Saucy Dog 1年の成長がくっきりと刻まれた、希望をもって未来を切り開く最新作

Saucy Dog | 2018.05.22

 ギター、ベース、ドラム、そして、歌。シンプルなスリーピース編成のバンドサウンドに等身大の感情を詰め込んで歌にする、関西発のロックバンドSaucy Dogが約1年ぶりのミニアルバム『サラダデイズ』をリリースする。2017年にMASH A&Rのオーディションでグランプリを獲得してから1年半。今年は若手バンドの登竜門とも呼ばれる「列伝ツアー」に抜擢されるなど、大きな注目を集めているSaucy Dog。今作には、そんな彼らが前作『カントリーロード』以降、様々な経験によって成長した“いま”がくっきりと刻まれている。  今回、EMTG MUSICでは初となるインタビューだったが、作詞作曲を手がけるボーカル石原慎也を中心に、何度もメンバー同士が目を合わせながら、互いの気持ちを確認するように受け答えする姿から、メンバー3人の仲の良さと強い絆を感じる取材だった。

EMTG:今年は列伝ツアーに出演したSaucy Dogですけど。同世代のバンド(SIX LOUNGE、Ivy to Fraudulent Game、リーガルリリー)と一緒にツアーを回ったことで、かなり刺激を受けたんじゃないですか?
石原慎也(Vo・Gt):悔しいこともあったし、楽しいこともありましたけど。お互いを尊敬し合えるバンドばっかりだったので、すごく成長できたかなと思います。
せとゆいか(Dr):もともと列伝ツアーを通して成長したいっていう意識はあったんですけど、残り3本になっても「全然変われてない」っていう迷いもあって。他のバンドの良いところに目がいってしまって、自分たちの良いライブは何なのか? がわからなくなったこともあったんです。自分たちが楽しむことよりも、「集まってくれる人を楽しませなきゃ」とか「良いライブをしなきゃ」っていうことばっかり考えちゃって。
石原:うん、そうだね。
せと:でも、列伝のあと、とにかく自分たちが楽しまなかったら、伝わるものも伝わらないよねっていう話をしたりして。振り返ると、列伝の間で何か成長できたというより、列伝が成長できるきっかけをくれたなっていう感じでしたね。
EMTG:なるほど。MASH A&Rのオーディションで優勝してからは1年半が経ちますけど、今のバンドの状況を踏まえて、あの出来事をどう受けてますか?
石原:YouTubeを見て、初めてライブを見に来ましたっていう人たちもすごく増えてきたので。俺らバンドだけではここまで絶対に来られなかったなって思いますね。
EMTG:もともとSaucy Dogはオーディションで優勝する前はどんな活動をしてたんですか?
せと:その頃はいまの3人体制になったばかりで、すごい量のライブをしてたんです。3ヵ月で30本……もっとかな? とにかく必死にライブをやっていたタイミングで。
石原:自分たちでも自信がついてきた頃だったんですよ。対バンしてたバンドの人とか、ライブハウスの人にも、「ライブ良かったよ」って言ってもらえるようになってて。
EMTG:そうだったんですね。やっぱりオーディションの印象が強くて、そこで急激に伸びた部分もあるけど、その前から少しずつライブで地盤を築き始めたんですね。
石原:いまはライブをしないで音楽活動をする人もたくさんいると思うんですけど、俺らはそれは考えられないんですよね。ライブがあってのバンドというか。自分が歌う曲を聴いて、その場所で何かを感じてもらうことに意味があると思んですよね。
EMTG:なるほど。今回のアルバムに関しては、どんな作品にしたいと思ってましたか?
石原:ミニアルバム自体にコンセプトがあったわけじゃないんですけど、前作(『カントリーロード』)を越えるような気持ちでは作ってました。
EMTG:アルバムを聴かせてもらって、やっぱりSaucy Dogの歌の良さを改めて感じました。メロディと歌詞がスッと入ってきますよね。
石原:俺らは歌詞とメロディをいちばん聴かせたいんですよ。
せと:ふたりは(ドラムのせととベースの秋澤は)自分たちのパートを作るときにも、無意識に「ちゃんと歌を聴かせたい」っていう前提があるんです。
EMTG:それはバンドを組んだ当初からですか?
せと:そうです。自然とそうだったよね?
秋澤和貴(Ba):うん、そうですね。意図してないところで自分のベースラインもメロディに沿った感じになったりする。やっぱりメロディと歌詞をいちばんに考えてるんですよ。
せと:そこに理由はないんですよね。
EMTG:リード曲「真昼の月」が一足は早く配信でリリースされましたけど、この曲だけ先にリリースしたかったのは、どうしてだったんですか?
石原:メロディが強いっていうのもあるし、内容を伝えたかったからですかね。この曲は母親をモチーフにしてるんですけど。大切な人って、人それぞれじゃないですか。だから、誰が聴いても大切な人を近くに感じるような曲になればなと思って。そういう人を、ちゃんと大事にしてほしいなと思って書いたんです。僕は昔、あんまりそういうことができてなかったので。めちゃくちゃ大変な想いをさせてた母親への感謝を込めて作りました。
EMTG:いま、「メロディが強い」って言ってたけど、Saucy Dogの曲って、基本的にどの曲もメロディが強いじゃないですか。
石原:ありがとうございます(笑)。
EMTG:だから何を基準に「メロディが強い」なのかな?って思うんだけど。
石原:そこはもう自分のなかで気に入るか、気に入らないか、なんですけどね。なんとなく自分の中で歌いやすい曲というか。あとは、「真昼の月」をリード曲にした理由で言うと、アップテンポでリード曲っていうのは、いままでの俺らにはなかったので。そういう意味で、新しい俺らを出せるかなと思ったんです。
EMTG:たしかにSaucy Dogと言えば、バラード曲「いつか」ですもんね。
石原:イコールみたいなものですよね。
EMTG:だからこそ、自分たちは「いつか」だけじゃないんだぞ、みたいなところを、そろそろ出したいみたいな気持ちもあった?
石原:それはありますね。いつまでも「いつか」に助けてもらってばっかりではダメなので。
