今こそ世に放つノベル・コンセプトアルバム。バンドの信念と挑戦の軌跡に迫る。

WOMCADOLE | 2021.01.20

 ギターのマツムラユウスケが加入し、新体制となったWOMCADOLE。シングル『ヒカリナキセカイ』に続いて、今のバンドの充実ぶりが怒涛のように伝わってくるニューアルバム『共鳴howRING』が完成した。コロナウィルスの影響でライブが制限されるなか、ライブハウスこそを生き場所にしてきたWOMCADOLEはどんなことを思いながら新たな音を紡いだのか? 4人の強固な信頼関係とコンビネーションを頼りに、この作品に触れた者全員を未来へと引っ張っていくような力強いメッセージアルバムでもある今作について、4人に語ってもらった。

――この4人で初めてのアルバムということで。『共鳴howRING』はどんなアルバムになったと感じていますか?
樋口侑希(Vo/Gt):めちゃくちゃヤバいっすね……って、毎回言ってますけど(笑)。本当にね、ユウちゃん(マツムラ)と初めて作ったアルバムで。「ヒカリナキセカイ」とかはもともと曲が存在してた上でユウちゃんが入ってきてアレンジし直した感じやったんですけど、今回に関しては本当にゼロから始めたので。アレンジもそうだし、いろんなことが進化してると思います。気持ちもそうやけど、なんていうか、やりたいことをやりたいっていうバンドの状況ってめっちゃいいなと思って。それを詰め込めたアルバムになってます。
――うん、バンドがいい雰囲気なんだろうなっていうのは聴いていてすごく伝わってくる。
樋口:山ごもりみたいな感じでスタジオに泊まってレコーディングしたんですけど、毎晩酒飲んで、そのいい空気のままレコーディングしてたんで。その空気感で音鳴らすとめっちゃ良くなるんですよね。
黒野滉大(Ba):なんか、自分がロックを聴き始めた頃にこのアルバムを聴いたら、すごく初期衝動を生むような1枚やなって思います。俺の中の「ロックバンドってこういうもんやろ」っていうところにどストレートにハマってますね、このアルバムは。最高です。
安田吉希(Dr/Cho):やっぱり、さっき樋口も言ったけどユウスケとゼロから作ったことによって、メンバー同士でも深いコミュニケーションが取れて、アンサンブル的にも緻密になっていったと思うし。その上でほんまに好き勝手やってるというか、今俺らがやりたいのこれやし、言いたいことこれやしっていうのがまんまもうぎゅーっと詰まってますね。だから今の俺らの120%の1枚やけど、さらにその先の可能性も感じられると思います。
樋口:個人的に、メンバーにデモ渡す時点で、今までやったらリードフレーズとかも考えて送ってたんすよ。でも今はユウちゃんっていう絶対的なギターヒーローがいるから、送り方も変わったんすよね。
――なるほどね。今までは良くも悪くもというか、やっぱり樋口くんが旗振って引っ張るみたいなところがWOMCADOLEにはあったけど、もっとメンバーに委ねる部分が増えた感じなのかな。
樋口:ああ、そうかもしんないです。「Noah’s」っていう曲で歌ってるんですけど、操縦士だけが運転してる船じゃないから、うちらって。全員がオール持ってフル漕ぎしてるみたいなバンドだから。そういう意味ではやっぱり俺だけが旗握ってる感じでもないし、船長っていう感じでもないんですよ。そういうところも今楽しいですね。ちゃんとみんなで1歩ずつ、オールを漕いでる感じがしてる。
――マツムラくんはWOMCADOLEで作った初めてのアルバム、どうですか?
マツムラユウスケ(Gt/Cho):「ヒカリナキセカイ」のときは、もともとリードのフレーズとかイントロとかがあって、基本的にはそれをどういうふうに清書していくかっていう感じだったんですけど、今回は完全に自分が弾きたいやつを全部弾いたんで。名刺じゃないですけど、「新しいギターの人こんなの弾くんやで」みたいなところが、これ1枚聴いたら完全にわかってもらえるかなってぐらい、自分がやりたいことは落とし込めました。
――ギター、本当にいろいろやってますよね。
マツムラ:いろいろやりましたね。でも、できるからっていうより、その曲でその奏法が必要やからやる、みたいなものが多かった気がします。たとえば「またね」でスライドバー使ったりしてますけど、それも今までは全然やったことなくて。だけどこれはここに必要やからやるみたいな感じで。
――だから曲ごとのバラエティっていう意味ではすごく広いんだけど、でも不思議なことに「いろんなことやってますよ」っていう感じはしないというか。ちゃんとこの4人のバンドっていう本質に返ってくるんですよね、全部。
樋口:本当にそうですね。今回ツインギターみたいなこともめちゃくちゃ取り入れてるんですよ。それも「かっこええやん」でやったんですけど、そういうのがうちらのいいところっていうか。やっぱりアイディアにゼロ距離で「お、ええやん」って言えるのって、めちゃくちゃいいと思ってて。芸術家としてユウちゃんが入ってくれたからこそ、いろんなことができるようになったし、だから今回のアルバムを作って全身手足が伸びた感じですね。もっといろんなものに手出したいって思ってますし、より雑食になってる感じがします。
――アルバム全体のテーマについてはどういうことを考えていたんですか?
