ハルカトミユキ、ミニアルバム『世界』に込めた想いとは。

ハルカトミユキ | 2015.04.22

 ハルカトミユキが劇的に変わった。タイトル、歌詞、メロディ、サウンド、ビジュアル……。全ての面において、これまでとは違っている。最もわかりやすい変化はヘアスタイルだが、サウンド面で注目したいのは、新たなプロデューサーとして、NAOKI-T、ナカムラヒロシ(i-dep)、根岸孝旨を迎えた点だろう。3rdEP「そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。」以来、フィジカルリリースとしては実に1年ぶりとなる1stミニアルバム『世界』に収録された全7曲は、どの曲も濃密なハルカトミユキノミユキの「世界」でありながら、どこか明るさや楽しさがある。何が、彼女たちをここまで変えたのか。その変化の過程、新たな「世界」にたどり着くまでの道程を聞いた。

EMTG:この1年間を振り返ってもらいたいなと思うんですが、かなり悩んでましたよね。
ハルカ:ふふふ、そうですね、話しましたもんね。前作を出した頃がピークでしたね。「その日がきたら」は、精神的に完全にまいってる中で、ギリギリっていう感じの状態で書いた曲だったんですけど、今聴いても、ちょっと落ち着かなくなるくらい、あの時の何かが込もってますね。
EMTG:リリース後のイベントやライブでは新曲ラッシュだったでしょ。かなり攻撃的なパフォーマンスをしてました。
ハルカ:ライブで救われてましたもんね、あの頃。リハとか、ライブでお客さんと会う時にしか人に会わなかったし。そこで、歌ったりパフォーマンスをすることで、マイナスのエネルギーが浄化されていったと思うんですよね。ものすごい大きな声で歌って、「おー、生きてる」って実感を得ることができたし、でっかい声で歌ってたら、パフォーマンスや曲も変化し始めた。リリースはなにも決まってなかったけど、曲だけはどんどん作り続けて、とにかくライブでは作りたての新曲をやって、でっかい声で歌って、プラスのエネルギーを蓄えてってた。
EMTG:なにに悩んでたんですか?
ハルカ:言いたくない……正直いうと、忘れてるんですよ、私は(笑)。
EMTG:(笑)昨年11月のワンマンライブでも「いろんなことがあったけど、もうどうでもいいことなんです」と言ってました。
ハルカ:あはははは、言ってましたね。嫌な記憶はね、思い出そうとすると、「……???」ってなっちゃうんですけど……確かに、音楽やっていけるのかな? っていうところまで行っちゃってて。体調も最悪でしたね……思い出させないでくださいよ(笑)!
ミユキ:前作を出したときは、ハルカこのまま死ぬんじゃないかっていうくらいげっそりしてて。本人はとうに忘れてるんですけど、「なにを作っていいのか、なにを言いたいのかすらもわからなくなった」って言ったことがあって。「もうやめようかな」みたいなことも言ってたんですよ。だから、1回、ふたりだけで話し合ったんですね。それさえも、ハルカは忘れてるんですけど。
ハルカ:あははははは。
EMTG:その話し合いを設けたのはいつ頃ですか?
ミユキ:6月ですね。とりあえず11月のワンマンは決まっていたので、それまではやらなきゃいけないって。私とスタッフは、ハルカが復活するまで待ってるっていう状況になったんですけど、そんな状況だから、私は私で、自分がどんな音楽が好きで、もともとどうして音楽を始めたのか混乱しはじめちゃって。まずはそこを整理しようと思って、自分のルーツをどんどん探っていって、結局は、80’sに立ち返りましたね。しかもニューロマ(笑)。
EMTG:ミユキさんも自分の道を見失って迷ってた?
ミユキ:ハルカのように立ち直れないほど落ちてたわけじゃなくて、どういう音楽をやるべきかというより、なにをやりたいかっていう悩みですね。私、昔ORANGE RANGEのファンクラブに入ってたんですよ。そこが原点だなって思って。これまで、どこか無理してカッコつけてた部分があったけど、ひも解いたら、RANGEって、自分の好きな音楽を何も躊躇なくやって、しかも確実にちゃんと届けていってる、やっぱこれだなって感じて。と、同時に、リリース以来もう毎日のように聴いてた、フォスター・ザ・ピープルを1つの軸にして、ルーツを辿っていったら、ニューロマにたどり着いて。で、ハルカが悩んでたから、私は自分だけの時間がとれてた時期にどんどん曲を作ってて。「フラワー」という曲ができたときに、私のなかではちょっと動き出した感じがあったんですね。
ハルカ:思い出した! 11月のワンマンで「フラワー」をやってるね(笑)。私がとまってる間にミユキがいろんな曲を聞いたり、作ったりしてて。「フラワー」もいままでとは違う感じの曲だったので、新しい曲に引っ張り上げてもらった感あるのかも。あの頃、私はライブをやることで、なんというか……気持ちじゃなくて、体から立ち上がるしかなくて。体を動かすことで、悩みが入る隙をなくしていったんですね。そこで、やっぱり歌うことは好きだなーっていうシンプルな気持ちが出てきて。「これならやっていけるかもしれない」って、やっとその頃に思い始めてるんですよね……。
EMTG:ライブでは「生まれ変わりたい」と言ってましたよね。どう変わりたかったんでしょう?
ハルカ:単純に、その頃の自分の現状から抜け出したいっていうか、抜け出さないと、もうどうにもならなくなってたから……イメチェン的な意味ではないんですよね、それは。夏あたりからずっと「生まれ変わりたい」って言葉が出てきてたんだけど、具体的にはどうしていいか分からなかったし、なかなか行動には移せなかった。ただ、凄く求めてはいましたよね。周りのスタッフとミユキにはかなり迷惑かけましたね。
