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日食なつこ、マニアたちを魅了した全箇所SOLD OUTの全国ワンマンツアーファイナル公演をレポート!

日食なつこ | 2017.03.01

 最新アルバム『逆鱗マニア』を引っさげ、今年1月の札幌を皮切りに全国ワンマンツアー「マニアたちの親睦会ツアー」を行ってきた日食なつこが、2月19日(日)、東京キネマ倶楽部でファイナル公演を行った。チケットは全会場で早々にSOLD OUTとなり、この東京公演も急きょその前日との2デイズに。各日それぞれの演出も用意され、新旧織り交ぜたナンバーを繰り広げながら集まったマニアたちを魅了した。

 ライブの始まりを告げるチャイムの音が鳴り響く中、ステージに日食なつことドラムのkomakiが現れた。1曲目は「黒い天球儀」。音の迫力が前日よりも増していて、呼応する2人のプレイから感じる熱も断然高くなっている。攻撃のタイミングを伺って砂を掻く闘牛のようにエレピのペダルを踏む日食。そんな彼女の迫力と正面からぶつかるようにビートを繰り出すkomaki。曲が終わった瞬間に歓声と拍手が弾け、今夜の空気が一気に動き出した。

「このキネマ倶楽部で、この夜を迎えられることをどれだけ心待ちにしてきたことでしょう。この風景が見られることを、どれだけ心待ちにしてきたことでしょう。『マニアたちの親睦会ツアー』へようこそ、首謀者の日食なつこです!」
「本日も、マニアのみなさんのおかげでSOLD OUTです!もう無事には帰しませんけど、いいですね(笑)?骨の髄まで満足させます。今日はひと晩、私に預けてください、よろしくお願いします!」

 男前な口調のMCを挟みながら、エレピとドラムで前半5曲を披露。その後は日食ひとり、グランドピアノでの弾き語りだ。その場で客席からのリクエストを募って応えるコーナーもあったのだが、ここぞとばかりに叫ばれるさまざまな曲名の中から、18日は2011年に発表されたアルバム『FESTOON』収録の「シーラカンス」を、そして19日は同じく2011年発売のアルバム『LAGOON』から「深夜潜水」が演奏された。立ったまま弾くエレピのアグレッシブな表現とはまったく違い、鍵盤との濃密な対話を聴いているようなプレイに鳥肌が立つ。そこに「Red-light Tower」、「エバーシルバー」、「ヒューマン」の3曲が続いたのだが、選曲としての懐かしさだけではなく、ピアノと歌という、シンプルだけどいちばんの強みである彼女の持ち味をあらためて感じさせられるパートになっていたように思う。弾き語りのラストは、「あのデパート」。彼女の地元である岩手県花巻市のマルカンデパートを題材にした曲だが、きっと誰もが、この曲の向こうに幼い頃の自分の姿を見てしまうような1曲だ。この曲を歌うにあたって彼女は、花巻の子供は大食堂にある10段巻きのソフトクリームを箸で食べて育つこと。自分には、そこで子供用の補助椅子に座りラーメンを食べてる3歳の頃の記憶があること。惜しまれつつも昨年6月に43年の歴史に幕を下ろすことになり、こんな場所があったことを後世に語り継がなくてはいけないんじゃないかと思ってこの曲を書いた、というようなエピソードを聞かせてくれた。「あなたの帰るべき場所はどこですか」――彼女が弾くスタインウェイのあたたかな響きに、記憶の扉へそっと手を伸ばすような問いかけの言葉が重なった。
 最後の1音、その余韻の果ての静寂まで丁寧に届けた彼女から告げられたのは、たくさんの人の思いと働きかけによってデパートは復活、しかもこのライブの翌日から再開するという衝撃的な後日談(笑)。「私は今後、この曲をどう扱ったらいいんでしょうか(笑)」と漏らしたホンネには思わず大笑いだった。再びステージへと呼び込まれたkomakiとは、今回のツアーを振り返るユルめのトークを展開。長くなってきた彼の話を昼休み終了的なチャイムで打ち切りながら(笑)、「みなさん、後半戦の授業を始めます!起立!」と号令。エレピとドラム、そして総立ちになったオーディエンスのクラップで作り上げたこの日の「大停電」は、MC中に起きたハプニングも含め、あの会場にいたすべての人にとって忘れられない1曲になったのではないだろうか。

