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ハルカトミユキ、新曲への期待が高まる東名阪ツアーのファイナルをレポート

ハルカトミユキ | 2014.11.27

 人が「変わりたい」「自分を変えたい」と強く願うのはどんなときだろうか。過去の自分を否定したいとき? 今、目の前に乗り越えなくてはいけない現実に立ち向かってるとき? それとも、失敗するかもしれないというリスクを恐れずに前進したいとき? いずれにしても、現状に満足していないエネルギーの渦が内包していることだけは確かだろう。

 首都圏に45年ぶりとなる大雪が降った今年2月の渋谷クラブクアトロ以来、9ヶ月ぶりとなるワンマンライブを開催したハルカトミユキ。その間も、彼女たちは対バンイベントに出演したり、ふたりだけのアコースティックライブを開催してきた。GRAPEVINEやgeek sleep sheepとのライブを見たのだが、そのときのハルカとミユキのふたりの間には、これまで培ってきた経験や傷をお互いにぶつけ合うかのようなヒリヒリした空気が流れていて、まるで戦っているように見えた。しかし、東名阪ワンマンツアーのファイナルとなる恵比寿リキッドルームのステージに立ったふたりからは、それまでとは違う関係性が匂い立っていた。ミユキによるオープニングSEは、重厚ながらも攻撃性は少し抑えられ、コード進行からは、これまでにない柔らかさや美しさも感じた。バンドが発する音楽のうねりによって、ハルカをいくつもの障害物から引っ張り上げ、光のキラメキを受けながら、遠いどこかの1点に向かって流れていくような調べもあった。

 バンドが音を鳴らすや否や、天空に向かって手を伸ばしたふたりの姿からは、現状を打破し、新しく生まれ変わりたいんだという強い思いを感じた。そこには、“変化”や“成長”といった、ありきたりの言葉ではおさめられないほどの気迫が込められていた。ライブの後半では、バンドメンバーも含め、会場に集まった全員で拳を高々と掲げた「ニュートンの林檎」や、インディーズ時代からライブで人気の定番曲「マネキン」、人が行き交う地下鉄のホームで、ひとり、死について考える「プラスチック・メトロ」、大人になってしまったやるせなさを描いた「青い夜更け」などの既存曲を立て続けにプレイし、観客を熱狂させた。また、中盤にはハルカがリスペクトするフラワーカンパニーズの名曲「感情七号線」をカバーし、ふたりだけのアコースティックコーナーもあった。「思い描いていた未来図が、ふと、叶わないのではないかと思ったときの気持ちは、絶望とも違う、地に足のつかない、ふわっとした怖さがある」と語った「シアノタイプ」は、まるでアンプを通ってないかのような生々しさを感じた。「ほんとにいろんなことがあって……。それはもう、どうでもいいことなんですけど、いまはすごく、その時と気持ちが変わってます。ほんとに素直に歌を届けたいし、聞いて欲しいっていう気持ちでここに立ってます。そう思えたことが本当に嬉しいし、支えてくれたみんなに感謝しています。ありがとうございます。新たな気持ちでこの歌を歌いたいと思います」というMCのあとに歌ったバラード「その日がきたら」には、一瞬、まるでこの瞬間が永遠なのではないかと感じるほどの特別な響きがあった。

 このように、全体としては実に多彩な構成となっていたのだが、心に残っているのは、やはり新曲や未発表曲を中心にした前半の猛攻にあった。幼虫が繭を破る瞬間のような鮮烈なエネルギーを感じた「生まれる」。自分に言い聞かせるかのように<♪痛みを忘れて裸足のままいけ!>と歌う「裸足」。<♪たった今、生まれたみたいに痛い>というフレーズが記憶に張り付いて離れない「子猫」……。終わりのはじまりをテーマにした「フラワー」を含め、この日披露された新曲には、大げさにいうのであれば、一度、この身を滅ぼして、新たに生まれ変わるくらいの強烈な変化を希求する姿勢が見えた。そこには、また痛みや絶望も伴うだろうが、彼女たちは決して、変わることに躊躇していない。いまの自分を遥か彼方の過去に置いていき、新しい日々へと走り抜けようとしている。「今日は、ハルカトミユキの(2014年の)ライブ納めなんですよ」と語ったふたりは、生まれ変わろうとする過渡期にいるのだろう。年が明け、2015年に彼女たちがどんな新しい音楽を聞かせてくれるのか。いまはただ、その殻を破り、蕾を咲かせる日を静かに待ちたいと思う。

【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:Aki Ishii】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル ハルカトミユキ

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リリース情報

そんなことどうだっていい、この歌を君が好きだと言ってくれたら。

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2014年05月28日

Sony Music Associated Records

1. その日がきたら
2. 赤くぬれ
3. かたくてやわらかい
4. 385
5. 青い夜更け

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セットリスト

秋の東名阪ワンマンツアー
2014.11.15@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 生まれる (新曲)
  2. 裸足 (新曲)
  3. 子猫 (新曲)
  4. バッドエンドの続きを (未発表曲)
  5. 未成年
  6. シアノタイプ
  7. ひとりごと (未発表曲)
  8. middle (未発表曲)
  9. 感情七号線 (フラワーカンパニーズ/カバー)
  10. Hate you
  11. フラワー (新曲)
  12. その日がきたら
  13. ニュートンの林檎
  14. 振り出しに戻る
  15. マネキン
  16. プラスチック・メトロ
  17. 青い夜更け
Encore
  1. ドライアイス
  2. Vanilla

お知らせ

■ライブ情報

フラカン25周年記念トリビュートparty
『WE❤FC MORE THAN EVER』

2015/01/15(木) 東京 赤坂BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。


ハルカトミユキ公式モバイルサイト
「ハルミユtown」

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http://arena.emtg.jp/harukatomiyuki/

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