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同じことは二度と起こらない! どこでもお花畑にしてしまう眉村ちあきのワンマン「眉村ちあき 東阪ワンマンライブ LIQUIDROOM~過剰なダブルピース~」

眉村ちあき | 2019.11.05

 会場内が暗転するや否や、いきなり仰天! トナカイのマスクをかぶった男が押している台車に乗って、大はしゃぎしている眉村ちあきは、どういうわけかサンタクロースのコスプレをしていた。世間のクリスマス商戦すら始まっていないこの時期に、クリスマスムードを醸し出すのは、どう考えても無茶なのだが……彼女の天真爛漫な笑顔と、「株式会社会社じゃないもん 代表取締役社長」という立派な役職を前にすると、社畜である我々、マユムラー(眉村ちあきファンの呼称)に抗う術はない。そして、「トナカイの中の人は、吉田豪氏である」という事実が明かされて、多忙な豪さんの無駄遣いにも驚いている内に、「Queeeeeeeeeen!」スタート。「左手だけで踊りませんか!」と呼びかけられたのに応えて、フロアで巻き起こった一糸乱れぬ左手だけのダンス。お約束のタイミングで「右手!」という力強い声が上がると、ちちゃん(眉村ちあきの愛称)は目をキラキラさせて、ますます明るい笑顔を浮かべた。

 フロア内で輝いていた3人のハゲを目ざとく見つけると、《月が出た出た》という部分で仲良く並ばせて、だんご三兄弟を誕生させた「荻窪選手権」。流れるトラックを巧みに乗りこなしながらラップと歌声を響かせる様が猛烈にかっこよかった「東京留守番電話ップ」――オープニングを飾った3曲を歌い終えて迎えた最初の小休止。「赤ちゃんなんですか? 3歳の人? 6歳の人? 小学生の人? 令和生まれの人? 子供だらけですねえ」……「あのハゲは、どう考えても昭和40年代生まれのハゲだ!」というような疑念を挟む間もなく、物をなくしたり、忘れ物をすることが多いという旨を語り始めた彼女。そして、「忘れ物、したくてしてない。もう諦めた!」と言ってスタートした新曲「DEKI☆NAI」は、ちちゃん同様、自分ではどうしようもない性分をたくさん抱えているはずのマユムラーたちに向かって、実に優しく降り注いでいた。

 平和な夏の風景をイメージさせるサウンド/ふたりの男性スタッフを強引に舞台袖から引きずり出して、手と手を取り合ってワルツを踊らせるという、天国と地獄のようなコントラストを生み出した新曲「夏のラーメンワルツ」。数ヶ月前に突然購入して以来、活躍する機会が増えているエレキギターの音色をシャープに響かせた「ブラボー」。フロアに飛び込んでマユムラーたちの頭上を漂いながら歌い、後方のカウンターの上に立って飛び跳ねたりもしながら爆発的に盛り上げた「ナックルセンス」――彼女のライブは、本人も含めて次に何が起こるのか完全に予測不能で、フロアのどんなエリアも突然最前列となるのが恒例だが、この日も、ぶっ飛んだ魅力が自由奔放に煌めきまくった。

 突然『もののけ姫』のテーマソングを歌い、マユムラーたちの大合唱を誘った後、再び人々の頭上を漂いながら、ステージへと帰還。「何でもありだよね。『ゴッドタン』とかでしか私のことを知らない人は、いつもびっくりするの。私は冷酷な人だから!」――なんだか突然恐ろしいことを言った彼女は、アコースティックギターを手にして、即興で歌い始めた。音楽活動を始めた当初は、「何を歌うのか?」「歌詞で何を描けばいい?」ということで悩んでいたが、この会場、恵比寿リキッドルームで、どついたるねんと神聖かまってちゃんの2マンライブを観て以来、凝り固まった考えから一気に解き放たれたのだという旨が歌われて、フロア内に広がった穏やかな感動。そしてスタートした「ほめられてる!」は、会場内のあらゆる人々を無条件で肯定する平和な風景を作り上げていた。