樋口:それこそ『共鳴howRING』っていうタイトルの意味なんすけど、ハウリングって、個体1個じゃ起きないもので。何かと何かがぶつかって初めて鳴る音じゃないですか。人と人もそうで。去年、なかなか家も出れへんし、人とも会えないなか、そういう人と人とのハウリングについてちゃんと考えたんすよ。タイトルではあえてハウリングの「リング」を輪っかのほうの綴りにしてるんすけど、それはその気持ちとも肩を組みたいなと思ったし、その気持ちを持ってる人たちって絶対いるから、そういう人たちの心の中でも肩組めたらいいなと思ってました。ジャケットも見てもらったらわかるんすけど、赤と青があって、でもそれが混ざって紫になることはないんですよ。紫になろうという意味じゃなくて、ちゃんと俺は赤だぜ、俺は青だぜっていうので肩組んでる、そういう瞬間が好きなんで。そういうのを大事にしたいなと思ってこういうタイトル、ジャケットにしました。
――なるほどね。
樋口:ほんまにインプットが少なくなってた年でもあったんすよ。やっぱり人に会えないっていうのが俺の中でめちゃくちゃでかくて、一緒にお酒もかわせへんし。でもそうなっても俺らは足止めてられんし、会いたいって気持ちがあるから、ちゃんと手紙にして伝えたいなと思って書きなぐった曲たちですね。ライブでは行けないところにも、CDだったら届けられる。昔は「耳だけの再会はあんまり好きじゃない」って言ってたんですけど、今回はそんなことないです。素直に、やっぱり音楽届けたいし、声と気持ちを聴いてもらいたいと思ってる。
――安田くんは樋口くんからそういうテーマなりコンセプトなりが出てきたときにどう感じました?
安田:やっぱり樋口らしいし、そこに自分も共感できるところがあって。ここのふたりでわかるってことは、聴いてくれる人にも届くやろうなって思ってました。
マツムラ:音楽に関して樋口はすごい芯がある人やと思うんで。「音楽に関しては」ってあれですけど(笑)。
樋口:おい!
マツムラ:音楽に関してはすごい信用できる人間。でもそれさえあればいいじゃないですか。自分のやってるバンドのボーカルなんで。だから尊敬できますね。全力でぶつかってきてくれるから僕もぶつかっていけるし、そういう意味でも、僕入ってから2作目なんですけど、樋口っていい人間なんやなって。
樋口:結論(笑)。
――いや、でもその感じはわかる。いい人間っていうか、樋口くんだけじゃなくて、ちゃんと4人で思いをさらけ出しながらアルバムを作っていったんだろうなっていう。その象徴となっているのが、先ほども話に出た「Noah’s」っていう曲だと思うんです。タイトルどおり方舟をモチーフにしているんだけど、未来に進んでいく思いみたいなものがすごく強く出ていて。
樋口:「軌跡」と「Noah’s」は同じ時期に出来たんですよね。だから、全然違うこと歌ってるんだけど、テーマも似てるっちゃ似てる。この世の中でいろんなことを投げ出したい時期もあったし、誰かに頼りたい時期もあったし、どうやって助けを求めたらいいのかわからなくなった時期もあって。でもその中で、誰かに頼ることは全然弱さではないと思って。そういう弱さも見せようと思ってたんで僕は。「未来に追いつこう」だけじゃなくて、ちゃんと「今を大事にしよう」と思って書いた曲ですね。さっきも言いましたけど、やっぱり全員で漕ぐことに意味がある。「俺たちが作った船に全員乗り込め!」って感じですかね。
――だからここでいう方舟というのはバンドだよね。「俺たちのバンドに乗り込め」っていう。そこにはバンドとしての自信もあるのかなって思いました。
樋口:それは絶対にあります。この曲なんてそれこそツインギターバチバチでやばいんですよ。
――すごくスケールでかいですよね。こういう曲が1個生まれたっていうのが、この2020年にWOMCADOLEが音楽をやった意味っていうか。
樋口:そうだと思います。
――「DANGER」とか「レイテンシー」を聴いていると、マツムラくんが入って進化したバンドの姿が見えるし。ギター弾き倒してますね。
マツムラ:「レイテンシー」はやりたいことができて楽しかったですね。なんかギターソロとかもそうですし、リフ推しなのもそうやし、途中のドンパーン、ドンパーンっていうスネアのリヴァーブとか。
安田:「Paradise City」感ね、ガンズ(Guns N’ Roses)の。曲作ってるとき、めっちゃ笑ったもんね。
樋口:俺はもう、どんどんやれって感じだった。この曲は書いてるときからひらめきが止まらんかったんですよ。海賊合唱みたいなゾーンもあるし、ほんまにひらめきが止まらなかった時期の曲ですね。
マツムラ:こんな色になると思ってへんかったもん。
――だから、現場のまさにひらめきで全部作られていったわけでしょ? それは凄まじいですよね。その瞬発力っていうか。
安田:うん。ワクワクするし、楽しいっすよね。
――海賊合唱って言ってましたけど、この曲に限らず今作って合唱パートが多いですよね。それは?
樋口:これに関しては結構意味があって。やっぱライブハウスで歌えないぶん、みんなで歌ってる気持ちになれればいいなと思って。シンガロングは結構入れてますね。
――そういう意味でもアルバムの最後の2曲というのは重要なのかなと思うんですが、「軌跡」は先ほどの話だと「Noah’s」と同じ時期に作ったんですね。