EMTG:そう言えば、去年の夏のツアーで会ったときに、慎也くんが「「いつか」を越える曲ができた」って言ってくれたんですけど、覚えてます?
石原:ああ、言いましたね(笑)。
EMTG:それが「真昼の月」?
石原:いや……。
EMTG:じゃあ、「コンタクトケース」?
石原:はい。ちょっとイキってましたね(笑)。
EMTG:いやいや、すごく良い曲じゃないですか(笑)。「いつか」もそうですけど、バラードのラブソングは、やっぱりSaucy Dogの得意なところなんだろうなと思いました。
石原:それが自分たちではあんまり得意ではないんですよ。和貴も不安がってたよな?
秋澤:レコーディングの当日になって、やっと完成した曲なんです。「いつか」の時もそうだったんですけど、メンバーが「こういうベースはどう?」ってヒントをくれたことで、助けられた曲なんですよね。自分で出したかったから、正直悔しかったんですけど。
石原:得意な曲のときは、どんどん自分で出してくれるんですけどね。
せと:ドラムに関しても、バラードこそ歌が大事だから、あんまり余計なことができないんですよ。でも、そうやって遠慮して、バラードが全部同じ感じに聴こえちゃうのも嫌やし。だから、そのへんのバランスはすごく難しいなと思います。
EMTG:他のアルバムの曲だと、私は「メトロノウム」が好きです。ライブで聴いたときも、“トンネルの闇の中を抜けた先は明るいはず”っていう歌詞が、すごく印象に残ってたし。
石原:この曲、メンバーもみんな大好きなんですよ。唯一、自分たちだけのために作ったみたいな歌詞の書き方なので。
EMTG:どうして、そういう書き方をしてみたんですか?
石原:もう共感を得なくてもいいやと思って書いたんですよね。自分に酔っちゃうのは、どうなんやろう?っていう不安もあったんですけど、やっぱりこの曲は今回のアルバムには外せなくて。いままでやってきたことは間違ってなかったんだっていうことを、自分たちでも改めて訴えかけるような曲になってるので。
せと:この曲を聴いたとき、自分たちのことを書いてきてくれたって思いましたね。
EMTG:慎也くんは「共感されなくてもいい」って言ってたけど、結果的に「メトロノウム」は、同じようにもがいてる人に響く曲だと思いますよ。
石原:そうなってたら嬉しいです。
EMTG:最後に収録されている「バンドワゴンに乗って」も自分たちのバンドの歌ですよね。
石原:そうです。ジャケット写真にもなってるあの車で、ずっと俺たちは全国を回ってたので。その車のなかの出来事を書きました。
EMTG:それこそ最初に聞いた、オーディションでグランプリを獲得する前に、自分たちだけでライブをやってた時のこと?
石原:そうですね。「メトロノウム」のほうは、わりと最近のことを書いてるんですけど、「バンドワゴンに乗って」は、3人だけでツアーを回ってたときのことなんです。みんな、「この先どうしたらいいんだろう?」っていう不安を持ってるけど、それを口にはしなかったよねっていう。そういうときのことですね。
EMTG:それをいま曲にしようと思ったのは?
石原:ちょっと当時のことを忘れかけてるんじゃないかなと思ったんですよ。いまは3人だけでツアーをすることがなくなったけど、忘れちゃいけないなと思ったんです。
EMTG:この曲がアルバムの最後にあることで、「バンドがこれからも進んでいくんだ」っていう決意の曲のもなってますしね。
石原:うん。前回のアルバムでは、過去を振り返るばっかりで、そこに浸って、みじめな感じを出す歌詞が多かったんですけど、今回のアルバムは全体的に、希望に向かって、未来に発信するみたいな曲が多いんですよね。不安があっても、切り開いていこうって。
せと:たぶん本人が意図してそうなったっていうよりも、できた曲がそうだっんですよ。だから、今回は慎ちゃんの気持ちがそのままちゃんと出てるアルバムなんです。いままでよりも人間味があるというか、それを発信できるのは嬉しいですね。
EMTG:なるほど。こうやって話を聞いてると、取材中、メンバー同士で何回も目を合わせてますね。お互いに気持ちを確認し合ってるみたい。
せと:あ、そうかも(笑)。
石原:自分の気持ちを喋る不安もあるんですよね。
EMTG:和貴くんは今回のアルバムできて、どんな手応えを感じてますか?
秋澤:1枚目とは別の良さがあるなと思いますね。すごく幅が広がったし。自分たちなりに試行錯誤をしたから、ちょっとツギハギな感じもあって。まだ未完成な自分たちの途中段階を見せられるから、アルバムのタイトルは『サラダデイズ』なんですよ。
EMTG:『サラダデイズ』というのは、ツギハギを意味してるんですか?
石原:青二才っていう意味なんですよね。
せと:青春の日々、とか。
秋澤:言葉の響きが僕たちに合うかなと思って、提案したんです。
EMTG:タイトルを考えるのは、和貴くんが多いんですか?
石原:いや、初めてだよね。
秋澤:今回のタイトルを決めるときに、iPhoneを見てて、マック・デマルコっていう自分が好きな海外のアーティストがいるんですけど、その人の曲で「サラダデイズ」っていう曲があって。意味を調べたら、いまの自分たちに合いそうだなと思ったんです。
EMTG:では、最後に今年のツアーの話も聞ければと思いますけど、今月25日からワンマンツアー「one-one tour 2018」が始まって、秋には対バンツアー「ワンダフルツアー2018」もあり。計26本っていう、かなりの本数を組みましたね。
石原:でも、自分たちとしてはあんまり多いとは思ってないんですよ。
せと:最初のスタートダッシュがすごかったからね。
EMTG:Saucy Dogにとっては、これぐらいライブをやるのも通常営業(笑)。
石原:うん。ライブが1週間空いたら、久しぶりという感じですからね。
EMTG:これから始まるツアーでは、どんなライブを見せていきたいと思いますか?
せと:周りの人がどう思ってるかはわからないんですけど、私の感覚やと、いまみんなが評価してくれてるところに、自分たちの実力が追いついてないと思ってるので。たくさんライブをしていくなかで、そこを擦り合わせていけたらと思ってます。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 ミニアルバム Saucy Dog

