The Wisely Brothers（ワイズリーブラザーズ）が自主企画「春と一番風呂~いい兄弟だな、アハハン~」を下北沢THREEで開催した。

　ワイズリーブラザーズは真館晴子（Vo・G）、和久利泉（B.Cho）、渡辺朱音（Dr .Cho）からなる全員20歳の3人組ガールズバンド。まだ知る人ぞ……の存在であるが、幼い頃ビートルズに親しんだという真館が生み出す独特のポップセンスが魅力のバンドだ。EMTG MUSICではワイズリーが昨年10月にリリースした全国流通盤『ファミリー・ミニアルバム』でいち早くインタビューを行なったが、今回は3人が楽しみにしていた自主企画ライブの様子をお届けする。

　下北沢にあるライブハウスTHREEはメンバーがよくライブを見に通ったという思い入れのある場所。ステージから５~６歩も進めば後ろの壁まで辿り着くようなハコだ。当日はその壁にメンバー手作りの富士山があしらわれ、トイレには「WC」マークを囲むようにシャンプーハットを設置。イベントタイトルが表すとおり、THREE自体を銭湯に仕立てあげるのがコンセプトらしい。

　そんな彼女たちの遊び心はオープニングから全開だった。祭り衣裳風に浴衣を着崩して、カトちゃん（加藤茶）のお面を着けた3人が、ドリフターズの「いい湯だな」に合わせて踊りを披露。インタビューでも「この3人で面白いことをどんどんやっていきたい」と話していただけに、ワイズリー流のおもてなしがたくさんあった。

　会場が温まったところでライブ本編がスタート。まずは結成9年を迎えるミックスナッツハウスから。メンバー3人がコスプレをする謎の宇宙人設定が奇抜だが、真面目と本気のギリギリを突くユニークなロック＆ポップスはどこかワイズリーにも似た雰囲気があった。そして続く、THIS IS JAPANは熱くて硬派な4人組ロックバンド。マイクに噛み付くように絶叫する杉森ジャックと、爽やかに歌い上げるkoyabinというタイプの違うボーカリストを軸に勢いのあるパフォーマンスを繰り広げた。

　そして21時を過ぎたころ、大きな拍手に迎えられてワイズリーブラザーズの3人が元気よくステージに飛び出した。SEには映画『かいじゅうたちのいるところの』で有名なカレンO（米国のバンド：ヤー・ヤー・ヤーズのボーカル）の「All Is Love (Where The Wild Things Are)」。ファニーな雰囲気がワイズリーにピッタリだ。不思議に弾む脱力系のハッピーソング「トビラ」からライブがスタートすると、フロアは心地好いグルーヴにゆったりと揺れながら、その音楽に身を委ねていった。

　「アンニュイ」「ワンダーボーイ」といった『ファミリー・ミニアルバム』からのお馴染みの楽曲に、4曲もの新曲織り交ぜたこの日のセットリスト。とにかく印象的だったのはステージで楽しげに演奏する3人の姿だった。まるで「楽しいね」「あ、失敗！」「ドンマイ」と会話でもするように、ときどき目を合わせながら音を重ねていくメンバー。キャリアを重ねたバンドも、ライブは楽しいとよく言葉にするけれど、ワイズリーのような結成間もないのバンドの楽しさはまた別格だと思う。全てが未体験で新鮮。だからこそ湧き出る純粋な楽しさ。それが聴く側にもヒシヒシと伝わってきた。

　MCでは、まず泉が「今日はミックスナッツハウスとTHIS IS JAPAN。本当にヤバい組み合わせです！」と、対バンへの想いを前のめりに語り、そんな中でトリを締めくくるプレッシャーを、「でも銭湯に来ればどうにかなる！」とムードメイカーらしい陽気さで笑い飛ばした。一方、ちょっと緊張気味なのがドラムの朱音。「口が渇いてコーラスがやりにくい（笑）」とポツリと漏らす場面も。そんな飾らないメンバーのキャラクターも彼女たちを応援したくなる理由のひとつだ。

　アンコールでは、「大好きなTHREEでライブができて嬉しいです！」と、この日1番のキラキラとした笑顔で歓びを告げた晴子。イベントの最後は赤い照明を浴びてグッとエモーショナルな演奏を見せた新曲「オリエンタルの丘」で締めくくった。

　5か月前にライブを観た時は、どこか自信なさげだったが、堂々とステージに立つ3人にバンドの成長を見ることができて嬉しかった。この感想をライブ後にそれをメンバーに伝えたら、「え?っ！？本当ですかっ！」と目を丸くしていたけれど。彼女たちの表情には自分たちの想いを実現した充実感がしっかりと刻まれていたと思う。

　この歓びを原動力にThe Wisely Brothersはまた次のステップへと進んでいく。

【取材・文：秦 理絵】
【撮影：トヤマタクロウ】