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3日間に渡り都内で行われた日本最大級のライブハウスサーキットイベント『TOKYO CALLING』、最終日レポート第二弾!

TOKYO CALLING | 2017.10.24

 大阪のミナミホイール、名古屋のサカエスプリング――ここ数年、それぞれの都市で開催される大型サーキットイベントが多くの新人アーティストを世に送り出すひとつの足がかりになっている。出演アーティストは、より多くのお客さんを集めて 1年後にはもっと大きな会場に立てることを目指し、“いつかトリを飾ること”を目標にしたりする。お客さんの目線で言えば、アリーナやホール会場、またはZepp級の大きなライブハウスには行ったことがあるけれども、“ライブハウスは怖そう”という人が気軽に足を運ぶ機会になる。サーキットイベントという文化が10年以上前から根付く関西では、そんな好循環がライブハウスシーンを活性化させていて、特にいま関西から全国区へと名乗りを上げるアーティストが増えている現実に、サーキットイベントが担う部分もあると思う。

 そんなシーンの状況がある中、2016年に初めて東京に誕生した日本最大級のサーキットイベントが「TOKYO CALLING」だ。2年目となる今年も、9月16、17、18日の3日間にわたり、下北沢、新宿、渋谷の3地区で開催。いま全国のライブハウスで頭角を現し始めている旬なメンツや生粋のライブバンドが数多く顔を揃えた。レポート第二弾では総勢319組が出演した3日間の中から、最多のライブハウス数をほこる最終日の渋谷地区のうち、渋谷クラブクアトロ、渋谷WWW Xを中心にした南側エリアの模様をピックアップしてレポートする。

 まず足を運んだのは渋谷WWW X。センター街からスペイン坂を登ったところにある渋谷WWWの横に昨年9月に新たにオープンしたライブハウスだ。この場所はスペースシャワーTVとのコラボでお届けするNEW FORCEステージ。15時30分。オルタナティブR&Bというジャンルで注目を集める新世代シンガーソングライター向井太一は生ドラムにエレピ/マニュピレーターを迎えた3人編成のステージに現れた。スタイッシュな音像に乗せるソウルフルな歌声が軽やかなビートのうえを優しく転がる。力強い歌で魅了する「THINKING ABOUT YOU」からダンサブルな「YELLOW」など、英詞と日本語詞を巧みに操る25歳が放つ音楽はフレッシュな感性で未来を切り拓く探求心に溢れていた。 

 続いて、渋谷クアトロへ。センター街のど真ん中、BOOK OFFと同じビルの4階にあり、間もなく創業30周年を迎えるライブハウスは、いまや若手ミュージシャンの登竜門だ。キャパシティは約700人。この場所をワンマンで埋められると、メジャーへの道も見えてくる。そのフロアに向かう階段に長蛇の列ができて入場規制となっていたのは、関西出身の4人組ココロオークションだった。会場に蝉の声が響き渡り、粟子真行(Vo・Gt)が「いまの瞬間を音楽に閉じ込めにきました。忘れない夜にしましょう」と語りかけて届けた代表曲「蝉時雨」をはじめ、真っすぐなメロディと言葉がそこに鮮やかな“きみとぼく”の物語を描き出す。「ライブハウス、いいでしょ? 音楽への愛情が溢れた場所です」と、粟子。その言葉にも、音楽にも、ココロオークションというバンドの誠実さが同じ温度で宿っていた。

 いわゆる“歌モノ”と呼ばれるバンドが続く。EMTG MUSICではボーカル渡井翔汰(Vo・Gt)の連載でもお馴染みのHalo at 四畳半は、SEにトクマルシューゴの「Rum Hee」を流してステージに登場した。いきなり熱い歌唱から突入した「シャロン」をはじめ、メンバー全員が総力戦で届ける激情のバンドサウンドはCD音源で聴く以上にエモーショナルだ。MCでは「僕らは音楽が好きという一点でつながっている。正解も不正解も君だけが決めればいい」と強い口調で叫んだ渡井。それぞれが信念を持って音楽を鳴らし合うライブハウスという場所では、何よりも“あなたの価値観”が正しいと、覚悟をもって訴える言葉は、まさにTOKYO CALLINGの理念を代弁するようでもあった。