 久しぶりの披露で、古参のマユムラーたちを沸かせていた「ちゃらんぽらん」。再びフロア内に飛び込んで、元気いっぱいのパフォーマンスを繰り広げた「I was born in Australia.」。そして、新曲「壁みてる」の初披露に続いて、さらにもうひとつ、初披露の新曲が届けられた。「もう1曲作ってきたの! これ、600万再生いきそうな曲。マユムラーのことを考えて作ったから受け止めて」と言って、かっこよくスタートするのかと思いきや、暫くの間、続いた無音。「あっ! 自分で音出すんだった」と言って、我々はずっこけざるを得なかった……。しかし、PCを操作して流したトラック、演奏するエレキギターで彩りながら歌った「顔面ファラウェイ」を受け止めると、彼女が込めている愛情が、胸の内を満たしてくれるのを感じた。

 エキゾチックなメロディで我々を大いに幻惑した「インドのりんご屋さん」。大人っぽい妖艶さを滲ませながら歌う姿が目を引いた「開国だ」。アコースティックギターの弾き語りで届けられた「おじさん」。アバンギャルドな展開、エネルギッシュな歌声が、雄々しく我が道を突き進み続けている彼女の実像をまざまざと感じさせてくれた新曲「あたかもガガ」。世界中の祭囃子が一気に押し寄せたかのような圧倒的な祝祭空間を誕生させた「メソ・ポタ・ミア」……多彩な興奮が渦巻くひと時は続いた。そして、「私はライブで手応えがなかったと落ち込んでも、ネットでは良かったと書かれることもあります~♪」――始まったMCがいつの間にか歌へと変わり、スタートした本編ラストの曲「大丈夫」は、この日、この場所、この瞬間の想いを込めたスペシャルバージョン。即興の歌にマユムラーたちの手拍子や声が加わって作り上げられた音色が、実に美しかった。《ほらねー! こんなに簡単にミュージックは生まれる》という一節は、咄嗟に彼女の中から飛び出た言葉なのだと思うが、とても心に残っている。このようなアカペラを経て、流れるトラック+エレキギターの演奏による本編が始まると、「大丈夫」は、一際輝きを増して響き渡った。

 アンコールがスタートする前に、ステージの背景のスクリーンに流れた告知映像。SF映画のようなかっこいい仕上がりで、我々の期待は大いに高まったのだが……「2020年」という文字が浮かび上がったところで、大量のスモークが吹き上がって肝心な情報が全く見えなくなり、「そしてなんと」「さらになんと」という接続詞を挟んで追加情報も告げられたのに、いちいち大事なところでスモークが吹き上がり、結局、何もわからないまま映像は終了。手の込んだ悪戯を喰らったマユムラーたちは、ゲラゲラと大爆笑していた。そして、ちちゃんが勢いよくステージに登場して、「奇跡・神の子・天才犬!」がスタート。この曲でも、フロアに飛び込んであらゆるエリアの人々をグイグイと勢いよく巻き込むパフォーマンスが、抜群に冴え渡っていた。

「この前の新木場コーストのワンマンライブ、いっぱい人が来たでしょ? それより今日の人数は少ないんだけど、新木場コーストはソールドアウトしなかったじゃん? だから大きい会場を借りると赤字になる危険があるの。ダメージ喰らうのが私だけだったらいいんだけど、3社くらい関わってるので(笑)。しっかりソールドアウトさせたいの。だから900人から1000人の規模で、軽々しくワンマンをしていきます!」と宣言。次のワンマンライブが、来年の1月13日・TSUTAYA O-EASTである旨を告げた後、「それじゃあ、“帰りたくない”っていう曲。“ほんとに大好きなんだけど”っていう曲をやります」という言葉を添えて届けられたのは、「本気のラブソング」。瑞々しいメロディと歌声が、マユムラーたちの心を穏やかに震わせているのを感じた。