リリース情報

サラダデイズ

サラダデイズ

2018年05月23日

MASH A&R

1.真昼の月
2.あとの話
3.曇りのち
4.コンタクトケース
5.メトロノウム
6.世界の果て
7.バンドワゴンに乗って

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

Saucy Dog 全国ワンマンツアー
「one-one tour 2018」

05/25(金)[東京]渋谷 TSUTAYA O-Crest
05/27(日)[宮城]仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
06/15(金)[香川]高松 TOONICE
06/16(土)[広島]広島 BACK BEAT
06/17(日)[福岡]福岡 Queblick
06/24(日)[北海道]札幌 SOUND CRUE
06/29(金)[愛知]名古屋 ell.FITS ALL
06/30(土)[新潟]新潟 RIVERST
07/04(水)[大阪]心斎橋 JANUS
07/05(木)[大阪]心斎橋 JANUS
07/11(水)[東京]渋谷 WWW

ワンダフルツアー2018
10/01(月)[東京]恵比寿 LIQUIDROOM
10/02(火)[群馬]高崎 FLEEZ
10/04(木)[新潟]新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
10/05(金)[長野]松本 ALECX
10/12(金)[京都]京都 MUSE
10/13(土)[兵庫]神戸 VARIT.
10/14(日)[静岡]静岡 UMBER
10/17(水)[宮城]仙台 MACANA
10/18(木)[福島]郡山 #9
10/22(月)[香川]高松 DIME
10/23(火)[岡山]岡山 IMAGE
10/25(木)[広島]広島 セカンド・クラッチ
10/26(金)[福岡]福岡 BEAT STATION
10/28(日)[熊本]熊本 Django
10/29(月)[山口]周南 LIVE rise



Shimokitazawa SOUND CRUISING 2018
05/26(土)[東京]下北沢のライヴハウス(GARDEN / SHELTER 他)

Czecho No Republic pre.5人になって5周年!5×5=25 TOUR ~「旅に出る準備」リリース 2マン編~
06/09(土)[静岡]浜松 FORCE

見放題2018
07/07(土)[大阪]心斎橋 BIGCAT / SUNHALL / JANUS他

rockin’on presents JAPAN’S NEXT 渋谷JACK 2018 SUMMER
07/15(日)[東京]渋谷 TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-Crest /他...

MURO FESTIVAL 2018
07/21(土)[東京]お台場野外特設会場

Amelie「ビューティフルライフ」Release Tour 2018
07/27(金)[兵庫]神戸 太陽と虎

WILD BUNCH FEST. 2018
07/28(土)[山口]山口きらら博記念公園

cinema staff デビュー10周年記念ライブシリーズ two strike to(2) night ~バトル・オブ・クアトロ~ 8月編
08/13(月)[大阪]梅田 CLUB QUATTRO
08/14(火)[愛知]名古屋 CLUB QUATTRO
08/16(木)[東京]渋谷 CLUB QUATTRO

TOKYO CALLING 2018
09/17(月祝)[東京]下北沢・新宿・渋谷のライブハウス

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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