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東京カランコロン、愛すべき5人のエンターテイナーが奏でた笑顔を呼ぶ音楽

東京カランコロン | 2014.03.28

 オープニングSEのKAN「愛は勝つ」が爽やかに響き渡る中、登場したメンバーたち。いちろー(Vo・G)、おいたん(G・Cho)、佐藤全部(B)、かみむー氏(Dr)は、カラーボールをフロアに投げ込んで観客を早速沸かせる……あれ? 1人足りない。「遅刻した?!」とせんせい (Vo・Key)が最後に駆け込んできて、ついにステージに全員集合。「準備はいいですか? 始めちゃいますよ。みなさん今晩は。東京カランコロンです!」、いちろーが挨拶をして「いっせーの、せ!」がスタート。観客は全力で手拍子をしながら興奮を露わにする。続いて「少女ジャンプ」「マッハソング」「フォークダンスが踊れない」、強力なナンバーが連発されて、会場内の一体感はグングン増していった。

 最初のインターバルで注目を集めたのは佐藤全部。「佐藤さん、どの方向に行こうとしているの? 今日のテーマは?」といちろーに質問された彼の衣装はギラギラ輝く妖しい銀色。おそらく保温シートだと思われるものをマントのように身体に巻いている。「チャレンジということでロックンローラーを意識しました。みんなセンキュー!」……シュール過ぎて常人の理解を遥かに越えた回答が皆の笑いを誘った後、再び演奏がスタート。フロア全体で観客が声を上げながら踊りまくった「言え言え言え」。温泉にでも入っているかのようにせんせいが頭の上に畳んだタオルを置き、風呂桶を置く「コンッ!」という効果音も随所に散りばめたインストナンバー「F.L.O」。郷愁を誘う柔らかなメロディを奏でた「てのひら」と「キャラメル」。多彩なサウンドがさらに届けられていった。

 普段あまりやらない曲を演奏するワンマンライブでの恒例コーナー『どきどきゾーン』で、まず披露されたのは、現在のメンバーになる前に作った曲なのだという「ランドマークで行き止まり」。さらにはthe pillowsトリビュートアルバムでカバーした「ノンフィクション」。そして「ここからさらにディープでドープなゾーンへ入ります」という言葉を残して突然ステージ上から姿を消したメンバーたち。しばらく経ってから戻ってきた彼らは、サングラスをかけてキャップを被っている(佐藤全部のみ禿げヅラ風のものを着用していたようだが……)。なんだかラッパーのような風貌だが、一体何が始まるのか? 「俺たちのヒップホップ魂、見てもらっていいですか?」という強気な言葉を合図に始まったのは、最新アルバムのボーナストラック。メンバー全員がラップするあの問題作を生で披露するという超レアでマニアックなショータイムとなった。

 「どきどきゾーン、まだまだ続きます。5月14日にシングルを出します!」といういちろーによる告知の後、新曲の紹介をしたせんせい。「テレビの中の好きなアーティスト、タレントとか何でもいいけど、その人に好き! 好き! 好き!ってマシンガンのように撃ちまくる女の子の曲です。その女の子にとってその人が大事なわけじゃなくて、追いかけている気持ちが大事。そういう曲です」と語り、新曲「恋のマシンガン」がスタート。甘酸っぱいメロディを浴びながら、観客は実に気持ち良さそうに身体を揺らした。さらに新曲「ひなげし」や「指でキスしよう」も演奏されて、会場内はしっとりとしたムードで包まれていく。そして、「ラブ・ミー・テンダー」が、ますます観客を恍惚とさせたのであった。

 「×ゲーム」で激しい手拍子を巻き起こした後、再びMCタイム。客電を点灯してもらい、明るくなった会場内を見回しながら、「すげーな!」とたくさんのファンが集まったことに対する喜びを露わにしたいちろー。せんせいもこのステージに立っている感動を語った。「去年、赤坂ブリッツでやった時、“もっとでかいところでやりたい”って調子に乗ったことを言ったけど(笑)。ここに来るまで不安だったんです。でも、こうやって一応できてる。みんなにすごい感謝してます。今わたしらがここに立って演奏してるのは“今”でしかなくて。この瞬間は奇跡なんやなと、ちゃんと分かってたいなと。この瞬間を忘れないで欲しいと思います。今日はほんま来てくれてありがとう!」、じっくりと想いを噛み締めながら語る彼女の言葉は、とてもグッとくるものがあった。

 「今年も突っ走ることになると思います。“なんで走ってるんだ?”って思った時もあります。でも、頑張ることは悪くないなと。“もっといい曲を届けよう”とか、前の自分を越えるために走るのは悪くないなと思って書いた曲をやります」という言葉を添えて「走れ、牧場を」。曲が始まるや否や起こった観客の手拍子がとにかくすさまじい。その熱気さらにエスカレートさせたのが「泣き虫ファイター」。いちろーが悩ましい動きを見せるダンスを繰り広げた「true!true!true!」。そして「16のbeat」で、本編は華々しく締めくくられた。

