SANABAGUN. ジャンク感やならず者感を取り戻した新作『OCTAVE』

SANABAGUN. | 2018.04.27

 2015年にメジャーデビューし、1年足らずで2枚のアルバム『メジャー』『デンジャー』を発表。順調にも見えた彼らだが、『デンジャー』に収録された「メジャーは危ない」で《今いちばんメンバーがバラバラに感じる》とラップして不安を吐露していたSANABAGUN.。その後、MCの岩間俊樹はリベラル名義で、高岩遼は別のバンドTHE THROTTLEでアルバムをリリース。キーボードの櫻打泰平とベースの小杉隼太はSuchmosのメンバーとして八面六臂の活躍をみせ、昨年9月には小杉から大林亮三へとベースの交代劇もあった。昨年は年始に「今年はリリースしません」宣言し、ライブに明け暮れたSANABAGUN.だったが、『デンジャー』以降の約2年はグループにとってどんな期間だったのか。進化と洗練を極めつつ、以前のようなジャンク感やならず者感を取り戻したアルバム『OCTAVE』が生まれた背景を、今回は岩間、高岩、澤村一平(Dr.)の3人に訊いた。

EMTG:前作『デンジャー』からの2年はSANABAGUN.にとってどんな期間でしたか?
岩間:大変な2年でした。メンバーチェンジを発表したのは去年9月でしたけど、「メジャーは危ない」はリアルなことを歌ったし、単純に自然と作品を出す段階までいけなかったっていう。
澤村:ただ、曲のタネになるものは常に作ってたんです。リリースはなかったけど、去年の春はBEAMS Tとコラボして「Yukichi Fukuzawa」を作ったり、秋はHARLEY DAVIDSONとのコラボで「We in the street」を作ったり。
岩間:今回のリード曲の「FLASH」は2年前くらいからあったし。
澤村:でも、アルバムを出す前提で曲を作り始めると納期にあわせて曲を作っていかなきゃいけない。だったら余裕を持って、どんどんタネを作っていって、それを最終的にまとめてアルバムにする作り方をしよう、という話をしていたんです。曲数は何曲必要だからどんどん作らなきゃ、みたいになるとどうしても満足の行くものが作れなくてなる可能性がでてくる。
EMTG:『デンジャー』の頃はそういう息苦しさを感じてた?
澤村:『メジャー』のときから相当バタバタでしたから。
岩間:でも、あの2枚を作って、作り方のペースとか自分たちの物さしができたし、リリースはしてないけどツアーを重ねるたびに動員は増えてきていたので、2年で地盤固めはちゃんとできたなと思ってます。
EMTG:2017年はライブ漬けの日々だったと思いますが、グループとして進化したところ、強化された部分はどこだと思いますか?
岩間:わりとみんな前より酒を飲むようになったところ。たぶんそこが一番デカかったんじゃないですかね。酒が好きな亮三が入ってきたんで、ライブが終わったあと一軒目は全員で行って飲んで騒いで、みたいなのをやってて。 
EMTG:それで団結力が高まった。
岩間:サナバってかなり生モノで、ライブも予定調和でいかないことが多いんですけど、そのアクシデントがプラスに作用するみたいなところがあって。そういうときの底力が一層強くなったんですよね。より一層、音楽とかライブを8人で楽しめるようになった。
EMTG:陳腐な言い方かもしれませんが、そういう変化を経て、SANABAGUN.が「バンド」になったという感覚はありますか?
岩間:バンド感が強くなったっていうのはありますね。最初はクルーというか、強烈な個の集まりみたいな感じでしたけど、改めてちゃんと8人でひとつのモノを作ろうという意識が今回のアルバムは強いかもしれない。
澤村:逆に言うと、普通のバンドが何も考えずできるようなことをやっとできるようになった(笑)。メンバーがひとり替わることで、良くも悪くも1から作り直さなきゃいけないっていうキッカケがあって、結果ちゃんとみんなでバンドっぽいことをするようになったんですよね。
EMTG:『OCTAVE』の制作は、いつ頃から着手したんですか?
澤村:亮三が入ったのが9月なんで、9月・10月・11月くらいにツアーリハーサルと同時に制作も始めてました。
EMTG:そのときに、こんなアルバムにしよう、みたいな青写真はあったんですか?
岩間:曲数くらいですね。本当はもっと入れたかったくらいで。
澤村:これでも何曲か減らしたんです。
岩間:「やばい、やばい。苦しい、苦しい」って作ってたらメッチャできた、みたいな。
