自身のルーツ×新機軸的エッセンスを融合させた待望の新作『モン吉3』を紐解く!

モン吉 | 2021.02.10

 モン吉、3年ぶりのニューアルバム『モン吉3』が完成した。久々に逢った彼は、ひとことで言えば、マイナスイオン。穏やかでにこやかで、話を聞いているだけで、こちらの心の凝りがほぐれていくようだった。それは、ニューアルバム『モン吉3』もまた然り。
 本作は、プログレッシブ・ハウス、HIP HOP、レゲエ、ダブステップ、ドメスティックなバラード、シンガロングできそうなロックテイスト……と、多彩な楽曲が並ぶが、軸になるのはトラックの軽やかさと、モン吉の歌である。あえて「歌」と書いたのは、このアルバムが非常にハイクオリティーなポップスアルバムになっているからだ。ラップという手法を用いながら、フロウで曲の起伏をメロディーとして響かせるスキルは、ちょっとやそっとじゃ真似できない。聴けば聴くほど、モン吉、すげぇなと思う1枚だ。
 「ファンモンっぽいアルバムを作ろう」というところから制作がスタートしたという本作。今、彼が考える“ファンモン”とは?

――ニューアルバム『モン吉3』は、どのような形で制作がスタートしたんですか?
モン吉:1枚目の『モン吉1』、2枚目の『モン吉2』に比べて、みんなと一緒に作ろうっていう意識がありましたね。スタッフの人も、最初からどんどん話に入ってきてくれた。ファンモンのときもそうだったんですけど、スタッフも含めて、みんなで一緒に作ってるっていう印象が強かったんです。そうやって、みんなで話をする中で「ファンモンっぽいの作ろう」っていうのが出てきて。だから、ざっくりファンモンっぽい作品を作ろうとは思ってました。
――“ファンモンっぽい”っていうのを言葉にすると?
モン吉:もともとトラックやメロを作っていたので、そこは変わらずっていう感じで、あとは応援ソングってところですかね。応援ソングって、『モン吉1』『モン吉2』には入ってなかったんですよ。
――そうでしたね。この取材にあたり既発の2枚のアルバムを聴かせていただきましたが、ラブソングが多い印象を受けました。
モン吉:そうですそうです。ファンとモンが別れて、僕がどっちかって言ったらラブソングで、ファンちゃん(ファンキー加藤)がどっちかって言ったら応援ソングって感じだったと思うんです。意識してやったわけではないけど、それぞれ得意なのをやったほうがいいって、お互い思ってたのかな……。今回の『モン吉3』は、思いっきりファンモンっぽさを意識して作った。つまり、思いっきりポップスに振り切ろうと思ったんです。
――自分が得意なポップスをもう少し具体的にお願いします。
モン吉:なんだろうなぁ。これだけずっと音楽やってて、自分が得意なのはラップを用いたポップスだと思うので、そこをフルスイングでやるのがいいと思ったんです。そう思ってたところに、みんながファンモンっぽいのをやろうと言ってくれた。じゃあ、そう言ってくれるみんなの力を借りて、一緒にラップを用いたポップスのフルスイングをやろうと思ったんですね。
――「RUNNIN’」は、モン吉さんの得意技のひとつですよね。ざっくり言うと、4つ打ちのハウス。
モン吉:もともと僕が好きなジャンル。ジャンル的にはメロディック・プログレッシブ・ハウス(※註:簡単に言うとメランコリックなコード展開がある4つ打ちのダンスミュージック。部分的に流麗なボーカルが入ることも多い)っていうのかな。コードが進行しているのでメロディーがつけやすいんです。だからハウスとかテクノとかのジャンルの中でもポップスに持っていきやすいジャンルなんですよね。でも最近思うのは、自分が作るメロディーに自分の声がのれば、ポップスになるなってことで。この曲も、メロディーも完全にポップスだし。コードさえ進行していればメロディーが出てくるし、メロディーが出てきさえすれば、そのジャンルごとポップスに持ってこれると思ってるんですよね。
――なるほど。「RUNNIN’」は、モン吉さんがデモを作る段階からプログレッシブ・ハウスを意識して作った曲であると?
モン吉:そうです。プログレッシブ・ハウスっぽいコード進行にしようと作っていきましたね。で、4つ打ちで、コードがのってて、自分のバースは出来ていた。でも、僕だけの力量ではプログレッシブ・ハウスっぽくならなかった。だから今言った音源をもっとプログレッシブ・ハウスにしてくださいって、アレンジの富樫さん(富樫寛彦)にお願いしたんです。
――自分が好きなジャンルであるプログレッシブ・ハウスの曲調の曲って、アルバムの中でこの1曲だけなんですよね。
モン吉:そうですね。1曲プログレッシブ・ハウスをやったら、もう同じアルバムの中ではやらないっていう。前からそうなんですけど、1枚のアルバムの中に、同じような曲は2曲はいらないと思っているんですね。ここは意識しているっていうよりも、前から自然にそうしてきた。
――そういう、いろんなジャンルが入ったアルバムのほうが、自分が好きというのもあるんでしょうか?
モン吉:んー、難しいですね。今の(音楽の聴き方の)主流を考えると、結構同じジャンルの曲が並んで、サラッと流せるほうがいいのかなとも思うんですけど。
――鋭い! シチュエーションで音楽を聴く時代になってるんですよね。プレイリストで選ぶ時代になっている。
