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SHE’S 史上最大規模のツアーで魅せた、バンドの“充実”と“進化”。

SHE’S | 2017.04.20

 ライブは、メジャーデビューを飾った夜明けのナンバー「Morning Glow」から始まった。井上竜馬(Vo・Key)が奏でる煌びやかなピアノのフレーズと淀みなく突き抜けるメロディ、この瞬間を待ちわびていたような瑞々しいバンドアンサンブルが赤坂BLITZに響き渡った。どんなに沈み込んだ気持ちも、ふわりと掬い上げるその音に導かれるように、フロアからはさっと自然に手があがる。続けて「海岸の煌めき」へ。波打つ音、汐風、輝くシーグラス。そんなワードが赤坂BLITZに眩しい海岸の景色を描いていった。透明感のあるサウンドに“心の共鳴”を高らかに歌う「Un-science」で湧き上がるシンガロング。お客さんが一緒に歌えるパートの多いSHE’Sの曲は、ライブで鳴らされたとき初めて完成する。 

 最初のMCでは「今日をどんだけ待ち望んでたか!」と、井上は赤坂BLITZという、バンドにとって最大規模のワンマン会場に立つ喜びを口にした。今年1月25日に『プルーストと花束』という初のフルアルバムをリリースしてから、ここまで全9ヵ所をまわってきたSHE’S One man Tour 2017 “プルーストの欠片”のファイナルが、この赤坂BLITZだ。「俺のなかでツアーファイナルはボス感がある。挑む感がある。それはお客さんに対してじゃなくて、いままでのベストを出さなきゃいけないっていうプレッシャーに挑むんだけど……」。そのステージへの想いを語る言葉には、ほんの少し緊張も滲んでいた。 

 だが、それもひとたび演奏が始まれば、一気に吹き飛んでしまう。アルバム『プルーストと花束』のなかでも飛び切りエッジの効いたロックナンバー「Running Out」に続けて、服部栞汰(Gt)が繰り出すブルージーなギターが味わいを添えた「Isolation」(『Tonight / Stars』収録)に漂う、そこはかとないダークな色合い。そこに広瀬臣吾(Ba)のベースも唸りをあげた。繊細で美しいイメージのあるSHE’Sの曲だが、その根底には荒ぶる感情があることも忘れてはいけない。そして、どん底まで落ち切ったところから、少しずつ這い上がるような「Say No」、「Night Owl」へと、新旧の楽曲を織り交ぜて作り上げた構成は本当に美しかった。色で言うならば、ブルー。そこでSHE’Sが鳴らすのは、静かに滾る青い炎のような音だった。

 その色合いをカラフルに変えたのは、決して結婚式で流してはいけない皮肉を込めたウェディングソング「グッド・ウェディング」。歌詞の内容とは裏腹に、温かなサウンドが会場を彩ると、ここまで電子ピアノを弾いていた井上が、アコースティックギターに持ち替えると、牧歌的なサイケデリック・ポップ「Evergreen」へ。そこから、ブラスのサウンドをフィーチャーした祝祭感溢れる「パレードが終わる頃」へと繋ぐ。『プルーストと花束』というアルバムの制作過程で、いちばん最後にできたというこの曲は、悲しみが溢れるこの世の中にオギャーと生まれた私たちが、その人生を終わるときに何を残せるか、そんなことを晴れやかに問いかける、いまのSHE’Sだからこそ歌える楽曲だ。この曲では、軽快なマーチングドラムを最高の笑顔で叩く木村雅人(Dr)の存在感も抜群だった。

 「演奏に負けないぐらい大きな声で歌おう!」。この日、もう何度も井上が口にした“一緒に歌おう”という言葉だったが、ライブのクライマックスにかけては「Stars」や「遠くまで」といったエモーショナルなナンバーが繰り出されると、お客さんの反応も最初とは違う熱を帯びていた。最後のMCで井上はギターを爪弾きながら、インディーズ時代を振り返った。「いろんなことを経験した。酸いばっかり…甘いもあったけど。酸いが8割で、甘いが2割。でも、全部ひっくるめて生きていくから。その決意を込めて、最後に歌って帰ろうと思います」。そう言って、オレンジ色の温かい光に包まれて届けたのは、優しい3拍子が揺れる「プルースト」。“悲しくて辛くても陽は昇る”。過去を受け入れて、次の一歩を踏み出すために作られたナンバーは、この日聴いたどの曲よりも清々しくて穏やかだった。