 アンコールのために、まずステージに戻ってきたのはせんせいと佐藤全部。「すみません。レインボーブリッジ渡りたいんですけど」(せんせい)「そこにお金を」(佐藤全部)……などなど、文章でお伝えするのが困難極まりない独特なやり取りによる寸劇を繰り広げ、会場全体をシュールなムードで包む。「タイムスケジュールによるとここは“爆笑ミニコント”って書いてあったんだけど……」、2人を後方から見守りながらふと呟いたいちろーの言葉も観客の笑いを誘っていた。そんなひと時を経てメンバーたちは再びスタンバイ。「じゃあアンコールやりますか。昨年は夏フェスにも出たり、たくさん人の前で歌う機会が増えたけど、何処に向って歌ってるのか分からなくなったことがあって。その時にできた曲をやります。この曲が答えを出してくれました。バンドのテーマとも寄り添ってるなと思ってアルバムの1曲目にしました」といちろーが語り、届けられたのは「誰かのエンターテイナー」。メンバーたちが横一列に並んでマイクに向かい、アカペラで披露された。5人のアンサンブルが実に温かい。美しいハーモニーと共に幕切れを迎えた時、観客は大きな拍手を彼らに届けた。

 「今回のツアー、やりたい曲が多過ぎて。今までの全部の作品からやりたいんです。最後に『東京カランコロンe.t.』から1曲やろうかと。「マリメッコとにらめっこ」と「マドモアゼルと呼んでくれ」、どっちにするかみんなに決めてもらおうと思います」、いちろーの提案により、演奏する曲を観客の挙手の数で決めることになった。しかし、ほぼ半々の反応で、どちらの曲の希望が多いのかよく分からない。結局、いちろーとせんせいのジャンケン対決(いちろーが買ったら「マドモアゼル」、せんせいが勝ったら「マリメッコ」)が行われてせんせいが勝利。「マリメッコとにらめっこ」が披露された。

 鳴り止まない拍手に応えて行われたダブルアンコール。「1曲だけ歌い足りない隠れた美声が(笑)」といちろーが言い、おいたんの熱唱が冴える「J-POPって素敵ね」。《♪J-POPって素敵ね ラララララララ?》、彼の歌からスタートし、エネルギッシュに高鳴っていった。フロア全体で人々が掲げた腕が左右に揺れ、大合唱が湧き起ったが、おいたんはさらに人々を激しく巻き込む。男女それぞれに分けて合唱を求めたり、かみむー氏やフロアの後方にいるスタッフにも歌ってもらったり。たくさんの歌声が交わされつつ皆が1つになったあの空間は、まさしく「J-POPって素敵ね!」という実感そのもので満たされていた。いちろーがバスドラムの上に登り、ジャンプ&着地で演奏が終了した時、場内の誰も彼もが大喝采。東京カランコロンの音楽、ライブの楽しさを目一杯に噛み締めたエンディングであった。

【取材・文:田中大】
【撮影:山川哲矢】

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1. 恋のマシンガン
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恋のマシンガン Music Video 収録

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5人のエンターテイナー(初回生産限定盤)

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2013年11月27日

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【CD】
1.誰かのエンターテイナー
2.マッハソング
3.走れ、牧場を
4.指でキスしよう
5.true! true! true!(新録)
6.キャラメル
7.30のbeat
8.16のbeat
9.F.L.O
10.言え言え言え
11.てのひら
12.J-POPって素敵ね
+ボーナストラック

【DVD】※初回生産限定盤のみ
・ワンマンツアーファイナル「ワンマ ん2013」5月12日赤坂BLITZ
・いちろー&せんせい Acoustic Live at QUEEN’S HOTEL antiques

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セットリスト

東京カランコロン ワンマ んツアー2014
2014.3.8@Zepp DiverCity Tokyo

  1. いっせーの、せ!
  2. 少女ジャンプ
  3. マッハソング
  4. フォークダンスが踊れない
  5. 言え言え言え
  6. F.L.O
  7. てのひら
  8. キャラメル
  9. ランドマークで行き止まり
  10. ノンフィクション
  11. (ボーナストラックのラップ)
  12. 恋のマシンガン
  13. ひなげし
  14. 指でキスしよう
  15. ラブ・ミー・テンダー
  16. ×ゲーム
  17. 走れ、牧場を
  18. 泣き虫ファイター
  19. true!true!true!
  20. 16のbeat
Encore
  1. 誰かのエンターテイナー
  2. マリメッコとにらめっこ
Encore 2
  1. J-POPって素敵ね

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