Omoinotake、今だからこそ心に響く3曲――今リリースすべく込められた意味とは

Omoinotake | 2020.06.26

 Omoinotakeが3ヵ月連続配信シングル第3弾となる「夏の幻」を6月26日にリリースした。この曲は、蒸し暑い夏の夜の景色が目に浮かぶような繊細な情景描写と、「君」に触れることのできないもどかしい距離感を越えて想いを届けようとするひたむきな歌声が切ない、ミディアム・スロウなラブソング。日常の尊さを柔らかなメロディと歌声で表現した「欠伸」と、前に進めない悔しさを前向きな力に変えるドラマチックなアップナンバー「One Day」に続き、この時代だからこそ心に響く最強の3曲が揃った。リモートでの制作&レコーディングの様子など、藤井レオ(Key/Vo)、福島智朗(エモアキ・Ba/Cho)、冨田洋之進(ドラゲ・Dr/Cho)の3人に、語ってもらった。

――今回の3ヵ月連続配信シングルの企画は「この夏にあるはずだった実体験」をテーマにはじまったということですが。春のコロナ禍で大事なライブやイベントなどが中止になって先が見通せない中で、どのように気持ちを切り替えていきましたか。
藤井レオ:ライブが延期や中止になり始めた頃には、そのぶん制作をがんばろうと切り替えることができました。最初は制作に100%力を注ごうと思っていたんですけど、だんだん自粛期間が延びていくにつれて、制作はもちろんのこと、ライブの代わりにSNSなどを通して何かを届けることが必須になってきているなということに気づき始めて、また気持ちが新たに切り替わっていきました。今だからこそできることがたくさんできて、僕らとしては結構、実りある時間を過ごせたなと思っています。
冨田洋之進:ライブがなくなってドラムを叩ける環境がなくなったことで、今まで以上に音楽のことを考える時間が増えた気がします。自分に足りないものは何なんだろうとか、冷静に分析したりもしていました。
福島智朗:ライブが延期になり始めた時期は、これから配信シングルの制作やレコーディングに入ろうとするタイミングだったので、本当に今思っていることを曲にして出せるなと思って「One Day」や「夏の幻」を書いて。今この曲を出す意味は何なんだろうということを考えながら、ずっと制作をしていました。もともとこの時期に3ヵ月連続で配信リリースをすることと、最初に「欠伸」を出すことも決まっていたので、その後の2曲を書き下ろしました。
――なるほど。4月に配信された「欠伸」に関しては、コロナ禍になる前に、もともと制作されていたと。
福島:そうですね。
藤井:今年の2月あたりに作っていた曲です。
――でも歌詞の内容としては、当たり前だと思っていた何気ない日常の尊さが描かれていて、時代にリンクしていますね。
福島:偶然なんです。そんな風にも聴くことができる、すごいタイミングでリリースされたなと思います。
――サビのふんわりとしたメロディが美しい「欠伸」ですが、制作自体はどのように始まったんですか。
藤井:歌詞が先にあって、<大きな欠伸に>というフレーズがサビの頭にくるような形で詞ができていたので、そこのメロディをどうするかを考えたんですけど。歌詞の世界観を表せるような大らかなメロディができたなと思います。
――歌詞からは、大きな欠伸に隠した涙に、なんで気づけなかったんだろう、という後悔の念も感じますが。悲しさを全面的に出した歌い方でもない気がします。その辺のバランスは?
藤井:AメロやBメロで歌っている内容は、付き合っている当時に感じたリアルな日常を切り取っていて、それが今もここにあるという状況なので、その時に感じていたような微笑ましい感じが出せたらいいなと思って歌いました。
――5月に配信された「One Day」に関しては、この3部作の核心部分といってもいい1曲で。3人の悔しさや、今、音を鳴らす決意が伝わってきます。
藤井:これは、曲自体はもともと去年の夏くらいにあった曲で、歌詞は何も付いていない状態だったんです。5月の配信リリースを何しようか?と考えた時に、この曲はみんなが気に入っていたので、いざこのメロディにどんな歌詞を付けるかというところから始まりました。