モン吉:そうなんですよね。誰が好きだから、その人のアルバムを聴く……みたいなのも、もちろんまだまだあるけど、そうじゃない価値観で聴いている人たちもどんどん増えてきている。誰かが作ったプレイリストがあって、同じようなジャンルの曲がサラッと流れていく。自分だってプレイリストを聴くこともありますからね。なんだろうな……古いのかもしれないけど、やっぱり作品を出すからには、俺のアルバムっていう自負があるんですよ。それでも、サラッと聴けるほうがいいなと思ってます。サラッとって言い方は極端かもしれないけど、アルバム1時間弱、あっと言う間に終わってループしてもらえるような作品がいいな、と。自分で聴いていてもそうなるし、それが気持ちいい。そういう作品、聴いていてそういう感覚に持って行きたいなっていうのは、いつも思って作ってますね。
――なるほど。「LOOP MAGIC feat.NillNico」は、ここ数年のトレンドのチルなビートを取り入れてましたね。
モン吉:そうですね。この曲は地元の友達、TICTOCくんと一緒に作ったんです。TICTOCくんはHIP HOP畑の人で、フィーチャリングのNillNicoさんを紹介してくれたのも彼なんですね。僕と年齢も近くて、最近一緒にキャンプ行って、いろいろ話しながらたき火ばかりしています(笑)。最近のHIP HOPについては僕よりも詳しいので話を聞くと、Instagramでギターを弾いてる女の子の音源をサンプリングして曲出してるとか、本人同士がInstagramでやりとりして、サンプリングしたり曲を作ったりしてるとか言ってたんですね。そういう形でサンプリングしたら面白いなって思ってたんです。そんなとき、僕がよくInstagramを見ている関口シンゴさんを思い出して。アルバム『モン吉2』でご一緒させてもらって、その縁で、Instagramをフォローさせていただいていたんですね。シンゴさんは、毎日ギターを弾いた動画をあげていて、その動画を見ていて「あ、これハマるな、面白いかも」と思って。TICTOCくんにも動画をいろいろ見てもらって、その中で「このギターフレーズいいね」ってなって。それでシンゴさんにサンプリングしたいんですけど……って、僕が直接連絡したんですよ。そしたら、「どうぞどうぞ」ってなって、曲作りを進めていったんですよね。だからこの曲は、作り方も今っぽいし、トラックや曲調も今っぽいなと。
――サンプリングのネタ探しが既存の作品だけでなくなった。曲作りの自由度があがった感じはあります?
モン吉:ありますね。昔だったらこうはならない。Instagramもないし、TikTokも無かったわけで。SNSの中にある突発性な感じが今っぽいなと思ったんですよね。
――「WONDER DAY」について。リリックとフロウのマッチングがなめらかで、言葉がトラックと同時にスッと入ってきて素晴らしかったです。
モン吉:本当ですか。うれしいですね。この曲は特に言葉を気にしないで作ったんです。フロウを作って、適当に<♪わわう わわあべ ~♪>みたいに言葉をつけていった。ラップに関しては、最近はフロウから作るのが面白いなと思い始めていて。よくよく考えたら、デビュー前からやってたこと、HIP HOPにどっぷり浸かっていたときにやってた作り方だったんです。先にフロウをマイクで録っちゃって、そこに当てはまる言葉をはめていくっていう。だから、メッセージをストレートに入れる手法ではないんです。言ってみれば、言葉遊びが気持ちいいって感じの作り方。
――あぁ、だから母音の並びとか、韻の踏み方が自然で気持ちいいんだ、「WONDER DAY」は。
モン吉:そうなんです、そうなんですよ。意味からリリックをつけていくと、意味優先だから韻を踏まないところが当然出てくる。でも、フロウからだと(韻を)踏んで踏んで踏んで踏んで……って、永遠に自由にいける。最近はラップがまたすごく面白いなと思っているんですよね。
――「WONDER DAY」の中でリリックが気持ち良くハマったところはどこですか?
モン吉:全体的に好きですね。ラップが気持ち良く出来たから。全体的に気持ちいい曲なんですよね。僕の歌詞の書き方は、トラックのイメージから書いていくことが圧倒的に多いんですね。「チャイルドキッド」も、トラック聴いて「なんかガチャガチャしてるな、子供だな」と。で、自分の中での子供って完全にあいつ(=自分の子供)じゃんってなったんで。それで、うちの子供とか、幼稚園の子供とかが跳ねるような感じの、遊べるような曲になったらいいなと思って作っていきました。ラップが入ってるポップスって、言ってみれば、ボーカル半分、トラック半分で構成されていると思ってて。トラックが持っているイメージから逆らって歌詞を書くのも変だなと思うんですよね
――「チャイルドキッド」ってタイトルはどこから?
モン吉:あはははは(笑)。きましたねー。これはもう、ノリ。
――でも、すごくいい造語だなと思いました。響きもいいし。しかしモン吉さんは、言語感覚が自由過ぎる(笑)。
モン吉:(笑)。候補をいろいろ挙げた中で、なんか面白いなと。あるようでないな、こんな映画あったようななかったような……みたいな(笑)。造語的にも面白いし、響き的にも面白い。完全に子供を歌った曲だというのも一発でわかるし。
――ストレートなラブソング「君が好き」のミュージックビデオも印象的でした。イラストレーターの蒼井アオさんのイラストで構成されたリリックビデオになってますね。

