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くるり、新体制としての初アルバムを引っ提げて行なわれたワンマンツアー最終公演の模様をレポート!

くるり | 2012.12.25

 10thアルバム、というだけではなく、岸田繁(Vo&G)、佐藤征史(B&Vo)に、吉田省念(G&Cello&Vo)、ファンファン(Tp&Key&Vo)が加わった新生くるりの1stアルバムとなった『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』のリリースツアー『くるりワンマンライブツアー2012?国民の性欲が第一?』のファイナルとなった渋谷公会堂。この日を目前にして、ツアータイトルの元ネタの政党が解党するという事態も起きた中で、くるりは悠然と自分たちの音楽を鳴らしていた。いや、当たり前だろ、と突っ込まれるだろうけれど、音楽って強いな、くるりは社会や生活をひっくるめて物語を紡いできたんだな、と思ってしまったのだ。

 しょっぱなは、レコーディングにも参加したあらきゆうこ(Dr)のしなやかでおおらかなドラミングに包まれながら、『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』の楽曲を畳み掛けていく。『chili pepper japones』では、一曲丸々岸田がハンドマイクで歌うという新鮮な場面も。6曲目の『bumblebee』まで終えたところで、岸田が意外な事実を話し出す。渋谷公会堂でのライヴは、ワンマンは2ndアルバム『図鑑』の時以来、イベント出演も03年以来だというのだ。「出てない間はC.C.Lemonホールだった。今はポカリが飲める」と冗談っぽく岸田は言っていたけれど、しみじみと時の流れを感じた。佐藤は岸田の話に小気味よく掛けあいながら「渋公は『8時だヨ!全員集合』をやってたんだよね」と興奮気味に話す。世代感が伝わってきます(笑)。しかし、今のくるりに渋公は本当に似合う。セットもないガラーンとしたステージなのだけれど、音を鳴らすこと、バンドで交わることを、全身で楽しみ、表現している彼らの姿は、ホールの空間で映えるから。懐かしい『惑星づくり』や『春風』も、吉田とファンファンの色が遠慮なく混じり、新たな魅力を感じさせてくれた。メロディがいいから何でもアリにできるのだろう。さらに、今回のツアーは、場所によってメニューが違うし、喋るところも決めていない。予定調和が嫌だ、という岸田のMCに、客席からは拍手が起こる。くるりはファンも、次は何が出てくるんだろう?という、本来のライヴ感を望んでいるのだ。

 歌詞が今なお切実に感じる『ばらの花』、イントロからハンドクラップが起きた『シャツを洗えば』、ハーモニーの美しさに今の編成の強みを感じた『ワンダーフォーゲル』と名曲が続き、思わず岸田も「早っ!」と言ってしまったラストナンバーへ。「ご飯を食べ終わって、お勘定して、それから、みたいな曲」と紹介してからはじまったのは『坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)』でもラストを飾っていた『glory days』。エンドロールにして主役のような、今を生きる私たちに刺さる言葉と染みるメロディは、バンドがステージを降りた後に、大きなアンコールを呼び起こした。

 暫くして、出てきたのは佐藤と吉田。「やろうって言っていた曲が変わるっぽい。予定調和を嫌うバンド(笑)」と言いながら、お客さんを座らせて、軽妙にグッズ紹介。「安いね?!」などと弾けたキャラを炸裂させる吉田にオーディエンスも笑いっ放し! そのうちに他のメンバーが現れ、まずは『soma』からスタート。そして、『すけべな女の子』になると、オーディエンスがわらわらと立ち始める。さらに、佐藤が歌う『jumbo』に『ロックンロール』が続き、これまで大人っぽく盛り上がっていたオーディエンスも焚き付けられていく。演奏後も長々と拍手が続き、一度は楽器を置いたメンバーが、再び楽器を手にしてはじまったのは『東京』! エモーショナルになっていくにつれて会場は明るくなっていった。ここが東京。永遠に僕とあなたの歌。何だかそんなメッセージに思えて、涙腺を刺激されずにはいられなかった。

 メンバー編成も音楽性も冒険を続けてきたバンドだと思うのだけれど、それもこれも芯を守るためだったのかもしれない、そんなことを思った。時代の生き写しである日本発のオルタナバンド――その唯一無二の存在感に、今こそ最大の賛辞を送りたい。

【取材・文:高橋美穂】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル くるり

リリース情報

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)【初回限定盤A】

坩堝の電圧(るつぼのぼるつ)【初回限定盤A】

2012年09月19日

ビクターエンタテインメント

1. white out (heavy metal)
2. chili pepper japons
3. everybody feels the same
4. taurus
5. pluto
6. crab, reactor, future
7. dog
8. soma
9. o.A.o
10. argentina
11. falling
12. dancing shoes
13. china dress
14. my sunrise
15. bumblebee
16. jumbo
17. 沈丁花
18. のぞみ1号
19. glory days

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お知らせ

■ライブ情報

RADIO CRAZY
2012/12/29(土)インテックス大阪

COUNTDOWN JAPAN 12/13
2012/12/31(月)幕張メッセ国際展示場1~8ホール、イベントホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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