Kacoの未来を形成する構成物、3rdミニアルバム『たてがみ』完成

kaco | 2019.01.04

 2016年にKan Sanoがピアニストとして参加した自主盤『影日和』をリリースし、翌年には松岡モトキをサウンドプロデューサーに迎えた『身じたく』を発表。昨年はNEWSのアルバムに楽曲提供を行うなど、着実にその名を音楽シーンに刻みつつあるシンガーソングライター、Kaco。憂いを帯びたその声は初期の大貫妙子や荒井由美などの上質なDNAを受け継いでいて、一度聴けばもう、耳にも心にも焼きついて離れない中毒性をはらんでいるように思う。そんな彼女が、待望の3rdミニアルバム『たてがみ』を完成させた。今作では元チャットモンチーの高橋久美子と歌詞を共作するなど、シンガーとしても、ソングライターとしても、さらなる進化を遂げている。

EMTG:新作『たてがみ』、素晴らしかったです。ご本人としても、かなりの自信作ではないかと。
Kaco:だと思ってます(笑)。実は(2018年の)秋にはすでに完成してたんですよ。はよ言いたい、はよ出したい!って思ってました(笑)。
EMTG:(笑)。今回が3枚目のミニアルバムになるんですよね。
Kaco:はい。1枚目の『影日和』はシンプルにピアノと歌のデュオ。名刺代わりのようなアルバムでした。2枚目の『身じたく』はバンド編成。外に出るための身じたくをするというコンセプトで作ったのですが、心の準備とか、恋愛や仕事、人生の身じたくをするっていう思いを込めたものになりました。じゃあ次はどうしようかと考えた時に、身じたくは済ませたわけだから、今度は外に出よう、道に出ようという発想がまずありました。バンドの音やアレンジ、歌詞の内容などもちょっとひらけた感じで、外の人に向かって歌うようなアルバムにしたいなと思ったんです。
EMTG:これまでの作品を聴くと、とても丁寧に、そして軽やかに変化を加えながらステップアップされてきたんだなという印象でした。そもそも、ある程度先のことまで見据えた上で音楽活動をスタートさせたのですか?
Kaco:私は愛媛県の出身なんですが、住んでいたところがものすごい田舎だったんですね。CDショップも親の車じゃないと行けない、ライブハウスもない、ラジオの電波もちゃんと入らないようなところ(笑)。そこで聴ける音楽といえば、テレビから流れてくるものだったんです。そういうJ-POPをずっと聴いて育ったので、自分が音楽をやる上でも、自然と、たくさんの人に聴いてもらいたいというのが最終目的地になりました。且つ、私と同じように、田舎にいて最新の文化がすぐには届かないような場所にいる女の子や同世代の人たちを、私の曲で勇気付けられるような環境も作りたい。だったら<お茶の間>に行かなきゃ!と。
EMTG:その目的に向かって歩いているということなんですね。
Kaco:単純に歌が好きで、家でピアノを弾きながら誰かのカバーをしたりしてたんですけど、それを披露する場所もない。ライブハウスもないですからね。そうやってずっと音楽は自分の中だけのものだったんですが、大学2年生の時に、ずっと好きだった絢香さんのファンクラブのイベントで歌えることになったんです。それまでライブもしたことない田舎の女の子が、いきなりZepp DiverCityのステージですよ。スポットライトの眩しさや声を出した時の快感は今も忘れられないし、その時の経験がターニングポイントになって、いろいろ動き始めたんです。
EMTG:そういうことだったんですね。
Kaco:とにかく絢香さんが好きだったので、最初はものまねから入ったんです。中学とか高校ではみんなに「似てる!」って言われて嬉しかったけど、ライブ活動を始めてからも絢香さんの歌い方が染み付いていて、結構悩んだんです。どうしたら抜け出せるかなと考えた結果、童謡とか昔の歌謡曲とか、絢香さんが歌っているところが想像できないような曲をひたすら歌いまくろうと(笑)。そこからだんだんと、グラデーションのように自分の色ができてきたのかなと思ってます。
EMTG:プロフィールによると、イタリア歌曲のレッスンもされていたとか。