モン吉:マネージャーが蒼井アオさんを見つけてきてくれたんです。もともと彼は蒼井アオさんの絵が好きだったみたいで。「君が好き」で、蒼井さんのイラストでMVを作りたいって話してくれたんですよね。僕、YouTubeとかTikTokとか本当に疎いんですよ。でも完成したMVを観て、キュンキュンする感じが曲と合っていると思いましたね。今は、みんながいいなと言ってくれることは、どんどんやっていきたいと思ってます。

【取材・文:伊藤亜希】

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リリース情報

モン吉3

モン吉3

2021年01月27日

ドリーミュージック

01.RUNNIN’
02.WONDER DAY
03.君が好き
04.夢のつづき
05.TAKE
06.未来の手紙
07.ONENESS
08.チャイルドキッド
09.ROLLIN
10.LOOP MAGIC feat.NillNico
11.WEDDING SONG
12.君の面影 feat.ラブリーサマーちゃん
13.メロディ

お知らせ

■配信リンク

『モン吉3』
http://hyperurl.co/monkichi3



■マイ検索ワード

ガレージブランド
アウトドアのたき火台だったりとか、ギアとか、今ガレージブランドのやつがアツいんですよ。「〇〇くんちの工場で作ってる」みたいな感じので、手作り感が良くて。Snow Peakとかmont-bellみたいなものよりも個数が少ないけど、モノはいいみたいな。それでキャンプ好きの人たちが発売日に追っちゃうとか。ぼくなんてギアばっか集めてて、ギア充ですからね(笑)。



■ライブ情報

SARUTABI2021~MEGURU~
02/06(土)福岡 DRUM SON
02/13(土)大阪 アメリカ村 FANJ twice
02/21(日)宮城 仙台MACANA
03/06(土)香川 高松DIME
03/19(金)愛知 ell.FITS ALL
03/26(金)東京 Shibuya WWW

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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