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マカロニえんぴつ バンド史上最大規模のツアーファイナル公演

マカロニえんぴつ | 2019.05.24

 マカロニえんぴつが5月12日、東京・LIQUIDROOMで初めての全国ワンマンツアー「マカロックツアーvol.7~ライクからラヴへ、恋の直球ド真ん中ストライク初全国ワンマン篇~」のファイナル公演を開催した。

 最新ミニアルバム『LiKE』のリリースとともに行われた今回のツアーは、マカロニえんぴつにとって初の全国ワンマンツアー。しかもこの日のライブ会場(LIQUIDROOM)はキャリアのなかでも最大規模のキャパシティとあって、メンバーからもオーディエンスからも「この場を思い切り楽しみたい、味わいたい」という思いが真っすぐに伝わってきた。それはまさに“ライクからラヴへ”――そこに込められているのはもちろん、“好き”の向こう側に“愛”という感情をバンドに抱いてほしいという思いだ――というツアータイトルを明確に具現化するステージだったと思う。

 開演予定時間の18時ちょうどにライブはスタート。オープニングナンバーは、ミニアルバム『LiKE』の収録曲「トリコになれ」。心地良いファンクネスを交えたバンドサウンド、リズミックなメロディライン、バンドの“人柄”とリスナーに対する思いを率直に綴った歌詞がひとつになったこの曲によって、ステージとフロアの距離が一気に縮まっていく。さらに切なくも愛らしい恋愛感情を映し出すポップナンバー「ワンルームデイト」(コーラスワークがきれい!)、ヒネりの効いたアンサンブルとともにはっとり(V/G)エモーショナルなボーカルが響き渡った「洗濯機と君とラヂオ」などを続けて披露、超満員のオーディエンス(チケットはもちろんソールドアウト)の心と身体を揺らしまくる。

 「全国ワンマンライブはバンドにとって初めてで、最初は“大丈夫かな、できるかな”と思ってたんだけど、始まってみれば“もう終わりか”という感じで。辿り着いたのがここ、恵比寿LIQUIDROOMですよ!」「ファイナルということで、今日は全部出し切って帰ろうと思います。マカロニえんぴつの美味しいところだけをフルコースで振る舞おうと思うので、残さず食べてください。よろしくお願いします!」(はっとり)というMCの後も、このバンドが持つカラフルな音楽性をたっぷりと堪能できる場面が続いた。R&Bとロックが自然に交じり合うようなサウンドが楽しい「MUSIC」、抑制の効いた横ノリのグルーヴが心地良い「two much pain」、インディーギターロック直系の「MAR-Z」、高速の8ビートとエッジ―なギターフレーズ、ソウルフルなオルガンの響きが混ざり合うライブアンセム「ワンドリンク別」。ジャンルを自由に横断するようなアレンジ、はっとり、高野賢也(Ba)、田辺由明(G)、長谷川大喜(Key)の独創的なプレイヤビリティを活かしたアンサンブルは、同世代のバンドの中でもかなり際立っている。単に騒ぐのではなく、“聴くところはしっかり聴く、盛り上がりたいところは盛り上がる”というフロアの雰囲気も素晴らしい。

 感情豊かなギターソロが心に残った「哀しみロック」の後は、はっとりの弾き語りのコーナー。 “愛してるよ 君だけを“というこれ以上はないほどピュアでストレートな思いを映し出す「夜と朝のあいだ」、切なさでいっぱいのラブソング「キスをしよう」をアコースティックギター1本で歌い上げ、観客を魅了する。さらにメンバーが登場し、アコースティックアレンジによる「鳴らせ」も。歌詞とメロディを手渡すような演奏によって、楽曲の良さをしっかりとアピールしていた。

 中盤のMCのテーマは“ツアーで食べたおいしいもの”。新潟公演のときはメンバー全員で長谷川の実家に宿泊。食べきれないほどの料理でもてなしてもらったエピソードを披露し(特にカレーが美味しかったそうです)、会場をホッコリした空気に包み込んだ。

