昨年5月にアルバム『Δ(デルタ)結線』でデビューして以来、わずか１年間でアルバム３枚とツアー３回。快調なペースで活動を続ける“新人バンド”の電大だ。しかもドラムの川西幸一はすでに50才を越え、ギターの手島いさむが今年50才。ベースのEBIもすでに50才秒読みに入っていることを考えると、単純に“快調な新人”なんていう言葉では絶対に片づけられない何かをはらんでいるバンドなのだ。
　そんな奇妙なDNAを持つバンドの3rdツアーの東京公演は、下北沢ガーデン3DAYS。その初日を訪ねてみた。

　前回ツアーで増加した男性オーディエンスが、さらに増えている。ステージにメンバーがぞろぞろと現われると、親しみをこめた拍手が起こる。おもむろに手島がギター・ソロを弾き始めると、それにドラムの川西が合わせる。貫禄充分の始まりだと思っていると、曲に入った途端、３ピース・ロックバンドならではの、シンプルでタイトなサウンドがP.A.スピーカーから飛び出してきた。
　ツアーも３回目、しかも中盤戦に入っている電大のアンサンブルは、非常に安定している。１曲目「ハレルヤ」は3rdアルバムから、２曲目「炎のモーニングコール」は1st、３曲目「D-SHOCK」は2ndからと、 選曲も自由自在。ちなみに今回のツアーのタイトルは「行っとらんけんvsまた来たけん」で、セットリストは初めて行く場所と、再訪問地の２パターンがあるという。なんと贅沢な新人バンドのライブなのだろう。演奏内容もそんな電大にふさわしく、アウンの呼吸で互いに反応し合って、安心して楽しめるライブとなった。

「ハロー、下北沢！　こんちは、電大です」と川西。
「去年もここでやりました。演奏してないときは、グダグダの電大です」と手島。
「今日は愛想ふりまいてますね、てっしー。もうモテ過ぎですよ」とEBI。
「でも、僕が愛の言葉を100言っても、EBIのひと言に負けます」と手島。
「愛の言葉って、どんなんですか？」とEBI。
「ボ、ボンジュール！」と手島。EBIがアンプの上に乗せたベルを「チーン！」と鳴らすと、川西が「カモーン」と叫び、演奏に戻っていく。
　このベテランらしい演奏と、グダグダしゃべりのサンドイッチが、この後、続いていく。2ndツアーでは慣れが出てしゃべりがグダグダ過ぎたが、３rdにして早くも“患部”に修整が入って、電大はすっかりマイペースを確立。さすがに年齢のせいか“歌詞忘れ”対策のために、３人のマイクスタンドのそばには“歌詞表示用iPad”がセットされている。そんな介護装備もご愛嬌、悠々とライブが進んでいく。

　実力が爆発したのは、12曲目「白くぬりつぶせ」だった。電大の各曲は、それぞれ元になったバンド、ディープ・ パープルやレッド・ツェッペリンなどの痕跡が残されているが、この「白くぬりつぶせ」の元ネタはたぶん“AC/DC”。地上最強の８ビートを受け継ぐ電大のサウンドが、ガーデンを塗りつぶす。曲の最後に川西が「ロックンロール！」と一声シャウトしたのが印象的だった。

「ライブは始まったら終わります。ツアーも終わります」と手島。
「始まったら終わるのは、人生と同じですね」と川西。
「こんなバンド、あってもいいよね」とEBI。
　話が深いのか浅いのか、まったくわからないのが電大の特長。「違う話を聞きたい人は、明日また来てください」と手島。「チーン！」とEBI。・・・ 演奏は深いのになあ(笑)。

　ユニコーンとはまったく異なる“芸風”を磨く電大は、３rdアルバムで広げた音楽性を含めてまだまだ前進を続けそうだ。そんなことをやっているうちに、いよいよ“手島50祭「ワシモ半世紀」”の武道館２DAYSが近づいてきた。これは、今年の電大ライブの49、50本目に当たる。こんなバンド、見たことない。こんな50才、見たことない。だから近所に来たら絶対、見に行こう！

【取材・文：平山雄一】