Kaco:本当はボイトレに通いたかったんです。でも親から、松山市まで行くのは遠すぎてダメだと。でもここならいいよと言われたが、たまたま家の近所にあった、宝塚やオペラの道を目指す方が通う音楽教室だったんです。私がやりたいのはオペラじゃないんだけどなと思いながらだったけど(笑)、歌の基礎を学べたという意味では、今も(自分の歌に)生きてるなと思います。
EMTG:曲作りに関してはどうですか?
Kaco:これも絢香さんの影響が大きくて。あるインタビュー記事を読んだ時に、デビューするために高校生の時から曲作りを始めましたって書いてあって、「歌手になるためには、自分で作らなきゃいけないんだ!」と(笑)。それで私も高校の時から作り始めたんです。その頃から、今現在の心情を歌にしてましたね。友達や恋愛のことよりも、夢に向かうことについてとか、上手くいかない時にこう思うとか、そういうことがネタになることが当時はすごく多かったです。日記を書くような感覚だけど、イメージとしてはどこかすごく広いところで歌っている感じ。さっき「お茶の間に」って言いましたけど、勝手にCMをイメージして作ったりして。
EMTG:空想のタイアップ、取りまくってたんですね(笑)。
Kaco:そうです、そうです(笑)。でも、これはひとつ悩みでもあるんですけど、ノンフィクションしか書けないんですよ。最初はそこまで思ってなかったけど、やっぱりもっと広いところへ、もっと外へ向かってとなると、それが自分の思いや経験に基づくものであっても、自分の中だけに止めず、まだ見ぬ人達の存在も意識しなくちゃいけないよなって思うようになりました。
EMTG:そういった気持ちが、今回の『たてがみ』にも繋がっているんですね。今作では新たな挑戦として、元チャットモンチーの高橋久美子さんと歌詞を共作されています。
Kaco:今回は身じたくしてきたものを外に向けて発信するというコンセプトだったんですが、自分の中にある今までの壁を壊したいという気持ちもすごくあったんです。何か新しい風を吹かせたい。じゃあ、誰かと一緒に作るのはどうかな?と考えていた時に、母からLINEで、愛媛新聞に掲載されていた高橋さんのエッセイが送られてきたんです。「…高橋さんかぁ。…高橋さん?…高橋さんっ!!」(笑)。ぜひ一緒にやってみたいと思い、こちらからお願いしたんです。
EMTG:アルバムのタイトル曲でもある『たてがみ』の歌詞は、居酒屋で書き上げたそうですね。
Kaco:上野毛の居酒屋さんで(笑)。その日は親睦会みたいなつもりだったんですけど、気が付いたらご飯もそっちのけで作業に入っちゃってて。3~4時間で書きあがったんです。あんなの初めてでした。
EMTG:高橋さんとはどういう話をしながら書いていったんですか?
Kaco:まず同世代の女の子など、女性に対して書きたいという話をしました。ちょうどその時私の周りでも、会社に勤めて2年目とか、結婚や出産っていう子がいたりして、私もまだ音楽で夢見る段階の活動をしてる。人生の分岐点というか、やっとそれぞれの生き方の違いみたいなものが見えてきた時期だったんですね。話をしていると、カテゴリーは違えどそれぞれにいろんな悩みや思いを抱えてるんだなと思ったんです。それともうひとつ大きかったのは、去年楽曲提供をさせていただいた時に、中学生か高校生ぐらいの女の子からもらった手紙でした。おばあちゃんが亡くなっていろいろ状況が変わって、前に進まなくちゃいけないけど進めない。でも私は進みたいんだっていう、葛藤しながらもすごい強さがあったんです。こういう人達ってたくさんいるし、こういう人達を守ってあげたいというか、大丈夫だよひとりじゃないんだよって言ってあげられるような歌にしたいなと思ったんです。
EMTG:なるほど。
Kaco:とは言え「大丈夫だよ、よしよし」って包み込むだけではなく、玄関先で「はい、いってらっしゃい!」って送り出してくれるお母さんみたいな曲が書きたいっていうのがいちばん大きな軸でしたね。見守ってくれている安心感があって、その上で背中をポーンと押してくれるような。
EMTG:実際に言葉を紡いでいく作業はいかがでしたか?