――<あの日夢見た イメージしたことが 今もまた消えた>とありますが、ワンマンツアーの延期だったり、ほんとにその言葉の通りの状況だったと思いますが。そこからサビの<灯火が消えないように 今歌うから>と歌えるまでになった決意がこの曲には入っていると思います。歌詞に込めた想いは?
福島:僕は結構、本当に落ち込んでいて、ずっとAメロみたいな心情だったので、まずはそこを書きました。こういうサビに持っていくことで、自分自身も希望が見えたというか。自分自身もどんどん感情が変わっていく中で書けた歌詞だと思います。
――落ち込んでいたっていうのは?
福島:やっぱり先が見えないから不安だったんですよね。ほんとにみんなでここから頑張ろう、今年こそ、みたいなタイミングだったので。その想いは3人のメンバーとスタッフも含めてあったと思います。特に名古屋や大阪は、これまで対バンとかでしかライブをしたことがなくて、お客さんたちに「ワンマンで来てね」って言われてたので、その約束も果たせると思っていた矢先のことで。そんな約束がどんどん散っていった、ワンマンツアーの延期を決めた日は、一番辛かったですね。
――そんな時、他のおふたりは?
藤井:僕は、さっきも言ったんですけど、割と制作の方に頭を切り替えたので。いい曲を書いてみんなに楽しんでもらおうと思いました。
冨田:僕はレオとは違って、不安で不安で。知り合いのミュージシャンからも、ライブができないとか、生活が苦しいって話も聞いたし。それこそライブハウスもなくなっちゃったりして、この先、音楽なんてできなくなる世界が来るんじゃないかって正直思ってたんで、「One Day」をレコーディングしたあたりは不安でしたね。
――不安な人がふたり、前向きな人がひとり。どんなことを3人で話しましたか?
藤井:4月の半ば頃だったんですけど、「One Day」をレコーディングする時に、それこそスタジオに集まれるかも微妙だったんですよ。打ち込みにするか、生演奏でやるかで、3人で揉めたことはありましたね。
冨田:僕とエモアキの不安組は、打ち込みがいいんじゃないかっていう意見だったんですけど。
藤井:打ち込みという選択肢は、ほんとに今のことを歌った歌詞だったので、とにかく早く届けたいというエモアキの意見から生まれたので。最終的には早くも出せたし、生でも演奏できたんですけど。生で演奏するためには、もしかしたらレコーディングの時期をずらさなきゃいけないという話もあったので。
福島:いつもだったらみんなで集まってレコーディングするんですけど、バラバラでスタジオに入るのであれば、生演奏でやらせてもらえるということになりました。
――そういうレコーディングのやり方ってどうですか?
冨田:録ってる時はすごい孤独を感じたんですけど(笑)、藤井くんと福島くんの包容力により結果的にはいい音源が作れました。
藤井:あはははは。
福島:みんなでレコーディング前の練習もできなかったから、やりづらかったけどね。
藤井:ただ、歌入れはスタジオにみんながいようがいまいが、結局はヘッドフォン越しに歌う孤独な作業なので、そんなに変わらなかったですね。「One Day」に関しては、特に<何もかもが 打ち捨てられていく夜に 変わらない 夢を見ていたい>という部分を歌う時に感情的になりましたし、グッときました。<再会を誓い合いたい>というフレーズがあることによって、ライブが延期になっても、ファンの方にも前向きになってもらえたらと思っていました。
――そして6月に配信された「夏の幻」は、思い出や気持ちは確かにここにあるのに、触れることができないという、まさにソーシャルディスタンシングなラブソングですね。
福島:この曲は、歌詞が最初にできてて、今年は夏のイベントや夏祭りもできないみたいな話がでてくる中で、失われてしまった濃い体験というのが絶対にあるはずだと思って書きました。夏の恋を描きながら、匂いや温度も全部伝わるような表現ができればいいなと。最初からそれを狙ってたわけではないんですが、やっぱりただの夏のラブソングにはしたくなかったし、確かにソーシャルディスタンシングなラブソングだなと思います。今この曲を出す意味というのは、あるべきだなと思いながら作っていたし、でも今だけじゃなくて、これからもずっと聴いてもらいたい曲に仕上がりました。
