かりゆし58恒例の全国ツアー『ハイサイロード』が今年も始まった。『~大金星~2014-15』と銘打たれた今回のツアーは、2015年の2月までかけて、全国各地で行われるもの。各土地のファンと今年も「ハイサ~イ」と元気な挨拶を交わし、お客さんとメンバー共々、明日への活力をお互いに与えにいく恒例行事だ。
　私が観たのは、初日。11月7日の東京・赤坂BLITZであった。彼らのツアー初日はいつも非常に固く、緊張しているのが伝わってくる。この日まで何度もリハーサルを繰り返し、万全のセットリストを組み、ステージに立ったはずなのだが、現われた瞬間から飛んでくる期待値たっぷりの視線や声援を前にすると、やはり固くなってしまうのだろう。しかし、それが逆に非常に人間臭く、好感が持てるところだったりもする。彼らのあの緊張した初日の姿、そしてそれを許容し、温かく同胞のように包むお客さん…。あの光景を想い返すにつけ、”ステージ上と客席と違いはあれど、みんな同じ人間なんだな…”と嬉しくなる。

　ライヴはドラムの中村洋貴による力強い生命力たっぷりのビートから始まった。それに乗りメンバーがひとりひとりステージに現われる。最後に登場したボーカル＆ベースの前川真悟が会場を見回し、ゆっくりと語りかけるように、こう言った。「ハイサーイ。今日は、『ハイサイロード~大金星~ツアー』の初日。初日は怖いよ。初日は緊張するよ。でも、その怖さも、その緊張感も、自分が今、新しいことを始めようとしていることの証し。今日、これから、ここでどんなことが起こるのか。お互い自分たち自身の目で確かめ合おう」。そして、その言葉のあと入ったニューアルバムからの楽曲では、生命力と躍動感が会場に呼び込まれ、ステージ/客席含め、早くもみんなが一つになっていくのを感じた。

　この日のライヴの中心は、やはりニューアルバム『大金星』からの曲だった。人々ひとりひとりの良いところをフックアップし、輝かせ、自分のこの生き方や人生を全肯定してくれ、後押しをし、味方になってくれるまるで頼もしい相棒のような同作品。そんな各曲をライヴならではのアレンジやダイナミクスを交え、より観る者に寄り沿い、同化させていったこの日。会場に疾走感を呼び込む楽曲が現れたと思えば、新屋行裕と宮平直樹による2本のギターが空間を広げ、会場に音での派手な演出を加えていく楽曲が現れる。また、「大丈夫。お前の背中を見ているヤツが必ずいるから」と、会場に安堵感と安らぎを与えた楽曲では、みんながまるで自分のことを歌われているような心持ちで聴き入り、「みんなでワイワイ踊れる曲を作ったんで楽しんで下さい」と放ったナンバーでは、ダンサブルさと上昇感が気持ち良さを育み、みんなが思い思いのスタンスで踊った。
　全ての行為や生き方を肯定し、逆に褒めてくれるかのように響いたニューアルバム『大金星』であったが、ライヴでの同作品からのプレイも、それらと同様。ある曲では、身体の奥底からの力や自信の漲りに鼓舞されたし、まるで「ただいま」と家に帰ってきたかのようなアットホームさで会場を包んだ曲では、温かい気持ちが会場を満たしていった。また、タオル必須な楽曲が現れた際には、”待ってました!!”と用意していたタオルを会場中が大旋回。その光景も含め、開放感と一体感を味あわせてくれた。
　そしてアドリブながら宮平からの「最近おふくろと上手く行ってないヤツ。最近おふくろと会えてないヤツ。今日は真悟(前川)をお母さんだと思って」の言葉のあと歌われた「アンマー」では、母への愛しい気持ちが会場いっぱいに広がり、みんなに慈しみの気持ちを溢れ出させた。

　「今までやったライヴの中でも、今日が一番楽しかった。ありがとう」。これは全てを終え、ステージを去る際の前川の言葉だったのだが、この言葉にこそ、<いつもそのライヴが最高地点>と確信しながらやり続けている、彼らの真摯さと、初日の緊張している中、それを和らげ、忘れさせてくれるかのような優しく温かい気持ちでライヴを楽しんだお客さんへの感謝の言葉のようにも感じた。

　ライヴ後に会ったメンバーは一様に、やり終えた安堵感とホッとした表情、それから無事に初日を終えることが出来た開放感で終始笑顔だった。加え、このツアーにかなり手ごたえと自信、自分たちにもお客さんにも<これから始まる阿多背しい何か>を共有できる、そんな確信を得たように映った。
　今回のアルバム『大金星』は、いわば私やあなたのようなひとりの存在が、実は光り輝く存在のひとつひとつであるのだということを改めて教えてくれた作品だった。その証拠に、彼らの歌と一緒に声を合わせていた、この日の会場のひとりひとりの顔は輝き、しっかりと明日や前を向き、希望にあふれていた。さぁ、次はアナタの街に、かりゆし58がやってくる。共に一緒に歌い、輝こうではないか!!

【取材・文：池田スカオ和宏】