 直前のリハーサルから数曲を披露していたLAMP IN TERRENは「緑閃光」からライブをスタートした。川口大喜(Dr)が繰り出す大らかなリズムに乗せて、松本大(Vo・Gt)がヒリヒリとした感情と共にメロディを紡いでいく。陽性のポップソングもレパートリーに持つテレンだが、一番凄みが出るのが激しくも美しいロックバラードだ。いまや人気バンドへと成長したテレンだが、かつては渋谷クアトロを埋めることが大きな夢だった。「ここは戻ってくるたびに、自分がどう大きくなりたかったかを再確認するような特別な場所です」と、松本は言っていた。それは、きっとテレンだけではない。ライブハウスはたくさんのアーティストが想いを残して巣立っていく場所だ。

 少し足を伸ばして、渋谷最北のライブハウス群にあるスターラウンジを訪れてみた。同じビルにはミルキーウェイやチェルシーホテルが同居する、ライブハウスの密集地帯。ここには黒猫チェルシーやカノエラナ、いま早耳のリスナーの間で注目を集めるキイチビール&ザ・ホーリーティッツなどが名を連ねたが、ぜひ見てみたかったのが緑黄色社会だ。入場規制のフロアで、なんとかステージが見える位置を確保すると、男女混成の4人組がカラフルで透明感のあるポップロックを響かせていた。MCでは「緑黄色社会って言えますか? 3回言ってみてください(笑)」と、長屋晴子(Vo・Gt)。なんだか早口言葉大会みたいなくだりもあったが、その瑞々しいロックサウンドに会場が一体となる楽しい空間だった。

 再びWWW Xへ。ここで見たのは昨年のMASH A&Rオーディションの覇者となった2組、Saucy DogとYAJICO GIRLだ。まず、Saucy Dogはマルーン5の「Losing My Mind」をSEに登場すると、「煙」からスタート。スリーピースが鳴らすシンプルなバンドサウンドにのせた無防備で剥き出しの歌にはサラリと聞き逃してしまうことを許さない健気さがある。“明日が来るのが怖くて泣いた”という「ロケット」も、昨日までの弱くて最低な自分に別れを告げる「グッバイ」も。石原慎也(Vo・Gt)が絞り出すのは、いつもギリギリのところで歯を食いしばりながら生きる私たちの傍で、同士のように寄り添う歌だった。
続く、YAJICO GIRLは1曲目の「Casablanca」からツインギターを擁する5人組が繰り出すグルーヴ感のある演奏で会場を包み込んだ。シンセサイザーの躍動感のあるフレーズが印象的な「光る予感」から、軽やかなビートのうえを心地好くギターが駆け抜ける「いえろう」へ。アジカンの影響が大きいという豊かな音楽性や、懐かしくも独自性のあるメロディと巧みな言葉選びには、平均年齢21歳とは思えない成熟さがある。だが、そこに刻まれるのは、何とか光の方へともがき進もうとする青い意志そのものだった。スローナンバーの「黒い海」では、深い海の底から光を探すようなダークな曲にヤジコの真髄を見た気がした。

 クアトロのトリを飾ったのはIvy to Fraudulent Gameだった。12月のメジャーデビューを発表している彼らは、幻想的なSEでステージに現れると、「夢想家」からスタートした。シューゲイザーやポストロックの影響を受けた歪んだ轟音にファルセットで紡がれる繊細で耽美なメロディ。静寂と情熱を激しく行き来する彼らの音楽は、わかりやすくノレるタイプではないかもしれないが、その破滅的な美しさで聴き手を惹き込んでゆく。「トリのバンドだからって包み込むようなライブはしませんから。どんなかっこいいやつがいても、俺は負ける気がしねぇ!」と、不敵に叫んだ寺口宣明(Vo・Gt)。最後の「青二才」でより語気を強めて歌い上げたのは、“喉を枯らしても叫んでいくんだよ あの日と変わらぬ絶望の“望”を”というフレーズだった。そこには生きづらさを抱えながら、それでも希望へと突き動かされるバンドの切なる意思が宿っていた。

