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手嶌葵の日本橋三井ホール公演、新たな一面も見せた楽曲も披露

手嶌葵 | 2014.12.16

 その声を何と書こうか悩ましい。吐息のように優しく繊細、素朴で飾り気のなく、どこか憂いがあり、儚くて、ほんのりキュートな一面もある。どれもピンとこなくて悔しいけれど、そんな言葉では表現できない手嶌葵の不思議な魅力を、ひしひしと感じる日本橋三井ホールでのコンサートだった。

 映画の世界を音楽にしたような、まるでヨーロッパの国々を旅してまわるような最新アルバム『Ren’dez-vous』の雰囲気をそのまま投影するように、ステージにはレンガ塀のセット。そこに手嶌葵とピアノの真藤敬利が登場すると、ベット・ミドラーのカバー曲「The Rose」からライブはスタートした。しんと静まった会場にそっと波紋を起こす手嶌の声。「緊張するので最初は大好きな曲からはじめました」とはにかむと、続けて、ギターのオオニシユウスケとパーカッションの中北裕子を迎えて、ディズニーアニメ『101匹わんちゃん』に登場する悪女のテーマ曲「Cruella De Vill」を披露。その妖しげなメロディを楽しむように、手嶌の声がふわりと弾んだ。

 『ゲド戦記』のイメージソング「旅人」をアカペラで歌ったあと、続けてデビュー曲であり、手嶌の代名詞とも言える同作の挿入歌「テルーの唄」。1曲ごとに丁寧に曲についての説明を加えながら、コンサートは進んでいく。会場に手拍子が湧いた「朝ごはんの歌」では、中北はウォッシュボード(凸凹の表面をひっかいて音を鳴らす楽器)を肩にかけて演奏。曲ごとに、鳥のさえずり、森の気配、ものの輝きといった様々な音を、最小限の効果音で彩るパーカッションはこの日のコンサートでとても重要な役割を担っていた。

 「静かで暗い感じがしっくりとくる私ですが、本当は明るいこと、楽しいこと、運動もダンスも大好きです。口角をぐっとあげて、“明るい曲もできますよ”ってチャレンジした歌です」と言ってから、「いつもはじめて」を皮切りに、『Ren’dez-vous』の楽曲を立て続けに聴かせる。フランスを訪れたときの楽しさを込めた「Voyage a Paris」をはじめ、大貫妙子の楽曲に初めて自分で作詞を手がけた「ちょっとしたもの」まで。ステージセットにも調和したパリの空気感が会場いっぱいに広がる。この匂いが手嶌は本当に大好きなのだ。

 手嶌は歌に入る前、何かの儀式みたいに腕を動かしながら、スッと集中力を高める。15分ほどの休憩を挟んだ後半はそうして研ぎ澄まされた感性でもって、曲ごとに表情を変えながら歌う手嶌の姿が印象的だった。場末のシンガーを思わせる「NOMAD」から、情熱的なピアノの伴奏にのせた「丘の上のブルース」へ。パリを離れて、めぐるヨーロッパ旅行だ。
 そして曲に入る前にひときわ時間をかけて呼吸を整えから歌い始めたのが、「明日への手紙」だった。物語の世界を描くことの多い手嶌のステージにあって、人の歩む道をポジティブなメッセージを送るナンバー。ピンスポットが照らすなか、凛とした佇まいで歌う手嶌の歌に、客席からは大きな拍手が贈られた。

 ここまで『Ren’dez-vous』からの楽曲を歌い切ると、「“昭和”という2文字が頭に浮かぶ曲」と手嶌が語った、日本の楽曲をセレクト。《君の欲しいものは何ですか 僕の欲しかったものは何ですか》と問いかける吉田拓郎の「流星」を、手嶌らしい囁きにも似た歌唱で、その言葉の重みを噛みしめるように届けていく。「最後は大好きな2曲を」と、ディズニー映画『美女の野獣』のテーマ曲「Beauty and The Beast」とマリリン・モンローの「I Wanna Be Loved By You」をカバー。ピアニカを弾く真藤が前に出ると、膝でリズムをとりながら、一緒になってその音を楽しむ手嶌の姿が印象的だった。

 アンコールにこたえて、再びステージに現れた手嶌は、「うれしいな」と照れ笑い。この日の会場の近くには神社があり、そこで事前に「良い公演ができますように」とお参りをしてきたこという。その願いはどうやら叶いそうだ。最後は再び『Ren’dez-vous』からの1曲で、「あなたのぬくもりを覚えてる」。ピアノ、ギター、カホンによる音色を確かめながら、最後まで一切妥協のない歌で丁寧に締めくくった。

 終わってみれば、カバー半分、オリジナル半分。ゆったりとした手嶌のペースに完全に引き込まれた2時間弱だった。いわゆる流行りの音楽とは異なる立ち位置で、独自の表現を続ける手嶌の歌世界。それは今にも消えそうなほど繊細なのに、何か人を強く惹きつける力がある。手嶌葵とは本当に稀有な声をもったシンガーだ。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 手嶌葵

リリース情報

Ren’dez-vous

Ren’dez-vous

2014年07月23日

ビクターエンタテインメント

1. いつもはじめて~Every Time Is The First Time!~
2. ショコラ
3. ちょっとしたもの
4. Voyage a Paris~風に吹かれて~
5.1000の国を旅した少年
6. NOMAD
7.丘の上のブルース
8.Baritone
9.明日への手紙
10. Home My Home
11. あなたのぬくもりをおぼえてる

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セットリスト

手嶌葵コンサート2014
2014.11.23@日本橋三井ホール

  1. The Rose
  2. Cruella De Vill
  3. La Vie En Rose
  4. 旅人~テルーの唄
  5. 朝ごはんの歌
  6. さよならの夏
  7. いつもはじめて
  8. ショコラ
  9. Voyage a Paris
  10. ちょっとしたもの
  11. 1000の国を旅した少年
  12. NOMAD
  13. 丘の上のブルース
  14. 明日への手紙
  15. 時には昔の話を
  16. 流星
  17. Beauty and The Beast
  18. I Wanna Be Loved By You
Encore
  1. あなたのぬくもりを覚えてる

お知らせ

■ライブ情報

ビルボードライブ
2015/01/09(金)ビルボードライブ東京
2015/01/10(土)ビルボードライブ東京

ワンマンコンサート
2015/04/25(土)よみうり大手町ホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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