澤村:僕としては、亮三はライブ用に曲を覚えなきゃいけないし、制作の方はこっちからアドバイスをしたりして、俺たちに付いてきてくれればいいな、くらいに考えてたんです。そしたら、亮三がメッチャ、アイデアを持ってくるんですよ。「サナバを観ていてこういう曲とか合うと思ってたんだよね」って。だから、今回のアルバムは亮三発信の曲が1/3くらいあるんです。
EMTG:でも言ったら、お試し期間でもありますもんね。亮三さんが加入してどんなものができるか、まずは試してみないと始まらないっていう。
岩間:そうなんです。だから今までのやり方だったら書かなかったようなものもあって。サナバは、まずスタジオでワンループを作って、それを俺や遼が持ち帰ってトピックを考えて歌詞を乗せるっていう作り方が基本なんです。そのワンループを聞いても何も沸いてこなかったから「書きたくない」みたいなことを今までは言ってたけど、今回は書いて持っていくと、亮三がそこにアイデアを足したり、8人でブラッシュアップしていくことが増えて。しかも、それがハマることが多かったんです。「8 manz」とか「P・A・N・T・I・E」は、仕上がってみたら意外と「メッチャよくね」みたいな。サナバとしてその作り方は新しかったと思います。今までだったらアイデアの時点でふるいにかけて「これはもうこの段階で駄目」みたいな見切りを付けられてたものでも、ちゃんと最後までやり通してみる。それによって楽曲が進化することを実感しました。
EMTG:今回のアルバムはジャズ度がアップして全体的にサウンドが洗練されたと思ったんです。ただ、後半の「三種の神器」以降はファンク感が出てくる。音の変化は自分たちではどんなふうに感じてますか?
岩間:亮三が、単純にファンク好きなんです。その流れはあると思う。
高岩:アイツ(亮三)は、ウィットに富んでて、極太で、すごいヴァイナル好きで、ブラックミュージックラバーというか音楽ラヴァーなんで、よりヒップホップ的サウンドになったかもしれないですね。いい意味でお洒落の要素がなくなったところはあるかも。
EMTG:ファンクはファンクでも“いなたい”ファンクなんですよね。
澤村:楽器陣としては、そういうベタベタなファンクをやると、いわゆるジャムバンドにラップが乗っかってる、みたいなサウンドになっちゃうという先入観があって、絶対手を出さないっていうところがあったんです。でも亮三がすごく嬉しそうに「こういうのどう?」みたいに持ってくる。正直、最初はしっくりこなくて。作り込んでいくと何をやっても結果サナバっぽいものになる。そういう意味では、何でもチャレンジしてみるもんだなと。逆に今まで手を出してこなかった部分もどんどん積極的にやれたから曲数も増えたんだと思います。
EMTG:中でも、新境地を開拓できたと思う曲は?
岩間:わりと全部新しいけど、「L.G.M」とかはどう思う?
澤村:むしろ俺は「L.G.M」はサナバっぽいと思う。“黒盤”(デビュー盤の「Son of a Gun」のこと)感があるのは「L.G.M」かなって。
岩間:「L.G.M」は遼が作った曲で、新しく捉えられるかもしれないんですけど、実は前からやろうとしてたことがようやく形になったっていう感じが自分たち的にはありますね。
EMTG:一「P・A・N・T・I・E」は作風として新しいんじゃないですか?
澤村:そうですね。これは亮三が「サナバでサンバやったら絶対いいと思うんだよね」って持って来たんです。「なんでサナバでサンバやるんだよ」って思ってたんですけど(笑)、結果、サナバの音になった。
EMTG:「FLASH」のわかりやすいキャッチーさも新境地だと思いました。
岩間:新しいと思いますね。亮三に替わった段階で何か新曲を作ろうとなって取り組んだ曲で。去年末のツアーで演奏してさらにブラッシュアップされて、ライブでのキラーチューンになった。
澤村:逆に言うと「FLASH」があれだけキャッチーにできたから、これだけ自由にいろんな曲を詰め込めるアルバムができたのかなと思う。「FLASH」があることで、他の曲は安心して作れたから。
EMTG:「FLASH」は、句点まで歌うサビのフザケ方も好きです(笑)。
高岩:なんかマル(句点)にハマったんですよ。あれは完全にフザケっす(笑)。
岩間:あれは最初セッションで生まれて。リハーサルスタジオとか行くと、使用時間の終了を知らせるために「フラッシュが5分前に点灯いたします」って書いてあるんです。その表示をそのまま読んだだけっていう。そのアホっぽい感じがすごくいいですよね(笑)。すごくサナバっぽい。
EMTG:そういうアホっぽい曲もあれば、しっとりとした「雨香」という曲もあります。この曲名はどう読むんですか?