藤井:いつもはAメロ、Bメロを作った後で「どんなサビにしよう?」と考えていくことが多いんですが、「夏の幻」は最初にサビのメロディを作ったので、そこに行き着くための意味のあるAメロ、Bメロにしたかったので、そこは作る時にすごく悩みましたね。結果的にはリピートするメロディに歌詞の情景がどんどん変わっていくようなものになって、すごく気に入ってます。
――この3ヵ月連続配信でリリースされた3曲に、Omoinotakeのミュージシャンとしての発信力や、時代に寄り添うクリエイティビティをすごく感じました。
藤井:曲作りしかできない日々が続いたので、このタイミングで出す曲が全てだと思いました。ライブと曲作りを同時にやるような日々では、もしかしたら作れなかった3曲かもしれません。
冨田:ふたりがこの制作期間、魂を削って作詞・作曲をしているのに、僕はドラムも叩けないし、もどかしい時間も多かったです。だからこそ、出来上がったものに対するリアクションはしっかりしようとは心がけてました。曲を聴かせてもらったら、感動して毎回レオに電話しちゃいますから(笑)。
――エモアキさんには?
冨田:エモアキにもオンライン飲みで感動を伝えていました!
――バンド内でそういうコミュニケーションも取っていたんですね。ちなみに、緊急事態宣言中に音楽制作以外で個人的にやっていたことは?
藤井:ずっとパスタを作って食べてました(笑)。パスタの種類はただひとつで、アラビアータだけです。全然普段は料理とかしないですし、上達したかはわかりませんが、手際は良くなりました。
福島:僕も居酒屋に行かなくなったんで、自分でつまみを作っていました。あとは豆苗を育てていて、緑を見ると落ち着きました(笑)。育てた豆苗でまたおつまみを作ったりして。
冨田:僕は楽器のメンテナンスとか、家の掃除とかしてました。「いつもありがとう~」って感謝しながら(笑)。
――皆さんそれぞれですね。では最後に、これから「夏の幻」を聴く方へメッセージをお願いします。
藤井:そうですね、この曲は、さっきエモアキも言っていたように、温度だったり匂いだったりが目の前にあるような曲になっているし、みんなのイヤフォンや家のスピーカーから情景が浮かぶように歌ったので、それがちゃんと伝わっていたら嬉しいです。
福島:配信した3曲全て、まだライブではできていないので、「One Day」でも歌っているように、また再会できる日を楽しみにしながら聴いていてください。
冨田:そうだね、この期間に溜めたパワーで、感動を直に届けに行こうと思っていますので、宜しくお願いします!

【取材・文:上野三樹】

tag一覧 シングル 男性ボーカル Omoinotake

リリース情報

夏の幻

夏の幻

2020年06月26日

NEON RECORDS

01.夏の幻

リリース情報

One Day

One Day

2020年05月08日

NEON RECORDS

01.One Day

リリース情報

欠伸

欠伸

2020年04月08日

NEON RECORDS

01.欠伸

お知らせ

■配信リンク

「夏の幻」
https://ssm.lnk.to/NatsuNoMaboroshi

「One Day」
https://ssm.lnk.to/oneday

「欠伸」
https://ssm.lnk.to/akubi



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冨田洋之進(ドラゲ・Dr/Cho)
レイ・チャールズ
YouTubeでハッチポッチステーションの動画を見ていて、グッチ裕三さんの「起立・礼・チャールズ」っていうパロディがあって。それが面白くて、元ネタ誰だろう?と思って(笑)。レイ・チャールズの「ヒット・ザ・ロード・ジャック」っていう曲を替え歌にして歌っていたので、調べました。

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