今年ソロ活動20周年を迎えた杏子が、アニバーサリー・ライブ「Over The Limit」を開催した。この日は、10月にリリースされたソロデビュー20周年記念アルバム『Sky’s My Limit』に参加した豪華アーティストも多数ゲスト出演。貴重なコラボレーションを次から次へと繰り広げながら、アンコールを含む全21曲を披露した。

　1曲目は「Poison Ivy」。内に秘めた熱や毒をギリギリまで抑え込むかのようなボーカルとファッションーーミニのトレンチコートとハットがなんともクールだ。感情を爆発させた後半ではハットを脱ぎ捨て、ヒールでお得意のハイキック！目にも耳にもパンチあるオープニングを見せつけた。3曲目「イジメテミタイ」からは1組目のゲスト・来門(smorgas)が登場。パワフルなマイクパフォーマンスでフロアを煽りつつ、杏子とのセクシーな掛け合いで魅了していく。オリジナルは15年も前に発表された曲だが、杏子いわく「新しい命が吹き込まれた！」。4曲目の「悲しきは…」では一転、切なさ全開のメロディーを２人で見事に歌い上げる。両極に振り切った２人の表現力は圧巻だった。
　ジャズの名曲カバー「Lullaby of Birdland」、ギターを弾きながらの「JAVA BLUES」と続き、2組目のゲストとして秦基博とさかいゆうがステージへ。客席も一体となってのファミリー感が漂う中、まず披露されたのは福耳の最新シングル「LOVE&LIVE LETTER」。3人だけのバージョンで聴けるのはかなり珍しいのでは？客席も一緒になってのコーラスはさすがの仕上がりだ。「Down Town Christmas(Reprise)」では、「アーティストイメージがあるからダメらしいの(笑)」(杏子)ということで、秦とさかい以外のメンバーだけ白いマフラーを着用。20年の時を経て「杏子with秦 基博＆さかいゆう」としてニュー・レコーディングされ、11/21にはシングルとしてリリースされる、この曲もまた、新たな命が吹き込まれた永遠の名曲だ。
「ソロになって20年。…すごいよね(笑)。私、100万回のリハーサルよりも、こうしてみんなが受け止めてくれる1回の本番の方が、自分でも思わぬ歌い方や踊りが出来たりするんです。ライブって、魔法のような時間なの。だからやめられない！って感じでここまで続けてきました。そんな私がミュージシャンになれたのは、BARBEE BOYSがあったから！」

　大きな拍手と歓声で迎えられたのは、この日3組目のゲスト・いまみちともたか。もともと自身の作品で自ら歌っていた「BUSU」を今回のアルバムで杏子が歌うことになったわけだが、なんとライブで披露するのは今夜が初めてとのこと。男言葉で歌われる照れ隠しのロマンチシズムは、杏子のボーカルで不思議な色気を醸し出す。黒いワンピースのポケットに左手を突っ込み、いまみちのギターソロで気持ちよさそうに踊る姿は最強の可愛らしさだ。「タイムリミット」ではワンピースを脱ぎ捨て、ローズ色の超ミニドレスでワイルドなセクシーさを爆発させる。２人のコンビネーションがあまりにも自然でカッコよくて、ため息が出るようなシーンの連続だった。
　そして今夜最後のゲスト、TRICERATOPSの和田 唱が登場。「どうしても一緒にやりたかった」(杏子)という「口いっぱいの愛を」と、TRICERATOPSのカバー「Silly Scandals」の2曲が披露された。TRICERATOPSの曲がカバーされるのは初めてということで、「ある意味、事件(笑)」と嬉しそうな和田がギターキッズのように目一杯楽しみながらプレイする姿も印象的だった。

　4組のゲストとのコラボレーションを終え、本編ラストはパワフルなロックナンバーを立て続けに披露。ひとつひとつの言葉に込めた思いの熱さ、指先にまで託す豊かな表情はとにかく圧巻だ。ボーカリストとしてはもちろん、イントロやギターソロ、アウトロで魅せるパフォーマンスの素晴らしさも唯一無二。アンコールでは再び秦 基博を招いてソロ・デビュー曲「DISTANCIA~この胸の約束~が披露されたのだが、あのロングスカートの裾さばきなんてきっと他の誰も真似出来ない美しさだ。全身全霊とはまさにこのこと。音と体と心がひとつになったプロフェッショナルなステージに圧倒された、スペシャルなアニバーサリー・ライブだった。

【取材・文：山田邦子】