岩間:「うか」です。雨が降ったあとのアスファルトの匂いがあるじゃないですか。あれに日本語がないという話になって。で、漢字がいいよねとか、漢字二文字っしょ、とか話してて「雨香」でしょと。
EMTG:モチーフはキザというかロマンティックなんだけど、「雨香」にはどこかダサい感じもありますよね。
岩間:かゆくなる感じがあって(笑)。ダサい方向を男8人でやりきったらサナバっぽいかなと。これは遼がいないときに俺が勝手にテーマを決めたんですけど、遼に「なにアレ、ダサくね?」みたいに言われて。「そうです。ダサいです。でも行きましょう、これで」って押し切ったんですけど。
高岩:意図がわかったからね。そうなったらダサい方がいいでしょって(笑)。
EMTG:アルバムタイトルの『OCTAVE』にはどんな思いを込めているんですか?
澤村:メンバーが8人なんで、8つの音でひとつのオクターブになるっていうところからつけました。
岩間:最初はオクトバスにしようか迷ったんです。けど、さすがにねぇだろって。
EMTG:オクトバスだったらHIP HOPのバイブルといわれる『Ultimate Breaks & Beats』のジャケをサンプリングできたんじゃないですか?(笑)
岩間:実はその発想からオクトパスだったんです。でもリスペクトが足りないからダメだ、そんな軽はずみでオマージュしちゃダメだって亮三に叱られて(笑)。
EMTG:最後に、6月から始まるツアーについて、意気込みをお願いします。
岩間:過去いちばんメジャーをディスる内容にしようかなと(笑)。路上時代のワクワクを体感させられるようなツアーにしたいですね。あのときのヒヤヒヤする感じとかスリリングする感じがサナバにはハマってると思うから。
澤村:個人的には、リリース後のツアーだから新曲をどんどん入れられるのが嬉しいです。久々に超フレッシュなセットリストでライブができるから、見せ方も変わると思うし、すごく楽しみですね
高岩: “黒盤”を出したときって、ある意味汚いというかダーティーな要素があったと思うんです。で、『メジャー』『デンジャー』は少しスクエアになって。時を経て出した今回はクソ汚い内容なんですよね。僕の中では「黒盤、来たわ」みたいな、よりダーティーな内容になってるんですけど、たぶんライブはリッチなものになると思うんです。
EMTG:今回のアルバムには、グループ名の由来であるSon of a gun=ならず者感が滲み出てますよね。ジャンク感があるというか。でも、音は洗練されてる。
高岩:ダーティーだけど安っぽくないというか。“黒盤”のときはまだガキだったし、ただ暴れたいというか、青さがあった。でも27歳になって、少し大人の表現がライブでも出せたらいいなと思いますね。チンチン出すとか。
澤村:え?(笑)
EMTG:大人としてのチンチンの出し方がありますからね(笑)。
高岩:そう。大人になったチンチンを出します(笑)。
岩間:ちゃんとムケてるチンチンをね(笑)。

【取材・文:猪又 孝】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル SANABAGUN.

リリース情報

OCTAVE

OCTAVE

2018年04月25日

ビクターエンタテインメント

1. I’m back
2. 8 manz
3. L.G.M
4. Rainy day
5. 雨香
6. P・A・N・T・I・E
7. skit-1
8. Yukichi Fukuzawa
9. As time goes by
10. 三種の神器
11. Black Diamond
12. F-BOY
13. We in the street
14. skit-2
15. SFT
16. FLASH

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

TOUR OCTAVE
06/23(土)[大阪]梅田CLUB QUATTRO
06/24(日)[愛知]名古屋CLUB QUATTRO
06/29(金)[北海道]札幌Sound Lab mole
07/01(日)[宮城]仙台MACANA
07/06(金)[広島]広島CLUB QUATTRO
07/07(土)[福岡]福岡BEAT STATION
07/13(金)[東京]渋谷TSUTAYA O-EAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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