フラットな笑顔でグングン進んでいくような、くるりのニューシングル

くるり | 2012.07.27

 傷つき、もはや引き返すことのできない世界の歪みは、これまでにも描いてきた、くるりである。新体制になって、3.11以降、どんな具体的な音像で、そして切り口で、再び私たちの前に現れてくれるのか?注目のシングルの表題曲は、「それでも前を向くんだよ」とフラットな笑顔でグングン進んでいくような意思表明的なロックアンセムだ。今回はこの楽曲に至るメンバーの気持ち、そしてシングル全般について訊いた。追記すると同シングル・リリース前日には首都圏で初となるフリーライブを代々木公園で開催。これまでになくオープンで、バンドそのものを楽しむ姿勢は、くるりにとっても、われわれリスナーにとっても、新しい季節の到来を実感させるだろう。

EMTG:今回、表題曲はすごく悩んだりしませんでしたか?
岸田:まぁ、震災以降というか、いろんなことがグチャグチャしてましたんで。今までは「バンドはずっとやってんねんやろな」と思ってたけど、音楽業界と自分たちの関わり方での、なんとなく「まぁまぁ」って、蓋をしてきた部分が全部見えた時期だったんで、いろいろ迷いはあったんですけど。そこから何にシフトしようとしたかというと、ロックバンドなんでロックバンドらしい立ち回り方と楽しみ方をするために1年間ぐらい、いちいちもがいてたのかもしれないし。そんな中でバン!と、この1曲ができたというよりは、今、アルバムも録ってるんで、形になったもんで一番、その哲学を体現してるというか、ロックバンドとして、現在自分たちができることの一番シンプルでカッコいいところっていうか、それが出ている曲だとは思います。
佐藤:去年1年はずっと試行錯誤ばっかりで。「どうしたらいいやろう?」みたいな。まぁいろんな土台を作っていこうとしてたと思うんですけどね。でも去年の冬ぐらいからは“アルバム”っていう、「自分らの一番大事なもんを作るぞ!」っていうタームに入って、それからはなるようになったっていう感じはしますけどね。
EMTG:じゃあ、何も決めてなかったんですね。
岸田:決めてなかったですし、ただ、まぁ、バンドが新しくなったんで。京都の素晴らしいミュージシャンたちが、“くるりのメンバーになる”という過程、で、僕らも新しいバンドになって、さらにくるりになるという過程ですかね。その中でこの曲は自分たち的には「イェーイ!最高!」と思えたというか。
EMTG:シングルはバンドの新たな季節の始まりを示唆しますからね。くるりはそこに対して意識的なバンドだし。
岸田:そうですね。で、しばらくおっとりしたテンポの曲が多かったり、やってることはずっとオーガニックで健康的なことをやってると思うんですけど、ちょっと“手すり”が付いてたり、そういうもんが多かった…中で、割とテンポ感がある、バンドでシンプルなアンサンブルでやって勢いのあるようなロックンロールって、求められているというのはあったんで。でも、狙うとそういういい曲というのは書けない。
吉田:シンプルに気持ちをポンと乗せて提供できるっていうのはいいですね。で、この曲はみんなで作っていった部分がすごく多い曲なんで、そういうのは心強いし。
EMTG:吉田さんもファンファンさんも歴史的にややこしい(笑)バンドに加入されて。今はすごくのびのびやってらっしゃるように見えるんですけど。
ファンファン:いや?、でも初めての女子メンバーで、しかもトランペットで「なんやねん?」って思った方は、いっぱいいると思うんですけど。何より私が一番びっくりした自信ありますから(笑)。ま、最初は「トランペットで何ができんのやろ?」と思ってたんですけど、「楽器が違うだけでやることはギターとかいろんな楽器とおんなじなんやな」と思うようになれました。
吉田:初めて経験するレコーディングが韓国で。言葉の壁とか、機材がどうでこうで、なかなかうまくいかないとかいったトラブルが、僕のタイム感としては合ってたんですよ(笑)。おふたり(岸田、佐藤)にとっては超スローモーションで動いてるようなことが。それに、一緒に過ごしておんなじ景色見て、おんなじもの食べて、おんなじとこに泊まってとか、そういうことを積み重ねてこの曲もできたと思いますし。その段階はありがたかったですね。
EMTG:カップリング曲についても伺いますね。「o.A.o」は、曲のイメージとして「ばらの花」を思い出させます。
岸田:はい。
EMTG:でも聴き進めていくと、くるりのイメージが更新されるような曲だなぁと。
岸田:うんうん、そうですね。時間がちょっと止まるような曲が多かったですからね。これは結構、時間が過ぎていく、そのものみたいな、俯瞰の歌ですから。テーマとしては新しいっていうか、「ばらの花」の頃と全然違うっていうかね。
EMTG:「everybody feels the same」も「o.A.o」も、臆面もない歌詞というか。
岸田:あ?、それそれ。いい意味で考えさせる余地がないぐらい、「ゴク、旨!」「晴れ!いい日!」みたいな……そういうのが最近、マイブームです。
EMTG:(笑)。このシングルは全部で4曲も入っていて、あとの「my sunrise」「ペンギンさん」のようなチェンバーロック的なものが、くるりの次の軸なのかなと思っていたんですが。
岸田:うん。アルバムがようわからんことになってるんで(笑)。その2曲のようなテイストのものもあれば、そういう魅力になってるものの真逆のものもたくさんありますし。それは音楽のジャンルがいろいろというよりは、視点や観点がいろいろあるという感じだと思います。
EMTG:そういえば初回限定盤についてるレコーディングドキュメントが、楽しそうなとこしか入ってない感じがするんですけど。
岸田:ハプニングもいろいろありますよ。でもそういうのって後で笑い話にできるから楽しいじゃないですか。
EMTG:観てて「バンドやりたい!」って思うような場面だらけですよ。
岸田:うんうん。
EMTG:それも今のくるりからのメッセージなのかなと思いましたけど。
岸田:そうかもしれないですね。もちろんついこないだ自分たちが経験、体験してたことなんで、映ってないことも全部覚えてますけど、客観的に思ったのが、その場ですごい大事にしてるものの、大事の仕方が優しい感じで出てたから、その雰囲気はすごくいいと思いましたね。
EMTG:いや、これは絶対初回盤買った方が得ですよ。泣きますもん、あの映像は。
佐藤:ありがとうございます(笑)。