 クアトロでアイビーを見届けたあと、渋谷WWW Xでトリを務めるSIX LOUNGEを見るためにダッシュで移動。パンパンの会場に辿り着いたとき、3曲目の「STARSHIP」が終わったところだった。熱くてシンプルなロックンロールを鳴らす大分発の3人組はMy Hair is Badと同じTHE NINTH APOLLOの所属する急成長のバンドだ。「勝ち負けじゃない、でも俺らはここであんたらが見てきたものを全部掻っ攫うつもりで立っています」と、だだ漏れの感情を隠そうともせずにぶちまけるヤマグチユウモリ(Gt・Vo)。そう言えば、直前に見たアイビーはその場所を「勝負だ」と言っていた。一方で「勝ち負けじゃない」というSIX LOUNGE。どちらも、それぞれのバンドらしい言い方だったし、価値観が違うからこそ、違う音楽が生まれる。それをリアルに体感できるのがサーキットイベントの醍醐味だ。汗ダクになりながら、バカデカい音を体当たりで鳴らす「僕を撃て」やアンコールの「メリールー」まで、SIX LOUNGEが鳴らすのは体温そのもののような音楽だった。

 この日、渋谷には全12会場に121組のアーティストが出演した。見られたのはほんの9組だったが、一日中、音楽が鳴りやまない街を歩き、音楽にワクワクするお客さんを見ていると、よく言われる「音楽産業の衰退」なんて実感が薄くなるような充実感があった。CDが売れないという流れは変わらないかもしれない。だが、ライブハウスシーンがいまより活性化して、その場所が音楽ファンの身近になることで変わるものはあると思う。東京にできた新たなカルチャー「TOKYO CALLING」が、そのための起爆剤になることを願っている。

【取材・文:秦 理絵】
【Photo by 中尾友香(TOP)】

tag一覧 向井太一 ココロオークション Halo at 四畳半 Saucy Dog YAJICO GIRL SIX LOUNGE

リリース情報

向井太一『24』

向井太一『24』

2016年11月16日

TOY’S FACTORY

01.SPEECHLESS
02.STAY GOLD
03.SALT
04.SIN
05.KONOMAMA
06.SLOW DOWN
07.24

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ココロオークション「夏の夜の夢」

ココロオークション「夏の夜の夢」

2017年08月02日

BOGUS RECORDS

1.景色の花束
2.蝉時雨<第一話>
3.夏の幻<第二話>
4.雨音<第三話>
5.線香花火<第四話>
6.なみだ
7.僕らのナツ。-CCR UNPLUGGED SESSION-

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Halo at 四畳半『Animaplot』

Halo at 四畳半『Animaplot』

2017年09月20日

SPACE SHOWER MUSIC

1.クレイマンズ・ロア
2.ステラ・ノヴァ
3.ユーフォリア
4.劇場都市
5.発明家として
6.トロイカの箱
7.点描者たち

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LAMP IN TERREN『fantasia』

LAMP IN TERREN『fantasia』

2017年04月12日

A-Sketch

1.キャラバン
2.地球儀
3.涙星群の夜
4.heartbeat
5.innocence
6.at (liberty)
7.pellucid
8.オフコース
9.不死身と七不思議
10.eve

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緑黄色社会「Nice To Meet You??」

緑黄色社会「Nice To Meet You??」

2017年10月18日

HERE, PLAY POP

1. またね
2. アウトサイダー
3. regret
4. Bitter
5. 丘と小さなパラダイム

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Saucy Dog『カントリーロード』

Saucy Dog『カントリーロード』

2017年05月24日

HIP LAND MUSIC

1.煙
2.ナイトクロージング
3.いつか
4.ジオラマ
5.マザーロード
6.Wake
7.グッバイ

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YAJICO GIRL「沈百景」

YAJICO GIRL「沈百景」

2017年09月06日

Eggs

01. 光る予感
02. PARK LIGHT
03. ロマンとロマンス
04. サラバ
05. 黒い海

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Ivy to Fraudulent Game「継ぐ」

Ivy to Fraudulent Game「継ぐ」

2017年03月08日

SPACE SHOWER MUSIC

1.Utopia
2.Dear Fate,
3.E.G.B.A.
4.!
5.揺れる
6.徒労
7.夢想家

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SIX LOUNGE『大人になってしまうなよ』

SIX LOUNGE『大人になってしまうなよ』

2017年01月11日

THE NINTH APOLLO

01.僕を撃て
02.CANDY GIRL
03.最終兵器 GIRL
04.10号線
05.君へのプレゼントは、綺麗な僕の血と君の涙。
06.大人になってしまうなよ

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