 ここからライブは後半へ。ミニアルバム『LiKE』収録の「働く女」では、「音大出身の実力見せてやる!」(はっとり)とメンバー全員がソロ演奏を聴かせ(全員めちゃくちゃ上手い!)、高揚感に溢れた「STAY with ME」ではこの日一番の盛り上がりを生み出す。

 個人的にもっとも心に残ったのは、新曲「青春と一瞬」だった。青春時代をテーマにしたこの曲は、「自分の青春はみっともなかった。それを音楽が助けてくれていたような気がします。輝かしい青春を謳歌してなかったら、バンドなんてやってなったと思います」(はっとり)というリアルな感情が込められたナンバー。いろいろな感情が絡み合う状況を反映させながら、普遍的なパワーを持った音楽に導くことができるのも、マカロニえんぴつの大きな魅力だと思う。

 さらにシティポップ風のエッセンスを感じさせる「ブルーベリー・ナイツ」、すべての楽器の音が気持ち良く飛び跳ねるバンドサウンド、“逃げ場所としての音楽”をテーマにした歌詞が響き渡る「ハートロッカー」などを放ち、会場のテンションは最高潮に達した。

 アンコールではまず、大人と子供の間で揺れる状況をテーマにした新曲「ヤングアダルト」を初披露。深みを増したグルーヴ、生々しい感情を映し出した歌詞を含め、“この先のマカロニえんぴつ”を予感できる貴重なシーンだったと思う。

 ここではっとりは、観客に向けてじっくりと語りかけた。良い音楽をやっているはずなのに、振り向いてもらえなかった時期の焦り。バンドを脱退したメンバーから「誰もついて来ないよ」と言われたときのショック、そして、“届ける”ことを考えるようになって、マカロニえんぴつの楽曲を聴いてくれる人が増え、LIQUIDROOMをソールドアウトするまでに至ったこと。「心臓の奥の奥まで届けたい」というメンバーの真摯な思いによって、このバンドの音楽は多くの人に支持されているのだと改めて実感できる場面だった。

 ラストは「ミスター・ブルースカイ」。音楽を届けたいというまっすぐなモチベーションを込めまくったこの曲によって、初の全国ワンマンツアーはエンディングを迎えた。

 この日のライブで彼らは、9月11日にミニアルバム『season』をリリースすることを発表。メンバー全員の楽曲が収録されるこの作品は、マカロニえんぴつの音楽世界をさらに広げることになりそうだ。さらに新たな全国ワンマンツアー「マカロックツアーvol.8~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~」の開催も決定。2019年後半、マカロニえんぴつは本格的なブレイクに突き進むことになるはずだ。

【取材・文:森朋之】
【撮影:中山優司】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル マカロニえんぴつ

リリース情報

LiKE

LiKE

2019年02月13日

TALTO

1.ワンルームデイト
2.トリコになれ
3.ブルーベリー・ナイツ
4.働く女
5.STAY with ME

お知らせ

■ライブ情報

マカロックツアーvol.8 ~オールシーズン年中無休でステイ・ウィズ・ユー篇~
〈2019年〉
10/25(金) 神奈川 F.A.D yokohama
10/30(水) 香川 高松 DIME
11/ 1(金) 広島 Cave-Be
11/ 8(金) 宮城 仙台MACANA
11/10(日) 北海道 札幌BESSIE HALL
11/14(木) 新潟 GOLDENPIGS RED
11/15(金) 長野 松本ALECX
11/17(日) 石川 金沢vanvan V4
11/23(土) 大阪 梅田クラブクアトロ
11/24(日) 名古屋 新栄SPADE BOX
11/29(金) 福岡 DRUM Be-1
11/30(土) 熊本 熊本B.9 V3
12/ 6(金) 静岡 FORCE
12/13(金) 岡山 CRAZYMAMA 2nd Room
〈2020年〉
1/12(日) 東京 マイナビBLITZ赤坂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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