 緻密に計算するよりも、あるがままの感情に従って全力で歌いたいのだという決意を滲ませたアカペラによる即興ソングを経てスタートした「ピッコロ虫」。エレキギターを弾きながら歌っていた彼女が、間奏に差し掛かった瞬間、フロアを見回しながら浮かべた嬉しそうな表情は、とてもグッとくるものがあった。《愛の愛のドルを知ってよ 人に聞いた話は全部嘘だよ》という大合唱も起こったこの曲は、爽やかな昂揚感に満ち溢れていた。歌い終えると、「明日からも頑張ろうね! 絶対にまた遊ぼうね!」と言って、ステージを後にした彼女。しかし、マユムラーたちの拍手と歓声は全く収まる気配はなく、ダブルアンコールで「ビバ☆青春☆カメ☆トマト」が披露された。彼女がフロア内を巡りながら歌っている内に、果てしなく広がった大合唱の輪。我々の身も心も思いっきり解放したエンディングであった。

 MCでも告げられた通り、彼女のワンマンライブは、今後、軽々しく行われ続けるらしい。来年のO-EASTも楽しみだが、11月7日・渋谷WWWでの『眉村ちあき 追加公演 -ヤッターアハハハハハハハハハハハハハハダンスら-』も、間近に迫っている。移動しやすい通路があるあの会場を、ちちゃんは抜群に活用してパフォーマンスを展開するに違いない。同じことは二度と起こらず、あらゆる場所を歌、ダンス、笑顔のお花畑にしてしまう眉村ちあきのライブを未体験の人は、絶対に何かしらの機会を捉えてライブを観た方がいい。ずっと大切にしたい場所を見つけられること間違いなしだ。

【取材・文:田中 大】
【撮影:原田夕季】

tag一覧 J-POP ライブ 女性ボーカル 眉村ちあき

リリース情報

めじゃめじゃもんじゃ

めじゃめじゃもんじゃ

2019年05月07日

TOY’S FACTORY

1.ほめられてる!
2.ピッコロ虫
3.奇跡・神の子・天才犬!
4.開国だ
5.Queeeeeeeeeen
6.なんだっけ?
7.ヘチマで体洗ってる
8.書き下ろし主題歌
9.おじさん
10.代々木公園
11.ゲロ
12.Teeth of Peace
13.荻窪選手権
14.ブラボー
15.本気のラブソング
16.大丈夫

セットリスト

眉村ちあき 東阪ワンマンライブ LIQUIDROOM~過剰なダブルピース~
2019.10.21@LIQUIDROOM

  1. 1. Queeeeeeeeeen!
  2. 2. 荻窪選手権
  3. 3. 東京留守番電話ップ
  4. 4. DEKI☆NAI
  5. 5. 夏のラーメンワルツ
  6. 6. ブラボー
  7. 7. ナックルセンス
  8. 8. ほめられてる!
  9. 9. ちゃらんぽらん
  10. 10. I was born in Australia.
  11. 11. 壁みてる
  12. 12. 顔面ファラウェイ
  13. 13. インドのりんご屋さん
  14. 14. 開国だ
  15. 15. おじさん
  16. 16. あたかもガガ
  17. 17. メソ・ポタ・ミア
  18. 18. 大丈夫
  19. 【ENCORE】
  20. EN1. 奇跡・神の子・天才犬!
  21. EN2. 本気のラブソング
  22. EN3. ピッコロ虫
  23. 【W ENCORE】
  24. WEN1. ビバ☆青春☆カメ☆トマト

お知らせ

■ライブ情報

眉村ちあき 追加公演 −ヤッターアハハハハハハハハハハハハハハダンスら−
11/07(木) 渋谷WWW

ちのてきこえん!第45回 名古屋編
11/15(金)名古屋ell.Fits All

音楽と人LIVE 2019 ストレンジャー イン トーキョー 〜DEZERT 異種格闘3番勝負!〜 ROUND3
11/20(水) 渋谷 TSUTAYA O-WEST

ち のてきこえん! 第80回
11/29(金)心斎橋サンホール

打首獄門同好会の47都道府県ツアー(後半戦)『獄至十五ツアー』
12/01(日)桜坂セントラル(沖縄)

下北沢にて’19
12/07(土)、08(日)下北沢

エアトリ presents 毎日がクリスマス『クリハ!!(クリスマスrehearsal)』
12/15(日)横浜赤レンガ倉庫 1号館 3Fホール

ちのてきこえん! 第704回 渋谷編
2020/01/13(月)TSUTAYA O-EAST

クソイベ
2020/01/15(水)TSUTAYA O-WEST

クソイベ
2020/02/04(火)大阪BIGCAT

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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