Kaco:これまでの私の曲は、ちょっと抽象的だなとか、わかりづらいって言われることもあったんですね。でも高橋さんのエッセーなどを読んでいると、誰でも理解出来る柔らかさを持った言葉なのに、組み合わせ方でこんなにも惹きつけられるエネルギーを持ったものになっている。今回も、伝わりやすいし、当たり前のことを言ってるんだけど、でも書けないよなって言葉が高橋さんからどんどん出てきて、そこを2人で擦り合わせていくのはすごく楽しかったです。
EMTG:『たてがみ』というタイトルについては?
Kaco:女の人が大地に立って、風に吹かれているイメージがすごくあったんです。それをどう言葉にしたらいいのかって考えていた時に、風になびく髪の毛がたてがみのようだなと。画竜点睛じゃないですけど、高橋さんからも最後のひとつで決まったねと言ってもらえました。
EMTG:結果的にそれがアルバムのタイトルにもなったわけで。
Kaco:地に足つけてやっていきたいという思いもそうですし、たてがみがなびくということは、向い風も吹いているということ。上手くいくことばかりじゃないけどしっかり前進していきたいっていう、そういう思いも込められたかなと思ってます。
EMTG:高橋さんとはもう1曲「あいそうろう」も共作されています。
Kaco:高橋さんの言葉遣いには、現実なんだけどちょっとだけファンタジーを感じさせるものがあるなと思っていて。この曲は皮肉を込めた曲なんですが、そこで狂気じみたファンタジーを表現できたらと思って作っていきました。自分ひとりで曲を書いている時は鍋をことこと煮込んでいるイメージで、そういう時間も好きだけど、初めて人と作ってみると、ポップコーンが弾けてるみたいな感じでしたね。ぽんぽん言葉が飛んできて、それを受けることでこちらからも新しい言葉が生まれるみたいな。キャッチボールしながら作る楽しさを知ることができました。
EMTG:そういうオープンなムードは、Kacoさんの作詞作曲ですが、1曲めの「夢から醒めた夢」からも感じ取れますね。
Kaco:この曲は、今現在の私の心情をいちばん表現できた曲じゃないかなと思います。小さい頃から「こうしたい」「こうなりたい」という夢はあったけど、まだ届いてない部分もある。もちろん届いたものもあるし、予想を超えたところもありますけど。たとえ理想に叶ってないものであっても、これからの自分の未来を形成する構成物なんですよね。上手くいかないものも楽しもう、そういうところから書いていきました。
EMTG:豊かな色彩を感じさせるバンドサウンドにピアノ1本の弾き語りなど、Kacoさんの声の魅力を存分に味わえるアルバムがまたひとつ完成しました。最後になりますが、今後の夢や目標も聞かせていただけますか?
Kaco:高校の時にコーラス部だったということもあるんですが、Nコンの中学の課題曲を書きたいんです。それこそお茶の間にまで届くような存在にならないと書けないものだし、自分が歌を始めた原点でもあるところに関われるようにたらって。お世話になった音楽の先生や学校の後輩達が歌ってくれたりしたら、すごく幸せ。そのためにも、一歩一歩を大切にしなきゃなと思っています。

【取材・文:山田邦子】

リリース情報

たてがみ

たてがみ

2019年01月16日

EGGS

1. 夢から醒めた夢
2. 涙の割りかた
3. 書きかけのファンタジー
4. 猫になれたら
5. あいそうろう
6. たてがみ

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■ライブ情報

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01/19(土)初台玉井病院スタジオ

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03/23(土) - 03/24(日) festhalle / オリーブホール / DIME / MONSTER / SUMUS cafe 瓦町駅地下広場 / 786FM香川ステージ

Kaco LIVE TOUR 2019 〜たてがみ〜
03/23(土)大阪 GANZ toi,toi,toi
03/30(土)渋谷 LOFT HEAVEN

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