 ライブの後半は、両日ともゲストミュージシャンが登場。まず18日の公演では、『逆鱗マニア』に収録されている「Dig」で共演したBlack Bottom Brass Bandのメンバーが、客席後方から楽器を鳴らして賑やかに登場。「Dig」、そして「茜のキャラバン」の2曲を披露した。19日は、同じく『逆鱗マニア』に参加しているギターの永田zelly健志、続いてベースの石村順が演奏に加わる。ステージ上のメンバーを見渡しながら、「揃っちゃった!ヤバいぞ(笑)」と嬉しそうな日食。また「紆余曲折の多い作品だったけど、参加してくださったミュージシャンの方々のおかげで、最高にわがままに作らせてもらいました」とレコーディングを振り返り、心からの感謝を伝えていた。「この後はもう、最高の時間になるだけです!」と告げ、ラスト3曲へ。「水流のロック」、「ログマロープ」ではイントロや間奏などでも興奮の歓声と拍手が湧き上がり、ステージと客席がひとつになった最強のグルーヴを生み出していた。音楽は勝ち負けではないけれど、あの瞬間に渦巻いていたのは、その日行われていたどんなライブとも比べものにならないくらい絶対的な幸福感だったと思っている。

 鳴り止まない拍手に応え、アンコールでは日食のピアノ1本で「跳躍」、そしてドラムのkomakiとともに「ヘールボップ」が披露された。また、この日のファイナル公演が後日ライブDVDとして発売されることを発表。「収録していることを匂わせて煽るなんてことはせず、今日はいいライブになるに違いないと信じていたので最後に種明かしをしました。最高の景色、ありがとうございます。マニアのみなさん、愛してるぜ!」と日食。最新作『逆鱗マニア』が多くの音楽ファンの耳に正しく届いていったように、今度はこのライブDVDが、日食なつこのさらなる魅力を立体的に伝えてくれるはず。途中のMCで「この先のツアーではマニアが2倍、3倍になっていくことを願ってる」と言っていたが、それはもう近いうちに実現してしまうだろう。すでに新しい作品にも取り掛かっているということで、期待は勝手に高まるばかりだ。

【取材・文:山田 邦子】
【写真:新倉映見 (えみだむ)】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル 日食なつこ

リリース情報

逆鱗マニア

逆鱗マニア

2017年01月11日

LD&K

1.ログマロープ
2.神様お願い抑えきれない衝動がいつまでも抑えきれないままでありますように
3.大停電
4.It seems like a frog
5.グローネンダール
6.Dig
7.サイクル
8.あのデパート

セットリスト

ワンマンツアー2017
「マニアたちの親睦会ツアー」
2017.2.19@東京 キネマ倶楽部

  1. 01.黒い天球儀
  2. 02.ビッグバード
  3. 03.神様お願い抑えきれない衝動がいつまでも抑えきれないままでありますように
  4. 04.エピゴウネ
  5. 05.青いシネマ
  6. 06.It seems like a frog
  7. 07.深夜潜水(リクエスト)
  8. 08.Red-light Tower
  9. 09.エバーシルバー
  10. 10.ヒューマン
  11. 11.あのデパート
  12. 12.大停電
  13. 13.サイクル
  14. 14.非売品少女
  15. 15.ハイウェイは気にも留めない
  16. 16.水流のロック
  17. 17.ログマロープ
ENCORE
  1. EN-1.跳躍
  2. EN-2.ヘールボップ

お知らせ

■ライブ情報

カフェワンマンツアー「遊泳喫茶(2)2017春」
2017/04/02(日) 熊本ROLL CAFE
2017/04/08(土) 静岡LIVING ROOM
2017/04/09(日) 京都SOLE CAFE
2017/04/14(金) 神戸カフェ萬屋宗兵衛
2017/04/15(土) 松山ブエナビスタ
2017/04/16(日) 香川SUMUS Cafe
2017/04/21(金) 名古屋パラダイスカフェ21
2017/04/22(土) 岡山城下公会堂
2017/04/23(日) 広島ヲルガン座
2017/04/29(土) 札幌レストランのや
2017/04/30(日) 函館マーキーズカフェ
2017/05/03(水・祝) 仙台SENDAI KOFFEE CO.
2017/05/05(金・祝) 金沢もっきりや
2017/05/12(金) 六本木ARK HiLLS CAFE

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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