今年2月末、J-POPの名曲をカバーしたジャパンソロデビューアルバム『D’scover』をリリースしたBIGBANGのD-LITE。リリース1ヶ月後には全国2ヶ所（神戸ワールド記念ホール、日本武道館）、計4公演の初ソロツアー“D-LITE D’scover Tour 2013 in Japan ?DLive?”を行ったが、チケットは瞬く間にソールドアウト！　これを受け、全国18ヶ所22追加公演が決定するも、やはり各地でソールドアウトを連発。6月18日に行ったツアーファイナルの横浜アリーナ公演も、立ち見までビッシリの満員御礼の中で迎えることとなった。D-LITEのパフォーマンスの魅力は、やはり何と言ってもその高いボーカル力。1曲目「歌うたいのバラッド」は、出だしがボーカルからという難易度の高いもの。ステージにはまだスクリーンが降りたままだったが、彼はその歌い出しから場内を瞬時に魅了。歌声からスタートする緊張感のあるオープニングにも関わらず、観客を完全に歌の世界に引き込んだ。3月末に行われた日本武道館公演もレポートさせてもらったが、その頃に比べてさらに表現力が増したよう。3曲目「日の当たる坂道」では、ストリングスが登場し、広いステージならではの演出でライブを盛り上げていく。D-LITEは、オーディエンスにもサビのフレーズを歌うように促し、暖かい一体感を作る。軽快なテンポの「全力少年」ではダンサーが登場し、躍動感のあるステージングも披露。観客もジャンプするなどの熱い反応で、続く「WINGS」のイントロでは、ひときわ高い声援が上がった。ファンからの人気が高い「WINGS」はD-LITE自身のソロ曲。オリジナルは韓国語の歌詞だが、今回のツアーでは日本語で歌い、前半に大きなヤマを作ってくれた。

　このあとのMCでは「皆さん、僕のアルバムの中で、どれが一番よかったですか？」と問いかけ、まとまらない（？）声援が起こると「何もわからないです（笑）」と、茶目っ気タップリの回答で観客を笑わせる。かと思うと、次のブロックでは「やさしさで溢れるように」「逢いたくていま」など、聴き応えのあるバラードソングを熱唱。「逢いたくていま」でのファルセットのフェイクなどは絶品だった。「夢の蕾」を歌う前には「僕はこのライブを通して、いろんな勉強をしています。その勉強が僕にとって素晴らしいプレゼントです。その気持ちで次の曲を歌いたいと思います」と、ジンワリするようなトークで曲を紹介。こういった人柄の伝わるMCは、実にD-LITEらしい。続く「Try Smiling」は、彼の韓国でのソロデビュー曲だが、背景にはデビュー前から現在までのポートレートが映しだされていくという、ファンにはたまらない演出。曲のエンディングで映された最近の写真がまた、非常にいい笑顔だ。11曲目「星になれたら」を歌い終えると、D-LITEはいったん楽屋へ。ここでゲストとして事務所の先輩シンガー、GUMMYが登場。しっとりした大人の女性らしい歌やリアーナのカバー曲を披露し、ライブにアクセントをつけた。

　ライブ後半で印象的だったのは、彼が4年前にあった事故で大けがをしたことにふれたこと。ファンの多くは知っていることだが、新しいファンの中には詳しく知らぬ人もいたかもしれない。
「味も感じられなかったし、匂いも感じられなかったし、声もでなかった――。声が出なかったらどうやって生きていけばいいか考えました。また声が出たら、みなさんに力と希望を与えて生きようと考えました――。これからも皆さんのために歌い続けるから、よろしくお願いします！」
　思わぬ告白に観客からも大きな声援と拍手が送られる。だが、しんみりしたままでは終われない。後半に向け、「皆さん、力は残ってますか？」と煽り、「じょいふる」や「そばかす」などでラストスパート。本編ラストは「Hello」で、ポップに締めくくった。

　アンコールではソロ曲「テバギヤ＋ナルバ、キスン！」をメドレーで披露。場内はD-LITEのコミカルな振りに合わせ、大盛り上がり。曲が終わっても声援はやまず、追加で「WINGS」「じょいふる」「ナルバ、キスン！」を追加。最後まで満員の観衆を楽しませようとする彼の心意気が感じられ、体も心も暖かくなるようなライブだった。アンコールの途中、彼は尾崎豊の名曲「I LOVE YOU」を葉加瀬太郎とのコラボでカバーすると発表。ボーカリストとしての意欲を見せた。BIGBANGでの活躍はもちろんだが、ボーカリスト・D-LITEにも改めて注目していきたい。

【取材・文：海江敦士】