新たなモードの扉を開ける、スガ シカオのニューシングル

スガ シカオ | 2011.02.23

 スガシカオの2011年第1弾シングルは「約束」。テレビ東京系アニメ『テガミバチ REVERSE』のオープニング・テーマとなっているこの曲は、昨年11月、二度目となるロンドン公演を大成功に収めた直後に書き下ろされたもの。近年のアルバムで聴かせてきたポジティブなヴァイヴのさらなる進化と、初期のスガシカオらしい疾走感とを併せ持ったこの独創的なファンクネスからは、新たなモードへと突入する、彼のシフトチェンジを感じ取られるはずだ。

CDジャケットやカップリング音源からもその臨場感が伝わってくるロンドン公演のエピソードから、デビュー15年目に突入する抱負まで、スガが大いに語ってくれた。


EMTG:ロンドン公演は2009年に次いで二度目だったわけですが、そもそもスガさんが愛するファンク・ミュージックと言えばアメリカが本場なのに、なぜイギリスだったのですか?
スガ:まずひとつには、現実的にアメリカよりもヨーロッパのほうが日本人の音楽を受け入れる懐が格段に広いと感じたからです。それとやっぱり2009年のライブの経験は大きかった。もし最初がアメリカだったら、それこそN.Y.で単独ライブにトライしていたかもしれないしね。あとは僕の音楽が『DEATH NOTE』(映画)や『xxx HOLiC』(アニメ)の主題歌によって知られていたり、向こうの学校で日本語学科の教材として使われていることも理由でした。
EMTG:ロンドンでは日頃のライブと同様に、日本語の歌詞をそのままに歌っていますね。
スガ:まあカッコつけて言えば『日本語のままで感動させてナンボでしょ!?』って言う想いがあったわけだけど、ぶっちゃけて言えば、日本人がロンドンでライブをやろうという現場において、言語なんて誰も聴いてないだろうと(笑)。僕自身、たとえばクリスティーナ・アギレラの曲を聴いて「カッコいい!」と思う瞬間に、アギレラが何を歌っているかって、丸々理解はしていないわけ。やっぱり最初のインパクトで重要なのは“ノリ”なんですよ。
EMTG:実際、ライブは素晴らしい出来だったし、観客もすごくノッていましたね。
スガ:ライブの途中から手応えは感じていました。あの日のライブは自分のこれまでのキャリアでも五本の指に入るベストアクトだったんじゃないかな。
EMTG:つまりロンドン公演における一番のモチベーションは、お客さんを"ノせる"ことであり、"踊らせる"ことだったわけですね。
スガ:そうです。自分の音楽のグルーヴで違う人種の人達をノせたかった。それだけです。特にビジネス的な目標があるわけでもなく、ものすごくシンプルな動機だったんです。
EMTG:「約束」は、そのロンドン公演からの帰り道で誕生したということですが。
スガ:はい。まさに帰りの機内で書いた曲です。
EMTG:この曲はみずみずしさと共に、かねてからのファンにとってはやや懐かしい質感をも持っていると思います。
スガ:それは僕もメロディを先に仕上げた時に思いました。それこそサビ以外はデビューの頃の曲に似ているんですよ。だからマイクも15年前に使っていたヤツを引っ張り出して、当時のセッティングで録ってみたので、曲調だけじゃなく、質感もちょっと懐かしいかもしれませんね。
EMTG:そして疾走感のあるアレンジとポジティブな歌詞の世界観は、「夜明けまえ」や「ストーリー」の進化系とも言えると思います。
スガ:うん、そうかもしれない。
EMTG:ちなみにスガさんが“約束”という言葉に抱くイメージとは?
スガ:まさに歌詞でも書いている通り、“目に見えないけど繋がっているもの”っていうイメージかな。今日と明日を繋ぐものであり、自分と誰かを繋ぐもの。それが“約束”だと僕は思います。
EMTG:スガさんはアルバム『FUNKASTiC』のリリース時に、「今は誰かの背中を押すような曲を書きたい」と話していましたが、「約束」を聴くと、そのマインドは今なお継続している印象を受けますね。
スガ:そう思います。そして曲を書く事で、誰かの背中を押しながら自分の背中も押している気がしていますね。
EMTG:中間部のリリックには、ちょっとラップっぽい感じもあって。
スガ:そうそう。その部分だけは、今回はじめて完全に詞セン(※歌詞先行)で書いた歌詞なんです。僕はいままでほぼ曲セン(※作曲先行)だったので、これはめずらしかった。実は今年から歌詞の書き方を少し変えてみようかと思っているんですよ。
EMTG:それはどのように?
スガ:今までのメロディありきの歌詞という考え方から、歌詞だけセパレートした書き方も試してみようかなって。今はいろいろな可能性を追求したい気分なんです。
EMTG:そんな新しいアプローチも試みる今年、スガさんはデビュー15周年を迎えますね。この15年間の制作環境やマーケットの変化について、何か感想はありますか?
スガ:何より驚くのは僕の部屋から生まれた音楽が、リスナーの耳に届くまでに一度も空気を触れなくなったことですね。以前はたとえばトラックダウンとか、どこかで空気に触れたり、アナログなものに落とすタイミングがあった。でも今は部屋で録った音楽データを、ミックスして、デジタル信号に変えて、工場でCDを焼く(※信号を定着させる)わけ。配信の場合は焼くことすらないし、イヤフォンやヘッドフォンだけで聴くリスナーもいるわけで。
EMTG:それこそ15年前には……。
スガ:想像も出来なかった(笑)。だから今ではそういった諸々を前提に楽曲を作るようになりましたね。でも僕と同世代の人はよく「アナログの音が良かった」とか言ったりするけど、僕は元々デジタル機材と接していたせいか、そういう執着はないんですよ。
EMTG:では最後に、デビュー15年目へと向かう抱負を聞かせて下さい。
スガ:この15年間の、特に10周年から今日までの5年間は、ハワイアン・ギターやヒップホップ、エレクトロといった新しい音楽の要素を吸収した時間でした。今年からはチャレンジのつもりで、そうした要素と一緒に、もっと自分が内側に抱えているものをどんどん開放していこうかなと思っています。上手く行くのかどうかは、やってみないと僕自身も分からないんだけど(笑)、まあ、楽しみにしていて下さい。

【 取材・文:内田正樹 】

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リリース情報

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INFORMATION

■ライブ情報

「ライド5」出演決定!
2011年2月26日(土)
LIQUIDROOM
OPEN 18:00/START 19:00
出演:長澤知之、スガ シカオ
料金:前売り¥4,200(税込)
※スタンディング ドリンク代別途

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