樋口:そうです。もちろんタイアップですから「こういう曲が欲しい」みたいなのはあったんですけど、「俺は思ってること絶対書くから」ってなったときに改めてその未来について考える時間ができて。今を大事にしてるからこそ、ただ秒針に乗っかって生きてるだけじゃないから、俺たちって。だからこそ追いつきたい場所もあるし、追いつきたい未来もあるし、その切符は全員が持ってるから、絶対この切符は手放さんとこう、っていう。最初はそんな感じのメモ書きから作って。思ってることをまっすぐ書けたなと思います。
――この曲も合唱の部分がすごくいいですよね。<生命体の数だけ未来はその先へ続いていく>っていう、スケールが大きく広がる感じがあって。
樋口:うん。俺の未来は俺の未来やし、安田の未来は安田の未来やし、全通りあるじゃないすか。けど、未来で――それこそライブハウスとかで待ち合わせできたときに、そこですげえもんができるんじゃないかとか、いろんなことを想像しながら書いてました。だから、半分楽しみな気持ちも含まれてますね、そこには。
――バンドもまさにそうですもんね。
樋口:うん、俺らの歩いてきた道って全然平らじゃなかったと思うけど、でこぼこすらも歩いてきたからこそ、ちゃんと強いものができるというか。俺、裸足でライブするんすけど、エフェクターボード踏んで痛いときがあって、それで変に興奮しちゃうんすよね、アドレナリンが出て。そういうときの痛みとか好きだったりする。そういうのを経験してきたからこそ、この曲も書けたんだと思います。屈折しまくってるけど、その道をまっすぐだと言えるから。
――そして最後の「またね」。この曲は少し色が違いますよね。感触的にも弾き語り感が強いし、すごくパーソナルな感じを受ける曲になってるんですけど。
樋口:これは本当にお客さん含め全員に会いに行くねっていう気持ちで書いた歌で。僕たちには永遠はないけど、でも出会えたことに嘘はないし、起きたことに嘘もないし、認めたくない現実もあるけど最後にはきっと何とかなるよっていう。俺自身もこの「またね」って歌に救われました。個人的に最近いろいろあって、会いに行けなくなった人とかもいるんで。そういうときに初めて気づいてしまった感情とかもあったんですけど、それじゃ遅ぇなと思って。だからこのタイミングで「またね」っていう歌を出せることはすっげえ感謝してます。
――ライブでやったらすごい景色になりそうですね。
樋口:本当にみんなもう肩組みながら歌いたい。
マツムラ:演奏してるときもすごく気持ちが入り込む感じがあって。笑顔になるときもあるし泣きそうになるときもあるし。ほんまに演奏してもシンプルにいい曲やなって思います。
安田:うん。この曲に関しては、ドラマーっていうよりは「音の一部」みたいな意識で演奏できますね。ドラムを叩くんじゃなくて「またね」という曲の一部になるみたいな。だから歌も自然と何かを口ずさむみたいなニュアンスで歌えてるし、ドラムに関しても何かが流れていくような。全部必然だなっていう感じがやっててすごいあります。不思議な曲です。
――しかもそこで放つメッセージが「Everything’s gonna be all right.」ですからね。
樋口:うん、やっぱりこれを言いたかったんです。俺はこれを歌ってほしかった。今この状況で、俺が歌って欲しかったって思えたから、俺が歌いましたね。

【取材・文:小川智宏】

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リリース情報

ノベル・コンセプトアルバム『共鳴howRING』

ノベル・コンセプトアルバム『共鳴howRING』

2021年01月20日

UNIVERSAL MUSIC

01.応答セヨ
02.再生
03.Noah’s
04.DANGER
05.レイテンシー
06.kate
07.綴リ
08.軌跡
09.またね

<初回限定盤DVD収録内容>
「ヒカリナキセカイ」「軌跡」「応答セヨ」Music Video+撮影オフショット映像

お知らせ

■コメント動画




■配信リンク

『共鳴howRING』
https://va.lnk.to/KHR



■ライブ情報

Novel Wonderland tour
02/22(月)愛知 名古屋DIAMOND HALL
03/22(月)大阪 なんばHatch 【振替】
04/08(木)東京 新木場STUDIO COAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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