がギターと共に歌い出されると、その愛しい人への恋しさをまるで吐露するような歌に、皆が心を動かされた。

 MCを挟み、インストが。それをイントロ代わりに「ブルーベリー・ナイツ」に入ると、<冷めないで/消えないで><まだ相手して欲しくて>の気持ちが痛いほど場内に響き渡っていく。また、不穏なデモンストレーションからポップな「STAY with ME」へ入ると、エモーショナルなロックへの移行を再度確認。続く「洗濯機と君とラヂオ」では、会場を再度ガシッと抱き寄せ一緒に並走させ、「いつまでもあなたの素敵な逃げ場所になりたい」と、彼らの超絶さも映える「ハートロッカ―」の際にはスピード感をもって会場が一緒にさらわれていくのを見た。

 「自分はあなたたちを、理解のある素敵な友達のような、相談相手のような、自分のような、そんな存在だと思っています。悪いけど歌い続けていく意地だけは持っていますんで。これからもマカロニえんぴつにもSaucy Dogにも、ある程度の感情を任せて好き放題歌わせてやって下さい。クソつまんない人生を美しい歌に乗せて歌っていくし、その為に何回でもライブもするから。ここに立つのも何年もかかったし、苦労もした。だけどもっと大きなステージに立てる確信も今はある。それをあなたたちから教えてもらった」と、はっとり。最後は「ヤングアダルト」を会場も交えて精一杯歌った。

 アンコールは1曲、みんなの心に青空が広がるような「ミスター・ブルースカイ」。素通りしないで彼らを求め続けてきたみんなへと感謝も込めて贈られ、気づけば自分もすっかりと青空に包まれていた。「またこの共演をするから、これからもついてきて欲しい!」という言葉を残し、彼らはステージ袖へと消えた。

 重複するが、彼らは同じ世代。とは言え、通って来た道も費やした時間も、経験や得た糧も各々違う。そしてそれが各々の音楽として現れているのも興味深い。果たして人は、全く同じ時を過ごし、同じものを見、得、糧となったとして、そこから同じ歌は生まれるだろうか? 私は“生まれない”と考える。そこで得た感受のポイントや価値は各々違うだろうし、それは人の数だけ異なるだろう。しかし、例え全く違った道を歩んできたとしても、どこかに“これだ!!”と思う共通項が見い出せたりする。それがきっとあなたが好きなアーティストたちが持つ、あなたにしか分からない共通の魅力に他ならない。

 同世代だが、生み出される音楽性も放つメッセージも、それらを伝達する方法論も全く違うマカロニえんぴつとSaucy Dog。しかし、どこか両者は共通している。それが、はっとりが唱えるところの「つねにグッドミュージックを届ける」ことを根底に宿し、双者が活動している証拠なのだろう。

 彼らはこれからもそのグッドミュージックを各々響かせていく。きっとその先には、再び交わることもあるだろう。そこでまたみんなと出会えたとしたら、こんなに嬉しいことはないのではないのだろうか……。この日のライブの帰路、そんなことばかりを考えていた。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:白石達也(Saucy Dog)、中山優司(マカロニえんぴつ)】




2月27日(木)梅田クラブクアトロにて開催を予定しておりました「マカロックツアーvol.9 ~Saucy Dogと東名阪ドッグラン!篇~」は、7月20日(月)に同会場、梅田クラブクアトロに延期となりました。

【振替公演詳細】
日時:7月20日(月) 開場18:00(予定)/開演19:00(予定)
会場:梅田クラブクアトロ
※詳細後日発表

詳細はマカロニえんぴつHPをご確認ください。
マカロニえんぴつHP:http://macaroniempitsu.com/

tag一覧 ライブ マカロニえんぴつ Saucy Dog

リリース情報

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セットリスト

マカロックツアーvol.9
~Saucy Dogと東名阪ドッグラン!篇~
2020.02.19@恵比寿LIQUIDROOM

    ●Saucy Dog
  1. 01.煙
  2. 02.雀ノ欠伸
  3. 03.バンドワゴンに乗って
  4. 04.メトロノウム
  5. 05.マザーロード
  6. 06.ゴーストバスター
  7. 07.グッバイ
  8. 08.ナイトクロージング
  9. 09.真昼の月
  10. 10.コンタクトケース
  11. 11.スタンド・バイ・ミー
    ●マカロニえんぴつ
  1. 0.カバー
  2. 01.トリコになれ
  3. 02.レモンパイ
  4. 03.girl my friend
  5. 04.恋人ごっこ
  6. 05.哀しみロック
  7. 06.ワンドリンク別
  8. 07.クールな女
  9. 08.恋の中
  10. 09.ブルーベリー・ナイツ
  11. 10.STAY with ME
  12. 11.洗濯機と君とラヂオ
  13. 12.ハートロッカー
  14. 13.ヤングアダルト
【ENCORE】
  1. EN1.ミスター・ブルースカイ

お知らせ

■ライブ情報

マカロックツアーvol.9
~Saucy Dogと東名阪ドッグラン!篇~
【振替公演】

07/20(月)大阪 梅田クラブクアトロ



●マカロニえんぴつ
マカロックツアーvol.10
~わずかな希望を探し求める者たちよ篇~

04/18(土)大阪 なんばhatch
04/19(日)高松 高松オリーブホール
04/24(金)神奈川 KT Zepp Yokohama
04/29(水)静岡 Live House浜松窓枠
05/01(金)熊本 B.9 V1
05/02(土)福岡 DRUM LOGOS
05/09(土)新潟 NEXS NIIGATA
05/10(日)石川 EIGHT HALL
05/21(木)北海道 Sound lab mole
05/24(日)宮城 仙台darwin
05/26(火)岩手 Club Change Wave
05/31(日)広島 LIVE VANQUISH
06/05(金)愛知 DIAMOND HALL
06/13(土)東京 豊洲PiT



●Saucy Dog
Saucy Dog「はじめてのホールツアー」
03/22(日)東京 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
03/24(火)大阪 オリックス劇場
03/27(金)愛知 名古屋市公会堂
03/29(日)東京 人見記念講堂

Saucy Dog 対バンツアー2020
「サバイブエピソード」

06/03(水)東京 Zepp Tokyo
06/04(木)茨城 水戸LIGHT HOUSE
06/06(土)山形 山形ミュージック昭和SESSION
06/07(日)岩手 盛岡CLUB CHANGE WAVE
06/10(水)静岡 浜松窓枠
06/11(木)三重 松坂M’AXA
06/13(土)山口 周南RISING HALL
06/14(日)鹿児島 鹿児島CAPARVO HALL
06/16(火)愛媛 松山WSTUDIORED
06/17(水)岡山 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
06/19(金)長野 長野CLUB JUNK BOX
06/20(土)石川 金沢Eight Hall
06/25(木)山梨 甲府CONVICTION
06/27(土)愛知 名古屋CLUB DIAMOND HALL
06/28(日)大阪 なんばHatch

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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