【取材・文:石角友香】

tag一覧 シングル 男性ボーカル くるり

リリース情報

everybody feels the same(初回限定盤)

everybody feels the same(初回限定盤)

2012年08月01日

ビクターエンタテインメント

1. everybody feels the same
2. o.A.o (チオビタドリンク2012夏編CMソング)
3. my sunrise (サントリー天然水CMソング)
4. ペンギンさん

初回限定盤のみに付属するDVDには、今年2月から韓国・ソウルで始まったレコーディングのドキュメンタリー、さらには現在実施中の「くるりワンマンライブツアー2012〜Clear Water Japones〜」米子AZTiC Laughsでのライブから「HOME TOWN」「コンチネンタル」「everybody feels the same」が収録されている。

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お知らせ

■ライブ情報

くるりファンクラブイベント2012
2012/07/25(水)梅田 CLUB QUATTRO
2012/07/27(金)名古屋 CLUB QUATTRO
2012/08/01(水)LIQUIDROOM

HIGHER GROUND 2012 〜FINAL〜
2012/07/28(土)海の中道海浜公園野外劇場

QURULI FREE LIVE at YOYOGI 2012
〜everybody feels the same〜

2012/07/31(火)代々木公園野外ステージ

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
2012/08/04(土)国営ひたち海浜公園

ap bank fes ’12 Fund for Japan みちのく
2012/08/18(土)国営みちのく杜の湖畔公園

京都音楽博覧会2012 IN 梅小路公園
2012/09/22(土)京都 梅小路公園・芝生広場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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