ミユキ:何でかっていうとね、11月のワンマンの直前には「世界」を書き上げてたんだよ。だからそのときにはもう、いままでの全てを忘れさった、完全に新しいハルカになってたの。笑顔で「やりたい! やりたい!」って言ってて。でも、そのときはまだダメってスタッフに止められたの。1月に出す曲だから。
ハルカ:うん、ほんとに忘れてますね(笑)。
EMTG:(笑)新作にはその「フラワー」をはじめ、去年1年間で披露していた新曲たちは入ってなくて、「世界」は入ってますね。
ハルカ:立ち直らせてくれるきっかけになった曲はたくさんあって。いつか絶対に作品にしたいんですけど、いまではないなって思ったんですよね。去年の11月かな? レーベルスタッフから「来年は毎月リリースしないか?」っていう提案をもらって。私は気持ち的にも音楽的にもなにか起爆剤が欲しかったし、何より、ダメになりかけてた自分に対して、そういうプラスのアイデアをもらえたことが嬉しくて、これはもう、全力でやります! っていうことで、年始に<毎月新曲を出す><ミニとフル、2枚のアルバムをリリースする>って発表したんですね。その過程で、フィジカル2作品っていうのももう増えてるし(笑)、せっかくだから、毎月の新曲は書き下ろそうよ、ってなって。私も、今のマインドで毎月新しい曲を作りたいって思ったんですよね。だから、今回のアルバムの核になってる曲は、毎月新曲発表っていう企画が決まってから書いた曲が中心。でも、意識して既存曲を排除したわけじゃないんですよ。「バッドエンドの続きを」とか「マゼンタ」みたいに、ライブで育てた曲もちゃんと入れてる。
EMTG:最初に聞いたときはびっくりしました。もちろん、バンドサウンドによるロックナンバー「バッドエンドの続きを」や「君はまだ知らない」のようなダークバラードといった“らしい“曲もある一方で、「世界」はポップロックだし、「tonight」はシンセポップだし、「嘘ツキ」はファンキーなジャジーラップになってて。
ミユキ:明るくて楽しい曲というか、自分が本来好きだったポップな部分は、チャンスがあればアピールしようと狙ってましたからね(笑)。でも、元々ハルカトミユキは80’sのブリティッシュのニューウエイヴ感はかなり入ってるから。そこに、さらに私のニューロマ好き&フレディ・マーキュリー好きが加わってきた。とくにNAOKI-Tさんとは、かなり時間をかけていろいろ相談して、アナログシンセのサウンドをたくさん取り入れたり、エレクトロシューゲイザーにアプローチしようとしたけど、、、まだまだですね。だけど、とにかく楽しくシンセを入れる、これが私のルールでしたね。ライブもどんどん変わっていきそうな感じがしてますね。
ハルカ:「世界」の歌詞は、自分で終わらせなきゃいけないことや、さよならしなきゃいけないことに対して、泣き笑いで手を振ってる、ブンブン振ってるみたいな気持ちが描きたくて。リリックビデオもみんなにバイバイしてもらって。私達の友達とかファンのみんなとかスタッフの友達とか、とにかくたくさんの人にバイバイしてもらった。
EMTG:全体的に何かが終わって、はじまる予感がありますよね。終わりに対する未練や後悔と、はじまりに対する希望が不安がごちゃ混ぜになりながらも、前を向いて生きようとしてる。本作を聞いていると、ハルカさんは本当に、一度死んで、生まれ変わったんじゃないかって思うんですよ。
ハルカ:あはははははは。生きてます!
ミユキ:いま、こうやって笑ってるけど、当時はいまから想像できないくらい落ちてたからね。あながち間違ってないと思うよ。死んで復活しないとここまでは変わらないんじゃない?
ハルカ:rebornしたね。たぶん、そうしないと死んだように生きてたのかもしれない…それこそゾンビ。精神的にも、クリエティヴな意味でも、一回、死んでるかもしれないです。「世界」は、2015年の1曲目だから、自分自身への宣言と復活を歌いたいと思ってて。あまり理路整然としたストーリーではなく、本当に複雑な気持ちの中から、核になる部分の言葉を選んで紡ぎ上げた感じ。だから、さよならしなきゃって悲しんでる自分と、でも、いかなきゃって前を向いてる自分と、いや、でも……ってまた言ってる自分の葛藤があって。決意をして旅立ったんだけど、やっぱり振り返っちゃうとか。躓いちゃったりね。ごちゃごちゃ。割り切れてないんだけど、それでも歩いていく、生きていくっていう感じを中途半端なまま書いてる。それを凄く強くぶっとく書いてるんですよね。<どしゃぶり/一人>のあとに、同じように絶望的な言葉じゃなく、<悲しみ/終わり>ってかけたときに、明らかに一歩踏み出せた!と思って。
EMTG:タイトルにはどんな意味を込めました?
ハルカ:この曲はね、書き上がった瞬間に、タイトルが「世界」になったんです。理由はないの。この曲は「世界」って決まってた。そして、ビデオはバイバイ。ここまでは私の中で決まってましたね。こういう時の為に「世界」ってなんだろう? って考えてはいるけど……これは曲が導いてくれたタイトルなんですよね!だからこそ強いのかなって思ってます。
ミユキ:最初にこのタイトルを見たときに、なんか踏み切ったなって感じたんですよね。いままでのEPは短歌のタイトルにしていたけど、新しい挑戦や実験、バラエティに富んだ曲たちを1つにまとめてくれるシンプルな言葉だなと思ったし、まさに、私たちが生まれ変わってるんだっていうことを表現するのにふさわしいタイトルだと思いますね。