 アンコールでは、6月21日にミニアルバム『Awakening』をリリースすることを発表すると、そこに収録される新曲「Over You」をいち早く披露した。「最初にも言ったけど、僕がいちばん戦いたかったのは自分でしかなかった、という曲です」。そんな紹介とともに鳴らされたのは、華やかなストリングスのイントロが駆け抜け、軽やかなビートが弾むアップナンバーだった。そして、ライブを締めくくりはインディーズ時代から歌い続けている大切な「Curtain Call」。この曲を歌うとき、いつも井上の言葉は熱くなる。
「なんでこんなに他人やのに、他人じゃない感じになるんやろな。こんなに人を好きになると思わんかった。全部、音楽と、あなた達のおかげだと思ってます。ここでみんなの好きを守っていきたいし、ずっと歌っていきたい。でも、それは契約書とかもないし、いつか俺たちも死ぬし、バンドも死ぬし、音楽も死ぬ。だけど、約束をしたいと思ってます。一緒にかっこよく生きようぜ。一緒に音楽を好きでいよう」。そんなふうに約束を交わすと、まるでお客さん一人ひとりと目を合わせるように最後の1曲を届けた。どんなときも自分の心に嘘をつかずに、真っ直ぐに人と向き合ってきたからこそ、いまのSHE’Sがある。

 今回のツアーはバンド最大規模のツアーでありながら、チケットは発売後すぐにソールドアウトになった。この日、生放送されたLINE LIVEはのべ33万人の視聴があったという。昨年6月のメジャーデビューから間もなく1年、SHE’Sは順調に階段を上っている。この日のライブはその充実と進化を感じるものだったし、同時に、もっと多くの人にこの音楽を知ってほしいと、改めて思わせてくれるものだった。“もっと遠くまで あなたと行けたら”、そう歌う「遠くまで」のように、彼らには“まだ知らぬ場所”へ、私たちを導いてほしい。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:西槙太一】

tag一覧 J-POP ライブ 男性ボーカル SHE’S

リリース情報

Awakening

Awakening

2017年06月21日

ユニバーサル ミュージック

01.Lantern(inst.)
02.Over You
03.Someone New
04.Don’t Let Me Down
05.In the Middle
06.Beautiful Day
07.aru hikari

お知らせ

■ライブ情報

SHE’S Hall Tour 2017 with Strings 〜after awakening〜
09/29(金) 東京・草月ホール
09/30(土) 東京・草月ホール
10/13(金) 愛知・名古屋市芸術創造センター
10/14(土) 大阪・立命館いばらきフューチャープラザ グランドホール

◆ツアー特設サイト
http://she-s.info/shes-halltour2017

KNOCK!!KNOCK!!KNOCK!!〜はよ上がりんさい 広島編〜わしらの地元で待っとるよ〜
04/22(土) 広島4.14

KYT天テレ博2017
04/23(日) 鹿児島市中央公園

GOOD LUCK 2017〜9th Anniversary & Album Release Party〜
04/29(土) 大阪なんばHatch

NIIGATA RAINBOW ROCK 2017
05/4(木) 新潟市内全12会場予定

Eggs presents FM802 Rockin’Radio! -OSAKA JO YAON-
05/21(日) 大阪城音楽堂(野音・雨天決行&荒天中止)

SAKAE SP-RING 2017
06/3(土)-4(日)
名古屋・栄一帯のライブハウス&クラブ

Ivy to Fraudulent Game 2nd mini album “継ぐ” release tour “告ぐ”
06/09(金) 京都MUSE
06/10(土) 静岡UMBER
06/17(土) 宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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