レビュー

Amelie | 2016.09.28

連載 第140週
Amelie「君が為に鐘は鳴る/さよならバイバイ」



ボーカルのmickが、元来その声に秘めている“独自の明るさ”が魅力


 女性ボーカルのmick(Vo&Gt&Pf) 、直人(Gt&Cho)、あっきー(Ba&Cho)、アサケン(Dr&Cho)の4人からなる“Amelie”は、明るさと影の部分をあわせ持つ歌を伝えるバンドだ。映画『アメリ』からバンド名を取ったというだけあって、映画のヒロイン“アメリ”の暗さもありながら周囲を幸福に導くパワーを、バンドのコンセプトに据えて楽曲作りに挑んでいる姿勢が個性となっている。今回のファースト・シングル「君が為に鐘は鳴る/さよならバイバイ」も、2曲がラブソングの光と影をそれぞれに表わしていて、Amelieがどんなバンドなのかをしっかりと伝えてくれる。

 ではAmelieの光と影とはどんなものなのだろう。まず「君が為に鐘は鳴る」は、4つ打ちキックにラテン風味を混ぜたダンサブルなリズムに乗せて♪前見て一歩踏み出せばいい♪とリスナーの背中を押す。mickの声はリズミックであっても、あくまで優しい。このあたりが自分たちを“踊って泣ける歌謡ロックバンド”と呼んでいる理由だろう。かなり速いテンポなのに、ぎりぎりまで優しく聴かせようというmickの心配りは、彼女自身が聴いてきた音楽のタイプが推測できて興味深い。それはただの“歌謡曲”ではなく、もっと広い意味で歌が中心になっている音楽なのだろう。

 そして僕は、「さよならバイバイ」の方が好きだ。マイナーな曲調のロックで、失いかけた恋をあきらめない気持ちを歌う。“さよならバイバイ”というキーワードは、君にさよならするというイメージとは逆の意味で使われていて、♪さよならバイバイ 君のいない未来よ♪というフレーズがザックリ心に刺さる。もしかするとAmelieは、今のところ、影の部分から人生の真実に近づく方が得意なのかもしれない。特にmickは、“影の曲”の方が感情に体重を乗せやすいようだ。

 初めてシングルをリリースするAmelieは、まずはバンドのキャラクターをアピールするためにこのシングルを発表するのだと思う。これからバンドシーンに自分たちの魅力を示すタイミングを迎えて、僕としては徹底的に“影”を前面に出した方がいいと感じる。なぜなら、mickの声は元来、“独自の明るさ”を秘めているのだから。

【文:平山雄一】

リリース情報

君が為に鐘は鳴る / さよならバイバイ

君が為に鐘は鳴る / さよならバイバイ

発売日: 2016年09月28日

価格: ¥ 500(本体)+税

レーベル: [NOiD] / murffin discs

収録曲

1. 君が為に鐘は鳴る
2. さよならバイバイ

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