7月18日、渋谷CLUB QUATROで行われた“THE ORAL CIGARETTES~唇ワンマンツアー2014の巻~”東京公演。
　パンパンに膨れあがった会場は、異様なエネルギーに満ちていた。この夏、大きく成長しようとするバンドのパワーと、それをかぎつけた目ざといファンの期待感が、開演前からヒシヒシと伝わってくる。

　思えば1ヶ月と少し前、同じ会場で行われたイベントライブ“HighApps Vol.19”で彼らのステージを見た時は、「来月ワンマンがあるから、今日見て気になったヤツは来てな！」とボーカルの山中拓也が呼びかけていたが、その後約1ヶ月のあいだで、東京公演は急激にチケット売り上げを伸ばし、結果的に東名阪＆奈良の全箇所がソールドアウトという華々しい結果となった。 ツアー直前には、山中が肺炎でダウンするというアクシデントに見舞われるも、ツアー直前で無事復帰を果たす。まさにデビューシングルの「起死回生STORY」を地でいくような“起死回生”ぶりだったのだ。そういう意味でも、何かと“持っている”バンドである。

　ライブがスタートすると、もうお祭りのような盛り上がり。1曲目は「出会い街」で、リリースされたばかりのシングル「起死回生STORY」に収録されたナンバー。すでに予習済みのオーディエンスも多いようで、グイグイ曲に食いついていく。最初のMCでは山中拓也が「始まった?……始まった?！」と感情を爆発させ、「ツアー一発目がココでホントによかったです！」と、満員の観客に語りかけた。そこからは「瓢箪山の駅員さん」「逆恨み小僧」など、バンドがライブで磨き抜いてきた楽曲を連発。しかも、途中31歳の誕生日を迎えたばかりのドラマー・中西雅哉へのバースデープレゼント（？）として、ドラムソロがプレゼントされ、場内は大いに沸いた。

　中盤、ライブのマストチューン「N.I.R.A」が飛び出すと、観客全員がジャンプを引き起こし、見事な一体感を作り出す。途中、新曲を挟む余裕をみせ、ライブは沸点へと向かっていった。

　後半前、山中拓也は「キラーチューンがまだまだいっぱいあるんですよ！」と、オーディエンスを挑発。ラストまで、アッパーかつ、キャッチーなサビを持つ楽曲達を熱くプレイ。一度聴いたら忘れられない「大魔王参上」や「Mr.ファントム」など、体を揺らさずにはいられない曲を揃えて、終盤へ。勢いづいたメンバーもステージでパワーを発揮。山中拓也が絶妙な客いじりで空気を支配すれば、個性的なギターフレーズを披露する鈴木重伸は、水浴びをしたかのように汗びっしょりな熱演ぶりで声援に応え、コーラスワークでも大活躍のベーシスト、あきらかにあきらは、最後まで恐ろしいまでの運動量でステージを動き回る。一方、にこやかな表情でプレイする中西雅哉は、しっかりとリズムをキープして、バンドの要として本領発揮していた。

　本編ラストのメジャーデビューシングル「起死回生STORY」では、そんな全メンバーの底力が一気に爆発。この日一番の熱さで会場は沸点に。アンコールでは、その本編の余熱を味わいながら、敢えてしっとり聴かせる曲「エイミー」をプレイして、ライブを終えた彼ら。11月には会場のキャパを上げ、Shibuya O-EASTでのワンマンを発表（詳細は後日アナウンスされるとのこと）。今後も勢いが加速することは間違いないだろう。

　まさに、化ける直前……孵化の貴重な瞬間を目の当たりにしたようなライブだった。

【取材・文：海江敦士】
【撮影：鈴木公平】