【取材・文:永堀アツオ】

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リリース情報

Fanfare

Fanfare

発売日: 2017年06月07日

価格: ¥ 1,111(本体)+税

レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲

1.Fanfare -Japanese ver.-
2.ROAR -Japanese ver.-
3.K.O. -Japanese ver.-

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ビデオコメント

リリース情報

[世界](初回生産限定盤)[CD+DVD]

[世界](初回生産限定盤)[CD+DVD]

2015年04月22日

SMAR

[CD]
1.世界
2.tonight
3.マゼンタ
4.君はまだ知らない
5.バッドエンドの続きを
6.ヨーグルト・ホリック
7.嘘ツキ

[DVD]
ハーモニー / Harmony #1
2015.2.6 東京キネマ倶楽部
1.終バス(未発表曲)
2.嘘ツキ
3.ニュートンの林檎
4.青い夜更け

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お知らせ

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●ミユキ(Key&Cho)
ときめきトゥナイト

最近80’sにハマってて、音楽だけでなく漫画にも。その中でも少女漫画、「ときめきトゥナイト」にハマってて、検索して集めてます。


■ライブ情報

Mini ALBUM Release Party ハルカトミユキ meets People In The Box
2015/04/25(土)東京・恵比寿LIQUIDROOM
w/ People In The Box

ハルカトミユキ ワンマンライブ 2015‘世界’
2015/06/19(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
2015/06/25(木) 大阪・umeda AKASO
前売:スタンディング 3,500円(税込)
一般発売:5月16日(土)

★チケットオフィシャル先行
4/24(金)18:00~5/6(水)23:59
http://harukatomiyuki.net/

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。


ハルカトミユキ公式モバイルサイト
「ハルミユtown」

「ハルミユtown」住人だけのお得な企画満載!

http://arena.emtg.jp/harukatomiyuki/

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